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異世界戦線異常あり! 『ただいま!』のために異世界で戦う  作者: 藤 明
探索者試験編

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72/208

ナルスゴ砦防衛戦 前


◆ ◆ ◆


『セクティナ~交代して疲れた~』

『はいはいお疲れさま。……まだ大丈夫なようね』

『うん、なんとか。それじゃ~ちょっと寝るね』

『わかったわ』

『ほら、アル。あなたも起きるのよ』

『ん~ねむぃ~ああ、がんばらなくっちゃだっけぇ~』

『そうね、後ひと頑張り……だと良いわね』


 ナルスゴ砦内部の一角で騎士のアルティアが休憩室に入ってくると入れ替わりで犬人族のセクティナと猫人族のアルミスが部屋から出ていく。ナルスゴ砦の外では石や岩をぶつける音、魔法が爆発する音などがしている。既にセクティナの鎧、剣にはひどく使われた形跡はあるが血糊や肉の破片などが一切付いておらず綺麗なままという不思議な状態だった。


 月夜に照らされてもなお薄暗い中セクティナ達が城壁を駆け上がると物見台のところに魔術師のホムテオが疲れ切った感じで戦況を見ていた。


『ホム、状況は?』

『相変わらずだ。『穴』の形状がやや不安定に見えるが、中から出てくる妖魔共の出現数は変わらずだ。巨大クラスが出てこないのだけが今の所救いだな』

『大きさが不安定だから出てこれないのかもしれないわね……救援はまだかしら?』

『ほら、これ、あっちを見ろ』


 かなり疲れており、いつもの丁寧さがないホムが差し出した望遠鏡をセクティナが受け取ると支持された方向を覗き込んで見る。そこにはかなりの規模の野営地が作成されており準備が着々と進んでいるのがわかった。


『あれは……騎士団と……先生たち? 探索者受験生、かなりの人数……を臨時で? あ、タクマ達もいる……大丈夫かしら……』

『兵力は十分に見える。『神聖球』をいくつ持ってきているかが問題だな……1つだったらまた2日くらい足止めせねばならぬ』

『一つは潰せるから……なんとかなりそうだけど。連絡はしたの?』

『常駐の騎士達が「モルスシンゴウ」を使ってやり取りをしていたぞ』

『それなら大丈夫かしら?』


『日の出と共に攻撃を開始する……だとさ』

『あともう少しね……遠くの空が白んできたわ……』

『私は少し休む……夜通しで疲れた……』


 交代の騎士と入れ替わりでホムが城壁の物見台から重い足取りで降りていく。それを横目にセクティナが城壁外の妖魔の群れを見てうんざりした表情をする。それもそのはず、彼女たちはもうまる2日も妖魔と戦い続けているからだった。


『セクティナ殿、アルミス殿、大型の妖魔が出現しました! 至急排除をお願いいたします!』


 伝令の騎士が慌てて物見台の方に駆け上がって伝えてくる。セクティナが分かったと合図をすると伝令の騎士は直ぐに持ち場に戻っていく。彼らの疲れもピークに達しているようだった。


『うんざりだぁ……また出てきてるぅ~』

『ほんとね……でもやらないとここの人たち死んでしまうからね……』


 セクティナが体に魔力をまとい、アルミスが弓矢で援護射撃で開けてくれたルートを通って城壁を駆け下りていった。大型の妖魔だけを狩るために。


◆ ◆ ◆


 俺たちは野営地点で空が白む前に起こされて作戦を聞かされる……が、よくよく聞くと作戦が無いに等しかったので思わず俺とシュウトくんが口を挟んでしまった。


『全員でバラバラに突撃なんてしたら魔力が勿体ないです! 一点に集めてまとめて焼き払いましょう!』

『あ~しかし、やり方がだな……』

『ちょうど良い場所……砦の外の城壁の入り口を利用しましょう。そこに数人で妖魔を遠距離から攻撃します。追ってきた妖魔たちをそこで待ち構えて一網打尽にする作戦です』


 シュウトくんの説明にランパルトとレグロスと先生がどうしたものか?とお互いに表情を見合う。


『なるべく多くの敵をここに誘い込み、残った少数の敵を別働隊がこちらから挟むなり、砦の援護にまわる感じですね。砦の方も丸二日戦っているそうですからなるべくこちらに惹きつける事が重要かと』

