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この剣は、貴方のために  作者: 凪砂 いる
第六章 交わされる誓い

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29.守られるだけじゃ、嫌だった

 ベッドで休んでいると、父がやってきた。

 私の傷を見て……震えていた。

 「ルエリア……なんで父さんや殿下に言わなかった……?」

 私は、俯く。

 「だって……殿下にも、父さんにも、母さんにも……心配かけたくなかったの。私一人で大丈夫だって……思ってた」


 父は、静かに、優しく諭した。

 「誰かに頼ることを、覚えなさい。ルエリア、頼っていいんだよ」

 「父さん……ごめんなさい、ありがとう……」


 父の表情は、柔らかかった。


 父は、その後、急な会議があると言って、部屋を出た。


 誰もいない、静かな時が流れる。

 私は、これまでのことを思い出していた。

 

 あれだけ一緒にいた、明るいアミティエがあんなに冷酷に変わってしまったこと。その揺らぎに私はどうして、気がつかなかったのか。

 自分を責めそうになり、私は慌てて首を振る。

 そして、痣の残る手を見る。

 ただ……心が軋むように痛い。


 あの時、フレンが来てくれて、やっと息ができると思った。

 ずいぶん心配かけてしまった……と私の心に重いものがずしりとのしかかる。

 私が一人耐えれば済むと思っていた。ただ、それは誤りだった。

 フレンにも、父にも心配をかける結果になってしまった。

 静かな部屋で、私の視界が滲む。


 その時、フレンが帰ってきた。

 そして、私の横に座り、私の頬を撫でる。

 「ルエリア、また泣いてる。……もう大丈夫だ。全部、終わらせるから」

 私は、黙って頷く。

 それを見て、彼は優しく微笑む。

 「フレン……ごめんなさい」

 彼は首を傾げ、言葉を返す。その口調はどこまでもやわらかい。

 「何が? 大事なルエリアを守るんだ――このくらい当然だ」

 

 フレンは微笑んで続ける。

 「会議で、しばらくルエリアはここにいることが決まった。側仕えの女官として神殿からラヴィニアさん、護衛には――フラヴィオについてもらう。もう、誰も君を傷つけることなんて、させない」

 私は、心が軽くなる感覚を覚えた。

 (ラヴィニアと……お兄ちゃんがついていてくれるなら――よかった)

 

 彼はドアの方を見る。

 「……もうすぐ、ラヴィニアさんとフラヴィオが来るはずだ」

 私はこくりとゆっくり頷く。

 

 その時、ドアを叩く音がし、扉が開く――血相を変えた母が部屋に入ってきた。

 そして、私の手をふわりと包みこむ。

 「――ルエリア、話を聞いて急いで来たの。この手の痣……! なんてことを……!」

 母の目が悲痛に沈む。私は、口を開く。

 「母さんにも――心配をかけて、ごめんなさい」

 厳しいことも散々言われたけれど、今のくるくる感情を出すようになった母は、あたたかくて、包みこんでくれるようで――好きだ。


 フレンと母が、私の様子に安堵したように深く頷く。それを見た私も、とても暖かな気持ちで胸が一杯になる。


 続いて、父も戻ってきた。

 母が父を見て深く頷く。父もそれを見て頷き返す。

 「もう大丈夫だ。殿下も、私たちも皆いる。ルエリアは……何も心配しなくていい。務めを果たしなさい」

 その言葉に胸の奥で何かがふわりと溶ける音がした。


 守られるだけなのが嫌で――自分ひとりで立とうと思っていた。しかし、私にはフレンも、家族も、ラヴィニアも皆いてくれている。そう思うと頬が自然とほころんだ。固まっていた何かが溶けていく。それはとても暖かな時間だった。

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