第3話 神々の宴
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ラースと食堂に入ると、アリュアスとヒゲの爺さんがジョッキ片手に出来上がっていた。ラースがいうにはヒゲの爺さんは、鉱物と鍛冶の神『ビックス』というらしい。鍛冶ということで炎の神でもあるアリュアスと仲がよいとのこと。よくあーやって酒を飲んでいるそうだ。この食堂、酒の種類はかなりあるらしく、異世界の酒も平然と取り扱っているそうだ。まぁ、神様の食堂だから当たり前か。ラースは赤ワインを、俺はハイボールをジョッキで頼むとターブルに座る。突き出しという文化はないみたいで、摘みになりそうな料理を適当に頼む。
「今日もお疲れ様でした、スグル。兄さんもそのうちやってくると言ってましたから初めてしまいましょう」
「ああ、おつかれさん。ラディスも来るのか了解した。それじゃ、乾杯」
「「「「乾杯!!!」」」」
いきなり隣のテーブルにいたアリュアスとビックスが乱入してくる。二柱はジョッキにビールだ。まぁ、酒は楽しく飲むに限るからいいんだけど。
「スグル、明日は俺の武術の授業だぜ、ちゃんとついてこいよ」
「午後はワシの鍛冶の授業じゃな、がっはっはっ!!なにチミチミ飲んでるんじゃ、男ならガバーっといけガバーっと!!ねーちゃん、ビールおかわりっ!!」
「さすがビックスだぜ、俺も負けてられねーな。俺もビールおかわりだっ!!ほれ、スグルも早く飲んでおかわりしろよ」
こいつらかなりウザイな。酒は自分のペースで飲みたいんだが…。水のようにビールをガバガバと飲んでいる。これで、明日二日酔いで授業できませんとか行ったら大笑いしてやるとこだが、相手は神だ。きっと神は酒に強い。俺は勝手にそう思ってる。
「すみませんね、彼らはお酒が大好きなんで…自分のペースで飲めばいいと思いますよ」
「自分のペースで飲むのが一番だよな。明日に残っても困るし。あ、天使のおねーさん、ハイボールおかわり。できればレモンをちょっと大目に絞ってもらえるとありがたい」
「あなたもそれなりにいいペースですね」
「ん?そうかなぁ?昔からこんな感じだけど」
酒は結構好きだ。っといっても飲み会とかじゃない限りは飲まなかったけど。家での晩酌ってのはあんまりやらなかった。オフ会とかみたいな感じで呑みに行くのが好きだった。大人数と飲んで、騒ぐのが好きなだけかもしれない。
「おーやってるねー!! 今日はゲスト連れてきたよっ!!最近マブダチになったアマテラスちゃんでぇーすっ!!」
「どもー、アマテラスですっ!!よろしくねー!!」
ティリアが巫女服みたいな服を着た黒髪長髪の美少女を連れて食堂にやってくる。っていうかアマテラスって言ったな、おい。それ日本の神じゃねーの?主神ってやつじゃねーの?俺をこの世界に送ったやつじゃねーの?
俺がそんなこと思ッてるとも知らずに『ロリ神キタコレ』とか言って騒いでる。っていうか気づくと神増えてるよ。いつの間に!?
「異世界の神が来るとは珍しいなぁ、こっちこいこっちこい」
「あ、ビックス爺さんずりぃ」
「言ったもん勝ちじゃよ、それにこっちの席にはスグルもおるんじゃ」
なんか勝手に巻き込まれてるぞ、俺。しかもティリアが面白そうな顔をしながら、アマテラスを連れてこっちに来る。
「飲んでるねースグル。ラース、お邪魔するわよ」
「あ、すみません、よろしくお願いします」
「ああ、構いませんよ。兄さんもくるんで椅子を一つ開けておいてくれるとありがたいですが」
「おっけー。じゃ、あなたの隣を開けておくわ。あ、天使ちゃん、とりあえず生2つ」
お約束のとりあえず生なのか…ここ食堂だよな?居酒屋じゃないよな?だんだん自信がなくなってきたぞ?
