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追放された器用貧乏、隠しボスと配信始めたら徐々に万能とバレ始める~闇堕ち勇者の背信配信~(WEB版)  作者: 広路なゆる


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108.人狼風ゲーム

「っ……」


 サナダは唇を噛みしめる。


【コダックぅうううう!】

【可哀そうに……】

【一体、誰がコダックを……】


「それでは、残った皆様で処刑会議を始めましょう」


「ちっ、わかったよ……僕はBの道。一人だった」


 サナダを皮切りにそれぞれが自身の状況を説明した。


「私セシルとアイエさんがDの道で二人でした」


「なんだと……!?」


 セシルの証言にサナダは動揺している。


 皆の証言を整理すると、このような状況であった。


 =========================

 Aの道:クガ、グレイ

 Bの道:サナダ単独

 Cの道:アリシア単独

 Dの道:セシル、アイエ

 Eの道:ナナミ単独

 =========================


 クガにとってもかなり想定外の事態であった。

 それはセシルとアイエの白が成立してしまったからである。

 人狼としてあり得るのはセシル、そして申し訳ないがアイエもちょっと怪しいと思っていた矢先のことであった。


「つまり、私グレイ、クガ様、セシルさん、アイエさんの白が確定したということで、被疑者はサナダさん、アリシアさん、ナナミさんの三人ということです。この中に人狼がいるってことになります」


 グレイが状況を総括する。

 会議のわかりやすさのためか、普段は吸血鬼と呼んでいるアリシアも固有名詞+さん付けで読んでいる。


【え……? まじか】

【普通にセシルさんだと思ってたんだが】

【この三人の中に裏切り者がいるってことかよ? 信じられん】


「被疑者の三名、何か主張はありますか?」


 グレイが尋ねる。


「わ、私は人狼ではないぞ……! 皆、信じてくれ!」


 アリシアは情に訴えるように主張する。


「わかっていると思うが、僕も違うし、ナナミも違う」


「そうね……私も違うわぁ。私はアリシアさんだと思うけどぉ」


「お、お前らは元から結託してるからそうなるんだろ! 私は違うぞ!」


【うーん、まぁ、ぶっちゃけわからんよね】

【まぁ、最初だから印象だけになっちゃうよな】

【まぁ、サナダでしょ】

【サナダじゃなくてもサナダでいいな】

【サナダ、サナダ、サナダ】


「……」


 サナダにはクガ配信のコメントは届いていないはずだが、何かを察したのか気まずそうな顔をしている。


「はい、会議は終了です。皆さま、人狼と思う人に投票してください」


 セシルが投票を促す。


 =========================

【投票結果】

 サナダ ← クガ、アリシア、グレイ、セシル、アイエ

 アリシア ← サナダ、ナナミ

 ナナミ ← 投票者なし

 =========================


「サナダさんの処刑が決定しました」


「なんでだよぉおおおおお! 本当に違うのにぃいいいい!!」


 サナダはワープエフェクトと共に消滅していく。


「……」


「……ゲーム続行。サナダさんは人間だったようです。それでは、引き続き、今度は三枚のカードから分かれ道を選んでください」


 クガは頭の整理ができていなかったが、言われるがままカードを選ぶ。

 一回目と同じくAであった。

 選んだ瞬間、先ほどと同じようにワープが発生する。

 再び、分かれ道に飛ばされたようだ。

 クガはしばらく待ちつつ思考する。


 すでに被疑者は二人に絞られた。

 アリシアと巫女のナナミだ。

 アリシアは人狼ではない。つまり人狼はナナミで確定ということになる。

 しかし、信じられない。まさか長くサムライで活動していたナナミが裏切り者であったなんて……。


「……」


 そんなことを考えていたが、誰も来ない。

 一人だけの道ということか……と思った時であった。

 もう一人がワープで飛ばされてくる。


「あ……」


 それは巫女姿の女性……ナナミであった。


「っっっ……!」


「ちょ、なんでそんな露骨に慌てふためいてるのよぉ」


「そ、それは……」


「あー、つまりそういうことぉ……?」


「えっ……?」


「がぶりぃ!」


「うわぁああ!」


 ナナミが獣ポーズし、クガは結構情けない声を出してしまう。


「…………ってあれ? なんともならない……」


「いや、だって、私、人狼じゃないしぃ」


「え……?」


「え……? って、まぁ……あなたにとってはちょっと辛いことかしら……」


「……」


 ナナミが人狼でないということは、つまり……アリシアが人狼……?

