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追放された器用貧乏、隠しボスと配信始めたら徐々に万能とバレ始める~闇堕ち勇者の背信配信~(WEB版)  作者: 広路なゆる


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103/111

103.レポート

 一か月後――。

 双頭ダンジョン、上層43層、湖畔エリア――。


「はい、どうも、クマゼミのクシナでーす」


 ボブスタイルの黒髪に明るい瞳、やや童顔で背は160センチくらい。深緑の制服のような衣装を身にまとった少女がドローンの前で、笑顔で手を振る。

 クシナというその少女はクガが元いたパーティ〝クマゼミ〟のメンバーで、ジョブは再生士だ。

 クシナはクマゼミを抜けたクガの代わりに、現在、回復役を務めている。


 そんなクシナは更に続ける。


「今日は、あの吸血鬼のアリシアさんと、クマゼミ元メンバーのクガさんがもうすぐモフモフパークを開業するということで、特別アンバサダーとして招待されております! 本日はリスナーの皆さまに、モフモフパークの魅力を余すことなくお伝えできたらと思っております! えぇ……まぁ、いわゆる案件ですね!」


【魔物からの案件w】

【めっちゃ楽しみにしてた】

【いいでしょう。続けなさい】


「それでは、モフモフパークのレポートをわたくしクシナと……」


「…………」


「ほ、ほらっ……ユリアさん!」


「あ、あ……ゆ、ユリアで……お送りしていきたいと……お、思います」


 クシナに小突かれてたどたどしい自己紹介をしたのはクマゼミメンバー聖女のユリアである。

 透明感のある青みを帯びた瞳と肩くらいまでの髪にヘッドドレスをつけ、深い青を基調とした修道服をドレス調にアレンジした服装。非常に整った顔立ちの女性は普段のクールな様子とは異なり、少々、あせあせとしている。


【え? ユリア? ミカリでなく?】

【まじか。こういうのはミカリが出てくると思ってた】

【ゴリア様ーーーー! 頑張れーーーー!】


「ゴリアじゃない!」


 ユリアは自身に付けられた少々、不本意なあだ名に対し、抵抗する。


【まだ公認には至っていなかったか……】

【かわよ】

【しかし、どうして今日はミカリじゃなくてユリアなのよ?】


「えー、実はですね、クガさんから本件のオファーが来たのですが、珍しく、ユリアさんが立候補しましてねー」


 リスナーの疑問にクシナが答える。


「あぁ! クシナ、言うな!」


 ユリアは恥ずかしそうにしている。


「あ、ごめんなさい……で、でもミカリさんは感動してましたよ? ユリアが成長したって……」


「わ、私は子供か……!」


 ユリアの憤慨をスルーして、クシナは続ける。


「それで、まぁ、二人で頑張ってこいってことで……今日はこのペアでやることになりました! いやー、正直、ユリアさんと二人きりって初めてですし、何考えてるわかんないので、ぶっちゃけちょっと気まずいですねー!」


