碧血の海 第8章 南海の海戦3 死闘 イージス護衛艦対バトルシップ
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。
彼女は妙に勘のいい女性だった。
自分が、この派兵に志願した時も何も聞かなかったが、全てを見通しているような目で自分を送り出してくれた。
艦長室のデスクの前に座り、1枚の写真を向井は眺めていた。
家族4人の集合写真。
自分と妻と2人の子供たち。
妻は何も言わなかったが、息子と娘は海に出ると何日も帰って来ない父親に、いつも反発していた。
「大事な行事の時に、いつもいない親父なんて、他人同然だろうな・・・」
家族と別れて、1年以上経った。
最後の休暇の時も息子と娘はロクに話をしてくれなかった。それも、仕方ない事だろう。
「ハルちゃんと再会するには後50年は長生きしなきゃな・・・」
軽くため息をついて、写真を引き出しに仕舞った。
「艦長、上がられます」
CICに戻った、向井の姿を見て海曹長がそう告げた。
その声に副長の権藤が振り返る。
「第5潜水隊からの通報で、Z部隊が二手に別れたそうです」
「ほう」
「戦艦1隻と駆逐艦3隻。こちらはベトナム・・・いえ、今は仏領インドシナ方面へ。巡洋戦艦1隻と空母1隻駆逐艦2隻はフィリピン方面に針路を取っています」
[あしがら]の水上レーダーの探知外らしく、まだレーダーに変化はない。
「で・・・その心は?」
「さあ」
「恐らく、インドシナ近海を航行中の第2艦隊と輸送艦隊を急襲するためと、フィリピンのアメリカ軍の救援のためではないでしょうか。要請があったかどうかはわかりませんが」
気の無い返事の権藤に代わって、砲雷長が答える。
「二正面作戦か。それにしても数が少ない、潜水艦が同行している可能性は?」
「それなら、潜水隊から報告があるはずです。どうやら、水上艦のみのようです。万が一、潜水艦がいたとしてもP-1とP-3Cの哨戒網に引っ掛かるかと」
「だな。しかし・・・ベロベロに舐められてないか?こんな二正面作戦、俺は絶対やらないぞ。ええと・・・フ・・・フ・・・誰だった?」
「サー・トーマス・フィリップス中将。イギリスの英雄ですよ」
「名前を覚えるのは、苦手なんだよ。英雄だか何だか知らんが、そのミスター・サーは、何を考えているんだ?」
「サーは、名前ではなく称号です」
「・・・・・・」
向井は少し、傷ついた。
「それより、空母が同行とは少々厄介ですね」
「確か、史実では座礁か何かして動けなかったはずだな。艦載機が発艦する前に、抑えるしかない。しかし、戦艦の方を放っておくわけにもいかないな・・・[きりしま]に通信を繋げ」
向井の指令に、通信士が[きりしま]に通信を繋いだ。
短距離限定だが、テレビ通信である。
画面に、[きりしま]艦長の杉山驍1等海佐が映る。
「こっちも、二正面作戦か?」
いきなり切り出してきた。
「先に言うな!まだ、何も言っとらんだろうが!」
「貴官は前振りが長いからな。それにすぐ脱線する。このほうが効率的だろう」
しれっとした表情で、杉山は言った。
「まったく、どいつもこいつも・・・俺を何だと思っている」
ブツブツと文句を言っている向井を放っておいて、杉山は権藤に声をかけた。
「潜水隊と、[きりしま]のハープーンと[あしがら]のSSM-1Bなら、敵艦隊の射程外から攻撃できる。敵が艦隊を2分するという愚策に出てくれたのはむしろ好機だ。ミサイル戦のセオリー通り、俺たちは、ロングレンジの利点を活かして空母と巡洋戦艦を叩く。戦艦の方は第2艦隊に状況を報告して対処してもらえばいい。いくら、火砲の性能は英軍が上でも数ならこちらが上だ。第5潜水隊から1隻引き抜いて、向こうに情報を随時報告させれば先手を打てる。それに、向こうも輸送艦隊に潜水隊が組み込まれているしな。フルボッコ確定だろう」
最後の1言はともかく、合理的な作戦だ。
しかし・・・
「水を差して申し訳ありませんが、ふるぼっことはどういう意味なのでしょうか?」
1人付いて来れなかった中尉が質問をする。
「・・・・・・」
