104.なんなんすかこれ☆
「お二人はモフモフはしていないということで、パークのコンセプトにあっていないということで、除外したようです☆ 吸血鬼先輩のは需要あると思うんですけどねー☆」
【吸血鬼さんわかってないなー】
【明らかに需要あるでしょw】
【クガはいらん】
【クガ不要の判断は正しい】
【そこは合ってる】
「えぇ……」
ユリアは少し残念そうだ。
そんなユリアを無視して……、
「あれ? あの辺は少し違った感じですね」
クシナが変わった雰囲気の一角を見つける。
「そうでーす☆ あそこはポーションショップになっております☆」
「ほぇー!」
三人はその一角の方に足を運ぶ。
「おぉー! これはまたすごいですね!」
そこには瓶詰めされた色とりどりのポーションがガラスの棚におしゃれに陳列してあった。
「えー、すごいおしゃれ! これはテンション上がっちゃいますねー! えーと、お値段の方は……うほっ! なかなかいいお値段しますね」
クシナは苦笑いする。と……、
「今はまだ大量生産できないから、これくらいじゃないと元が取れない」
「うわぁああ! い、いたんですか、ヘビオさん」
クシナはどこからともなく現れ対ハチ捕獲用のような防護服に身を包んだ人物に驚く。
「彼女は、このポーションショップの店長だよ☆」
「あっ、そうだったんですね! 確かに以前、ヘビオさんはクガさん達とポーションの精製配信みたいのをしてましたよね。なるほど、面白い商材を見つけたものです」
「値段は高いけど、効果は保証する」
「なるほどです! 是非、クマゼミでも導入を検討させていただこうと思います。なので、ミカリさんに相談してみようと思います!」
「よろしく」
「ってか、妖狐さん、一点だけ。〝彼女〟は女性に向けて使う言葉ですよー」
【それな】
【さっき、ヘビオのこと彼女って言ってたよな】
【まぁ、魔物だから多少の誤用は仕方ないよね】
「え? うん……そうだけど……?」
妖狐はクシナの指摘に対して不思議そうにする。
【へ……?】
【この反応はひょっとして……】
【あー、妖狐さん、ヘビオのこと女だと思ってるのかな】
【まぁ、確かにぱっと見じゃ全くわからんもんなー】
「……」
当のヘビオは沈黙を貫くのであった。
ちなみに彼女は女だ。
「それじゃあ、お次は2階の方に上がっていきまっしょう☆」
そうして、妖狐に案内され、クシナとユリアは2階へと上がる。
「こちら、当館イチオシのモフモフカフェでございます☆」
「「「「「わんわんおー」」」」」
「はわぁああああああ!」
クシナは思わず歓声をあげ、ユリアも目を輝かせる。
そこは、おしゃれで清潔感漂うくつろぎ空間となっており、たくさんの柴犬コボルト達が従業員として待ち構えていた。
「こちらでは、ゆったりとくつろいでいただきつつコボルト達と戯れることができるよ☆ カフェにもなっていて、飲食も可能だよ☆ 注文をすると、コボルトがいつもよりたくさんモフモフさせてくれるらしいよ☆ 是非、推しコボルトに注文してみてね☆」
「な、なるほど……存分にモフモフするには課金が必要ということですね……」
【あざとい……】
【課金不可避……!】
【なかなかよくできたシステムだ】
「なんか吸血鬼先輩が人間界で行ったという、なんとかカフェを参考にしたみたいだよ☆」
【亀カフェか】
【亀の餌やり300円のやつだな】
【あかん、吸血鬼さんがどんどん人間界の狡猾さを吸収している】
「いやー、でもこんなに贅沢にモフモフできるなら、後悔はないっていうか、むしろお釣りが来るっていうかー」
クシナはすでに五匹の柴犬コボルトを浴びていた。
傍らには五つのホットドッグがお土産袋に詰められている。
「あぁー、幸福じゃ……幸福なんじゃぁーーーー」
柴犬コボルト達の中で、クシナは恍惚の表情を浮かべている。
「ホットドッグはあとでスタッフがおいしくいただきますからねーーーー!」
一方で、ユリアは一匹の子コボルトを大切そうに抱きしめていた。
「うむうむ……満足いただけたようでなにより☆ でもまだ二階ですよー。次に行きますよー☆」
「嫌だ! 私は一生ここにいる!」
クシナは拒絶し、ユリアもこくこくと頷いていた。
「はい、こちら三階ですよ☆」
「「……はい」」
【クシナとユリア、露骨にテンション下がってて草】
