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第7話 戦争するの? バカなの?

『こちらスカイアイ。不明機は依然進路を変更せずに前進してきている。尖閣干渉帯を突破する恐れがある。警戒せよ』

 俺は今、尖閣事変によって国連に摂取された尖閣諸島海底採掘場の東を飛行していた。

 おかしいな~黒江少佐は攻撃機はスクランブルででないから気楽だよと言ってたはずだけどおかしいな~。クソが。

「最近のシナは暇なのか……?」

『国民の不満を外に向けようとしてるだけでござる。国民の高齢化や経済の低迷、公害問題エトセトラ。それらを外に向けようとしてるでござる』

「ゲルプ2からゲルプ1へ、無理にござるをつけなくても……」

『うっさいなー! 人の個性にケチつけるとかありえねーし!!』

「ござるどこ行った!?」

『ゲルプ隊。黙れ』

「はい」『はい』

 俺はレーダーチャートのサイズを変更して広域が見れるように変更する。不明機は2機で飛行している。

 もうすぐ国連が定めた尖閣干渉帯に入ろうとしていた。また、南のほうには米海軍の原子力航空母艦『エンタープライズ』から出てきたと思われる戦闘機2機が映し出されている。

『スカイアイよりゲルプ隊。不明機が干渉帯をに突入した。邀撃司令部に確認を取る。兵装をチェックして待て』

 俺は兵装の安全装置を解除、カメラの旋回速度を確認、マウス感度調整もチェックする。

『スカイアイより各機へ。司令部より邀撃命令がきた。各機は不明機に接触、追い返せ』

「え? でも干渉帯に入るのは……」

『国連加盟国は干渉帯に接近する不明機を邀撃する権利がる。情弱乙』

 なんか……なんか悔しい。ゲルプ隊も干渉帯に突入する。

 相手は『J-20』のようだ。しかし、なんか形が違うような気がする。スカイアイが中国語で警告を発するが、突然、『J-20』が旋回、俺をロックオンしてきた。

『ゲルプ2! ロックオンされている! ブレイク! ブレイク!!』

「ぬわあああああ!!」

 俺は機体をひねる。エンジン出力をさげる。弱まった推力と空気抵抗で俺の機体は手を離れた紙のよう落ちる。カメラを向けたが、ミサイルは、見えた。だが俺の木の葉落とし(さっきのマニューバをそう名づけた)でミサイルはあらぬ方向に飛んでいる。

 基地に恋人がいるとか、花束も買ってあったりしたらきっと落ちていた。

「野郎ぶっ殺してやる!!」

『滋野氏死亡フラグやめ!』

『こちらアメリカ海軍、第117戦闘飛行隊。尖閣諸島上の航空機につぐ。全機空域を離脱せよ。離脱しない場合は同盟国に関わらず撃墜する。繰り返す全機空域を離脱せよ――』



 その後は待機を基地指令から命じられた。パイロットは今後、24時間の外出が禁じられた。

 それだけではない。基地内からインターネットに接続することも禁じられた。それに第5航空師団のビルの前には小銃を装備した陸自の隊員が歩哨をしている。

 なにかおかしい。まさか戦争でも始まるのだろうか?

 一体何が始まるんです?

 まぁ、無理に外に出る気はない。怖いかくそったれ、なんたって俺は元引きこもりだという感じだ。

 テレビをつければニュースで空自機が攻撃されたことを繰り返して伝え、国会では有事法が可決されと面白くない番組しかやってないので録画した『魔砲少女マジカルラインハルト――敗北主義者は強制収容所』を見ることにした。

 今回は神回だったとネットで評判が高い回だ。動画投稿サイトを我慢して録画したかいがありそうだ。それではさいせ――。

『達する。全職員へ。隊ごとに地下体育館に集合せよ。繰り返す――』

 マジカルルガーで劣等民族を皆殺しぃ!(変身呪文)



「先刻、中国にて軍事クーデターが発生した。これは政情不安や民衆のデモを背景に一部の陸軍部隊が反旗を翻したものと思われる」

 体育館に設置された映画館のようなスクリーンに中国全土の地図が映し出される。南京にクーデター発生と書かれている。

「民衆もこのクーデターを望んでいる節があるが、一層の治安悪化が予想される。そこで政府は邦人保護とクーデター軍を支援するために有事出動を下令した。我々に下された命令は中国海軍および空軍の無力化である」

