表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この剣は、貴方のために  作者: 凪砂 いる
第四章 伶輝な仮面の下で流した涙

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/47

23.雪解けを待っていた花は美しく咲く

 両親と陛下から聞いた話は、惨憺たるものだった。

 そして、母が目を閉じ、ふわりと笑った。まるで雪解けを待っていた花のように。


 それを見た父と陛下の顔も柔らかい。

 初めて見る母の表情に、私は戸惑った。このまま母を許せるか、私は複雑だった。

 おそらく、母も祖母に対してずっとそう思っていたのだろう。


 ただ、母は春の花のようにふわりと美しかった。

 しかし、私はこの感情をどうすればよいかわからず、一旦裏庭に出た。

 そこには待っていたかのように――フレンがいた。


 私は、思わずフレンに抱きつき、そして、目から熱いものがこぼれていた。

 彼はずっと、優しく抱きとめ、私の髪を撫でてくれていた。

 ただ、喉が苦しい。言葉が出ない。しかし、心の奥で長い間せき止められていたものが流れていく。

 この感情を、私はどう表現したらいいのか、わからなかった。


 「……今は、このままいていい?」

 私は顔を埋めたまま、フレンに尋ねた。

 彼は私の頭をわしゃわしゃとした後、抱きしめる腕に力が入る。

 「――もちろん。今は泣いたっていい。誰も見てない」

 フレンに抱きしめられる腕の中で、私の中でも何か溶ける音がした。


 裏庭の、ふたりでいる時間。太陽の光がいつもよりやわらかい。

 橙色の光が、ふたりを包む。何よりも暖かく、心がほっとほどける時間だった。


 私は彼を見上げ、頷く。

 彼から、ゆっくりと優しい口づけが落とされた。

 甘い香りが鼻を抜ける。


 「たぶんだけど、もう、大丈夫だと思う」

 「……そうだな」

 ふふっとふたりで微笑みを交わす。

 そして、彼はもう一度ゆっくり、私を抱き寄せた。


 「……もう、言ってもいいか?」

 「――え?」

 私の素っ頓狂な返事に一瞬フレンが頭を抱える。

 「ルエリア、肝心なところ、鈍すぎ」

 私の顔が急に熱くなる。

 その意味を理解した私はコクコクと素早く頷いた。


 彼は私の手を取り、指輪をゆっくりとはめる。

 「今さらだけど――俺と、結婚してください」

 私の視界が滲む。そして、ゆっくり頷く。

 「喜んで――!」


 その瞬間、私たちを祝福するかのように、裏庭の花がさわっと揺れた。


 夕刻。帰宅した私の目に入ったのは、今まで感じたことのない空気だった。

 今まで見たことのない両親の視線と暖かさ……いや、熱さに圧倒され、遅れて帰宅した兄が声を出さずに「何があった?」と口をパクパクさせる。

 複雑な感情とあたたかさがないまぜになりながらも、この空気は心地よかった。

 おそらく、初めて感じる空気に私も、兄も、戸惑いを隠せなかった。

 でも、何かが変わったのだけはわかった。


 書斎の奥に入り、メモが入っていた本を取り出す。

 (母さん……もう大丈夫そう)

 私は誰にも見つからないようにこっそりとそのメモを処分する。

 こころなしか、書斎にあたたかな風が吹いた。これからは誰も家に縛られるものは出ないだろう。

 兄は……騎士でいるほうがモテるから続けると言っている、本心はわからないけど、兄らしさが微笑ましい。

 

 私も、明日こそ、父に正式に辞退を告げようと思った。

 辞退した私を待つものは、王族として王太子妃――いずれ王妃になるための教育を受ける日々だ。

 結婚式と戴冠式が立て続けに来る日程となるだろう。

 フレンとの未来に期待は膨らむ――そして、今度は王族になるという現実が、私にずしりとのしかかる。

 一難去ってまた一難。私は少し震えた。

お読みいただきありがとうございます。

これで第一部終了となります。

明日更新分24話から第二部に入ります。

王太子妃教育を受けることになったルエリア。そこに待ち受けていたのは……?

どうぞ、お楽しみに!


評価・ブクマいただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