衆参同日選挙はあるのか!? 内閣不信任提出について
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
今回は「内閣不信任案」と「衆参同日選挙」について個人的な解説と考察をしていこうと思います。
質問者:
ニュースでも度々話題に挙がっていますけど、「内閣不信任案」の提出と「衆議院解散」の可能性はどれぐらいあるんですか?
そして、どうして不信任案提出の話題の際には立憲民主党ばかりスポットライトが当たっているんですか?
筆者:
まず、基本的なことから振り返ろうと思うんですけど、
日本国憲法第69条では
衆議院で出席議員の過半数で内閣不信任決議案が可決されると、
10日以内に衆議院が解散されない限り内閣は総辞職をしなければならない。
と言う規定があります。
その上で衆議院規則では内閣不信任案の提出には衆議院に所属する50人以上必要とあります。
つまり、単独で提出できるのは野党では立憲民主党だけであり、立憲民主党以外の野党は複数が結託しなければ不信任を提出することも出来ません。
質問者:
野党の中では数も圧倒的に違いますし、立憲民主党の胸先三寸で決まりそうだから注目されているんですね……。
解散した場合は「衆参同日選挙」は確実なんでしょうか?
筆者:
憲法54条1項には解散の日から40日以内に衆議院議員総選挙を行うことが規定されており、6月10日頃に解散すれば7月20日前後の参議院に間に合います。
衆議院選挙後の1週間後に参議院選挙と言うのはあまりにも効率が悪い上に、有権者の心証も悪いでしょうから「Ⅹデー」があるとするのであれば6月10日以降になると思います。
質問者:
国民心情や情勢を鑑みるとそうなりそうですね。
不信任が可決してしまったら総理大臣は総辞職か解散と言う事なんですけど、石破総理はどのような決断をしそうなのでしょうか?
筆者:
日本維新の会の前原誠司共同代表は6月5日の記者会見で、石破茂首相と面会した際に「内閣不信任案が出れば解散すると言っていた」と証言しています。
質問者:
えっ……今のままだと敗色濃厚なのに解散までしたら終わりだと思うのですが……。
筆者:
本来であれば、今マスコミが過剰と思えるほど持ち上げている小泉進次郎氏に席を譲って辞任と言った形が自民党の議席を増やす意味では最善手に近いでしょう。
しかし、石破総理の心中としては「1日でも長く居座りたい」と言う気持ちがヒシヒシと伝わってきます。
潔ければ昨年10月の衆院選で大敗した段階で辞任しますからね。
これまで4例しか不信任案が可決されたことは無く、最後も1993年の宮沢内閣の時なので32年ぶりの不名誉になるためだからですね。
しかもその際には1955年から政権の座にあった自民党が初めて下野した選挙だったので「不吉」だと感じると思います。
だから「不名誉や不吉を回避」するために解散してでも1人でも長く政権の座に居座り続けるのだと思います。
質問者:
何か「国民のための選挙」と言うより、どこまでも「自分たちの状況がどうなのか?」と言う話に終始している気がしますね……。
筆者:
本来であれば政治の主役は国民であり、
あくまでも議員は国民の代議士に過ぎないわけです。
しかし現状は本来の主役である国民が置いてけぼりを食らい「政治闘争ショー」を見せられているのであるべき姿とはかけ離れていますね。
「投票率が低ければ全員落選の上に次の選挙に出馬できない」とかそう言う事も無いんで、「相対的に良ければいい」だけですからね。
野党もお偉い方々は多少選挙で負けても安泰でしょうし、ある意味「与野党裏で手を握っている」と言えます。
◇与野党ともに「国民不在の争い」があまりにも悲しい
質問者:
石破総理が解散しそうだという事は分かりましたけど、
一番のキーパーソンである立憲民主党はどうなんでしょうか?
筆者:
本来であればこれを機に一気呵成に衆参同時にとって政権交代!
