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サマーンの憂鬱 ~アルヘシーラス包囲戦~  作者: 蘭鍾馗


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4.ダンタリオンの想い人(1)

「皆、大体覚えたな?では最初からいくぞ。」


 ◇


 そりゃあそうだ。


 俺にだけ特別に教えてくれる訳ないよな。

 これからは、訓練の一番最初にまずこの舞を舞って体を温めることになった。


 ところが、これが意外にきつい。


 剣術の型とはいえ、所詮は踊りなのだからと思っていたら、通しでやるとすぐに汗ばんでくる。息が上がる。踊りの中身は違うが、いつも宴に出てくる踊り子達は、長い時間踊った後でも平気な顔をしている。彼女たち、実は皆凄い体力の持ち主ではないのか。そう思うようになった。


 そんな訳で、体力はまだまだなのだが、この「型」をやるようになってから、剣の立ち合いで懐に飛び込む時にたたらを踏む悪い癖が出なくなった。多分だけど、型を練習する事で、剣を払ってから横に回り込むといった、違う動きに移る時に、いちいち頭で考えなくなったからじゃないだろうか。体が基本の動きの組み合わせを覚えているから、考えなくても動けるようになってきたのだ。


 ◇


「腹が減ったな、食事にしよう。」


 午前の訓練が終わり、砦の広間に敷物を敷き、皆で食事をとる。今日は羊肉と茄子の煮込みだ。固い平焼きパンを浸けて食べる。



「サマーン、剣さばきが大分上手くなったな。」


 アリ副長が話しかけてくる。

「ありがとうございます。多分、隊長が教えてくれたあの『型』のお陰だと思います。」

「あれな。儂もまさか躍りが練習になるなどとは、思ってもみなかった。ま、ダンタリオン様らしいがな。」

 そう言ってアリ副長がダンタリオンの方を見ると、首をがっくりと項垂れて居眠りをしている。あーあ。

「おい、誰か隊長を部屋までお連れしろ。」

 その声にダンタリオンが目を覚ます。

「……あ、寝ておった。すまん。」

「昨夜の軍議が遅くまでかかりました故お疲れでしょう。午後の訓練は私がやっておきます故お休み下さい。」

「いやいや大丈夫だ。眠気も取れた。」


「その様には見えませぬ。貴女に無理をさせて疲れを残したまま戦地へ赴かせては、戦場(アルヘシーラス)で何が起こるか分かりませぬ故。」


 アリ副長が語気を強めて言うと、その気迫に気圧されたのか、隊長が折れた。


「そうか……では済まぬが任せる。」

 ダンタリオンは、食べ残した煮込みとパンをもって、自分の部屋へと戻って行った。


 ◇


「悪魔も徹夜は(こた)えるんですね。」

「サマーン。」

「はい。」

「あの方を悪魔と呼んではならん。」

「あ……はい。」

「何故あの方を悪魔と呼んではならぬのか、その理由をこれから話してやる。よく聞け。」


 ◇


 アリ副長は、ダンタリオン隊長から聞いたという、彼女の昔話を聞かせてくれた。

 それは、俄には信じられないような不思議な話だった。


 

「続きは次話じゃ。」


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