【わかるぞ】
【もっとモフモフしてたかったよね】
「はは……」
妖狐は苦笑いしつつも仕事を続ける。
「えーとですね☆ 三階と……あとこの上の四階はですね……アクティビティエリアとなっております☆」
「アクティビティエリア?」
「そうです☆ ゲーム性のあるエリアとなっておりまして、二つの階層をクリアし、五階に辿り着くことができると、ちょっといいことがあるというわけです」
「なるほどです……」
「この三階は〝人狼迷路の館〟となっております」
「なるほど! ご紹介ありがとうございました! では……!」
クシナとユリアは階段を降りようとする。
「ちょちょちょ!」
妖狐が止めようとするが、二人は二階へと誘われていく。
「えー、困ったなー……ちゃんとレポートしてくれないと、謝礼はお支払いできないって聞いてるんだけどなぁ……」
その言葉にクシナとユリアはぴとりと足を止める。
「くっ……! そ、それはまずいです……非常に……」
「ミカリに……ミカリに……」
二人は青ざめ、カタカタと震える。
【どんだけ恐れてんだよw】
【またまたー、いつも穏やかなミカリがそんな怖いわけ……】
【……怖いわけないよね?】
「ないです!」「ないない、全然、怖くないよ」
二人は我に帰ったように、ミカリ怖い説を必死に否定する。
「えーと、進めてもいいかな? 人狼迷路の館では、何人かの参加者が集まって、別々の扉から一斉にスタートします。フロアは迷路上になっておりまして、四階へと繋がる階段を見つければクリアってわけです☆」
「なるほど、迷路ですね! 迷路は得意です!」
「ただし……!」
「ただし……?」
「参加者の中には、狼男が混じっています」
「……! なるほど……! それで人狼迷路というわけですね。人間に化けた人狼に襲われないように、ゴールを目指すと……更にはどの人が人間に化けた人狼かを当てて追い出す会議なんかがあったりしちゃうんですよね? そういうことですね!」
【おぉ、人狼ゲームっぽい迷路ってわけだな】
【え? なにそれ結構、面白そうじゃん】
【ちょっと難しそうだけど行ってみたくなってきた】
「えーと……まぁ、本当はそうしたかったんだけど☆」
「ん……?」
「こちらスタッフの狼男達です☆」
妖狐に紹介されると、狼男数名が頭を搔きながら「どうもっす」とか言いながら現れる。
「…………めっちゃ狼男!」
肝心の狼男は普通に狼の頭をしていた。
「彼ら、まだ未熟で人間に化けることができないので、もう最初から普通に狼男です。この狼男から逃げつつゴールを目指してくれ☆」
「…………推理要素皆無……!」
「まぁ、そういうことなんで、三階はちょっと残念施設になっています☆」
【ちょ、それ言っちゃう?w】
【逆に清々しいね】
【でもまぁ、今のままでも正直、そこそこ面白そうではある】
狼男数名が頭を搔きながら「へへ、すんません」「精進します」とか言いながら去っていく。
「それじゃあ、今日は特別に三階はスキップして四階の方に向かっちゃいましょう☆」
「あ……はい……」
そうしてユリアとクシナは四階に案内される。
四階に上がると、目の前には門があり、内部は視認できない。
「四階……ここが五階へと向かう最後の試練だ☆」
【今のところ二階のモフモフカフェを抜け出すのが最大の試練っぽいな】
「この四階のアクティビティは、ずばり〝モフモフ地獄〟!」
「「……モフモフ地獄?」」
ユリアとクシナは緊張した面持ちで聞き返す。
【地獄だと?】
【どんな険しい試練が待ち構えているんだ……】
【まさかキルされたりはしないよな?】
「百聞は一見に如かずだぜ☆ その門をくぐれば全てがわかる。モフモフパーク最大の試練を是非、体感してくれ」
「「……ごくり」」
ユリアとクシナは息を呑み、そして門に足を踏み入れる。
「「「「「「「「「「わんわんおー!!」」」」」」」」」」
「「ひっ……!」」
夥しい数のコボルト達だ。
「「わぁあああああああああ!!」」
二人はあっという間にコボルト達に飲まれ、姿を消す。
【な、なんということだ……】
【これがモフモフ地獄……】
【その名に違わぬモフモフっぷり】
「このモフモフ地獄を企画するにあたり、様々なタイプのコボルトにご協力いただいている……ということみたいだ☆」