「ちょ! はっきり言い過ぎ!」


 にっこにこでぶっちゃけトークするクシナに、ユリアは言葉少ないながらも抵抗する。


【今のところ意外とおもろいw】

【ユリアがいつも以上に言葉を発しております】

【いいでしょう。続けなさい】


「はい、それじゃあ、早速、モフモフパークの方に向かっていきたいと思います! 行きますよ! ユリアさん!」


「うん……」


 クシナが前を歩き、ユシアがとことことついていく。


「あ、見えてきましたね! あれが本日、ご紹介するモフモフパークです!」


 クシナが掌を向けると、ドローンがモフモフパークの外観を映し出す。


【おぉー】

【なんか前より少しファンシーな感じになってる?】

【よさげ】


 基本的な構造は、以前の城と変わりはないのだが、配色がパステルになっていたり、わたあめのような球体が周囲に取り付けられている。

 また、城の周囲にも小型の建物がいくつも配置されている。


「俄然、わくわくしてきましたねー! ユリアさんはどうですか!?」


「えっ? 私……!?」


「そう、ユリア、君だ……」


「っ……! わ、わかったけど、その言い方、なんかやめて!」


「へへ、すみません」 


「か、感想を言えばいいんだよね?」


「その通りです!」


「え、えーと……えー……エモい?」


「え……? えーと……エモいいただきましたー! 外観だけでエモいということで、中に入れたら彼女は一体、どうなっちゃうんでしょうね! 今から非常に楽しみです!」


「ちょ! どうもならないよ!」


【最初から飛ばしてるねー】

【微笑ましい】

【いいでしょう。続けなさい】


 と、そこへ、


「はいはいどーも☆ 君達が吸血鬼先輩が雇った宣伝担当の人間かな?」


 突如現れた少女がユリアとクシナの二人に話しかける。

 白い和装を身にまとった犬のような耳とふさふさな尻尾がついた小柄な少女の姿をしている。


「あ、はい! そうです! って、あ、あなたは妖狐さんですね!」


「そうでーす☆」


【おぉー、妖狐だ】

【妖狐が案内人とは豪華だな】

【すでにモフの気配】

【できることならモフりたい】

【殺されるぞ?】

【妖狐ちゃんモフれるならリライブ権など安いものだ】


「う……なにか寒気が……」


 リスナーのコメントは妖狐には届いていないが、妖狐は身震いする。


「それで、えーと……」


「あ、私はクシナです! こっちはユリアさんです」


「はいはい、クシナ殿とユリア殿ね。覚えた覚えた☆ それじゃ、早速、案内していくね。こっちここっち☆」


 妖狐に手招きされ、ユリアとクシナは妖狐についていく。


「はい、ここが入場門ね☆」


「う、うわーー、大きな門ですね」

「おっきぃ……」


 クシナとユリアはそれぞれ高くそびえたつ両開きの門を見上げる。

 門は閉ざされている。


「はい、入場する前にあの券売所でまずは入場チケットを買ってね」


 妖狐は門の外側にある小さな建物を指差す。


「ちなみに、今日はクシナ殿とユリア殿はゲストなので、もちろん券は不要だけど、一般のお客様は購入をお願いしまっす☆」


「なるほどです、ちなみに料金の方はどれほどでしょうか」


「入場料が4900円となっております☆」


【なるほど、結構リーズナブルだな】

【物価が高騰して、某夢の国の料金が30000円近いからな】

【ダンジョンは子供入れないから、子供料金はなしだな】


「ありがとうございます。今日はゲストということでなんだかお得な気分です。それじゃあ、えーと、妖狐さん、門を開けてもらえますでしょうか?」


「え? どういうことだ?☆」


「え? どういうことだ? とは、どういうことでしょう?」


「いや、だから門は自分で開けてもらわないと☆」


「……!?」


 クシナは意味がよくわからない様子で笑顔のまま汗をかいている。


【入る時は自分で門を開ける。そりゃあ、普通だよな】

【テーマパークなのに?www】

【甘えを許さないテーマパーク】


「……こんな重そうな門ですが、私にも開けられるんでしょうかね。まぁ、ひとまずはやってみたいと思います」


 クシナは少々戸惑いつつも門の前に立つ。

 そして……、


「うぉりゃぁあああああ!! あぁああああああぁあああああ!! ぐぎぃいいい!!」


 両手で思いっきり門を押す。


 しかし、門は開かない。


「はぁ、はぁ、ダメだ…………妖狐さん、ひょっとしてやり方が違うのでしょうか?」


「いや、合ってるよ☆ 単純に力が足りないのだと思う」


「そんなぁ……」


 クシナはべそをかく。


「あ、ちなみにあっちには普通のゲートもあるよ☆」


 大きな門の脇には、開放されたゲートもあった。


「え? あるんじゃないですか! じゃあ、行きましょうよ、そっちから!」


「いいけど、本当にいいのかい? クシナ殿」


「え……?」


「いや、まぁ、別にいいっちゃいいんだ。でも本当にいいのかなって……」


「っ……!」


 その時、クシナに電流走る。


「この仕組み……ど、どこかで見たことがあります……!」


【脇の門から入ると、罠で生きて帰れない奴w】

【考えた奴誰だw クガだろ】

【いい加減にしろw】


 と……、


「私がやる」


 ユリアが前に出る。


【うぉおおお、ゴリアぁああ!】

【大丈夫か?】

【ゴリア様のゴリラ並みの怪力で無理ならほとんどの人間無理じゃね?】


「……だからゴリアじゃないって」


 リスナー達の期待を一身に受け、ユリアは両の手で思いっきり扉を押す。


「せぁあああああ! あぁああああああ! ……らぁああああああ!!」


「あっ……! 開いた……! すごい! ユリアさん!」


 門が僅かに開く。


「今のうちに中へ……!」


 轟音を立てて、門は再び閉じられる。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 ユリア、クシナはなんとか門の中に入ることに成功する。


 しかし、安堵も束の間であった、


 何か異様な気配を感じ、二人はふと顔を上げる。


「きゃぁあああ!!」「っ…………!!」


 クシナは悲鳴をあげ、ユリアは絶句する。


 そこにいたのは、巨大な犬だ。

 しかも、その犬は三つの頭がある。

 その姿はまるで地獄の番犬……、


「……ケルベロス」


 ケルベロスはクシナとユリアを見据え、ゆっくりと近づいてくる。

 その姿に、二人は本能的な恐怖を覚える。


「ひっ……妖狐さん……ってあれ? 妖狐さんは!?」


 クシナは妖狐がついてきていないことに気が付く。


「え……? 嘘……ちょ……アリシアさん、クガさん……? もしかして私達をはめ……」


「「「わんわん(おう)ー!」」」


「え……?」


「「「わんわん王ー! わんわん王ー!」」」


 ケルベロスが突如、腹を見せて転がりだす。


 その姿を見たクシナはふらふらと歩きだす。


「ちょ、クシナ……? ど、どうしたの?」


「きゃ……」


「きゃ……?」


「きゃわいいぃいいいいい!!」


 クシナはケルベルスに突撃していた。


「ちょ、あ、クシナ……!」


 ユリアはクシナの死を覚悟したが、それは杞憂で済んだ。


 ケルベロスはクシナを受け入れ、クシナはケルベロスのモフモフにダイブしている。


「……ちょっ! クシナ! レポートを忘れないで!」


「はっ……!」


 我に帰ったクシナがユリアの元へ戻ってくる。


「いやでも、もしかしてこれ……この大きな門は試しの門で、私達はこの門から入ったから、ケルベロスに襲われずに済んでるのかも……。あっちの小さいゲートは罠……あのゲートから入ったら……」


