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碧血の海 番外編 過去・現在・未来 縺れる糸

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 1941年12月下旬、ハワイ駐留陸軍司令官、栗林中将と入れ替わるように、聯合艦隊第1艦隊は、横須賀軍港に帰投した。


[じんりゅう]を始めとする、第1潜水隊群の各潜水艦の補修整備の為の帰投に合わせてだった。


 現在、ハワイ近海の哨戒任務にはイ号潜水艦を中心とした潜水艦隊が就いている。


 軍港に降り立った、山本以下聯合艦隊の幕僚たちと石垣は、海軍某造船所へその足を向けた。


「・・・これは・・・もしかして・・・?」


 極秘裏に建造されているソレを見て、石垣はつぶやいた。


「イ400型。いや、色々弄ったので、改と付けるべきかな」


 後ろから聞こえた声に振り返ると、漫画で出てくる変人科学者のような風体の男がいた。


「ええと・・・確か、私たちと一緒に来た・・・」


 北富士演習場で、自分たちと同時に来た民間人の1人だったと記憶している。


「やだなぁ~、あの時自己紹介したのに、忘れたとか・・・」


「すみません・・・」


 しっかり忘れていた。


「まあ、いいんだけどね」


 男は特に気にする様子もなかった。


「色々弄ったって、何をしたのです?」


「ナイショ。完成してからのお楽しみ。じゃ、ゆっくり見て行ってよ」


 男は言いたい事だけ言うと、楽しそうにスキップをしながらどこかへ行ってしまった。


「・・・変な人だな・・・」


 派遣されて来た民間人は、ほとんど変人だらけだったと記憶しているが・・・


 日本の食料自給率を80年後でも80パーセント以上を確保する事に情熱を燃やす農業関係者、これから起こる少子化対策のために女性が子育てをしながらでも社会進出しやすい環境を造るために保育施設の充実を目指す、厚生労働省職員等々。


 中には、何しに来たの?と聞きたくなるような一般企業出身の志願者もいた。


 日本政府がどういう基準で、志願を募ったのか謎な人々もいた。


そして、その男がかつて[そうりゅう]型の開発に携わった1人である事と、[そうりゅう]型では出来なかったトンデモ改造をイ400型にやらかしていた事を、石垣は後に知る事になる。





「う~ん、美味しい」


 師走最後の日、訪れた蕎麦屋で蕎麦を一口すすって、霧之は幸せそうにつぶやいた。


「・・・・・・」


 石垣は無言で蕎麦をすすり、乗せられた揚げたての天ぷらにかぶりつく。


「坂下さん、こんな美味しい蕎麦屋さんの事黙ってただなんて、酷いじゃないですか」


「機会が無かっただけだ。だから、今日連れて来た」


 天ぷらにかぶりつきながら、坂下はボソッと言った。


 穴場と言っていいくらいの小さな店だが、蕎麦を買って帰る人、食事をする人とで店内はごった返していた。


「今が戦時だなんて思えない程、普通ですね」


「・・・・・・」


「・・・・・・」


 ポツリとつぶやいた、石垣の言葉に2人は無言で蕎麦をすすった。





 官舎に帰る途上、3人は無言だった。


「君たちに、言っておく事がある」


 坂下が口を開いた。


「ドイツの駐在武官からの情報で、ヨーロッパがかなりややこしい事になっているらしい。まず、モスクワが陥落した。スターリンはモスクワ市民に徹底抗戦を命じて、どこかに雲隠れしたらしい。モスクワは、ベルリン市街戦の逆パターンの状態になったそうだ」


「ロンメル将軍、辛かったでしょうね。騎士道精神の心を持った軍人だから、民間人に銃を向けるなんて命令・・・したくなかったでしょうし」


 霧之は痛ましそうな表情を浮かべた。


「北アフリカもロンメルの後を引き継いだ指揮官が、大暴れしているらしい。エジプト駐留のイギリス軍は地中海をイタリア海軍に抑えられて補給線を絶たれ、防戦がやっとらしい・・・イギリス本国も、どうやらドイツと手を組んだらしい北アイルランドの反政府勢力が大規模なテロを起こし、国内が混乱しているという情報が未確認ながら入ってきている・・・俺たちの予想を超える事態が世界的に起こっている」


「そういえば、石原副司令官がソ連の満州侵攻の報を受けて、北部方面軍全軍に警戒態勢を取るように命令を出しましたね」


 坂下と霧之の会話を聞きながら、石垣は考え込んだ。


 架空の物語で、タイムスリップをした人物たちが、何か行動を起こせば大抵想定外の事が起こる。俗にいう[バタフライ効果]だ。


 まだ、確信してはいないのだが、自分たちの知っているバタフライ効果は、未来に対してのみ起こるはずだ。


 だが、様々な情報を分析しているうちに、すでに過ぎ去ったはずの過去にも何かが起こっているように思える気がするのだ。


 詳しく検証してみる必要があるかもしれない。


 それには、ダニエルかザムエルに意見を聞いてみなくてはならないだろう。





 石垣は空を見上げた。


 もうすぐ新しい年が来る。この空が続いている別の場所では今も多くの血が流れている。


 この時代の未来は、今だ闇に包まれている。


 自分たちに何ができるのか、石垣はいつまでも空を見上げていた。

 碧血の海 番外編をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

 続けて閑話を投稿します。

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