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追放された器用貧乏、隠しボスと配信始めたら徐々に万能とバレ始める~闇堕ち勇者の背信配信~(WEB版)  作者: 広路なゆる


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99/111

99.試してみる

「なってあげてもいいぜ!」


「おー、ありがたい…………ん? ……なるって何に?」


「眷属に☆」


「…………えぇええええ!? いいのか!? いいのか!? よーこちゃん!」


 さりげなくアリシアの眷属になることを名乗り出たのは、妖狐であった。


【おぉお! 妖狐ちゃんが吸血鬼さんの眷属に!?】

【それは熱い……!】

【いや、でも待て……それは……】


「ちょっ! 妖狐! あなたは私の眷属でしょ!」


 しかし、現在の主である人狼は妖狐の申し出に抵抗を示す。


【まぁ、そりゃそうだよな……】

【自分の眷属が別の奴の眷属になるってのは気持ちよくはないかもな】

【人狼ちゃん、独占欲強そうだし笑】


 しかし、妖狐はあっけらかんとした様子で応える。


「え? そうだけど、別に、主って一人じゃなきゃいけないってこともないんだし、一人も二人も同じじゃね?」


「っ……、まぁ、確かに主が一人じゃなきゃいけないっていう決まりはないわね……」


「でもまぁ、眷属である以上、今の主が許可しないことはすべきでないってのはそうだね。つまり、人狼が認めてくれないとできないや☆」


「っ……」


 人狼は言葉に詰まる。


「妖狐……あなた、私が聞くのも変かもしれないけど、そんなに簡単に眷属になっていいの? 私との戦いの時だって、大して実力差もなかった。なんなら、ほとんどあなたの方が優勢だったのに、あっさり眷属になることを認めて……」


