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予備計画ともう一つの理論

十日条「これから本編の前半でする数学の二人の子ども問題をこの場(前書き)を借りて簡単に説明をする」


竹内「唐突に始まったかと思えばいきなりメタ発言!? まぁいいですけど」


十「では傾聴するように!」

竹(何か偉そうだなー)

十「えーこの問題は内容はともかく問題文はシンプルだ」


十「隣の家に住む奥さんが言った。いやその前に、この奥さんはきっと新婚ほやほやの新妻で若奥様だろう」


竹「はいストォォォォォォォォォップ!」

十「なんだよ、話の腰を折るなよ」

竹「話の腰を折ってるのは先輩ですよね! 余計な単語が出てきたし!」


十「そのままだとつまらないからアレンジした。夜の営みは激しいんだぜ」


竹「そんなこと誰が訊きました!?」

十「もういいか? 再開するぞ」

竹(まともにやれる感じがしない…)


十「隣の家に住む奥さんが言いました。『私には子供が二人います』。やはり夜はお盛んのようだ。裸エプ□ンを着て盛り上がっているのだろう」


竹「自重しろォォォォォォォォォ! あと何で数学の問題の説明に裸エプ□ンが出てきているんですか!」


十「数学者は日々その難問に挑んでいるのだよ」

竹「挑んで無えよ! 全数学者に謝ってください!!」


十「裸エプ□ンは不服か? ならバニーガールのコスにするか。巨乳なら似合うだろうな、巨乳なら!(大事なので二回言いました)」


竹「エロの格好について抗議してるわけじゃねぇぇぇぇ」

十「ちなみにR15とR18の差は『出てるのが上だけか』『下も出ているか』らしいぞ」


竹「誰も訊いてねーですよォォォォォォォォォ!」

十「新妻若奥様は金髪ツインテールの巨乳でしたとさ」

竹「属性増えてるし! そういうのは盛れば良いってものじゃないんですよ!? 」


竹「もういいです、先輩は引っ込んでいて下さい! あとはこっちでやります!!」


竹「隣の家に住む若奥様は言いました」

十(あ、伝染してる)

竹「私には子供が二人います。そのうち一人は男の子です」


十「今度は弟と妹、どっちが欲しい?」

竹「割り込んでくるなあああああ!」

十「実はあのお父さんはあなたの本当のお父さんじゃないの」


竹「なんか泥々してきた! 二人の子供は不貞の末に生まれたんですか!!」


十「今度本当のお父さんに会わせてあげるね」

竹「やめろおおおおお! 子どもの気持ちを考えろ!」


竹「てか全く進まないのでもう中止です中止! 説明は本編でやってください!!」


十「別にそれでもいいけどな」

竹「じゃあ早く本編に行きますよ!」

十「ところでまだ言ってなかったんだが…」

竹「何ですか、まだ何か言いたいんですか?」


十「お前、前半には出てないぞ」


竹「時間を返せ!!!」


※本編は真面目な内容になっています。

※どうしても金髪ツインテールの巨乳の新妻な若奥様がいいと言う人は脳内で変換してください。作者は止めません。

 お盆が過ぎて数日後。



 十日条は夕食後に田中の部屋に訪れていた。


「モンティ・ホール問題の件だったよね。進捗なら───」

「いや、そのことじゃない。話は実績作りの件だ」


 田中の頭の上に?が浮かんでいる。


「竹内が扉を変更すれば当たる確率が1/3から2/3なるのを否定すれば良いと思ってる内はモンティ・ホール問題を完全に否定することは出来ないからな」


 だから同じように直感に反する答えが正しいと思われて間違い続けている別の問題パラドックスを否定して部の実績にした方が良いと思って、十日条はそれの説明をしに来たのだ。


 もし部が存続したら10月の頭にある文化祭では去年の部の催し?だった休憩室に展示しての発表という形になるだろう。なので今のうちに大部分を任せる事になる田中に教えておこうと十日条は考えた。


「その問題は海外ではボーイorガールパラドックスと呼ばれ日本では二人の子ども問題として知られる確率問題だ」


 この問題は1959年にマーティン・ガードナーが発表したパラドックスだ。内容は、



 ある家庭には二人の子どもがいる。

 その内の一人は男の子である。

 もう一人も男の子の確率はいくらか。


※生まれる子どもの男女の確率はそれぞれ1/2とする。



「と、問題自体はモンティ・ホール問題よりもシンプルだ。※の部分は大前提だな。人によっては『()()()()()一人は男の子』やもう一人も男の子ではなく『二人とも男の子の確率は』という言い方が正しいとするけど本質的には同じだ。一応最後にその説明をする」