説明しないと駄目なのか。という表情で、杉山は向井を見る。
「そこだけ俺に振るか?簡単に言えば、集団でボコボコにするって事だ」
「はあ・・・」
何となくわかっていないような、表情で中尉は納得した。
向井は杉山に振り返る。
「そいつは、賛成できんな。第2艦隊は輸送艦を護衛している。足の遅い輸送艦を護りながらの戦闘は、負担が大きい。相手は3万5000トン級の大型戦艦のくせに、速力28ノットも出るバケモノだ。艦砲の射程も長く威力も高い。どうしても、制限のかかる第2艦隊では不利だ」
「なら、どうすると?」
「失礼します、艦長!」
そこへ、[あしがら]の通信士が第2艦隊からの電文を持ってきた。
Z部隊の情報は、すでに伝えてある。
ついでにある要請もしておいた。
向井は、その電文を黙読すると、にやりと笑った。
「話のわかる指揮官ってのは、好きだねぇ。よし、杉山。貴官は第5潜水隊と[金剛]、[榛名ちゃん]とで、巡洋戦艦と空母を潰せ。俺は[プリンス・オブ・ウェールズ]に当たる」
「ちっ、ま~た何か良からぬ事を考えたな・・・いいだろう、その話乗った。ところで、どうせ下らない理由だろうが、なぜ[榛名]はちゃん付けなんだ?」
「俺の嫁さんと同じ名前だからさ」
「・・・笑えねえ・・・聞くんじゃ無かった」
ぼそりとつぶやいて、杉山は通信を終了した。
一方のイギリス海軍だが、当然無策ですっ飛んで来たわけではない。
偵察機の報告で、フィリピン方面に日本海軍の機動部隊が針路を変更した事を受け、マレー半島より先にフィリピン攻略に着手したと判断したのだ。
そのため、シンガポールを出撃したZ部隊は急遽艦隊を2分、一方をフィリピン方面、一方をインドシナ方面にその針路を向けた。
もちろんイギリスは、日本軍を侮ってはいない。
だからこそ、苦戦の続くヨーロッパから最新鋭艦の[プリンス・オブ・ウェールズ]を旗艦とするZ部隊をシンガポールに派遣したのだ。
「紅茶をお持ちしました」
「ありがとう」
従卒が持ってきた紅茶を1口飲んで、フィリップス中将は眉を寄せた。
香りは良いのだが、味がいま一つなのだ。
「お口に合いませんか?」
従卒が、心配そうに声をかけた。
「いや、戦場で贅沢は言えんな。今、この時も命懸けで戦っている同胞の事を考えれば・・・」
そうつぶやきながら、もう1口飲む。
入れるタイミングを間違ったのか、どうも苦みが強く感じられる。
「嫌な予感がするな・・・」
「はい?」
無意識につぶやいてしまった。
「いや、何でもない」
指揮官がつぶやく言葉としては、不適切な発言だった。
フィリップスは司令席から碧青色の海を眺める。
アフリカ戦線はナチス・ドイツ軍とイタリア軍の共同作戦によって、一進一退の状態だ。
ヨーロッパ戦線は、フランス、オランダが降伏した事で、緊迫した状態になっている。
その上、スペインの軍事政権はドイツ、イタリアとの新三国同盟に動いているとの情報もある。
あまり良い雲行きとは言えない。
それに、ドイツがソ連に侵攻した事で、北欧のフィンランドが冬戦争でソ連に奪われた領土奪還に動きだしそうだ。
現在、ヨーロッパは混乱している。
(あの、戦争は何だったのだ・・・)
サラエボで、たった1発の銃弾から始まった戦争。
ヨーロッパ全土を巻き込んだあの戦争から、時間も経っていないというのにこの体たらくだ。
フィリップスにすれば、一刻も早く本国に戻ってナチスの脅威から祖国を救いたいのだ。
「しかし、宣戦布告とは・・・アメリカとだけやり合っていればいいものを・・・迷惑な事だ」
本国政府はアメリカ政府に同調する形で、日本に対して経済制裁を継続していたが、それに対して日本から突き付けられたのが、あのいかにもアメリカのついでにしました。といった感じの、宣戦布告だった。
イギリスとしては、誇りを傷つけられた。
国民の中には、支援物資や義勇兵は送って来るものの、再三の軍の派遣要請に応じないアメリカに不信感を抱いている者も出て来ている。
イギリス単独で、経済制裁を解いて日本との交渉をするべきだ。との意見も少数ながら、あるらしい。
