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追放された器用貧乏、隠しボスと配信始めたら徐々に万能とバレ始める~闇堕ち勇者の背信配信~(WEB版)  作者: 広路なゆる


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101.生活マニュアル問い合わせ窓口

 ケルベロスを眷属にすることに成功し、クガ、アリシア、アイエは神殿階下に戻ってきていた。

 魔物の街の外れにある洞穴である。


「いやはや、いやはや……いやー、いやはや……」


 すると、アリシアは謎の口調になっていた。


「ど、どうした、アリシア……」


 そんなアリシアにクガが声を掛ける。


「いやな、ケルベロスを眷属にできたのはとてもよかった。私はとんでもない事実に気が付いてしまった」


「……なんだ?」


「よく聞け、クガよ…………このダンジョン、ループしてる!」


「お、おう……」


「反応薄っ!」


 アリシアは自分の大発見に対して想像以上にクガの反応が薄かったことに驚愕している。


【いや、吸血鬼さん、それ、皆気づいてたよ?】

【コメントもされてたけど、ケルベロスのもふもふに興奮してて気づいてなかったのかな?】

【吸血鬼さん、気づいてえらいえらい】


「…………」


 自分以外はすでに気づいていたことを今更知り、アリシアはぷるぷると小刻みに震える。

 と……、


「まぁ、そういうことなんよ」


「「「……?」」」


 サムライの刀聖、サナダが現れ、三人に声を掛ける。


【あ、サナダだ】

【何しにきやがった】

【この人、ずっとここで待ってたのかな?】


「サナダさん、道理であっさりと上層へとつながる階段の場所を教えてくれたってわけですかね?」


 クガがサナダに尋ねる。


「まぁ、ぶっちゃけるとそうだな」


「…………なるほどです……とはいえ、ありがとうございます」


「お……?」


「サナダさんはここを見つけるのに半年かかったと伺いましたので……つまりはループしていることに気付いたのにも半年かかったということですよね? 俺達がそれに気づくまでの期間が大幅に短縮されました」


「……まぁ、確かにそうだな」


 サナダは少し声のトーンを落として答える。


「要するにだ。俺達は二年間もここにいるわけだが、ラスボスはおろか、新たなステージへの手掛かりすらも掴めていないということだ……」


「……!!」


 サナダのその言葉を聞き、アリシアは言葉にならないほどショックを受ける。


「せ、せっかくできた目標が……! ど、どうすればいいのだ? クガぁあ!」


「まぁまぁ、吸血鬼くん、まだ話は終わっていない」


「……ん?」


「この二年間、確かにこれといった手掛かりはなかったんだが、僕達が行けてなかった場所があってね……僕達もね……君達の配信については興味深く、観ていたんだ。その中で、君達は僕達だけではなかな行くことができない面白い場所に行っていてね……」


「ん……? それはどこだ?」


「〝黒幕〟らしき人物がいる場所……」


「…………あ!」


 アリシアもわかったようだ。


【黒幕だと?】

【あー……確かにいたね。露骨に黒幕っぽい人が】

【生活マニュアル問い合わせ窓口】

【セシルさんか!】


「今となってはそこくらいしか手掛かりがないんだよ。吸血鬼くん、交換条件というわけではないが、僕をあそこに連れていってくれないか?」


 ◇


 翌日――。

 クガ、アリシア……そしてサナダは空高くそびえる巨木の群生地帯に来ていた。

 そこは街の外にあり、アリシアの仮住まいから徒歩で二時間ほど掛かる。

 生い茂る巨木の中に、生きた樹木を基礎として活用した、いわゆるツリーハウスがある。

 そこが生活マニュアル問い合わせ窓口である。


【早速、来たんだね。生活マニュアル問い合わせ窓口】

【セシルさん元気かな。わくわく】

【今日はアイエはいないのかな?】


「あー、そうだな。アイエもんは、そこまで興味ない。歩いていくのだるいし、配信で観てるよ……とのことで、今日は参加していない」


【なるほどー、吸血鬼さん、答えてくれてありがとー】


「うむ」


 アリシアは満足げに頷いている。と……、


「いやー、改めてだけど、クガくん、吸血鬼くん、連れてきてくれてありがとね」


 サナダがクガとアリシアに謝意を告げる。


「お互い様というやつだ。サナダ虫には昨日、上階へとつながる場所を教えてもらったしな。それに私はこの場所が怪しいということをすっかり忘れていた。そういう意味では一つの手掛かりを思いださせてもらったことにも感謝せねばならぬな」