 そして十日条は本題にはいる。


 この問題は直感では1/2に思えるが正解は2/3になると言われている。


 理由は子どもが二人居て男女の確率がそれぞれ1/2だった時にできる組み合わせは『男、男』『男、女』『女、男』『女、女』の4つだ。

 この内で『一人は男の子』の条件を満たしているのは『男、男』『男、女』『女、男』の3つになり、この中でもう一人も男の子なのは『男、男』だけなので答えが1/3になるというものだ。


 以上が二人の子ども問題の内容だ。


 これらを否定すべく神無はまずは持参したノートに子どもを表す顔文字を二つ書く。


  ( ・∇・)   ( ̄▽ ̄ )


 とりあえず適当に書いたがこれらは子どもが二人居ることをイメージしやすくするためだ。

 なので丸に棒の付いた棒人間や目と口だけ出ている全身黒タイツの人間など自身がイメージしやすものなら何でも良いのだ。


 神無はこの顔文字の中間に、生まれてくる子どもの性別が男女で1/2ずつの時の4通りの組み合わせを書く。


       男 男

 (・∇・) 男 女 ( ̄▽ ̄)

       女 男

       女 女


 そしてもう一つの組み合わせ。


 この問題は男女の事について問われているので第一子・第二子については考えなくていいのだが竹内がそれらに思考を引っ張られる可能性もあるのでそれらを含めた8通りの組み合わせも書く。


   兄 弟

   兄 妹

   姉 弟

   姉 妹

   弟 兄

   弟 姉

   妹 兄

   妹 姉


 神無は左右で第一子と第二子を固定する説明を見聞きしたことがあるがそのせいで逆に混乱してる人の意見もあった。だがこの8通りの組み合わせはそれらを固定していないものなのでその心配はない。


 神無はこの組み合わせを使って正しい考え方を説明する。


 問題文では子どもが二人いてその内の一人は男の子だ。だが男の子はその二人のどちらか分からないしどちらも可能性がある。


 ならば《《それぞれ仮定して考えれば良い》》。


 まず( ・∇・)(左の子)が条件の男の子と仮定すると4つの組み合わせから左側が男の組み合わせのものが残る。


   (・∇・) 男 男 ( ̄▽ ̄)

         男 女


 そして( ̄▽ ̄)(もう一人)の子どもが男の子の確率は男と女が1対1なので1/2になる。


 次に条件の男の子が( ̄▽ ̄)(右の子)と仮定するとこれもまた4つの組み合わせから右側が男の組み合わせが残る。



    (・∇・) 男 男 ( ̄▽ ̄)

          女 男


 この時( ・∇・)(もう一人)の子どもが男の子の確率はこれもまた男と女が1対1なので1/2になる。


 結果二人の子どものどちらが条件の男の子でも、もう一人の子どもが男の子の確率は1/2になる。


『たまたま家から男の子が出てきたのを見たときは1/2になる』と主張する人がいるけど、それはこのどちらかを基準にする考え方を無意識にしているからだ。


 さて、次の説明ひていの前に一つの論理的な事実の確認だ。


 先程の説明では左右の子どもをそれぞれ条件の男の子と仮定して四つの組み合わせから該当するものを残した。


 それは逆に言えば《《残った組み合わせからどちらを条件の男の子と仮定しているかが分かる》》ということだ。


 以上の事を踏まえて答えが1/3になる理屈を考えていく。


 答えが1/3の理屈はまず子どもが二人いてそれぞれが男の子と女の子の確率が1/2のときに出来る四つの組み合わせから『一人は男の子』という条件により『女 女』の組み合わせを除外して残った三つの組み合わせの内もう一人も男の子、つまり二人とも男の子の組み合わせは一つなので1/3になるというものだ。


        男 男

  (・∇・) 男 女 ( ̄▽ ̄)

        女 男


 しかしこの残った三つの組み合わせでは左右どちらの子どもも『男』のみにはなっていない。


 条件の男の子はどちらかわからないしどちらも可能性がある。しかし必ずどちらかを指している。


 つまり残った三つの組み合わせでは条件の『一人は男の子』を()()()()()()()ということになる。


 何故そうなったかは一目瞭然で『男 女』の組み合わせを残して右の子は条件の男の子ではないとしながら『女 男』の組み合わせも残して左の子は条件の男の子ではないとしてるからだ。