 スライドが切り替わり、中国海軍の最新鋭の『重慶』型航空母艦が映し出された。

「我々はこの『重慶』型、『遼寧』型航空母艦ならびに原子力潜水艦『晋』級を撃沈し、黄海上の制海権を掌握する必要がある」

 再びスライドが変わる。今度は山東省を中心とした地図だ。東シナ海にJSDN――海上自衛軍とCV――空母を現す記号から青島に向かう矢印が書かれていた。

「本作戦では日米合同の空母打撃軍より中国沿岸の軍港を空襲して中国海軍の戦力をそぐことになった。まずは日米の潜水艦より巡航ミサイルが発射され、レーダーサイトや空軍基地、防空指揮所を爆撃、そして3つの空母打撃軍が中国海軍の根拠地をそれぞれ空襲する。我々第5航空師団は海上自衛軍の空母『しなの』から発艦し、山東省青島軍港を空襲して軍港に停泊する艦艇を全て撃沈する。それでは諸君らの健闘を祈る!」

 トンでもないことになってきた……。



『こちら海上自衛軍空母『しなの』管制室。ゲルプ隊へ、聞こえますか?』

『ゲルプ1、感度良好』

「ゲルプ2も感度良好」

 ゲームのような簡単なブリーフィングだった。だが何とかなるだろう。俺たちゲルプ隊の『飛燕』には着艦装置が存在しないので『飛燕』を艦上機化した『彗星』に乗ることになった。

 機種が変わったといっても『飛燕』と『彗星』の違いは航空母艦上で整備しやすいように主翼が折りたためたり、ペイロードが下がったくらいだ。

 今回の武装は水上艦が目標なのでハープーン対艦ミサイルとJADMが取り付けられた230キロ爆弾、そしてサイドワインダーである。

 制空権については先に発艦した『烈風』(『隼』の艦載機タイプ)が行う。

『ゲルプ隊へ、発艦を許可します』

 空母『しなの』はカタパルトが装備されていない。その代わりにスキージャンプ甲板が装備されている。

 当初は原子力にしてカタパルトを装備する予定が、予算と周辺国への配慮で通常動力になり、さらなる予算削減でカタパルトが装備できなくなったとか雑誌で読んだ気がする。

 そうこうしているうちに俺は『しなの』から飛び立った。あたりはまだ暗い。日の出までもう少しかかりそうだ。

 空にはゲルプ隊のほかに『彗星』を装備する隊が3つ、『烈風』を装備する部隊は5部隊が飛行しいる30機ほどいるのだろうか? それから攻撃隊をサポートする無人早期警戒機『彩雲』が1機つく。

 早期警戒機データリンクシステムにより日本各地の基地に戦域データを供給する。そのため基地にいながら各隊ごとにオペレーターが指揮をすることができる。と聞いたことがある。ちなみに俺たちの場合は源田少尉だ。

 それにしてもだ、いくらステルス性の高い無人機とは言えここまでの大部隊が気づかれずに接近できるだろうか?

『きっと今頃、潜水艦が巡航ミサイルでレーダーサイトを破壊してるころだろJK』

 源田少尉は相変わらずネットスラングが多い。

 遠くで朝日が昇りだした。それよりわずかに近い場所で黒煙が見えた。

『トラトラトラ! でござるな』

 加藤が言ったとおり、我、奇襲ニ成功セリ、という感じだ。迎撃機は確認できない。

『全機攻撃用意!』

 兵装のロックをはずす。衛星とリンクした『彩雲』より新しいデータが送信されてきた。敵の艦船の位置が映し出された。ついでにゲルプ隊の攻撃目標が示されている。目標は敵の潜水艦だ。うん? 潜水艦?

「敵の潜水艦を発見!!」

『駄目だ!』『だめ――違う! ゲルプ2! 私語は慎め!!』

 源田少尉まで乗ってくれるとは……たまげたなぁ。

『各機攻撃せよ! アタック! アタック!!』

 源田少尉の命令によりゲルプ隊は機体を加速。湾内部の敵潜水艦を目指す。

 港の各所で黒煙が吹き上がって視界が悪い。港を脱出しようとする艦も見える。だがそれらは別の隊の目標なのでスルー。しかし艦対空ミサイルを打ち上げてくる。俺の機体もロックオンされた。

 俺はチャフとフレアをまいてミサイルのシーカーを欺瞞させる。ロールをしてカメラの視界を広げる。見えた。目標の潜水艦だ。

 あの形は……『晋』級じゃないか!! レア艦だ!! なんとしても撃沈しなければ!!

