ルシー・カゲトラの思い
ジヴァナと人類の戦い 第二話です
異端者達 第2話
【日本国・東京地下シェルター(東区)】『……では、次のニュースです。先日、アメリカ・アンダーニューヨークにある、レアメタル採掘場で原因不明の爆発事故が発生した模様。その爆発により、掘削途中の第25坑から第31坑までの坑穴が落盤により塞がれ、内部に作業員18名が取り残された模様。取り残された18名の作業員の生死は不明。政府の発表によりますと、今日未明より、作業員救出作業を開始するとの事です。では、次のニュースです………』
「…全く、アメリカも大変だな」
そう、不機嫌そうな声を出して、少女ーーー【カゲトラ鍛冶屋】の店主、ルシー・カゲトラはラジオのツマミを回し、チャンネルを変えた。 最近、アメリカでは、レアメタルが採掘できる【地脈】が発見され、工業がさらに盛んになった。しかし、アメリカでは【地脈】があったから良かったものの、中国など、アジア諸国では全く資源がないなだ。
しかし、日本だけは違った。【鉄】が産出できる【地脈】が存在していたのだ。そのおかげで、アメリカには及ばないが、日本は裕福な国になった。
「……てか、鉄があるからアタシも、刀鍛冶できるんだよな〜。鉄様々だな。」 カゲトラは、そう言うと腕にはめている腕時計を見る。針は【9時30分】を刺していた。
「と…こんな時間か。アイツらのとこに行かなきゃな。」
そう言うと彼女は、椅子から立ち上がり、作業場を出ていった。
┝【ルシーア孤児院】は、東京中央エリアにある唯一の孤児院だ。
【ジヴァナ】の襲来により、親をなくした子どもが続出し、【ルシーア孤児院】の初代院長、ルシーア・デ・モルメリックがそんな孤児たちを救う為に作られた孤児院が、ここ【ルシーア孤児院】なのだ。そして、【ルシーア孤児院】の前に佇む、ルシー・カゲトラもここの孤児であった。
「−−−あら?カゲトラじゃないか」
カゲトラは、声をかけられた事に気付き、声をかけた人物を見た。
赤いロングの髪に シスター服をきた褐色肌の女性。 ルシーア・デ・モルメリックの娘であり、カゲトラの親友でもある 【シアン・デ・モルメリック】である。
「おぉ、シアン!久しぶりだな。」カゲトラはシアンの側に走り近づいく。
「だいぶご無沙汰じゃないか!ニヶ月ぶり…かな?」「あぁ。二ヶ月だな。」
「全く、どうせまた【刀】作ってなんでしょ?」
「あぁ。そうさ、これだよ」
そういうと、カゲトラは、背中にかわっていた刀入れをシアンに渡した。
「と…これは、重いわね…。どれ、中身は……て、これは……!?」
シアンは、刀の抜き身を見て、驚きを隠せなかった。「……カゲトラ、ちょっと来な。」
「っ…………あぁ。」
シアンの意志を感じ取ったカゲトラは、素直に彼女の言葉を聞いた。
二人は、孤児院の前にある、子供達のいる広場を抜け、孤児院の横に建つモルメリック教会に入っていく。 シアンは、教会の講堂に入ると、そばの椅子に座り、カゲトラを睨み付けた。
「………これは、どういうこと?カゲトラ。」
シアンは、カゲトラから渡された【刀】を完全に抜き、彼女に見せつける。
その【刀】は普通ではなく、刀身が【紅】に染まっている【妖刀】みたいなものだった。
「そのままの意味だよ。シアン」
「………【復讐】か。」
「あぁ。アタシの【復讐】の始まりだよ。シアン。」【紅き妖刀を造りあげた暁に、ジヴァナを倒す】アンタ、あの盟約を果たすつもりなのね?」
シアンは、決意に満ちたカゲトラを見ながら言う。 【紅き妖刀を造りあげた暁に、ジヴァナを倒す】
それは、カゲトラとシアンとの【盟約】である。 カゲトラの両親を【ジヴァナ】に殺され、その仇をとると決意したカゲトラが、最高の切れ味と耐久力を産む【レッドバイオメタル】を手に入れ、錬成し【妖刀】を造りあげた暁に【ジヴァナ】を殲滅する、と誓いをたてたのである。
「………戦うのね、ジヴァナと。」
シアンはカゲトラを見つめ、思い思いの顔をする。
「あぁ。あの【盟約】をアタシは果たすぜ。」