 このそれぞれを否定する二つの組み合わせを残した結果が条件を満たせなくなり1/3の理屈は間違っているとなるのだ。


 別の見方をするなら左の子を(条件の男の子だと)基準にしているのに、同時に右の子を基準にしてしまって間違えているとも言える。


 もう一つ。最初に書いた4つの組み合わせは左の子どもを基準に作られたものなので左側の男女それぞれを重ねれば簡単な樹形図になるのだが、この樹形図の作り方を理解し比較する事で見えてくる違いからも1/3の何がおかしいのかがわかる。


 その樹形図では、

①左の子どもを基準する。

②もう一人の子どもも男女の確率は1/2なので比率は1:1になり、それぞれの記号を一つずつ書いて線で繋げる。


と、この二つの工程を経て作られてるわけだが1/3の考え方では①工程をしていない。そのため3つの組み合わせを樹形図にすると、左の子を条件の『一人は男の子』としているのに三段目の『女 男』がそのまま残ってしまう。なので不自然さがよく解るだろう。


 以上の事から結論は条件の『一人は男の子』を子どもにではなく記号に当てはめて考えたため間違えたと言える。




「この問題にしろモンティ・ホール問題にしろ単純な内容で直感に反してるとされる問題は基本を疎かにしてる故の間違いが多い印象だな」


そして最後に三点の補足。


 まず一つ目。条件の『一人は男の子』の頭に()()()()()と付ける必要があるという主張は意味がない。この言葉は最低限を示すものでそれ未満は無いという意味でもある。


 例えば子どもが五人いて少なくとも三人は男の子とするなら男の子が一人だけ又は二人ということは無くなる。よって子どもが二人しかいないときに一人は男の子とするなら付けても付けなくても違いは無く付けるだけ無意味ということになる。


 そして二つ目は『もう一人も男の子の確率は?』ではなく『二人とも男の子の確率は?』とするべきという主張があるが、子どもが二人いてその内一人が男の子の場合もう一人も男の子なら自動的に二人とも男の子になる。なのでこれはどちらでも良いとわかる。


 この主張は三つの組み合わせから見た目で分かる答えになるよう使っているにすぎないと思われる。


 三つ目は男の子の数が明言されてない場合。一人は男の子ではなく男の子がいるという文言だった場合はどうなるか。


 その情報から分かるのは『二人とも女の子』はない。次に『二人とも男の子』はどうか。これは可能性はあるがしかし確定は出来ない。飽くまでも可能性の範疇にとどまるので男の子がいるという情報では『一人は男の子』としか断言できないのだ。なのでその言い回しからは一人は男の子として考えることになる。


 これら三つの別の言い回しからは本質的な違いはないと言えるわけだ。


「これで廃部の危機は脱したわけだが竹内にはまだ教えるなよ」

「なんで教えずに秘密にしとくの?」

「真理探求部としての活動でもあるからな。知ってしまうと期限を気にしなくなるし放置してしまうかも知れない。そうなると正しい評価が下せなくなる」


 気にしすぎだと田中は思ったが頷いた。


 あとは消灯時間まで二人で文化祭での発表の打ち合わせをしたのだった。






 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






 竹内たちの暮らしてる学生寮の一階には食堂と風呂場の他に学習室と娯楽室を兼ねた部屋がある。


 ここには大きなテレビの他に囲碁や将棋などのボードゲームや学習用にホワイトボードなども備え付けられていて誰でも遊んだり勉強したり出来るようになっていた。


 ただ今の時代スマホがあれば事足りるのでたまに生徒が勉強会で集まって利用されるくらいだった。


 8月31日の夕食後。娯楽室に竹内と十日条の姿があった。これから始まるのは竹内の研究成果の発表だ。


 ちなみにここに田中はいない。十日条に用事を頼まれて色々とやっていたので夕食を取るのが遅れて今食べている頃だろう。


「さて期限は明日なのでどこまで研究が進んだか報告を聞こう」

「結局先輩は殆ど手伝わなかったのに偉そうなのは納得いかないんですけど。アルバイトが休みの日も殆ど顔を出さなかったし」

「俺は俺で色々とやる事があったんだ。いいから早よ始めろ」


 時間を無駄にしない為に先を促されたが、それに呆れた目を向けながらも竹内はホワイトボードを十日条の前まで持ってくる。


 では研究の成果を聞いて自分に感謝してください、と調子に乗る後輩を見て典型的なやられ役の残念感にため息を吐く十日条。


「この問題が出た当時に、そしてそれから今まで否定されなかった理由の一つはコンピュータを使ったことにありそれを多くの人が正しいと思ってしまった事です。でもそれは何の意味も有りません。なぜなら間違った考えを元に数式やプログラムを作っても間違った結果が出るのは当たり前だからです」