しかし、そんな事になれば、アメリカからの支援は絶望的だ。恐らく政府首脳は頭を抱えているだろう。
こうなってしまえば、ある程度日本軍に打撃を与えた上で、彼らの言い分を多少は認めた状態で講和に持っていくのが得策だろう。
その上で、アメリカとの講和の間を取り持つ事で、恩を売る事もできる。
最も、それを決めるのは政府だが・・・
正直、アジアのゴタゴタに付き合わされるのは、ご免被りたいのだ。
「目標探知。本艦との距離、およそ30マイルです」
水上レーダーのレーダー員が報告する。
「向こうはまだ、気付いていないな」
「この時代のレーダーでは、まだ探知できないでしょう」
「よし、対水上戦闘用意。SSM-1Bスタンバイ」
「水上戦闘用意!!」
権藤の復唱に、艦内放送が流れる。
「水上戦闘用意。これは演習ではない、繰り返す、これは・・・」
「今の時間だと、イギリス人はお茶の時間だな。邪魔したら怒るか?」
「さあ・・・おやつの時間を邪魔されて怒るのは、艦長くらいでしょう」
「何でだ!?」
すでに、向井は肚を決めている。
そう見て取った権藤は、いつもと変わらない対応をした。
「使用弾数2つ。目標、駆逐艦2隻!」
「使用弾数2つ。目標、駆逐艦2隻!」
向井の指令を砲雷長が復唱する。
砲術士が、位置情報を元に諸元データ入力を開始する。
「SSM-1B、データ入力完了」
その報告に向井は大きく息を吸い込み、吐いた。
「SSM-1B、CIC指示の目標撃ちぃ方始め!!」
「CIC指示の目標、撃ちぃ方始め!!」
[あしがら]の中部甲板に設置されたSSM4連装発射管から、轟音と共にSSM-1Bが、2基順次発射された。
「CICから艦橋、機関全速前進、敵戦艦の正面に出る」
「了解、機関全速、ヨウソロ」
航海長の声が、ヘッドセットから聞こえる。
「頼むぞ、航海長。[プリンス・オブ・ウェールズ]とガチでタイマンを張るんだ。本艦の命運は、貴官の操艦にかかっているからな」
「任せてください。たとえ、全砲門から砲撃を受けても1発も掠らせません。何しろ私は1度も宝くじに当たった事はないですから」
「ハッハハハ、頼もしいな。実は俺もだ」
冗談を飛ばしながらも、向井の表情は真剣だった。
視線は水上レーダーに映る光点を追っている。
音速の光点が、目標と重なろうとしている。
21世紀なら、いくらでも迎撃する方法はあるが、この時代ではなす術はない。
一方的な攻撃だ。
だが、それを卑怯だとは思わない。
「9、8、7、6、5、4、3、2、1、スタンバイ」
カウントと共に光点が重なり点滅して消滅した。
「目標2、撃沈」
「水雷長」
「はい」
「短魚雷、アスロックの射出準備をしてくれ」
「はい?」
突然の命令に、水雷長は目を丸くした。
護衛艦に搭載されている魚雷は、あくまでも対潜用である。
水上艦を撃沈するようには造られていない。
これは、民間船等への誤爆を避けるためである。
「貴官は、自分より身体のでかい奴とケンカをする場合、まずどこを狙う?」
「まあ、急所ですね」
「そういうこった。タマを狙うのは基本だろ」
「艦長、下品です」
権藤が、水上レーダーを見ながら割って入る。
向井は、それに反論せずニヤニヤと意味ありげな気色悪い笑みを浮かべていた。
「水雷長、魚雷深度を最浅深度に設定、指示を待て」
「り、了解。魚雷深度を最浅深度に設定します」
首を捻りながらも水雷長は復唱した。
突然の事だった。
遥か前方から信じられない速度で飛来して来たロケットのような砲弾は、海面スレスレの高度で[プリンス・オブ・ウェールズ]の横をすり抜け、上空へ跳ね上がると直上から2隻の駆逐艦に襲い掛かった。
「何だ、あれは!?」
幕僚の1人が悲鳴に近い叫び声を上げた。
フィリップスの脳裏に、ある情報が過ぎった。
「あれは、諜報局が言っていたナチス・ドイツが開発中の新型兵器ではないのか!?」
しかし、ドイツ軍がこんな所に侵攻して来ていない以上、日本軍の攻撃と考えるべきなのだが。
国力も技術力もドイツに劣る日本が、こんな兵器をいつ開発したというのだ?