「…………あなたの覚悟は解ったわ。…ちょっと待ってて。」
そう言うと、彼女は講堂内に立つマリア像に近づき、その像の首にかかるロザリオを外した。
「カゲトラ。これ、つけていきなよ。」
「と……ロザリオ?」
彼女が投げたのはロザリオだった。
「アタシの母のロザリオよ。」
「……ルシーアおばさんのロザリオ……ありがとう、シアン。感謝するぜ。」
カゲトラはそう言うとシアンに抱きついた。
「…生きて帰りなよ…カゲトラ。」
「わかってるって。――――そろそろ行くよ。」
抱きつくシアンをゆっくり離し、カゲトラは教会の出口に向かって歩いていった。そして――――彼女は、振り向くこともなく、地上へと向かっていくのだった。
「…………カゲトラ。―――――っ!誰だ!そこにいるのは!!」
カゲトラの背中を見つめていたシアンは、背後からの妙な視線に気付き、腰に隠していた小型ナイフを背後に向けた。
「――――物騒な物はしまってよ?シスターシアン」講壇の後ろから、ある女性が手を上げて出てきた。その女性は真っ黒なスーツと黒いサングラスをかけていた。
『何?コイツ。全く感情が読めない……コイツ出来るわね…』
「……アンタは?いつからそこにいたの?」
「アタシは、……真田・美沙、と名乗っておきましょうか。」
真田・美沙と名乗った女性はイタズラっぽい感じでシアンを見る。
「ふぅん……真田・美沙、ね……で、ここに何か用?礼拝の時間は終わりよ。」「いや。用はないわよ。あのカゲトラて子を見に来ただけ」
そう言うと真田・美沙は椅子に座り頬杖をつく。
「……カゲトラを…?何でアイツのことを……」
シアンは思わず聞き返した。カゲトラのことを何故知っているのか。
彼女の心のなかに、いろいろな思案がめぐった。
「いっとくけどアタシは、彼女を殺そうとしている刺客ではないわよ。彼女を一目見たかっただけ。」
「なん……ですって?」
「彼女には、力があるのよ。そう、【ジヴァナを倒す力】が…ね」
美沙は 彼女の言葉に困惑しているシアンに向かってそう言い放った。
「まさか………」
「クフフッ、心当たりがあるみたいね?シスターシアン」
シアンは思わず、自分の口を押さえた。しかし、もう意味が無いことに気付き、真田・美沙を睨み付けた。「クフッ。アンタに心当たりがあるって解ったから、もういいわ。」
そう言うと美沙は椅子から立ち上がり、教会の出口に歩み始めた。
「ま…待ちなさいよ!」
「ん?何よ。」
「…………どうしてアイツに関わるの?何故?」
シアンは、美沙を睨み付ける。先程より威圧を強めて。
「…………………言わないわ。これは機密事項だから。」
そう、冷たく言い放つと真田・美沙……いや、【政府の人間】である女性は、教会を出ていった。
┝やはり、地上は荒廃していた。ジヴァナ襲来以来、地上の施設は全て放置して地下へ退避した。だから今でさえ機動している施設が多数残留している。そう、地上は荒廃しているものの、未だ人が住める環境なのだ。
「………やはり地上はここまで、荒廃しているか………」
改めて、カゲトラは地上の荒廃の酷さは思い知った。多くの民が死に、日本の地が、いや世界中には、屍が転がっているのだ。
「………………ジヴァナめ…アタシが…必ず倒す…!!」
カゲトラは、鞘から刀を抜き荒廃した街を睨み付ける。
「ジヴァナ!聞いてるか!!お前らを倒しに来た!!出てきやがれ!!」
彼女の怒りがこもった叫びが、街に響き渡る。
――――オもシロいヤツが、来タもノダ。
「っ!?」
突然聞こえた声に辺りを見舞わす。だが、いくら辺りを見舞わしても声の主は見えなかった。
―――お前ノすグ後ろニイる。
その声に後ろを振り向いた。そしてー――――
―――ククククッ。やっト気付イたヨウだナ。愚カナ人間ガ。
カゲトラの前に、巨大な赤黒い百足――ジヴァナが巨大な体を揺らしながら、彼女を見下ろしていた。
「……テメェらが……アタシらを苦しめているのか……!」
ーーーーあァ?何を言ッてイルのダ?