「確かにー、10回戦ったら8回くらいはわらわが勝ちそうだよね」


「ちょっ……!」


【そうだったのか】

【まぁ、確かに前評判的にも妖狐はS級最強という扱いだったしね】

【人狼ちゃん、それだけの逆境を覆して……】


「でも、勝負は一回きり。その戦いで人狼が勝ったのだから、眷属になったことに不満は抱いてないよ☆」


「そ、それはありがと…………でも、そういう意味じゃ、あなたはまだ吸血鬼と戦っていないじゃない? それなのに眷属になってもいいの?」


「え? あ、うん。もともと、わらわは眷属になることに抵抗はないし……それに、どうせならSS級ボスの眷属になっておいた方が、いろいろと……」


 妖狐はゴマすりをするように、手をこねこねするジェスチャーをする。


【単なる打算で草】

【この妖狐、世渡り上手かもしれぬ】

【いいじゃん、その方が面白そうだしw】


「なぁ、グレイ……嫌なら、拒否してくれていいんだぞ」


 横で聞いていたクガが人狼にそう告げる。

 グレイとは人狼の名前である。


「く、クガ様……ご配慮ありがとうございます。お見苦しいところをお見せしました」


 先ほどまでのむすっとした表情はどこへやら、グレイは頬をほんのりと染めて、へりくだる。

 グレイはクガの眷属であり、クガ相手だと異様に従順となる。


「恐れながら、クガ様……。クガ様にとっては、妖狐の提案はご迷惑ではないでしょうか?」


「え……? 迷惑どころか正直、有難い話ではあるけど……。新たにS級を眷属にするにしても、必ずしも愛着を持てる相手かもわからないしな……」


「愛……!? えーと、えーと……そ、それはつまり……クガ様は私のことを愛……」


 なにか話が飛躍している。


「わかりました。クガ様がそこまでおっしゃるのなら、妖狐が吸血鬼の眷属になることを許可します」


【おぉおおおー!】

【ぱちぱちぱち】

【一件落着だね】


「本当によいのか? よーこちゃん」


「うむ☆ あ、もし吸血鬼先輩がラスボスになられた際は、それなりの席を……」


「おぉ! 約束しようじゃないか!」


【堂々と密約交わしてて草】


 そうして、アリシアと妖狐は主従の契りを結ぶ。

 妖狐はアリシアの指輪を受け取り、それを指にはめる。


「よし、クガ! これで〝眷属を従える(S級ボス)〟に関しては文句なかろう?」


「そうだな。これで一番怪しかった条件は文句なく満たされただろう」


「うむ、それじゃあ……もう一度……」


 アリシアは掌を城に向ける。


「特殊移転魔法…………〝ヒ↑ッコシ↓〟!」


「「「………………」」」

【【【………………】】】


 何も起きない。


「特殊移転魔法…………〝ヒ→ッコシ↓〟!」


 だが、駄目。


 城は1ミリたりとも動かない。


 アリシアは結構、ショックを受けた顔をする。


【一応、ヒ→ッコシ↓試してて草】

【うーん、となると……】

【特に怪しかった最後の一つ】


 =========================

 ・S級パーティを狩る

 →結構、怪しい(S級パーティ〝イビルスレイヤー〟を倒した際、部外者のアイエがウラカワを倒した。ヘビオはキルしなかった。イビルスレイヤーのメンバーは別々の場所にいた。等)

 =========================


「…………S級パーティを狩る……? S級パーティ……」


【ミカリ:ちょ! アリシアさん、今、頭の中に私達が浮かんでたでしょ!】


「そ、そ、そんなこと……ないっすけど……!」


 アリシアは焦り気味に否定する。

 すると……、


「じゃあ、僕をキルする?」


「「……!」」


 実はひっそりと近くにいた人間がぼそりと言う。

 その人物は対ハチ捕獲用のような防護服に身を包んでいる。

 元イビルスレイヤー、現アリシアの城の防衛係のヘビオである。

 今まで、一言も発することなく佇んでいたのだ。


「え……? いや、どうしたのだ? ヘビオくん」


 アリシアが聞き返す。


「だって、メモの中に書いてある。〝ヘビオはキルしなかった〟って。だったら、試しにキルしてみるのも候補に入るのかなと」


「馬鹿を言うな、ヘビオくん!」


「……!」


「君との関係はイビルスレイヤーの奴らとの約束がある。それ以上に君は大切な城の防衛係じゃないか! 二度とそんなことは言うな!」


「…………うん。悪かったよ」


 ヘビオは素直に謝る。


「クガよ、現在のS級パーティの状況を教えてくれ」


 =========================

【S級パーティ】

 ①ルユージョン……正統派

 ②あいうえ王……ソロダンジョン籠もり

 ③デュエリスト……プレイヤー間の決闘を好む

 ④クマゼミ……新人S級

 =========================


「あいうえ王とは、確か、アイエもんのことだよな?」


「そうだ」


「だよな、アイエもんも対象外だし、そう考えると、残りは、全く知らないこのルユージョンとかいうのとデュエリストとかいうパーティのどちらかだな」


【うーむ】

【となると、なかなか厳しいかもなぁ】

【どちらのパーティも慎重で勝算の薄い相手と安易に戦うタイプじゃないからなぁ】


「な、なんだと!? そ、そうなのか……」


 アリシアは露骨に気落ちする。

 それを見て、クガは告げる。


「ま、まぁ、アリシア。今日のところはここまでにして、一旦、今後の方針を考えよう」


「わかった。皆の者……がっかりさせてしまいすまない。また、何かしら方法を考えるから少し我慢してくれ……」


 そうして、その日の配信は終了する。


 アリシアは流石にちょっとショックだったのか、今日は仮住まいの方に戻ることにした。


 仮住まいまでの道中。

 アリシアは少し背中を丸め、トボトボと歩いていた。


「だ、大丈夫か? アリシア」


 ちょっといたたまれなくなり、クガはアリシアに声を掛ける。


「あ、あぁ……心配するな……」


 穏やかで優しげに微笑みながら返事をするアリシアに、クガは少々、心配になる。


 アリシアの仮住まいにて――。


 やはり少し元気のないアリシア。

 ソファに突っ伏して、けだるそうに、ぺらぺらと生活のマニュアルをめくっている。


「……」


 クガはそのようなアリシアの姿はあまり見たことがなかった。

 いつも目的に向かって邁進、いや猛進し続けるバイタリティの塊のような魔物であったからだ。


「なぁ、クガよ……」


「ん……?」


「このままSS級ボスになれなかったら、幻滅するか?」


「え……?」


「だって、ほら……私達の配信の目的は〝ラスボスへの軌跡〟をドキュメンタリーでお送りすることだろ? それがとん挫するとなれば、まぁ、一言で言えば、やることがなくなる」