『ゲルプ2へ。ソレガシが目標をロックするでござる。援護を』

「うけたまわり~!!」

 加藤がアプローチを始める。俺は旋回して高度を稼ぐ。ロックオンされた。続けてミサイルアラート。レーダーでミサイルを確認する。どうも軍港の人間がSAMでも撃っているようだ。

 俺は機体を失速からの急加速で回避をする。埠頭に近づく。カメラをズームさせれば携帯式の地対空ミサイルを運用する人影を見つけた。バルカンで掃射して蹴散らす。

『命中したでござる!!』

 上昇してカメラを向ければ炎上する艦があった。

『ハープーンを2発も受ければ湾内でも関係ないよね?』

「うーん。そうかな……?」

『ゲルプ隊へ。空母『重慶』に向かった攻撃隊より入電。攻撃隊は中国軍機と交戦しているため代わりに『重慶』を撃沈せよ。撃沈した場合は給料上乗せだ』

 やったあああ!! まぁ加藤の憎悪な悲鳴が聞こえた。夢に出そうだ。

 俺は『重慶』を探す。日が出たのでかなり明るい。目視で十分だ。

 見つけた。ガスタービンを装備する『重慶』はすでに動き出している。浅瀬にでも乗り上げるのだろうか? 湾内ならどこも変わらない気がするが……。

 俺は距離を確認してアプローチ。ハープーンを放つ。

『重慶』は艦載の艦対空ミサイルや高性能機関銃が弾幕を張る。1機が空中で爆発した。だがもう1機は艦に当たってから爆発した。

「いいいやほほほほほッ!!」

『馬鹿! まだ沈んでいない!!』

 火災は発生しているが、まだ『重慶』は航行していた。それが慣性によるものかは判断がつかない。

『爆弾を使え! 全弾を叩き込むんだ!!』

「りょうかい!!」

 上昇、反転、投下、反転、爆発。『重慶』が止まった。俺の残った兵装はサイドワインダーが4発。

『ソレガシの出番でござる!! ヒャッハー!!』

『おい馬鹿! カミカゼは――』

 源田少尉が言い切る前に加藤の『彗星』が『重慶』の甲板に吸い込まれる。

『それでは靖国であおう!! ばんざーい!!』

 加藤……無茶しやがって。

『……ゲルプ2へ、『しなの』へ帰還せよ。ゲルプ1へ! さっさとリスポーンせよ。繰り返すさっさとリスポーンせよ』

「了解……」『源田氏厳しすぎワロタ』



 俺は空母に戻ろうと進路を変える。港の艦はあらかた炎上している。

『ゲルプ2へ! 高速で接近する機影あり! ブレイク! ブレイク!!』

 レーダーを見れば高速で接近する機体がある。気づかなかった。相手はステルスか?

 相手が見えた。『J-20』だ。お互いにすさまじい速度で一度すれ違った。機首に孔雀の羽が書いてある。

 撃ってこなかったことを思うに、もしかして相手のレーダーには『彗星』が写っていないのかもしれない。ラッキーだ。

「ゲルプ2! エンゲージ!!」

 俺はエアブレーキを使って機体を急減速させる。

 ダンスの時間だ!!


用語解説


空母『しなの』


基準排水量三万六千トン

全長二百六十メートル

武装・ファランクス二機

その他電子戦装備あり


アメリカ海軍の技術提供を受けて建造された海上自衛軍初の航空母艦。

当初は非核三原則を撤廃したため原子力機関を搭載し、リニア・カタパルトを装備する予定だったが、米軍の了承が取れないのと国内外の世論に屈して通常動力空母に。

さらに動力が通常のガスタービン方式になったためにリニア・カタパルトを運用できる電力の確保が難しくなり、蒸気カタパルトに。


そしてさ・ら・に予算削減などが有り蒸気カタパルト搭載が見送られてスキージャンプ台を装備したSTOBAR空母に……。


同型艦は『かが』『とさ』。なお『とさ』は予算の関係で艤装工事中のまま建造ストップしている。



空母『重慶』


満載排水量四万トン

全長二百六十二メートル

武装・730型CIWS三機

その他の電子戦装備あり。


中国海軍の空母。『遼寧』の後継艦である。

動力は計画の段階では原子力であったが、整備性、信頼性からガスタービンに。

カタパルトを装備する計画もあったが、早期の実践化が望まれたためスキージャンプ台を装備している。



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