「そりゃどうも……それにしても吸血鬼くん、君は義理堅い魔物だね……」


「え……!?」


 サナダに急にそんなことを言われてアリシアは虚を突かれたように驚いている。


「吸血鬼くん、君は下手な人間よりも人格者だよ……」


【それな】

【吸血鬼さんは間違いなく俺よりいい人】

【たまにはいいこというじゃん、サナダ】


「…………それに私はどう反応すればいいのだ? なぁ、クガ……!」


 アリシアは困った時はクガに頼る。


「素直に喜べばいいんじゃないか?」


「だがなぁ、人間ができていると言われて、喜ぶのは魔物としての矜持が……!」


 と……、


「だがしかし……やりやすいからこそ……やりにくい」


 サナダが憂うように呟く。


「ん……? どうした? サナダ虫」


「いや、こっちの話だ。気にするな」


「う、うむ……では、そろそろ入るとするか。覚悟はいいか?」


 クガ、サナダは頷く。


 そうして、クガ、アリシア、サナダの三人はツリーハウスに足を踏み入れる。


 ツリーハウスの中は、外部と違って、近未来的なデザインの空間である。

 大きな球体の中に、立方体(キューブ)がすっぽり埋まっているような作りだ。内側の立方体が半透明になっており、まるで球体の中にいるかのような感覚となる。

 そんな室内の中央部には、カウンターがあり、人型の魔物(?)が一人、立っていた。


「こんにちは、魔物の生活マニュアル問い合わせ窓口担当のセシルが承ります。本日はどのようなご用件でしょうか」


 そこには、以前来た時と同じように、(すみれ)のようなパープルのふわっとした長い髪に、白を基調として、髪の菫に近い色があしらわれたドレスを身にまとったグラマーな美少女がいた。

