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第5話 ワイバーン討伐

「あれがワイバーンか。思ってたよりデカくないな」とキャメロン。


「いや、全長三メートルなら十分にデカいだろ」


 俺もそうだが、こいつもまったく緊張していない。まあ、お互い歳の割には戦闘の場数は踏んでいるからな。いわゆる手練(てだれ)というわけだ。



 ワイバーンたちは斜面に生えた低木の茂みを囲んで陣取り、滑空と着地を繰り返している。どうやらあの茂みの中にジョゼフを捕らえているのだろう。茂みの周辺の足場はあまり良くない。


 キャメロンと相談し、まずは遠距離攻撃をかけて、相手の頭数を減らすことにする。ただし、広範囲な魔法攻撃は捕らわれているジョゼフに及ぶ恐れもあるため、岩つぶてによる狙撃を選ぶことにした。幸い中級程度の土魔法なら俺もキャメロンも無詠唱で使える。


 二人とも土魔法でつぶてを浮かし、タイミングを図って同時に撃った。両者ともに命中。ワイバーン二頭の側頭部が血煙を上げてはじけ、巨体が相次いで倒れた。


 第二撃も命中。対象のワイバーンは飛び立とうとしている姿勢だったため、第一撃のように即死には至らなかったが、俺のつぶては羽の付け根に穴を空け、キャメロンのそれも片目を潰した。二人ともすかさず三撃目を放ち、それぞれの獲物をヘッドショットで絶命させた。


 これで十頭のうち四頭を倒したことになる。


 残り六頭のワイバーンはすでに中空に舞い上がり、襲撃者である俺たちをねめつけていた。



 ここで俺たちは手はずどおり役割分担に移行した。キャメロンは風魔法でワイバーンを地上に落とし、墜落した個体を俺が接近戦で倒す。地上にいるからといってワイバーンの危険性が減るわけではないが、空中にいる時よりも格段に機動力は落ちる。後は俺の戦闘能力次第だ。


「いくよ!」


 かけ声とともにキャメロンが風魔術を放つ。渦を巻いて襲いかかった空気の奔流にワイバーンの一頭がきりきり舞いして墜落した。他のワイバーンが近づくのをキャメロンが阻止している間に俺は駆け寄り、落ちたワイバーンの胴体を大刀で一突きした。


 血を流しながら亜竜が吠える。頸部を狙って切りつけること数合、ワイバーンの首が飛んだ。


 同様の攻め方で残りのワイバーンを次々に片づけていく。途中、キャメロンが襲いかかられたり(俺の援護を放り出し、素早く逃げて事なきを得た)、俺の左手が喰いちぎられるといったトラブルもあったが、何とか全頭を殺すことに成功した。



 最後の一頭を倒した時、俺は頭の先から足元まで返り血でずぶ濡れになっていた。臭気もひどい。自身の出血もひどく、目がかすんでその場に仰向けでぶっ倒れた。


 息切れしながらキャメロンを呼ぼうとして、即座にあきらめる。あいつがこの有り様の俺に近づくわけがない。血で手が汚れるとでも言って、断固拒否するだろう。そういう奴なのである。


 代わりに内懐から金属製の水筒を取り出した。中身はフルポーションだ。キャメロンが回復魔法を使ってくれれば、この貴重な魔法薬を使わずに済むのだが、今はケチっている場合ではない。半分ほど飲んで、残りは無残な状態の左手に注ぎかけた。


 ぼうっと燐光が光って、傷が癒され、痛みがやわらいでいく。喰いちぎられた左手も再生し始めた。ただし、返り血までは解決してくれないので、全身血まみれの状態は変わらない。



「おおい、大丈夫か。ジョゼフを見つけたよ。携行食を与えて休ませている」


 キャメロンが遠巻きに声をかけてくる。


「うわあ、それにしても見事に血まみれだね。赤黒いゴーレムみたいだ。後で水魔法で血を洗い流してから、衣類のシミを抜く魔法をかけてあげるよ」


「今やってくれよ。全身血だらけでたまらなく不快だ」


「ヤだよ。再生中の左手が気持ち悪いから、今は近寄りたくない」


 …そっちか。

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