「うるせぇ!!アタシら人類を苦しめてる、お前らをーーーーーアタシが倒してやるっ!!」
そう言うやいなや彼女は、ジヴァナに向かい跳躍し斬りかかる。
だが。
ーーーソノよウな攻撃が……当たルモノか。
ジヴァナは、巨体をくねらせ避ける。カゲトラは、ジヴァナがあの巨体で避けるとは、驚きを隠せなかった。
「ちっ!見かけによらずすばしっこい!!」
ジヴァナのすばしっこさに、舌打ちし、再び彼女は、ジヴァナに斬りかかった。ーーーー同ジ攻撃ナぞ……む…!?ぐアっ!?
カゲトラの斬撃は、フェイントだった。マグナムによる銃撃でジヴァナの片目を潰したのだ。
「銃撃は効くようだな。ジヴァナ野郎!りゃぁぁぁ!!」
ジヴァナが痛みに悶えてる隙にカゲトラは斬りかかった。
ザシュッと鈍い音と共に、ジヴァナの体が中央から二つに切断された。
ーーーグァぁぁァぁァ!?キ、貴様ぁぁァぁ!!
「見たか!アタシの剣の切れ味を!!人類をなめるな!!」
カゲトラは、痛みに悶えるジヴァナを見ながら言った。
「とどめを刺してやるぜ……ジヴァナ野郎!!」
そう言うと、カゲトラは妖刀を構え、ジヴァナに切っ先を向けた。
┝「…あれは……」
荒廃したビルの上で、サイファ・ナルファニは、ジヴァナと戦う少女を見ていた。赤い妖刀であの百足の体を切断したようだ。あの少女は、相当腕が立つようだ。
「……私以外に、ジヴァナと戦う人間がいるなんてね。だけど………あのままじゃ負ける。死なせるわけには……いけないわ。」
サイファは、そう呟くやいなや、ビルから飛び降り、あのジヴァナと少女が戦う場所へ向かって走りだした。
「間に合って……頼むから……あの子を死なせるわけには……いかない。」
┝カゲトラの剣の切っ先がジヴァナに向けられた。だが、カゲトラは忘れていた。このジヴァナが[百足]であることに。
重い風切り音が、後ろから聞こえた。
「っ!?ーーーーぐはぁっ!?」
そう思った直後、横腹に重い衝撃が走る。その衝撃に耐えきれず、横に吹き飛ばされた。そのまま横に転がり壁に叩きつけられ止まった。
「かはっ!……ゲホッ!ゲホッ!っ…ぐっ…」
あまりの衝撃に、血を吐き出し、その場に倒れこんだ。両断された後ろのジヴァナの体が攻撃してきたようだ。[百足]は生命力が強く、体を切断されようと、しばらくの間は動きつづける。カゲトラは、それを忘れていたのだ。
[………は、腹が……くそ!……こんな…バカな……た…立てねぇ……ちくしょう…!]
ーーーふっ…こンなモノカ。やハリ人間は弱イな。
そう言いながらジヴァナは、少しずつカゲトラに近づいてくる。
[……ここまで…かよ…。すまねぇ……シアン……どうやら………ここまでのようだ……]
ーーーー死ネ。愚かナ人間ヨ。
ジヴァナは、口にある、かぎ爪をカゲトラに向けた。「………そこまでよ。ジヴァナ。」
かぎ爪でカゲトラを突き刺そうとした寸前、凛とした少女の声がする。
ーーー何者ダ?貴様ぁ!!
