第3章~孤独の始まり~
私は大切な人達を無くした。
母も父もそして最後には祖母も…私はこれからどうしたらいいの?
神様、少しだけ私に時間を下さい。
皆、皆死んでしまった。
「生きていたら絶対何処かで逢える」
その言葉が頭に浮かぶ。
でも、死んでしまった人にはもう逢えない。
その人たちを強く想っていれば心の中にずっと生き続けるって言うけど本当なの?
それさえも考えられない。
祖母が死んでから約一週間はたったかな?
取りあえず家に戻ることにした祖母が居たあの家へ。
雨が強い日だった。
時間は朝の9:00。
昨日まで「楽になるまで病院に泊まっていきなさい。良いね?」
医者がそう言ってくれたので病院に泊まった。
気を訊かせてくれたらしい。
そして、祖母のお葬式が行われた。
祖母の遺体の入った棺の前で項垂れて倒れるように座った。
そして、死んだ祖母の顔を見つめた。
その顔はいつものように笑顔で目を覚ましてくれそうなのにもう二度とその目は開くことはない。
今、ここにあるのは祖母の遺体だけでもう祖母の魂はもちろんそこにはない。
そして、私はまた祖母の顔を見つめるその顔は微笑んでいて穏やかな者だった。
「あぁ、可哀想に…」
呟く大勢の人達の声がよく聞こえる。
もはや、流す涙も枯れ果ててしまったみたい。
(お婆ちゃんが死んだのに全然涙が流れない。…どうして)
もうひとりの私が言うのが聞こえた。
「…分からないよ」
思わず呟いて白い空間に立つもう一人の私をピシッというガラスが割れる音で打ち消した。
そんな私を周りの大勢の大人達は哀れむような目で見た。
もはやそんなことさえもどうでもいいと思っていた。
その後お葬式が終わって、祖母の遺体が入った棺が黒い車に運ばれた。
私はそれに付き添って最後まで祖母を見送った。
(…さようなら…お婆ちゃん)
心の中で祖母に伝えた。
お葬式の後、病院に今までのお礼を言って病院を後にした。
祖母のことがショックの余り傘を持ってくるのを忘れた。
もはやそんなこともどうでも良いかと自問自答すらしていた。
病院から今までの記憶が曖昧でどうしたいのかすら分からない。
その時に一人の少年と出会った。
ほっといて欲しかったというのは本音ででも彼は私の事をほっておけないと思ったらしい。
だけど、その彼の優しさを思わず無視してしまった。
家に着いたら、我に返ったように今の現状が頭に溢れだした。
頭の中がパニックはなる。
それをなんとか抑えようと水道水を飲んで落ち着こうとする。
それでも頭が混乱するから今日は外に出ない方がいいと勘で分かった。
料理は出来るけど今日はなんかしたくない。取りあえず出前を取ることにした。
ご飯を食べ終わった後、静まり返った部屋はとても哀しく感じた。
やっぱり一人は寂しいなと実感した。
そんなことを思っている場合じゃないのにと思いつつ、考えるのを止めた。
そして直ぐにそれを打ち消した。
「もう…どうしたら良いか分からないよ」
そう言いながら周りを見渡す。
(そう言えばお婆ちゃんは最後に手紙を書いたって言ってたっけ…)
周りを見渡す、すると祖母の棚が目に留まった。
なんとなくそれを開けてみた。
そしたら祖母が言っていた手紙とその下には祖母の通帳が入っていた。
手紙を手に取って開いた。
そこには祖母のしっかりした字がでこんな風に書いてあった。
「黙って居てごめんなさい。
実は私はもう永くは無いみたいです。
もう少し零ちゃんの側に居てあげたかった。
それが出来ないことがとても哀しいです。
私は零ちゃんに何が出来ましたか?
でも、私は零ちゃんの笑顔が見れただけで嬉しかった。
きっと、お母さんもそう言っていたことでしょう。
私が零ちゃんに出来ることがあるのならと、考えて書いていました。
そして思い付いたのは料理のレシピでした。
零ちゃんが生まれてきてくれてありがとう。困ったらそのレシピを見て作ってみてください。
そのレシピは手紙と通帳が入っていた、棚の右隣に有ります。
その通帳は零ちゃんのために貯めといた、お金です。
大事に使って下さい、高校に入るくらいのお金はきっと有るでしょう。
私の願いがもし叶うなら、それは零ちゃんの幸せを願います。」
優しさが、温もりが残った字で書いてあった。
(だけど、今の私に孤独と立ち向かう勇気は無いです。…ごめんなさい、お婆ちゃん。どうしたら良いかもう…分からないよ)
そして、思わず声に出していた。
「お婆ちゃん…死んだら意味ないじゃん…私の事をずっと見ていてくれるんじゃ無かったの?あれは嘘だったの?また…私を一人にするんだね。」
枯れたはずの涙が頬に流れていた。
そしてずっと独り言のように呟いていた。
何度も拭いてもその涙は止まらなかった。
(もう大人になる途中なのに…色んなものが溢れてきて…涙が止まらないどうして?)
私は長い時間そこで泣いていた気がする。
“生きているうちは絶対何処かで逢えるよ”
その言葉だけが頭に浮かんでいた。