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ある雨の日に  作者: tomo
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第8章~蓮の過去~

あんなに前向きな蓮にも秘密はあるそしてそれは悲しい現実でも。

そして蓮は何処かが私と似ている気がする。



蓮の秘密とは。

それは悲しい過去のことだった。



蓮は小さい頃に自分の兄、両親共を亡くしている。

なぜ自分だけが生きているんだろう?

蓮は子供ながらそう思ったらしい。



ここからは蓮目線で話そう。


兄に僕は「蓮、お前は正義感せいぎかんが強すぎる」と笑顔でよく言われた。



そう兄に言われるのが嫌いじゃなかった。だって兄の方が僕よりも正義感が強くてなによりもそんな兄が大好きだったから。



僕と兄、両親で旅行に行った帰りの事だった。

車に家族4人で楽しい旅行になるはずだったんだ。けどその後僕らに悲劇が起きてしまった。



前のトラックがいきなり急ブレーキを掛けた。

鋭い音と共に助手席に座っていた母親の大きな叫び声が聞こえた「お願い!止まって!!」と言っていた気がする。



父が顔をしかめて、急ブレーキを力一杯足で踏む。

でも、車は止まらない。

クラクションの音が響く。

色々な物が壊れるような大きな音が鳴っていた。



それからは余り覚えてないが確か母親と父親の声が聞こえなかった。

それに車が車でないような形でエアーバックが周りにあって僕らは震えていた。



兄と僕はなんにも出来なかった、と言うよりすることが出来なかった。

怯えている僕に気付いた兄が僕に何度も何度も「…蓮大丈夫だ。大丈夫だからお兄ちゃんがそばに居るから大丈夫だよ。」と僕を励ましていた。



兄は震えているのに、優しい声でずっと最後まで僕が落ち着くように大丈夫と言っていた。

その時、車の窓ガラスが大きな音を立てて僕らの前に落ちてきた。



「蓮、危ない!」


兄がそう叫んで僕の前で手を広げてに立った。

その後、兄は僕をかばって、窓ガラスと僕の間で盾となって倒れた。



「兄ちゃん?ねぇ、兄ちゃん!目を開けてよ!冗談だよね?お兄ちゃん嘘だって言ってよ!ねぇ!お兄ちゃん!」


兄からの返事は帰って来ない目も覚まさない。顔色も元々白い肌よりも白というよりも真っ青になっていった。



「誰か!お願い、誰か助けて!」


その叫び声は誰にも届かない。

兄の手は氷のように冷たくて体は岩のように重たい。



顔はこの世の者とは思えないくらいに色白でまるで深い深い眠りについたようだった。

でも、僕をあやす時のように微笑んで居るようにも見えた。



それでも僕は叫んでいた。

こんなの信じたくない。

この変わらない現状を怖くて怖くて身体中が震えて、体の傷みより心の方の傷みが強かった。



「ねぇ、お願い。僕の事を一人にしないでよ!!」


その叫ぶ声は誰にも、何処にも届かない。頭の中には鮮明に聞こえる車が壊れる音が、母親の叫び声が、自分の叫び声が残った。



そして身体中の傷みが残っていた。

その後のことは思い出せない。

その後、目を覚ましたらそこは病院だった。



「ここは…何処?頭が…凄い痛い」


僕はボーッとした頭でそう呟く。

頭が堅いもので殴られたように痛い。



(あの後、どうなったの?…うっ頭が破裂するくらい痛い。)



「あら、やっと起きたのね。良かったわ。雨雲くんこの五日間の間、目を覚まさずに、ずっと眠ってしまってたのよ」


看護師は優しい声で言った。



「お母さん、お父さん、お兄ちゃんは?みんなは何処に居るの?みんな助かったの?」


僕は看護師にゆっくり聞いた。



看護師は悲しそうな顔をして「落ち着いて聞いてね。雨雲くんは重症ながらも先生の手術で一命をとりとめたのよ。でもね、雨雲くんを守ったお兄さんと両親は先生の手術でも助からなかったのよ…ごめんなさいね。」


看護師は言って黙ってしまった。

看護師に心配を駆けられない。



そう、僕は前向きな性格なんだからそう思いながら「…そうなんだ、ありがとうでも僕は大丈夫ですから。」と微笑んだ。


(お母さん、お父さんにお兄ちゃんはもうこの世には居ないんだ。お兄ちゃんが死んだのは僕のせいなんだ。…本当にごめんなさいお兄ちゃん)


看護師さんが病室を出た後に僕は独り布団を被って静かに泣いていた。

涙の一滴を噛み締めるように永い時間。



そんな日々が続いて居ると泣いている僕に「どうしたの?蓮君また泣いてるの?」とカーテンの裏で女の人が声を掛けてくれた。



いつも、青いちょうの髪飾りを着けてお見舞いに来る女の子の母親。



「大丈夫…です」


僕は涙を堪えながらその言葉に答えようと震える唇を必死に動かす。

それはその女の人と僕しか知らない話であの女の子には言っていない。



そして、その3週間後に頭の傷が癒えて僕はこの病院を退院してその後に僕は強い決意した。


(僕は何からも逃げたりしない!明るいままの自分を信じ続ける!)


そう自分に言い聞かせた。



それが生きていくための術なのだからそう思うと大きな十字架のようなものを背負った気がした。

兄は僕をかばわなければ死ななかったのにと後悔がある。



それはきっとそれは一生降ろせない物で僕に下された試練なのかもしれない。

僕は色んな親戚に引き取られては別れを告げてまた新しい親戚の人達に引き取られるの繰り返し。



冷たい人、僕を良くは思ってない人、色んな人々と関わって生きてきた。



そして僕が14才になるある日に両親の親戚の叔父さんと叔母さんに引き取られた。二人は僕を本当の子供のよくに優しく接してくれた。

でも、時々二人は僕に何処か寂しそうな顔をする。



そんな顔で僕を見るのを止めて欲しい。

そんな時は決まって無理矢理笑顔で振る舞って、バラの棘みたいな物が鋭く刺さったように胸が激しく傷んだ。



そしてその傷みは僕の心に何もかもをぶち壊してしまいたくなるような強い感情を何度も何度も打ち込む。

そしてそんな事が続いた、あの雨の日に僕は彼女に出逢った。



彼女は雨の中、傘も差さずに全てに絶望したように光の見えない瞳をしていた。

僕は何故か彼女と自分を重ねてしまった。



彼女と自分は似ている。

なんでそう思ったのかは分からない。

けど似ている気がする、そうどこかで思っていた。



彼女のそれにあの瞳を見たら何故だかほっとけ無くなった。

でも、彼女は放っといて欲しいと行って走っていってしまった。



彼女に聞こえないように「…放っとける訳ないじゃん」思わずその後僕は呟いて立ち止まった。



僕には触ったら今にも壊れてしまいそうな彼女を止めることが出来なかった。

あの時、本当は彼女の手を掴んで彼女を助けたかった。



今でも後悔している。

あの時の兄を思い出した。

自分の命を犠牲にして僕を守って死んでしまったあの兄を。



彼女の話を聞いたときに浮かんだことは兄と両親を失った僕。

そして最愛の家族を失った彼女。

それが今僕の中で全て重なった。

彼女に僅かな光を捧げたいとさえ思っていたんだ。



そしてそれが全ての始まりで僕らの運命を辿るストーリーなんだ。

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