「あいにく、ジヴァナに名乗る名前なんて……持ち合わせていないわ。」少女は、そう言うと、腰にさしている刀を抜き、切っ先をジヴァナに突きつける。
ーーーよカロウ。貴様かラ殺シてやる!!
「できるものなら……やってみなさい!!」
少女は、すぐさま高く跳躍し、ジヴァナの頭部を狙い、刀で斬りつけた。ジヴァナは、あまりの速さに追いつかず、避ける間もなく頭を切り裂かれた。
ーーヌぐゥぅぅ!!アァぁぁぁァ!!
「体当たり?無駄よ。」
少女はジヴァナの動きを先読みし、華麗によける。
そして。
「これで、終わりよ。ーーーー断天[火死嗚]」
そう少女がいると、彼女の刀が燃え盛り、ジヴァナを斬り、ジヴァナの体を燃やし尽くした。
「……………ジヴァナが……あっという間に……」カゲトラは、目の前で起きた出来事に、信じられなかった。人類が勝てなかったジヴァナを、あの少女が倒したのだ。
「…………ふ。やはりザコね。」
ジヴァナの死骸を見ながら、少女はそう呟く。そして、刀を鞘に納めると、彼女はカゲトラの方を振り向いた。
「……戦女神……か…。あれは……」
「しゃべらないで。今、治してあげる。」
その少女は、カゲトラの体に触れる。すると、その少女全体が青白く輝きだした。すると、カゲトラの体も青白く光りだし、それと共に、カゲトラの傷が癒えていく。
「………あれ?傷が…」
「もう、大丈夫よ。」
カゲトラは、傷が癒えたことを不思議に思いながらも、自分を助けた少女を見る。
長く美しい黒髪に、燃えるような紅い瞳。そして、耳につけた、翼のイヤリング。このような少女を、カゲトラは見たことがなかった。
「あんたは、誰なんだ?」カゲトラは、その少女に問いかけた。その質問に、少女は笑って、
「サイファ。サイファ・ナルファニよ。よろしく。」右手をカゲトラに差し伸べた。
「……ルシー・カゲトラだ。よろしくな。サイファ。」
そして、カゲトラは差し伸べられたその手を掴んだ。今、この地で【最初の[運命の少女達の出逢い]】がおきたのである。
┝「…………やっぱり。あの子は、素質があったわね。」
ジヴァナを倒した少女達が映るスクリーンの前で、シアン・モルメリックを訪ねた女性、[真田・美沙]は、呟いた。
地上に設置している監視カメラ[試作型強化鋼鉄製カメラ]に、ジヴァナと戦う少女が映っている、と報告があったから来てみたが、大きな収穫があった。
[あのシアン・モルメリックの親友、ルシー・カゲトラがジヴァナと戦える。]これだけでも、すばらしい収穫である。
「真田・美結宰相。」
そんなことを考えていたところに、少女オペレーターが、[真田・美沙]とは違う名前をよんだ。
そう。
[真田・美沙]という名前は、真の彼女の名前ではない。
[真田・美結]【地上日本国[アンダージャパン(A・J)]】の兵器開発宰相である。
「このことは、まだ世界には知らせないわ。[人類連合]に報告したら世界は混乱するわね。ーーーーーこのデータのコピーを用意して。あの子に、報告するわ。」
真田・美結兵器開発宰相の指示に、少女オペレーターは、すぐさま、データのコピーを作り始めた。
「………地上奪還への希望は、この日本の希望になる。それは、あの子の希望になるわ。ーーーー日本国総帥、入江・来のね。」
美結は、自分の親友を思いながら呟いた。
ーーーこの日、日本は、新たな混沌の花を、咲かせた。
【異端者達・第二話・了】
大変 遅くなりました。まだまだ続きますので、期待してください。




