銭湯にお客様が来ましたが貴方は出禁です
「今日はお客さん来るかねー」
「どうだろう。でも、グランさんを傷つけた人がいるかもだから、かな君ちゃんと用心が必要だからね」
今朝傷だらけのグランが倒れていたから、この近くにグランを傷つけた者が潜んでいてもおかしくは無い。
銭湯を開けて2時間経ったが、まだ誰もお客さんが来ない。
「私おやつ取ってくるー」
「俺のも持ってきてー」
奏は「分かったー」と言い居住地に向かった。銭湯と居住地は繋がっている為、外に出なくても居住地に行くことは可能なのだ。
「すみませーん!ここは何ですかー?」と普通の人っぽい男性が入って来た。さっそくお客さんが来たようだ。
「ここは銭湯です」
「セントウ??……戦闘??……戦う場所ですか?!」
どうやら異世界には銭湯は無く、この男性は戦闘する場所と勘違いしてしまったようだ。彼方はすぐさま戦闘する場所なのではなく、湯を溜めて浸かり身体の疲れを取る場所と説明する。男性は納得をして戦闘する場所ではないと理解して安心したようだ。
「ここにいるのは君だけかい?」
「まあ、はい」と彼方は返事をした。今ここにいるのは彼方だけなので、奏の事は説明しなかった。もし、この銭湯を営業しているのが彼方1人なのかと尋ねられたら、奏と2人で営業していると答えはしただろう。
「そうか。なら、君を殺してあいつも殺す」
「は?」
彼方は走って向かって来る男性を避けると、目の前の男性はナイフを投げてきた。そのナイフは軽々と彼方は避け反撃をしようとすると、いつの間にか来た木刀を持った奏が男性の頭を思い切り木刀で叩いた。
「なっ?!」
「え!!かな君!?」
彼方は目の前の男性に気を取られていたのか、奏が来ていたことに気づいていなかったみたいだ。奏は詳しい状況を理解してはいなかったみたいだが、彼方を害そうとしたのは瞬時に理解し反撃をしたらしい。
「で?かなちゃん、こいつ何?」
「さあ?でも、グランを狙って来たみたい」
「なるほど……じゃ、こいつ出禁にしよ」
彼方が「そうだね」と返事をすると気絶をしている男性は急にいなくなった。双子は急に気絶をしていた男性がいなくなってびっくりしている。
「「え?いなくなった?」」
「と、とりあえず外出てみる?」
「かなちゃん、そうしてみよ」
双子は外に出て見ると入口から遠く離れた所に出禁になった男性が倒れている。
「まあ、よく分かんないけど排除出来たことだしほっとこ」
「え?!かな君!なんでこうなったか調べないと!それに目を覚ましたあの人がまた来るかもだよ?!」
奏は「まあまあ、また来たら気絶させて外に放り投げとけばいいよ」と言い、奏のいつもの定位置に座った。
彼方と奏は番台に2人で座るのだ。普通なら1人だが彼方と奏は、彼方が男性側で奏が女性側に座りチケットを受け取るという役割分担をしている。彼方と奏は見た目が正反対の為、お客さんは男性側と女性側を勘違いをよくする。双子はお客さんに見た目なんとかしてと言われるが、2人は見た目は変えないでこのままでいるつもりだ。
1時間が経ったがあの暗殺者以外銭湯には誰1人来ていない。彼方と奏が異世界に飛ばされた場所は、魔物と言われるファンタジーの生き物がいる為普通の人間は砦の外にはあまり出ない。
怪我だらけのグランがなんと銭湯の方まで足を引きずりながら来た。
「え?!何でここに来たの?!傷だらけなんだから寝てて!」
彼方がグランを戻そうと近寄るとグランに拒まれてしまった。
「暗殺者が来るかもしれない。君達だけでは危険だ」
グランの暗殺者という言葉を聞き彼方と奏は目を合わせピンと来たようだ。さっき入ってきた男性はお客ではなく、暗殺者でグランを狙ってここを見つけたらしい。
「その暗殺者ならもう来たから大丈夫だよ〜。私が!撃退したよ」
彼方は奏のしたり顔を見て、あははと引き笑いをしている。まさに言葉の通り一撃で撃退をしてしまったからだ。
「は?!?!カナデが??カナタではなく?」
「グランさん、かな君って俺よりめちゃくちゃ強いよ。女の子だからって侮ると痛い目見るよー」
奏はケラケラ笑いグランと彼方のやり取りを楽しそうに見つめている。奏は日本で剣道と居合の大会で何度も優勝をしているのだ。それも男子が混じっている大会でも、軽々と優勝をしてしまうくらい強い。
「人は外見で強さを測れない者もいるのだな」
「グランさんグランさん!かなちゃんも強いよ!可愛いけど強さもあるんだよ〜」
彼方と奏は親がいないからとよく虐められていたため、虐められないよう強くなろうと武道を始めたのだ。
「というか、グランさん土とかで汚い……そんなに普通喋れるならかなちゃん湯船に入れてあげてよ」
「それもそうだね」
彼方はグランを引っ張り男湯に入って行った。奏はそれを楽しそうに後ろから見ている。こういう時男だったらなと、奏はひっそりと思っていた。
男湯に入ったグランは、彼方に服を脱がされ驚いている。まさか服を脱がさられると思っていなかったからだ。
「わー、怪我だらけだー。お湯がしみるかもだけど我慢してね」
脱衣所から湯船がある所に移動したグランは大きい湯船を見て驚いているようだ。恐らくこの世界は湯船に浸かる習慣がないのかもしれない。
「チャチャッと洗って湯に浸かろ〜」
彼方は手早くグランを洗い湯船に浸かった。
すると、グランが光り始めた。