と行きたいところなんでしょうけど、先日の「厚生年金流用法案」によって一気に支持基盤が崩壊しています。
そのことから「ほとぼりが冷めるまで」立憲民主党は衆院選挙はやりたくないのではないかと僕は思っています。
質問者:
確かに、筆者さんが言うような「将来の増税」について認知されていない割には批判の声が大きいですからね……。
立憲民主党はその「立役者」だったわけですから批判の的になっても仕方ないですね……。
筆者:
立憲民主党としては「政権担当能力」を見せようと思ったんでしょうけど、
「国民にとって悪影響を与える法案を通す能力」や「改めて増税政党である」ということを見せつけただけになりましたね。
しかし、
23年6月の通常国会
23年12月の秋の臨時国会
24年6月の通常国会
24年10月の秋の臨時国会
と4国会回連続で内閣不信任案を提出しておきながら、いざ不信任が成立するかもしれないという段階で「自分の都合で日和る」というのは何とも情けない話です。
質問者:
過去の自分たちの発言にある種「攻撃を受けている」って凄い皮肉ですね……。
確かに前回だって立憲民主党は比例代表の得票数は前々回の108万票から7万票しか増えなかったようですからね……。
筆者:
そうです。立憲民主党は小選挙区で「相対的に勝った」ことで議席が50増えたに過ぎません。
去年10月の時点では「裏金問題」や「石破総理の手のひら返し」で自民党に大逆風が吹き荒れた中でようやく150議席を取れたに過ぎませんしね。
今立憲民主党に批判が集まっている状況で衆参同日選挙を行っても政権を取れる自信が無いので出来るだけ不信任を出したくないと思います。
しかもこれまで立憲民主党は内閣不信任案を提出する際に他党から批判されても、
「内閣不信任案を出すことが野党第一党の矜持」
だといって無理やり提出していました。
今は「日米間の関税交渉中の政治空白などを懸念」と言う事で「総合判断」と言う事にとどめている状況です。
質問者:
これまでの流れからしたら、勇み足で不信任案を提出しそうなのに哀れすぎます……。
筆者:
しかも今の状況下で解散しても「ギリギリ自公で過半数割れるかどうか」と言った寸評をしている選挙のプロの方も多く見られます。
なぜなら、「厚生年金流用」で立場を悪くした立憲民主党だけでなく、関西万博の不振から維新の会の評価は低下、山尾(菅野)氏公認で一気に支持率を下げた国民民主党と主要野党にはどれも「キズ」がある状況だからです。
(それ以下の議席数の政党は小選挙区で多くの候補者を当選させる組織力すらないために大勢に影響を与える力は持たないでしょう)
質問者:
うわぁ、今のままだと「投票に行かなくて組織票で自民が相対的に勝利」と言う構図なんですね……。
筆者:
非常に残念なことですが、現状を分析すればそうなります。
だから立憲民主党だけでなく他の野党も不信任案に乗らない可能性も十分にあるのです。
野党の方々も胸に手を当ててよく考えてもらいたいですね。
「国民不在」の「政治ごっこ」をやっているから自民党がこれだけ「やりたい放題」やっているのに政権の座から降ろすことが出来ていないという現実をね。
質問者:
溜息しか出ませんね……。
このままだと衆参同日で政権交代はおろか参議院選挙単独で行われても自公の過半数割れも難しいかもしれないのですか?
筆者:
現状はそうです。
しかし、前回の衆院選挙でも「裏金議員に2000万円渡していた」ことから自民党支持率が急落して自公過半数割れしたと言ったこともありました。
石破総理大臣の「自爆次第」ではまだ何があるか分からないと言った感じです。
(小泉進次郎氏に“禅譲”する可能性もゼロでは無いですが“辞任後の余程の好条件”が保障されない限り可能性は低い状況だと思います)
質問者:
「公約違反」をしても良いと石破総理大臣が国会で答弁されているぐらいですから有権者の心情は悪いですからね……。
筆者:
立憲民主党以外の野党は「立憲民主党に今こそ自民党との対決姿勢を!」と圧力をかける意味でも複数集まって内閣不信任案を提出した方が良いと思いますね。
維新や国民民主であれば失点を回復できるチャンスですし、それ以下の政党も知名度を上げるチャンスになります。
質問者:
50人であればまだ集まる可能性がありますよね。
筆者:
例え提出した段階で石破総理が解散をせずに、立憲民主党が不信任に賛成しなかったとしても「これまでの立憲の対決姿勢は偽物!」と主張することで参議院選挙では有利に働くでしょう。
立憲民主党が不信任に応じるつもりが無くても石破総理が何か見誤って解散してくれるかもしれないので、立憲以外の野党には不信任を提出するメリットがあると思っていますけどね。
僕がそう思うだけでご本人たちはどう思うのかは分かりませんけど。
質問者:
でも、仮に衆参同日選挙が起きたり政権交代するとして今の関税交渉などの大きな課題は大丈夫なんでしょうか?
筆者:
基本的には7月頭までの期限がありますから一応は石破政権内で関税交渉は一区切りつくと思いますよ。完全には交渉がまとまらなくても「先延ばし」ぐらいはできるのではないかと思います。
あとは良くも悪くも予算も成立してしまいましたから、いわゆる「政治空白」は起きません。
立憲民主党は議席を減らしたくない、この状況下で政権を取れないなんてみっともないという「自分可愛さ」のために詭弁を弄しているようにしか僕には見えませんね。
質問者:
結局は“自分ありき”ということですか……。
筆者:
こういった非常に低レベルな与野党の「政治ごっこ」を終わらせるためにはやはり国民側が声を上げていき選挙前後以外でも政治に関して発信をしていく他無いです。
政治家にとってみれば「投票に行ってくれないこと」が最大のメリットのある状態です。
何せ規模が大きい政党であればあるほど組織票がありますからね。それを存分に活かすために「国民に対して政治に失望」させているのです。
僕も確かに存分に政治に対しては失望していますが、「日本の未来」に対しては諦める気は微塵もありません
今後も僕なりの視点で、皆さんになるべく興味を持ってもらえるように政治経済に解説していきますのでどうぞご覧ください。