「なーに言ってんだ? ラスボスへの軌跡はアリシアが言い出したことだろ。俺は応援はしているが、俺がアリシアと共にいるのは、アリシアがラスボスになるからじゃない」


「……! そ、そうか……」


 アリシアの声は少し安堵を含んだものとなる。


「…………クガ……やることなくなったらさ……それじゃ、いっそ……()()()みるか?」


「え……?」


「いや…………その……えーと……あの……サムライとかいうパーティの女が……言ってただろ?」


「サムライの女……? ナナミさんのことか……」


 クガはふと、ナナミとアリシアの会話を想起する。


 ◆


「人型魔物の生殖器ってどうなってんのぉ? で、実際、どうなってんのよぉ? 人間との子供って生めるのぉ?」

「そ、そんなのは……た、試してみないとわからぬ!」

「へぇーー、試してみないとねぇ……ふーん……」


 ◆


「って、えぇえ゛え!?」


 それによりクガはアリシアが言っている〝試す〟がなんのことか思い当たる。

 ふとアリシアの方に目をやると、アリシアは目をそらし、さらに顔は真っ赤に染まっている。


 仮住まいには二人きり。二人を邪魔する者は誰もいない。


「えーと、それは、んーと、なんだ、あーと、えーと……その……あれがあれで……」


 クガはあまりにも想定していなかった事態が突如発生し、無茶苦茶動揺する。


 と……、


「あっ……!」


 アリシアが何かに気が付く。


「はいぃいい!?」


「おっ? あれ……? あれれ……?」


「ん……?」


 アリシアはなぜか生活のマニュアルを凝視している。


「おっ、おぉおお!」


「……」


「見ろ! クガぁあ! よくよく見ると、SSボスの条件の文字が薄くなっているではないか! しかも、今まで表示されていなかったラスボスになるための条件も表示されている! つまり、私はSSボスになるための条件を満たしているということなのではないか! ん……? ということは、私はSSボスの条件は満たしているけれど、なぜか城は移転できないってことなのか……?」


「……」


 アリシアは生活のマニュアルの変化に気づき、バイタリティが完全復活している。


「ん……? どうした、クガ……やけに反応が薄いな……」


「…………あ、いや……」


「ん……? クガ、お前……ひょっとして……したかったのか? 私と生殖行どぅ……」


「言うな、それ以上……! 怒るぞ……!」


 クガは血走った目で、アリシアを制止する。


「す、すまぬ……」


 見たこともないクガの表情に、アリシアはたじたじとする。


「………………いや……こっちこそ、すまん……そうだな……〝SSボスの条件は満たしているけれど、なぜか城は移転できない〟だったな?」


 クガは強靭な精神力で、無理矢理に平常心へと戻す。


「あ、うん……」


「……なぜだろうな」


「わからぬ。だが、まぁ、面倒なことは抜きにしよう。見よ! このラスボスになるための条件を!」


「……ん? と、言っても俺はその本の文字読めないんだけど……」


「あ……! そうだったな……、わかった」


 アリシアはメモになにやら書き込み、そしてクガに見せつける。


 =========================

【ラスボスになるには】

 ・SSボスになる

 ・ラスボスの枠を空ける ← NEW

 =========================


「……なるほど」


「どうだ? わかっただろ? クガ!」


 アリシアはニヤリとする。


「私は実質SSボスになっているから一つ目の条件は満たしている」


 また、()()かと思い、クガは内心苦笑いする。


「つまり、直接、ラスボスとやらを倒してやればいいのだろう?」


「…………それもそうだな」


「……ところで、クガよ」


「ん……?」


「ラスボスってどこにいるのだ?」


「いや、全く知らない」


「「……」」





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【小説】
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CW1L7CHY/

【コミカライズ】
https://www.amazon.co.jp/dp/B0D3MDN76J

【作者新作】
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