 そんなはず……。


「イージーゲームになったわねぇ。ほら、さっさと行きましょう」


「は、はい……」


 クガは考えがまとまらないまま、ずいずいと進んでいくナナミについていく。

 出口の手前……、ギリギリでナナミにキルされるのではないかと身構えたが、そんなこともなく集合部屋へと辿り着く。

 と……、


「やりおった! セシルがアイエをキルしたぞ!」


「っ……!」


 集合部屋に着くや否や、アリシアが必死の表情で騒いでいた。


「いや、アリシアさん、それは流石に無理があるでしょ……」


 セシルは呆れたような様子で、それを見ている。


「あ、全員揃ったみたいですし、処刑会議を始めましょう」


 セシルがクガとナナミの存在に気付き、正式に会議が始まる。


「この女、すました顔をしているが、本当にやったぞ。私はこの目で見た!」


 会議が始まるや否や、アリシアはセシルを指差し、セシルがアイエをキルしたと主張する。


「いやいや、アリシアさん、アイエさんをキルしたのは貴方じゃないですか……。貴方が人狼で確定です」


 クガは頭の中で改めて状況を整理する。


 =========================

 Aの道:クガ、ナナミ

 Bの道:グレイ単独

 Cの道:アリシア、セシル、×アイエ

 =========================


【吸血鬼さんとセシルさんが互いに相手が人狼であると主張している】

【しかしなぁ……】

【辛いが……吸血鬼さん、苦しいな……】


「私セシルは、一回目にアイエさんと一緒にいたので、白が確定しています。残念ですが、アリシアさん、あなたが人狼で確定です」


「えぇえ……そ、そうなのか……?」


 アリシアは悲しそうに他の三人を見る。


 グレイもナナミも呆れたような顔をしている。


「……クガぁ……本当なんだ、信じてくれぇ……」


 アリシアは懇願するように、クガを見る。

 クガはふとセシルを見る。


「っ……!」


 その時、セシルは、ほくそ笑むように口角を上げているように見えた。


「…………グレイ、ナナミさん、もう一度、フラットに考えてみませんか?」


「……え?」


 クガの提案にグレイは少し困惑する。


「クガぁ……」


 アリシアはクガのことを救世主のように見つめる。


「クガ様、フラットに考えるとはどういういうことでしょう? 私としても正直、残念ではあります。いがみ合うようなこともありましたが、嫌いというわけではありませんでした。しかし、状況的にアリシアが人狼で確定かと思いますが……」


【クガ、流石に厳しいよ】

【俺だって信じたくねえよ】

【吸血鬼さんが裏切りだったなんて……】


「…………そうなんだけど……だけど、一つだけ気がかりなことがあるんです」


「……なんでしょう?」


「さっきの会議で、アイエさんって、セシルさんが白だって言ってましたっけ?」


「「「「……!」」」」


 クガの指摘に四人ともはっとなる。


「そもそもアイエさん、一回目の会議で一言もしゃべってないですよね?」


【た、確かに……セシルがアイエと一緒にいたと証言した。その時、アイエはセシルと一緒にいたこと自体は否定しなかったけど、セシルが白とは言ってないな】

【つまりセシルがコダックをキルしたけど、アイエは何も言わなかった可能性があるってことか?】


「でもぉ、仮にそうだとして、なんでアイエはそれを報告しなかったのぉ」


「いや、それは……」


 ナナミの指摘にクガはうまく答えられない。


【流石にくるしいよな】

【もしそうだとしたら、完全なリア狂ムーブだしなぁ】


「リア狂……? グレイ、リア狂とはなんだ?」


「あ、はい、クガ様。人狼ゲームには、人狼の他に、狂人という役割を設定する場合があります」


「狂人?」


「狂人とは、人間なのですが、人狼が有利になるように場をかき乱します。そして人狼が勝利すると、自分も勝利となる役割の人です。リア狂とは、リアル狂人の略称で、自分は狂人の役回りではないにも関わらず、人狼有利に立ち回る厄介プレイヤーのことです」


