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ある雨の日に  作者: tomo
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第6章~学校、そして転校生~

休みが明けて、あの日直ぐに私は学校に行く事を決意した。あの時に彼と一つの約束をした。



「…今日、私が話した事を私と蓮との秘密にして下さい」と真剣な顔で言う私に蓮は「…うん、分かった。じゃあ僕も零だけに秘密を話すから、零もこの事を秘密にするって約束して」


蓮はそう私と同様に約束を持ちかけた。



「はい…分かりました。私は蓮の事を信じます。だから、蓮も私の事を信じてください。」


私は思わず言った。



「もちろん、零のこと信じるよ。約束する。」


蓮はそう言って微笑んだ。

そして笑顔で帰って行った。



いつか自分もあの頃の笑顔を取り戻せるのだろうか。蓮のように。



そして今、学校に向かっている。

うちの学校は珍しくお弁当を持っていくか食堂の食事やパンを買ったりして各自でお昼を過ごす。



私の場合、食事の物はすぐに売り切れるしそう言う競争みたいなことが苦手なのでいつもお弁当を持ってくる。



今日はどんな顔して学校に行けばいいのか分からないそう思いでカバンを握りしめた。



「…おはようございます」


私は小さめの声で言って、教室に入る。



周りの生徒は一声に私の事を見て驚いた顔で「ねぇ、あの子って本当にあの零ちゃん?別人みたいに凄い変わり様だけど…ねぇ?」とヒソヒソと話す私でも聞こえる。



それは仕方の無い事かもしれない。

だってあの頃の私とは全く違う性格になってしまったのだから。

笑顔で明るくて誰にでも人相よく接して悩みなんて一つも無いふりをしていたのだから。



今の私は大人しくて、態度が素っ気ないし、人を突き放すような性格に見えるかもしれない。



でも、一つだけ言えることは私は私であって沢山の人達に守られて生きてきたという事。

孤独に立ち向かう事を決意したということ。逃げてるだけじゃ何も変わらない。



それに前と変わらない接し方をしてくれる子もごく少数居る。

それを思いながら椅子に座る。

隣の席は空席で、でも誰が座るのかは予想は着くのであえて触れない。



そして、先生が来る先生は私の顔を見て少し心配そうな顔をしていた。



その後、先生は何も無かったかのようにこう言った「皆さん、おはようございます。今日は転校生を紹介します。さぁ、入って下さい。」


そう、あの日の蓮だった。

僅かに私を見て優しく微笑んだ。



黒板に自分の名前を書き込んだ「僕は雨雲蓮です。よろしくお願いします。」と蓮は笑顔で挨拶をした。



「蓮君、笑顔凄い綺麗。あと、蓮君ちょっとかっこよくない?」と言う女子生徒の声がヒソヒソと聞こえる。


そんなことは別にいいけど。

それに今、言うことじゃない。



男子は「なんか、アイツ凄い目立つよな」と同じように話している。



「はいはい、皆さん静かに。蓮さんは色々あってこの学校に転校して来ました。皆さん、仲良くして下さいね。」と先生は言う。




そして、先生は蓮に私の隣の席に着くように指示した。




「あ、この前はありがとう。僕、零の隣の席なんだね。改めてよろしく。なんか嬉しいな」


彼は笑顔で私に解釈した。



私も(あ、あの日のことか)と直ぐに理解してゆっくりと答えるように頷いた。



「えっ、あの二人は初対面じゃないの?知り合いなの?名前知ってるみたいだし。しかも呼び捨て?どういう関係なの?」という女子の声がまた聞こえる。



ちょっとうるさいと思うほどに聞こえた。

そんなことを知ってどうするつもりなの?とさえ思った。



(…でも、驚くのも無理はないか。転校生なのに私は蓮の事を知ってるし、蓮も私の事を知ってるんだから)とも心の中で少し思った。



取りあえず、今日のホームルームは終わった。

…変な空気を残して。



「蓮さんはこの学校の事を全く知りません。だから、零さん隣なのでこの学校を案内したり教えてあげて下さいね。」


先生はいきなり私に頼んできた。



他の生徒はもちろん納得は行かないみたいにだけどそのあとは何も言わなかった。

私は何も無かったかのように授業の準備をする。蓮はニコニコしながら私に次の授業について聞く。



「零、次の授業って何?」


蓮はため口で言う。

まるでずっと前から私の事を知っているように。



「…次の授業ですか?…えっと、国語です」


私はそんなことに動じず蓮に言われたことを答える。



「そっか、ありがとう。零」


蓮は笑顔で私にお礼を言った。

周りがざわついているのに気づかないふりをして私は感情を抑える。



感情なんて無駄なだけだと最近、思うようになって人の事を気にしないように演じる。



それが私の新しい学校の始まりだった。

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