『俺たちが妖魔と戦った感じだと……中型の妖魔を倒すと普通以下のサイズのやつは判断に迷う様だったからな……中型を遠距離で射抜く、挑発を出来れば敵をまとめられるだろう』


 それからもシュウトくんが説明してくれる作戦の詳細を聞いていたランパルトとレグロスが考察を始める。


『うむ……かなりの数の妖魔……1000を超えそうな数だが行けるのか?』

『そうですね数が問題ですね……ここから見える『穴』を見る限りはそこまで新たに出現していませんので一段落をした感じに見えますが……それでも多いですからね』


 悩み始めた一同のもとに横から回復魔法師のエイルさんが進言をする。


『おそらく行けるかと思います』

『む? 根拠は?』

『前回の『穴』の討伐の報告から、タクマさん達『流星の狩人』だけで300近い妖魔を殲滅しています。それ以外にもここには魔術師が20人、探索者もほぼ全員が弓を持ってきていますし、街の弓使いが30人もいます。これを利用しない手はないかと思います』

『なるほど……だがこの作戦だと囮役……妖魔を釣る役が厳しい気がするのだが……』


『俺、やる。少しくらいの敵来ても死なない』

『ん……私もやるわ。弓で大型と中型を撃って城門まで走ってくればいいのね』


 エルドとヴィナルカが危険な役割を志願をしてくれた。二人で組めば2つあるうちの1つの『穴』周りにいる妖魔はなんとかなるだろう、後もう一つだな、俺が行きたいところだが……


『それではもう一方の『穴』の方はわたしがやりますね』


 ミィナスが臨時の机の上に広げられた図面を見て志願して……え?


『ミ、ミィナスはだめだ! まだ幼いし……』

『タクマ?わたしより早い人がこの中にどれだけいますか?』

『……いない』

『彼女だけで不安なら俺も行こう』


 蜥蜴族人のリーダーが志願してくれる。ミィナスと対戦した人だ……確かにミィナスと同等の強さがそれ以上の人だった記憶がある……それでも不安だ……


『あたしも行くわ。狐人族とは言え幼い子だけを行かせる訳にはいかないわ』


 フェリーニャも志願してくれる。エルドが心配そうな顔をするが、眼力の強いフェリーニャと目が合うと諦めた感じになる。


『はぁ……わかった……そちらは3人で……』


 俺もミィナスに諦めた感じの目を向けてみたが何故か嬉しそうに尻尾をぴょこぴょこと振っていた。危険なのに嬉しいのか? 謎だ。




 

『では移動を開始する! 別働隊は感づかれるなよ!』


 ランパルトの号令とともに俺たちは殲滅隊の本体としてナルスゴ砦に近づいていく。はるか前方に見えるナルスゴ砦からは時折、アルティアやセクティナが凄まじい速度で出てきては大型だけを倒して逃げていく……といった戦術をとっているのが遠目でも分かるようになってきた。


「タクマさん。なんかあれですね、宇宙世紀モノのロボットアニメみたいですね」

「あ……確かに……エースクラスのロボットが敵の母艦を叩いては帰艦する……なんかそんな感じにも見えるね」


 俺とシュウトくんははるか前方に見える真剣な戦いを見ながらも変な感想を抱いてしまった。地球での戦争とだいぶイメージが違う……魔力があるだけで別世界の様だ……アルティアとセクティナの別次元っぷりの動きが更に拍車をかけさせてそう思わされてしまう。




『では、別働隊、囮部隊作戦開始! よろしく頼むぞ!』

『『『はいっ!』』』

『『了解!』』


 騎士が20人と魔術師数人が『神聖球』を持ち別働隊として別れナルスゴ砦の救援に向かう、それとは別に探索者の囮部隊がそれぞれ担当した『穴』に向かっていく。これだけの大部隊の移動だったが、妖魔達には気が付かれていない。ナルスゴ砦の方をひたすら見ている……ある意味集中している様に見えるが、よそ見を一切しないとは……生物としてはおかしく見える。


 俺たちが属する遠隔魔法殲滅部隊が陣取った場所からは『穴』はおろかナルスゴ砦の様子もわからない位置だった。丘の上からは最適な場所として判断したが実際に降りてみると視界が悪すぎて、エルドやミィナスの姿見えずに心配になってしまった。




 しばらくすると前方に偵察に出ていた兎人族の狩人が戻ってくる。


『囮部隊、妖魔を釣り出すのに成功した模様!かなりの数の妖魔がこちらに近づいてきます!』

『分かった! 全員戦闘配置につけ! タクマ! 魔法の号令よろしくな!』

『わかりました!』


 大勢が走ってくる地響きのような足音がだんだんと近づいてきて、エルドとヴィナルカの姿が見える。もう一方を気にしている様で途中で立ち止まって弓矢を射りながらタイミングを計っているようだった。少々遅れて蜥蜴人族とフェリーニャの姿が見える。あれ? ミィナスは?


