時間跳躍 序章1 暇人たちの思惑
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。
お久しぶりの方は、お久しぶりです。初めての方は初めまして。
第2次世界大戦ものにチャレンジしてみようと思います。多少至らない所やちょっと史実から外れている部分もあると思いますが、頑張って書いていこうと思いますので、よろしくお願いします。
文章の書き方を前作とは変えてみました。
管理世界。それは無限にある世界を管理し、歴史を記録する世界。そこは見る人によって、呼称が異なる。
ある者は[神の世界]と呼び、またある者は[傍観の世界]と呼ぶ。
「つまらんな・・・」
デスクに座っている20代後半の男がつまらなそうにつぶやいた。
薄い褐色の肌に灰色の目をした青年はデスクに足を乗せ、口笛を吹いていた。
「どの世界もする事は同じだよな・・・すぐに戦争始め、一時の平和が流れる。そして、また、戦争が始まる。他の道はないのかね・・・」
男はデスクの上で輝いている立体映像に視線を向けた。
「あ~あ。この世界、また世界大戦を始めたよ・・・前の大戦で、どれだけの犠牲者を出したか、忘れたのかなぁ・・・懲りないなぁ~・・・こっちの世界は、世界大戦勃発寸前じゃないか・・・」
男は深くため息をつき、デスクに乗せた足を組み替えた。
「おい、また、サボっていると上司に叱られるぞ」
背後からの声に男はそのままの姿勢で、声のした方に顔を向けた。
「知っている。だが、こんな退屈な仕事は他にはないぞ。やる気もなくなるさ」
男は同僚に言った。
「そのセリフなら、100回ぐらい聞いた。他に言葉はないのか?」
同僚が男の傍らに来て、彼が担当している世界の映像を映し出している立体映像に目を向けた。
「なんだ、なんだ、この世界、もう世界大戦を始めたのか、俺の予想ではもっと後だと思っていたのだがな・・・」
「世界大戦なんてこの50年の勤務で1000回ぐらい見た。最初は興味を持っていたが、今になっては、どうでもいいよ」
「確かにな。お前の言い分にも一理ある。しかし、俺たちの仕事は管理と記録だ。それ以外は何もできない」
同僚の言葉に男は聞き飽きたように首を縦に振った。
「おーい」
同僚と話していると、別の同僚が声をかけてきた。
男と同僚は声がした方に振り向く。
「暇人たち、上司から新しい仕事の話があるらしい。執務室に至急来るように、だと」
彼の言葉に男と同僚は顔を見合わせた。
「なんだろう?」
「なんだろうな・・・」
男は立ち上がり、頭を掻きながら、上司がいる執務室に向かった。
2人の同僚は慌てて、男の後を追う。
上司がいる執務室の前に立った男たちは服装を正し、ドアをノックする。
「失礼します」
執務室に入る。
「おお来たか」
上司は椅子から立ち上がり、3人の元へ歩み寄り、
「いつも退屈な仕事をこなしてくれて、苦労をかける」
上司は3人の部下と握手をしながら、激励する。
「ありがとうございます。それで新しい仕事というのは?」
男が本題に入るが、上司は笑みを浮かべた。
「仕事の話の前に、酒は飲まないか?」
「いただきます」
男が嬉しそうに言った。
上司は棚から高級なウイスキーのボトルとグラスを4つ取り出し、氷を入れた。
グラスにウイスキーを注ぎ、3人の部下に渡した。
「じゃあ、乾杯」
上司の言葉に3人は何が何なのかわからず、首を傾げながら、乾杯した。
「それでは本題に入るとしよう」
ウイスキーを1口飲んだ後、上司が切り出した。
「君たちにやってもらう事はこれまでに例がないことだ」
「「「?」」」
上司の言葉に3人は顔を見合わせた。
「君たちにはある世界の歴史を改変してもらう」
「なんですと!」
男は驚いた。当然だ、それは自分たちの仕事の範疇を超えている。
同僚たちも驚愕した。
「上からの指示が出ている。歴史を変え、それによって、その世界がどうなるか、記録して欲しい。どうだ、やるか?」
上司の言葉に3人は顔を見合わせた。
だが、すぐに男は回答した。
「自分はやります」
「そうか、やってくれるか」
上司は男の手を握った。
「はい。これほどやりがいのある仕事、他の連中には任せられません」
男の言葉に同僚たちも仕事を引き受ける事を申し出た。
「そうか。君たちがやってくれるのか。君たちに相談してよかった」
上司は3人の部下と固く握手をした。
「ところで、どの世界の歴史を改変すると?」
「ああ、資料はこちらにまとめてある。後で目を通しておいてくれ」
上司は、資料とは別にデスクの上の端末を操作して、立体映像を出した。
「・・・この世界は・・・80年ほど前に、世界大戦を終結させて以来、大きな戦争が起こっていない世界ですね。珍しく、平和が長続きしている世界です」
同僚が映像を見ながら、感想を述べる。
「その、1歩手前には何度もなっているがね・・・」
「大国の2つがトンデモ兵器を、それぞれ保有しているからね。それで、周りの国々を脅しまくってるからさ。普通、世界を3回と7回滅ぼす兵器なんて持つ?その上、手下の国にバンバン武器兵器を売りまくって、代理戦争させて、いい子ぶって仲裁に入る・・・普通、世界を滅ぼすほどの大戦を起こした世界は、多少以前よりはマシになるものだ。しかし、この世界はドンドン悪くなる一方だ、私の個人的意見では、いっそ丸ごと消去した方がスッキリするんじゃないか?」
もう1人の同僚が、過激な事を言う。
「おいおい、我々にそんな権限はないぞ。今回の件も、ルール違反スレスレなんだからな。まあ気持ちはわかるが・・・確か、私の若い時も似たような兵器を開発しようとして、丸ごと吹っ飛んだ世界があったな・・・我々の職務はあくまでも観察と記録だが、正直、私も君と同じ事を思った事もあった」
上司の口調は窘めようとしているのか、けしかけようとしているのか判別できない。
「・・・もし・・・もしも、この大戦の敗戦国が敗れなければ・・・どうなる?」
「それは、それで形を変えて、同じ事だろう?」
「そうだろうな、資料を見る限り、この世界の戦勝国も敗戦国もどちらも酷い国家だ」
「いや、この敗戦国の1つの本質をまず根本から変える」
「どうやって?」
「この国の未来を知る軍を、大戦前のこの国に派遣するのさ」
彼は、悪戯を思いついた子供のような表情で、語った。
時間跳躍篇 序章1をお読みいただき、ありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。
次回もよろしくお願いします。