「ひ……」


 クシナとユリアはケルベロスに八つ裂きにされる自身の姿を想像し、ぞっとする。


 と……、


「あ、どうもクシナ殿、ユリア殿、お疲れ様☆」


 その小さいゲートから妖狐が入ってくる。


「「あぁあああああああ!」」


 ユリアとクシナは激しく動揺する。


「ん……? どうしたんだ?」


「そ、そのゲートから……そのゲートから入ると……! 妖狐さん、逃げてぇえええ!」


「なんで……?」


「「え……?」」


「よ、妖狐さん、そ、そっちのゲートから入ると、ケルベロスさんに襲われるんじゃ……そういう風にプログラムされているんじゃ……」


「へ……? どっちの門から入っても同じだけど……」


 特にそういうのはなかった。


「……ということで、入ってすぐにケルベロスさんと戯れることができるみたいです! あの二つの門はクガさんの謎のこだわりだそうです! 全く紛らわしいですね!」


 クシナは笑顔だが、少々、キれ気味にレポートを再開する。


【入場即、ケルベロスと戯れられるとかすげえな】

【あんな巨体……モフモフしてえ】

【これぞ最初からクライマックス】

【しかし元はSS級だからな……急に襲ってこないかちょっと怖い……笑】


「あのぉー、クシナ殿、ユリア殿、そろそろ次のエリアに進んでも?」


「「はっ……!」」


 ユリアとクシナはすっかりケロべロスのモフモフの虜になっていた。


「名残惜しいですが、そうですね。ユリアさん、行きましょう」


「わ、わかった……」


「「「わんわん王……」」」


 ケルベロスは残念そうに、甘えるように鳴く。


「「……くっ」」


 そうして二人はケルベロスに後ろ髪を引かれつつ、妖狐についていく。


「らっしゃいー」

「へい、らっしゃいー」

「らっしゃいー、お嬢さん、焼きそばはどうだい?」


 ケルベロスのエリアを抜けると、広場のようになっている。

 そこでは、屋台を点々と展開されていた。

 従業員は狼男達であり、活気に溢れている。


「え!? いいですね! こういうの! 食べたいです! 焼きそば食べたいです!」


 クシナは興奮している。


「へーい、1000円ね」


「ぐぬ……まぁ、ちょっとお高いですが、こういうレジャー施設特有のお祭り開放感でついつい買ってしまいそうです」


【それな】

【わかる】

【ぼったくりっぽくてもつい買っちゃうんだよな】


「まいどー」


 クシナは焼きそばを購入する。


「おいしぃーーーー!」


 クシナは焼きそばをすする。


【お味の方は?】


「なんの変哲もないよくある普通の焼きそばです!」


【なんの変哲もないんかーい!】

【無忖度で草】

【だが、それがいい】


「そうそう、こういう屋台の焼きそばっていうのは、こういうのでいいんですよ」


「気に入ってくれたようで、何よりだ☆ 焼きそば以外にも、りんご飴、チョコバナナ、かき氷、ベビーカステラ、クレープ、家系ラーメンみたいな屋台で定番の食べ物もあるから是非ご賞味くださいね☆」


【おぉー、いいねー】

【ベビーカステラとかなつかしいな】

【ん? 最後、異物まじってないか】


「ねーねー、ユリアさん、私、青のりついてない?」


「ん……? ……ついてる」


「え? 嘘……! 取って!」


「っ……! 取るってどうやって!?」


「はーい☆ それじゃあ、そろそろモフモフキャッスルの方に向かっていきますねー」


 妖狐は広場から城の方へ向かって歩き出す。


「モフモフキャッスルは豪華五階建てになっております☆ それじゃあ、まずは1階に入場いただきまして……」


「おぉー!」


 1階に入ると、クシナがちょっとした歓声をあげる。


「1階はモフモフグッズショップとなっております☆」


 柴犬コボルト、ケルベロスの人形や枕、クッションといったもの。

 狼男も少数ながら置いてある。

 また、妖狐や人狼の抱き枕などなど、ところせましとモフモフ関連グッズが陳列されている。


「うわー、すごいいいですね! この柴犬コボルト人形、手触りなんかも良くて、すごいクオリティ高いですよ! これはここに来たら、マストです! 絶対、購入です!」


【ちゃんとレポートしてる笑】

【あれ? 吸血鬼さんのグッズはないの?】

【それな!】


「…………クガのは……?」


 ぼそりとユリアも呟く。




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【小説】
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CW1L7CHY/

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【作者新作】
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