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ある雨の日に  作者: tomo
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第1章~出会い~


彼は言っていた。

「一番、大切な事って、何だと思う?」



最初は、私も分からなかった。

分かろうともしなかったといった方が確かもしれない。



彼にその言葉を言われるまでは。



私は名前は白桜零しろざくられい



この永い時の中で幾つもの哀しみ、傷み、感情を知ってきて最後には孤独という暗く沈んだ闇のようなものにたどり着いた。



例えば、今の私の見えている世界が本当では無くて他の人達の瞳に映る世界が本当だとしたら私の世界の全ては……嘘?

それとも……本当なの?

それとも……他の人達の世界が嘘なの?



真相は誰も教えてはくれない。

神様さえも、今は居ない母や祖母でさえも誰も知らないのかもしれない。



私は自分が嫌いだった。

どんな人よりもどんな物よりもどんな音よりも一番嫌いだった。

そして、その理由は今だ明確に分かっていない。



そのうち自分のことを好きになれる?

今の私に生きている意味があるのかさえ、分からなくなっていたと言うよりも考える気力さえも失っていた。



ある雨の日に朝9:00。

哀しみに満ち溢れた私は傘も差さないで、一人で歩いていた。



黒くて長い髪の毛と葬式の後の黒い服が雨でまま濡れて重たくなっていた。



雨でぐしゃぐしゃになった黒くてヒールの高い靴を履いているのが意味がない気がして思いっきり投げ捨てたでもその足を止めることは絶対出来ないと分かってるからただひたすら歩いていた。


歩いていればすぐそこに道があるはずだから。



祖母と一緒に住んでいた家が曲がり角を越えたすぐそこにあると知っていたから。



勿論、祖母はもうそこには居ない。



足下を見ながら歩いていたら一人の少年らしき足が見えた。



「傘、差さないと風邪、引くよ」


優しそうな彼は言って、私に傘を差し出した。



差し出されたその傘を振り払って「ほっといてよ。」 私は思わず、そう叫んだ。

あくまで感情の無い声で。



「僕にはそんなこと絶対に出来ない。それに君の顔は助けを呼んでる。彼女と約束したんだ。」


分かってるような顔をした 彼はそう言って、私の上に傘を差した。

彼のその声は呟いているようにも見えた。



自分がこんなに濡れるのに。

そう思いながら、彼を睨んだ。

今の私には彼の優しささえもお人好しに見えた。



彼は私に何故そんなことを出来るのかと、疑問にさえ思った。

私にはもう守りたい人。

守ってくれる人はもういない。



一番私の事を受け止めてくれた優しい人はもういなくなってしまった。

だから、もうほっといてほしい。

私に構わないで誰かをもう傷付けたくないの。



そう思いながら私は「私に関わらないで、お願いもうほっといて」 ともう一度彼に告げて、足を速めた。



「辛そうな君をほっておけないよ」


そう言った、真剣な顔の彼の声は僅かに感情的だった。

そんな彼に私は絶えきれずに、思いっきり走った。



「ねぇ、待って!」


彼がそう叫ぶ声が聞こえた。

でも私は後ろを振り返らずに走り続けた。



だからその時の彼の顔を知らない。

彼は私の哀しみを知らない。



闇を知らないくせになんで、こんなことを思ってしまう私に優しくしてくれるの?

そう思いながら僅かに私の頬には涙が流れていた。



それを考えると心の傷はますます傷んで苦しくて哀しくて涙が止まらなくてただ走るしかなかった。

涙は流れたらなかなか止まらないそんなことは分かってるのにその日は泣いていた。



その頃、彼は一人彼女の後ろ姿をただ見ていたのだった。

(あの子に始めて逢った感じがしない。だからって訳じゃないけどなおさらほっとけない。それに気のせいかもしれないけど彼女は零に似てる。)



少年は彼女について考えながらただ立ち尽くしていた。

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