【確かに柴犬っぽいの以外にもいろんなのがいるな】
【レトリバー、コーギー、コリー……】
【トイプードルタイプはモフモフ感が半端ないな】
「クシナ殿ー、ユリア殿ー、どうかなー? お楽しみいただけていますかな? ってか、生きてるかな?」
妖狐は苦笑い気味にそんなことを言う。
「はぁ……はぁ……はぁ……はっ!」
ユリアはコボルトの群れにのみこまれ、正気を失いそうになっていたところをギリギリところで自我を取り戻す。
「ちょ……ごめんね……前に進ませてね……クシナ……クシナは……」
ユリアはなんとかコボルトを掻き分けながら、クシナを探す。
「っ……!」
そして、コボルトの中に人間の脚らしきものがちらりと見える。
「クシナ……!」
「あ゛……ぁあ゛……あ゛……これは……モフモフ……てん……ご……くぅ」
クシナはもうなんか映してはいけない感じになっていた。
「えー、クシナ殿は四階でモフモフの犠牲になってしまったので、五階のレポートはユリア殿だけになります」
「……はい」
「あ、ちなみにクシナ殿は一命をとりとめ、命に別状はないとのことです」
【それはよかった】
【本当にリライブ発動したかと思ったわw】
【いや、一命をとりとめって結構、危なかった時に使う奴】
「なお、今日はレポート用に特別にモフモフ地獄のモフ量を特モフとしておりました。コボルト達を過密にしすぎることもあまりよろしくはないということで、通常、営業時はもう少し控えめになっております。ご了承くださいね☆ それじゃあ、無事、モフモフ地獄の試練をのりこえたユリア殿は五階に行きましょうね☆」
「うん……」
「ユリア殿……どうぞどうぞこちらへ☆」
【五階到達おめ】
【確か五階についたらちょっといいことがあるって言ってたよな?】
【何があるんだろ。わくわく】
妖狐とユリアの二人は五階へと上がる。
【ん……?】
【なんだなんだ?】
【誰かいるぞ】
「あっ……」
その人物を見て、ユリアは少し頬を染める。
「おっ、ユリアか。お疲れ」
「……クガ」
五階にいた人物。それはクガであった。
【は……?】
【なんでクガがいんだよ!】
【どういうことだよ!】
リポーターの反応とは裏腹にコメントは怒りや苦情で溢れかえる。
予想通りの反応にクガは少しへこむ。
「はい☆ 五階はいわゆるミーティングスペースです! 試練を乗り越えたお客様には、我がモフモフパークが誇るちょっとした有名人に会うことができます☆ 会えるのは……我らが吸血鬼先輩! わらわの主、人狼! 僭越ながら、わらわこと妖狐! そしてクガ殿の四人のいずれか! 誰に会えるかは、その日によって変わるから楽しみにしておいてくれ☆」
【いや、待て】
【一人だけハズレいれるのやめろ】
【普通に考えてクガだったら子供泣くぞ?】
【ダンジョンに子供が入れなくて本当によかった……】
【で、吸血鬼さんはどうした?】
【俺達は吸血鬼さんを見に来てるんだよ!】
【そうだそうだ! 吸血鬼さんを出せ!】
「えー、吸血鬼先輩は今日はでません☆」
【えぇええええええ!?】
【な、なんだと……】
【ど、どういうことなんだ?】
「吸血鬼先輩から伝言です。私に会いたかったら、モフモフパークに是非、遊びに来てね!」
【これは……】
【くそっ……やられた……】
【こんなん……行かないわけにはいかないじゃないか】
「うむうむ☆ それじゃあ、ユリア殿、そろそろ……」
「あ、はい……え、えーと本日は……ありがとうございました……えーと……終わりです」
【ゴリア様の配信締め、珍しい】
【たどたどしいが、これはこれで奥ゆかしいものがある】
【ゴリア様ぁああゴリゴリぃ
ぶちっ。
こうしてモフモフパークのプロモーション配信は終了したのであった。
「あ、あの……クガ……」
配信終了後、ユリアがクガの名を呼ぶ。
「ん……? どうした?」
ユリアは下におろした両こぶしをぎょっと握りしめ、意を決したように言う。
「わ、私は……その…………クガでよかったよ……」
「……!」
「あ、えーと……私、何言ってんだろ……だって、他の人だと面識とかないし……えーと……あーと……そのぉ……」
「あ、ありがとな……ユリア……」
「…………うん」
クガとユリアの二人は照れるように目を背ける。
「えーと……なんなんすかこれ☆」