はっきり言って、日本の軍事力の増強に警戒感は持っていても、世界の誰もが脅威は持っていなかった。
だが、あの国ほど不可解な国はない。
かつて日露戦争の時、日英同盟を結んでいたイギリスでさえ、日本があそこまでロシアを追い詰めるとは想像もしていなかった。
この強運さは何なのだ?
「悪魔と契約でもしているというのか・・・」
首を振って、現実に戻ったフィリップスは残存する駆逐艦に撃沈された駆逐艦の乗員の救助を命じると水上レーダーの片隅に映る光点に向かって、針路を取るように命じた。
「しかし敵・・・は、我々の射程外から攻撃する術を持っています。情報が不足している状態では危険を冒すより撤退すべきと思います」
幕僚の進言はもっともだと思ったが、それでも危険を覚悟で前進を命じた。
ジョンブル魂の誇りにかけて、逃げる事ができなかったのだ。
もし、この時日本軍がアメリカ本土まで攻撃をする術を持っていたという情報が知らされていれば別の選択もあっただろうが、アメリカはこの情報を報せていなかった。
自国の国土が攻撃を受けたなど、たとえ同盟国といえども知られるのは恥だとでも思ったのかもしれない。
「「敵艦視認!距離約3マイル!!」」
「ファイア!!」
「主砲、撃ちぃ方始め!!」
双方の見張り員の報告に、2隻の艦の艦長の攻撃命令が同時に発令された。
それぞれの主砲がほぼ同時に火を噴いた。
[あしがら]の周囲に水柱が立ち昇る。[あしがら]の艦体が激しく揺れる。
「下手くそ、どこを狙っていやがる」
「艦長、そんな事を言っても1発でも喰らったら、即アウトなんですよ。それに、うちの攻撃は全然当たっても効いていませんよ」
「知っている。短魚雷射出!それとアスロック射出用意!」
「短魚雷射出!アスロック、スタンバイ!!」
水雷長が復唱する。
「短魚雷射出!」
水雷士が発射ボタンを叩く。
[あしがら]から射出された魚雷は一直線に[プリンス・オブ・ウェールズ]に向かっていく。
無論、これでダメージを与えられるとは考えていない。
これは、囮だ。ただし、それなりに役立ってもらう。
「アスロック発射!同時に短魚雷に自爆コードを打ち込め!!」
「アスロック発射!短魚雷自爆コード入力!」
その瞬間、最浅深度に設定していた魚雷の艦底ほぼ真下での爆発で立ち昇った水柱と衝撃波で[プリンス・オブ・ウェールズ]の巨体が、大きく揺らいだ。
第2射を発射しようとしていたのだろう砲塔から発射された砲弾は、照準を狂わされたのか、見当違いな所に着弾した。
速度がガクッと落ちたのが、映像で見て取れた。
「艦底にダメージを受けた模様、18ノットに艦速が落ちました」
「やはりな、艦体上部の装甲は頑丈だが、喫水線より下はそれ程でもなさそうだ。それに、あれだけの大型戦艦なら、喫水線は10メートルを超える、10メートルも差がない所で爆発の衝撃を受けたら結構効くだろう」
向井は腕を組んで、うんうんとうなずきながら腕時計を見ている。
「短魚雷、第2射射出!アスロックは着水後、順調に目標に向かっています」
「主砲、撃ちぃ方始め!連中に考える間を与えるな!」
[あしがら]の主砲が旋回し、吼える。
すでに双方の距離は3000メートル未満に縮まっている。
装甲の薄い現代の護衛艦が戦艦に艦対艦の格闘戦を挑むなどあり得ない。
イージス護衛艦ならその特性を活かして、ミサイル戦で勝負をつけるのが定石だ。
