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ある雨の日に  作者: tomo
7/20

第7章~深呼吸~

学校がいつもより長く感じた。帰り道に深く深呼吸をする。

疲れを降ろすようにソッと。



後ろから声がする。

たぶん、蓮の声だろうか。

こんなに明るくてゆったりした声は蓮くらいしかいない。



「あれ?零、一人で帰るの?僕も一人っていうか、逃げてきたよ」


疲れたような顔で私を見て笑顔になった。



全然、疲れたようには見えない表情だった。

それを打ち消して「あ、はい。一人…です。蓮は何に逃げてきたんですか?」となんとなく聞いてみた。



「えっと、友達、かな?」


彼は困ったように答えた。



「は、はぁ…友達…えっ、そうなんですか?」


表情の無い顔で声は驚いたような感じで返した。

あえてそれ以上は何も触れなかった。

大体想像できるから聞かなかったのもある。



「あ、うん。…そう言えば、零ってずっと僕に敬語だよね」


彼は私に問い掛けてきた。



「えっ、あの日からずっとこれで…慣れていたので… 全く気付かなかったです。…駄目ですかね?」


私は蓮にそう言った。



「あっそうなんだ。駄目ではないけどあの頃みたいにタメ口の方いいなって思ってさ」


(僕何を言ってるんだろう?)


連は戸惑いながら言った。



「え?あっでも、蓮はずっとタメ口ですよね。どっちも癖なんのでしょうか?あの頃もそうでしたよね?」


(あれ?私、何を言ってるの?蓮はこの間、逢ったばかりなのに?)


私はこんなことを言う自分に戸惑いながら蓮に問い掛けた。



「ははは、多分、そうかもしれないね。元々こんな感じだったけなぁ~?」


(本当、僕は何を言ってるんだろう?)


蓮は苦笑いをした。



「困りましたね。癖ですからね」


私も珍しく悩んだ。

あと、蓮はコロコロ表情が変わると改めて思う。それに蓮はさっきから意味深な事を言う。



あの頃はため口だった?

それに私までさっきから何を言ってるの?


さっきからなんだか矛盾だらけだ。



二人揃って、ため息のような深呼吸をした。

結構、難しい内容なのかもしれない。



「まぁ、その事は後で考えればいいんじゃないかな?」


蓮はそう言うと少し笑った。



「…そうですね」


私は苦笑いをして言った。



「…私、家に帰ったら少し考えてみます。…その事について」


私は素直に話した。



「う、うん。そう、だね」


蓮はなぜか戸惑いながら言った。

私達はしばらく、何も話さずに歩いた。

結構、家って遠いと感じた。

沈黙があるせいかもしれない。



そして、歩きながら守りたいものについて考えた。



(自分にとって守りたいことって何だろう?そう言えば無いや)と頭の中で考えた。


取りあえず、隣で歩いてる彼に聞いてみた。




「…少し、聞いても、良いですか?」と、蓮は少し驚いたような顔をして「あ、うん良いよ」と言ってくれた。



「蓮にとって、守りたいものって何ですか?」


真面目な顔で私は蓮を見た。

私の突然の言葉に蓮は目を見開いた。



「え?そうだなぁ、何だろう?そんなことを考えたことも無かったし守るべきものって無い気がするな」


そして蓮は首を傾げながら考えていた。



「あ、そうですよね。なんか、すいません」


私は思わず謝った。



「え?あ、大丈夫だよ。でも、なんでそれ、聞いたの?」


蓮は問いかけた。



「私に守りたいものって無いなって思いまして、話を聞いたら私にも少しの希望や正解が持てるかなって思っただけなんです。特に意味は無いです」


真剣な顔で私は答えた。



「そうなんだ。なんか、その…ごめん。解決できなくて」


蓮にあっさり謝られてしまった。



「…いえ、聞いた私も悪かったですし、蓮は全然悪くないです。私こそ変なこと聞いてしまってすいませんでした」


私は控えめに言った。



「いや、良いんだよ。そっか守りたいもの、か。」と言って蓮も私も喋らなくなった。



これ以上話すと絡まった糸をほどくほど難しくなりそうだから話さなかったのかもしれない。

やっぱり、「人と話すのは苦手だ」と自覚した。

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