「なるほど……ありがとう……」


【リア狂かぁ】

【…………いやぁ、正直、アイエがリア狂ムーブするイメージがさ……できちゃうんだよなぁ。これが……】

【それな】

【面白いからとか言って……】

【ルールがよくわかっていなかった説もなくはない】


「そうだ、アイエもん、何をとちくるったのか、奇妙なムーブをしおって! おかげで、私が疑われてしまっているじゃないかぁ!」


 アリシアは憤慨している。


「……」


 クガはその姿を見て思う。

 やはりアリシアは人狼ではない。アリシアは嘘が上手なタイプの吸血鬼ではない。


「俺はセシルに投票する」


「クガぁ……信じてくれてありがとう……」


 アリシアは目頭に涙を浮かべている。


「ちょっとぉ、情に流されちゃってるじゃない。あり得ないわよ。私はアリシア(吸血鬼)にいれるわよぉ」


 クガはセシルへ、ナナミはアリシアへ。

 早々に投票先を表明する。そうなると……、


「……っ」


 グレイは唇を噛みしめる。


【人狼ちゃん、胃痛ポジ】

【胃痛ポジ人狼という謎のワード爆誕】


 胃痛ポジとは、自分の判断により勝敗が決する役回りになったことである。


「ちょっと何迷ってるのよぉ? イージーゲームよ? アリシア(吸血鬼)以外ありえないわよぉ?」


「グレイ…………自分の思う方に投票してくれ」


「っ……!」


「はい、それでは会議は終了です。皆さま、人狼と思う人に投票していただきます。まず私セシルは当然、アリシアさんです」


 セシルが投票を促す。


「ぐぬぬ、私アリシアは勿論、セシルさん」


「クガもセシルさんだ」


「全くなんでそうなるのよぉ……ナナミはアリシアさん」


 四人は宣言通り、それぞれ、アリシアとセシルに二票ずつとなる。

 最後の投票者グレイに注目が集まる。


「私、グレイは…………」


 グレイは目をつむる。


「セシルさんに投票します!」


【うぉおおおおおお!】

【信じてたぜ人狼ちゃんんん!】

【これは推理ゲーではない! 友情の勝利だぁあああ!】


 =========================

【最終投票結果】

 アリシア ← セシル、ナナミ

 セシル ← アリシア、クガ、グレイ

 =========================


「人狼ぉ……ありがとう……私を信じてくれて……」


 アリシアはほろりと涙を流す。


「お疲れ様です、投票の結果、私セシルの処刑が確定し、ゲームは終了しました」


 セシルもどこか清々しい顔をしている。


「人間チームの敗北、人狼の勝利です」


「「………………え?」」


 なぜか勝利を確信していたクガとグレイは耳を疑う。


「あ、あの……セシルさん、言い間違いですか?」


「いえ、人間チームの敗北、人狼の勝利です」


「「…………」」


「…………あ、あの……すまぬ……えーと……〝がぉ~〟……なんちゃって」


 人狼はアリシアであった。


【えぇえええええ!?】

【嘘だろ……吸血鬼さんんん……!】

【信じてたのに……】


 コメント欄は阿鼻叫喚となる。


「あ、いや……その……すまんかった」


「……」


 クガはじっとアリシアを見つめる。


「か、勘違いするでないぞ! 別に私はクガ、お前を最初から裏切ってたとかではないぞ! 人狼の役回りに決まったのは、このゲームが始まってすぐだったのだ!」


 アリシアによると、人狼に決まったのは最初の分かれ道の選択をしてからであったという。

 その際、人狼には、人狼勝利時の景品と人間チーム敗北時のペナルティの内容が明かされたという。


「景品はなんと300万円だ! クガ、やったぞ! 300万円を手に入れたぞ!」


【ちょ、吸血鬼さん】

【金で仲間売ったんか!】


「ち、違うぞ! お前ら! 金はな、まぁ、あって困るものでもないのは確かだけども……それにドラゴンのところに行くために、クガがポケットマネーから出してくれた分を返したかったのもある……だが、違う! 違うのだ!」


「アリシア様、おめでとうございます。それでは、ペナルティの内容を公開します。私、セシルが貴方達を葬ります」


「……そういうことか」


「うむ、私はペナルティを受けたかったのだ! だって、このゲームに勝ったことでラスボスをクリアしてしまっては味気ないだろう?」


「……アリシアらしいといえば、アリシアらしいか……」



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【作者新作】
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