 さらにさっさと始めれば良いものを、始める前に目的を成し遂げた気になってる竹内の三下っぷりがモブの鑑に思えた。


 竹内はまず田中に既に話していた『司会者が扉を開けたときプレイヤーが選ばなかったもう一つの扉に当たる確率が集中する説明』と『扉を増やした時に直感的理解できる説明』をホワイトボードを使いながら間違ってる部分を指摘する。


 十日条はそれを黙って聞く。そしてそれが終わると竹内は次の否定に入る。


 三つ目はプレイヤーが初めに扉を選ぶとき外れる確率は2/3なので、司会者が必ずハズレの扉を開くなら扉を変更すれば当たる確率が2/3になる説明だ。


 ハズレ → アタリ

 ハズレ → アタリ

 アタリ → ハズレ


「これらも一見正しく思えますが、パターン化すれば客観的に否定する事が出来ます」


 竹内はホワイトボードにそれらを書いていく。そしてできた六つの組み合わせは起こる可能性がどれも同様に確からしいものだ。



 AB C

 AC B

 BA C

 BC A

 CA B

 CB A


 少し離れて右にあるのが司会者の開ける扉で二つ固まっている内の左側がプレイヤーの選ぶ扉になる。


 これにどの扉でもいいのでアタリを設定して司会者は必ずハズレの扉を開ける条件を満たす、つまりアタリを開けてる組み合わせを除外すると必ず4つの組み合わせが残る。


 例えばBがアタリだと仮定する。その場合は司会者が開ける扉がBのものが除外されて以下のようになる。


 AB C

 BA C

 BC A

 CB A


 ここから司会者が開ける扉が決まることでさらに二つに絞り込まれて、プレイヤーがアタリの扉を選んでいる組み合わせとハズレを選んでいる組み合わせが一つずつ残り当たる確率は1/2になるのがわかる。


「この二つの組み合わせは同様に確からしい6つの組み合わせから条件によって残ったものなので当然同様に確からしいものになります」


 この組み合わせを使った見方からも初めにハズレとアタリのどちらの扉を選んでも、変更した後のアタリの確率はどちらも同じだという結論に至る。


「そもそもこの6つの組み合わせを使った1/2の説明も全く同じ事になるんですよね。だって司会者が開けた扉がハズレだった時に1/3から1/2になりますからね。そうなると6通りの組み合わせから司会者がアタリの扉を開く組み合わせ(勿論二つ)が除外され、残るのは4つの組み合わせで司会者が開けた扉がわかるとプレイヤーがアタリを選んでいるものが一つハズレを選んでいるものが一つになります」


 司会者がアタリの扉を知っていてハズレの扉を開くのと、司会者がそうとは知らずにハズレの扉を開けるというのはどちらも本質的には同じなのだ。


「以上が研究の全てです。どこか間違ってますか?」

「最後の説明は駄目だな。リアルな部分を思考できてない」


 竹内は六つの組み合わせを提示してそれらの起こる確率は等しいと考えてる。しかし十日条はそれに否定的だ。


「これは常盤も言っていたが人の思考には癖や傾向がある」


 ゲームの挑戦者は誰しもはA·B·Cの扉を均等に選択すると言えるのか。


 例えば挑戦者が英語圏の生まれだとして『私はイニシャルと同じ物を選ぶようにしてるの』と考えることがあるのではないか?


 1·2·3と扉に数字が振られていたとして1等賞等を連想する1を選ぶようにしてたり、数字が大きい方がたくさん当たるイメージがあると考えたりする人もいたりするのではないか?