それでなくても[プリンス・オブ・ウェールズ]は、この年5月にデンマーク海峡海戦で排水量5万トン級のドイツ海軍の戦艦[ビスマルク]と艦隊戦を行い、僚艦[フッド]を撃沈されながらも、損傷を与えている。
新造艦ながらも戦歴は輝かしい。
それでも、向井はあえて不利な接近戦を挑んだのだった。
これは、イージス艦の艦長としては有るまじき行為であったが、救い難い事に[あしがら]の全乗員は、末端の海士に至るまで権藤の言う向井の暑っ苦しいスポ根精神に感化されてしまっているのであった。
[プリンス・オブ・ウェールズ]からの砲撃で立ち上がる水柱に煽られて、[あしがら]の艦体も激しく揺れる。
CICは、下手なジェットコースターより酷い状態であった。何かに捕まっていなければ転倒は免れないだろう。
それでも、航海長が断言した通り、[あしがら]は敵砲弾を受ける事は無かった。
「艦長」
ストップウォッチを見ていた権藤が声をかける。
「アスロック、爆破!!」
向井の指令に、担当員が自爆スイッチを押す。
モニターに、艦体後部で湧き上がった水柱に大きくつんのめった[プリンス・オブ・ウェールズ]が映し出された。
原潜すら轟沈させる12式短魚雷である。
一瞬だけ水上に跳ね上がった艦尾のスクリューの一部が弾け飛んだのが見て取れた。
レーダー画面を見ていたレーダー員が振り返る。
「艦長!!」
レーダーには、[プリンス・オブ・ウェールズ]を取り囲むように、3つの光点が映っていた。
「時間通りだな、チェックメイトだ。海の狼の牙からはもう逃れられん。CICから艦橋、後進全速、急げ!!」
「後部艦底に亀裂!!機関室浸水、機関出力低下!!」
「艦底各所で浸水!!艦体のバランスの維持が困難です!!」
「スクリュー大破、艦速5ノットが限界です!!」
艦内電話から、悲鳴混じりの報告が届く。
「たかが巡洋艦が・・・」
幕僚が、呆然とした表情でつぶやく。
本来なら無視して、日本軍の本隊に急襲をかけるところだったが、小賢しく攻撃を仕掛けてきたため一撃で撃沈するはずだった。
猫が、虎を威嚇したところでどれほどの事がある。
ただの猫が、虎に勝てる訳がない。だが、その猫が悪魔の手先ならどうなのだ。
フィリップスは灰色の見た事のない艦影を呆然と見ていた。
日本海軍である事を示す旭日旗(自衛隊旗)。
その背後に巨大な黒い影を見た気がした。
刹那。
衝撃が艦橋を揺るがした。
フィリップスは司令席から投げ出されて床に身体を打ち付けた。
「な・・・何事だ・・・?」
何とか身体を起こして問いかける。
「ら・・・雷撃です。本艦の3方向より、雷撃です!!」
「群狼作戦!?最初からこれを狙っていたのか!?」
「・・・これまでか・・・」
フィリップスは目を閉じた。
衝撃が再び襲い掛かって来た。
「目標、敵戦艦!魚雷全門発射!!」
向井からの支援要請を受け、第2艦隊からの要請で輸送艦隊から差し向けられたイ号潜水艦3隻から発射された魚雷18本が[プリンス・オブ・ウェールズ]に一斉に襲い掛かった。
[プリンス・オブ・ウェールズ]は轟音と共に、真っ二つに裂け青い海に没していった。
「状況終了」
向井は静かに宣言すると、モニターに向かって挙手の敬礼をした。
碧血の海 第8章をお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。
次回の投稿は11月9日を予定しています。