 セシルは穏やかに微笑みながら、まさにマニュアルどおりのような挨拶でアリシアに対応する。


【かわいい】

【相変わらず大変おおきなお胸のようで……】

【なんだろう……叱られたい】


 前回訪れた時のデジャブのように、リスナー達が各々の脳内の欲望を垂れ流す。


「久しぶり……という程でもないかもしれないですが、また来ました」


【セシルさんを前にすると、なぜか敬語になる吸血鬼さん】

【謎の威圧感な】

【黒幕感が半端ないから仕方ない】


「はい、またお目にかかれて嬉しいです。えーと……それで今日はどういったご用件でしょう? アリシア様」


「えーとな……単刀直入に聞かせてもらいたいのですが、ラスボスに関する情報を教えてもらえないでしょうか?」


 アリシアは直球で聞く。だが……、


「申し訳ありません、アリシア様。ラスボスに関する情報はこちらでは回答することはできません」


「……」


 あっさりセシルに回答を拒否される。


【まぁ、そりゃそうだよな】

【流石にそれは答えられないよな】

【だってさぁ……】


 アリシアはめげずにもう一度、質問する。


「では、えーと……質問を変えますね。セシルさんはラスボスですか?」


【いったぁあああ!】

【吸血鬼さん、ど真ん中ストレート!】

【さぁ、どうだ!?】

【ドキドキ……】


「……」


 セシルは少し間を置き、そして口を開く。


「申し訳ありません、アリシア様。ラスボスに関する情報はこちらでは回答することはできません」


 しかし、回答内容は先ほどと全く同じであった。


【え? 違うの?】

【なんだよ……確信してた奴! どうすんの? これ!】

【違うとは言ってない】


「ですが……」


 リスナー達がざわざわしていると、セシルが付け加える。


【おっ? なんだ?】


「もしどうしても確認したいというのならば、私に危害を加えれば、その答えが分かるかと思います」


「「「……!」」」


 笑顔を崩すことなく、そのような補足をしたセシルであったが、これまでにないほどの威圧感を放っていた。

 クガ、アリシア、サナダも思わず身構えてしまう。


【怖……】

【やっぱり黒幕じゃないですか!】

【どうするの? 吸血鬼さん】


「うーむ、今すぐ、試すのは流石にためらうな……」


 アリシアは顎に手を添えて、悩んでいる。と……、


「窓口くん、一つ、聞きたいことがあるのだが……構わないか?」


 隣りで聞いていたサナダがセシルに語り掛ける。


「こちらは……本来、魔物の生活のマニュアルの問い合わせ窓口なので、人間からの質問はあまり想定していない事象ではあるのですが……」


 セシルは困ったように眉を八の字にしている。


「だが、前回、クガくんからの質問には答えていたよな?」


「…………まぁ、確かに」


「じゃあ、まぁ、勝手に聞くことにする。ダンジョンは人間がつくったものか?」


【えぇえええ!?】

【なに突然、とんでもないこと聞いてるの!?】

【そんなわけ……】


「…………そうです」


【え……?】

【なんか答えてくれちゃったよ】

【いいの……?】


「あまりにも当前のことであり、回答を拒否する必要性すらないですので」


【と、当然?】

【どういうことよ……】

【そりゃそうでしょ】

【だって、ダンジョン内部の構造や魔物が人間が想像した存在ばかりじゃん】

【ドラゴン、ミノタウロス、ケルベロス、吸血鬼……全部、人間が想像した存在】

【そういうのが都合よくいる時点で、人間の思考が介在している以外ありえないでしょ】

【実際、そういう説は溢れてたじゃん】

【お、おう……】

【言われてみると確かにそうかもしれんのだが……】

【お前ら、急に饒舌だな。まるで最初から知ってましたとでも言うように】

【解せぬ】

【わかってしまった後からなら何とでも言える】


 コメント欄は〝困惑組〟と〝知ってました組〟と〝後出し卑怯組〟に分かれる。


「まぁ、やっぱりそうよね……やけにあっさり答えてくれたのは少々、想定外ではあったけども」


 サナダは更に質問する。


「窓口くん、より詳しく教えてもらうことはできるか?」


「…………あまり詳細を人間に伝わるように、言葉で語るのは難しいのですが、ものすごくざっくり言いますと、米国某社のAIの自己進化により、モデルの現実重畳技術が確立され、シミュレーションワールドの生成と融合され、それが暴走し、世界各地で同時に……」


【あー、ね……現実頂上技術ね。知ってる知ってる。やっぱてっぺんの技術はすごいよね】

【頂上じゃなくて重畳じゃね?】

【今、ものすごい事実が軽い感じで語られていないか】

【ふーん】


「……」


 セシルが何か難しいことを説明しているのをクガは黙って聞いていた。

 クガは正直、あまり考えたこともなく、全く想像もしていなかったことだった。

 だが、当事者であるアリシアのことが心配になり、ふとアリシアの方を見る。


 アリシアは眉間にしわを寄せ、真剣な面持ちでセシルの話を聞いている。


 そして、セシルが一度、言葉を区切ったタイミングで、口を開く。


「なるほど……わからん」


「……へ?」


「どうした? クガ、素っ頓狂な声をあげて」


「あ、いや……すまん」


「さっぱりわからんし、大して興味もない」


 アリシアはそう言い放つ。

 クガは内心、少しほっとする。


「サナダ虫よ、ひとまず聞きたいことは聞けたのか?」


「そうだな……おかげさまで……あとは……そうだな……窓口くんに危害を加えるかどうかという話になってくる」


「なるほど……だが、サナダ虫よ……もし、君がセシルさんに危害を加えるというのなら、私は君の邪魔をしなくてはならない」


「……! ほう……」


 アリシアとサナダ間が幾分、ピリピリとした空気になる。


【うぉ……ちょっと急にどうした?】

【えっ、まさかの吸血鬼さん、臨戦態勢?】

【怖い】


「吸血鬼くん、一応、聞こう。なぜだ?」


「君も知っているだろ? ラスボスを倒すのは私だ。横取りは許さん」


「まぁ、そういうことでしょうね……」


 サナダはわずかに微笑む。


 と……、


「あ、あの、サナダさん、ちょっといいでしょうか」


 横で聞いていたクガが口を挟む。


「なんだい? クガくん」


「そもそもなんですが、サムライさんはやはりラスボスを倒したいと思っているのでしょうか?」


【確かに……】

【そういえばどうなんだろうね?】

【失踪する前、サムライが最速でS級、SS級と倒していた頃もあんまりその目的については語ってなかったよね】


「そうだな……倒すべきと思っている。だから探してる」


「なるほどです……ちなみにですが、差し支えなければ教えてください。なぜでしょうか?」


「簡単なことさ……このダンジョンは人間が想像したファンタジーやゲームがモデルになっている。それは先ほど、正に窓口くんにより証言されたわけだが。だとしたらだよ? クガくん、このダンジョンを一般的なゲームのストーリーと仮定して考えてみなよ……ラスボスを倒さずに放置するとどうなる?」


「え……?」


「ラスボスは世界を滅ぼす存在なんだよ」


「……!」


【まぁ、設定上は確かにそういうのが多いよね】

【特にレトロなゲームはそういうシンプルな設定だな】

【言うて、ゲームのラスボスって放置してるとあっちからは襲ってこないことも多いけどなw】


 楽観的に考えれば確かにそうである。

 しかし、ラスボスがずっと待っていてくれる保証はどこにもない。クガもそう感じた。


 サナダは続ける。


「だから、僕達はラスボスを倒そうと思っている。人間と魔物の〝秩序〟を守ること。それが僕達サムライの活動理念だからね」


「…………わかりました」


 普段ちゃらけた様子のサナダであるが、その信念は正に〝ヒーローのそれ〟であり、クガは少しはっとするのであった。




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【作者新作】
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