 他にも真ん中を選ぶことにしてる、なんて人もいるかもしれない。もっと言えば明確な理由なんて無くて『何となく』で特定の扉を多く選ぶ傾向が出たとしても不思議ではないだろう。


 だから人の選択に『同様に確からしい』と言えることなんてないのだ。


 それだけではなく決定的に足りてないのも理由の一つ。


「モンティ・ホール問題には本質の異なるもう一つの考え方があって、プレイヤーの当たる確率が6分の1から3分の1になるといったものだ。統計学的に言うならハズレの扉から見る当たる確率ってとこかな」


 これは実験を想像すると解りやすい。


 プレイヤーは仮にAの扉を選んでいくとしよう。そしてアタリがCの扉に有るとき司会者は()()Bの扉を開ける。割合でいうと三回に一回がこれだ。


 次にアタリがBの扉に有るときは司会者は()()Cの扉を開けることになる。この割合も三回に一回だ。


 ではプレイヤーの選んだAの扉にアタリが有るときはどうなるか。


 その場合は司会者はハズレのBの扉またはCの扉を開けることになるがどちらを選ぶかはそれぞれ2分の1の確率だ。そうなるとプレイヤーの選んだAの扉にアタリが有るとき司会者がBまたはCの扉を開けるのは割合では6回に1回ということになる。


 結果、例えばBがハズレのときAが当たる確率は6分の1でCが当たる確率は3分の1になる。なので扉を変えれば当たる確率が二倍になるというわけだ。


 大雑把に統計的な言い方をすると、3000回の実験をするときプレイヤーがAの扉を選び続けると司会者はBかCの扉をおよそ1500回ずつ開けていくことになる。そしてBの扉がハズレ(1500回)のときのAとCのアタリの内訳はおよそAが500でCが1000になるということだ。


「1/6から1/3になるってそんな考え方ってありですか?」

「ありも何も実際にそういった考え方が有るのだからしょうがないだろう」


 人はこじつける生き物なのだ。


「それに③の1/2の説明の『100個の扉』の考え方でプレイヤーが選んだ1番の扉にアタリが有るときに、司会者は()()1()0()0()()()()()()()()()()()()()と考える事も出来る。これはハズレの扉から見るときのアタリの確率と本質は同じだ」


 なのでそれらも含めて否定しなければならないのだ。


「以上が足りない部分とその理由だがお前は否定出来るか?」

「………………………………………………………出来ません」


 必死に頭をフル回転させたがすぐには答えが出てこなかった。竹内が天才ではないのは()()()()()()()既に証明している。


「なら不完全な物を研究成果として提出しても実績とは認められないだろうから『モンティ・ホール問題の否定の研究』はここで終わりだ」


「待ってください。不完全でもそれなりの評価はされるはずです。だから実績として認められるかもしれないじゃないですか!」


 竹内が机に手を着いて身を乗り出しながら神無の研究終了の決定に異議を唱える。


「駄目だ。不完全なものを世に出すとそれに対してのこじつけをされる。そうなると否定が更に面倒になる」

「ならせめてあと1日、明日の放課後まで猶予をください。その間に何とか否定してみせます!」

「必要無い、却下だ」

「でもこのままじゃ廃部になるじゃな………今必要無いっていいましたか? 無駄とか無理とかじゃなくて必要無いって。つまり先輩には何か考えがあるってことですか?」

「ま、そういうことだ」


 出来なかった時の事を考えてサブのプランを走らせておくの当然の事だ。


「先輩、脅迫は犯罪でsあ痛っ!」


 失礼な事を言う後輩の向こうずねを蹴って黙らせる。


「冗談ですよ。でもそうじゃないならどうやって?」


 十日条は予備の計画である二人の子ども問題の話を教える。


 この問題も直感に反する答えが出るとされるパラドックスだが、十日条はそれを既に解いてるのでそれを活動実績として出す予備計画を立てていたのだ。


「ともあれこれで廃部の危機は去りましたね!」

「何終わった気になってるんだよ。発表はこれからだぞ」

「えっ? それはそうでしょうけど…」


 生徒会への発表は十日条がするものだと思っていたので竹内は自分には関係ないと思っていた。その心を読んで、


「そうじゃ無えよ。良い機会だから言うが俺たち謎真理研探部の文化祭の催しは休憩室を兼ねて今の研究内容を紙に書いてそれを壁に張り付けての発表だ」


 文化祭の話は今聞いたと竹内非難の目を向けるが十日条はどこ吹く風だ。


「というわけで今からスケジュールや予算の確認を田中に聞きに行ってこい。文化祭の事はあいつに任せてあるから」

「先輩は行かないんですか?」

「今日は疲れたからもう寝る」


 後輩はこき使われるのがこの世の摂理なのだ。


 竹内は納得いかないながらも渋々田中の元へ向かい、十日条はホワイトボードを消して部屋に戻ったのだった。

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