「それじゃ、アマテラスちゃん降臨にかんぱーーーーいっ!!」
飲む前からハイテンションで乾杯後に一気に生を飲み干すティリア。お前のイメージがだんだんおっさんになってくぞ。対するアマテラスは上品にジョッキをあおっている。
「あなたが、ティリアに頼まれてこっちに連れてこられた日本人?」
「ああそうだよ。ま、なんだかんだ楽しくやっているから気にしてないけど」
「神界の都合で悪いわね。まだティリアはこっちに断りをいれてくるからよかったんだけど、いきなり勝手に召喚したり、転生させたりするヤツが多くて実は困ってたりするのよね。あ、連れてく自体はあんまり困らないんだけど、事前に言ってくれればアフターケアが楽なのよ。あなたには申し訳ないけど神代優っていう人間は地球に――日本にいなかったことにさせてもらったの。そうすれば向こうには悲しむ人はいないから。本当にあなたには悪いけど」
「こっちは気にしてないから、そっちも気にしなくていいさ。そもそもただの人間なのに神様たちとため口きける現状が面白いしな…っていうかタメ口聞いていいんだよな?」
「大丈夫よ。あなたがココで修行してるのって代行者になるためでしょ?代行者ってのはそもそもこの神界からk「ストップよ、アマテラスちゃん!!」ってなによティリア?」
いきなり俺たちの会話に割り込んでくるティリア。なんだ、ヤキモチか?俺が美少女とふたりきりで話てるもんだから。俺も罪づくりな男になったもんだぜ。
「あ、いや、ヤキモチとかじゃないから。まぁいいから、飲め飲め。神界のお酒は美味しいでしょ?」
「っていうか微妙に日本にあったのと同じ酒があったりするんだが」
「だって、地球はセイルーンに比べていろんなお酒の種類があるんだもん。入荷するわよ。ねぇ、ビックス、アムリタ」
「酒と宴の神としては当然だな。あとで製法叩き込むから地上の方への伝承よろしくな、スグル」
「そうじゃぞ、しっかり頼むぞ。そうすれば地上の方から捧げ物として奉納されるって寸法じゃ」
酒と宴の神アムリタっていうなんか宴会部長っぽいチャラい神が酒瓶片手に俺の肩をバンバンと叩く。ビックスのやつもなんか勝手に期待してる。代行者ってのはそーいうこともやらんといけないのか、めんどくさい。
「なんかみんな出来上がってますね……」
「あ、兄さん、お疲れ様です。ここに席ありますよ」
「ありがとう、ラース。スグルは鍛錬お疲れ様。それからそちらの方は?」
「日本の神のアマテラスでーす。ティリアちゃんに誘われて遊びに来ました。よろしくね」
「ってことで、ラディスは駆けつけ三杯ってやつよ!!」
それは日本のわるい風習だぞ、ティリア。しかし、ラディスの前にはビールがジョッキで3つ置かれる。他の神々もノリ気だ。ラディスは「え?マジ?」って顔をしながら、ビールを3杯連続で飲み干す。以外にノリがいい。
「ふう…さすがに3杯連続は辛いですよ。このおつまみいただきますね」
ラディスはちょっと酔いが回っているっぽく、つまみに手を出す。揚げ物やサラダ、枝豆などつまみも気づくとかなりいろいろな物がある。俺とアマテラスがいるせいか、厨房も気を使って日本の居酒屋風のつまみを用意してくれているようだ。
「アマテラスに言うのもなんだけど、神様ってのは酒好きだな」
「そーよ。特に私達日本の神なんて酒大好きでしょ?何かにつけて宴会よ?日本人だってそうじゃない?」
「ごもっともで」
「スグル、飲んでるか?そーいえばビールじゃない物飲んでるけど、何を飲んでるんじゃ?」
「ああ、ハイボールって言って、ウィスキーを炭酸水で割った物だよ、ビックス。俺は好みでレモンを絞って入れてる」
「酒を炭酸水で割る…じゃと…!?そんな飲み方もあるのか!?」
「あれ?こっちにはカクテルとかの文化はないのか」
「カクテルとはなんじゃ?」
「簡単にいうといくつかの酒やジュースなんかを組み合わせて新しい酒を作るみたいな感じか?一番簡単なので、水割りって言って酒を水で割る。これは決して水で薄めるって意味じゃない。酒を適量の水で割ることで、飲みやすくしたり味が変わったりするんだ。」
「そういうものもあるのか…よし、今度調べるのじゃ、ラディス!!」
他力本願かよ!?しかもラディスもなんか乗り気だ。つーか普通に頼んだら出てきたから厨房の方の神様は知ってんじゃないの?
そんなこんなでこの宴は夜遅くまで続いた。俺は酔いつぶれ、水分の補給ができず、案の定、翌日二日酔いに悩まされるのだった。ちなみに神々はみんな元気に翌日仕事をしていたのだった。
お読みいただきありがとうございます。
この作品はわりと勢いとノリだけで書いてます。
変身ヒーローでないじゃないかって話があるかもしれませんが、5話くらいでやっと登場するかもしれません。