『ミィナス……ミィナスは?』

『タクマ、持ち場を離れない……気持ちはわかるけど』

『あ、ミィナス来ましたね。ギリギリで引きつけながら来てますね……』


 チサトが俺の腕をガシッと掴んで離さない。俺の身体が自動的に動き出そうとしていたようだ……そんな事を考えていると妖魔の軍団がかなりの速度でミィナス達に走って追いついてきている感じだったが、ミィナスが捕まりそうな所から一気にダッシュしたり、わざと止まったりしてまるで相手をからかうように敵をひきつけていた。


『……すごいなあの子……捕まったら危険なのに……』

『勇気があるのか、無謀なのか……』


 ミィナスの動きを見て探索者仲間達が口々に感想を言い合う。ミィナスに見とれている場合ではなかった……俺は魔力を声帯に込めて大声で打ち合わせをしていた号令をかける。


『弓部隊構え!、魔法部隊1班、爆裂準備。魔法部隊2班、風の槍準備!』


 囮部隊がこちらの陣に飛び込むように入ってくる。エルドはそのまま盾隊に合流するが、結構汗をかいている感じだった。普段から鍛えている彼ではこの程度では汗はかかないだろう……疲れではなく緊張だろうか……ヴィナルカとミィナスは普段通りに汗一つかいていない感じで余裕な感じだ。彼女たちは肝がすわっているのだろうか?


『た、タクマ、まだか?』

『まだだ! もう少し引きつける!』


 ランパルトがかなりの勢いで突撃してくる妖魔の群れを見て焦りだす。妖魔の手には飛び道具は見えないし、まだかなり安全な気がするのだけれども……すごい迫力だ……正直怖いが爆裂魔法の適正距離まで引きつけないと意味がないんだよね……


『弓部隊3連射、打て!』


フォンフォンフォン!!


 探索者のほぼ全員が持ってきていた弓を3連射する。40人で撃つ矢の連射……巨人族と獣人がいるので矢の発射音と風切り音がまざり恐ろしい轟音になっていた。矢の雨の攻撃を受け、ばらけ気味だった妖魔が狭い通路で矢を食らって最前線の動きが鈍ったり止まってしまって後ろからついてくる妖魔たちに押され妖魔の前後の隊列がまとまってくる。


『魔法部隊1班、爆裂準備、打ち合わせ通り印の場所に、セット。3,2,1、発射!』


ドォォオオオオオン!!!!ドドーン!ドゴォン!!!


 総勢20人を超える魔術師と探索者が事前に打ち合わせしていたとおりの場所、地面のタイルの切れ目を直線上に狙い、通路を縦断爆撃したかのように吹き飛ばしていく。ものすごい音だ……耳をふさぎたいがそんな場合ではない、予想通り煙で視界が悪くなる。


『魔法部隊2班、風の槍準備!セット。3,2,1、発射!』


ブオオオォォオオ!!!!


 こちらは総勢10人の魔術師が風の槍を通路に沿って放ち、煙を吹き飛ばすのを主な目的として妖魔を吹き飛ばしていく。視界がクリアになったところで妖魔達がまたこちらに突撃を敢行してくる。やはり怯まない……死者などは目に入らない相手か……


 それから弓部隊、爆裂魔法部隊、風魔法部隊が同じ行動を3回ほど繰り返した所で撃ちもらしなどが出始めるが、近接攻撃部隊が簡単に討伐していく。1対1では完全にこちらに歩があるようだった。


『これは……凄い効率だ……』

『うむ……半数は打倒したか?』

『こんだけやっても……まだあんなにいんのかよ……』


『人同士で戦争したくないなこれは……』

『仲間のほうが恐ろしいな……』


 4巡目で妖魔サイドも接近出来ないことを悟ったようで躊躇をするようになっていた。一瞬仲間部隊内に安堵の空気が広がっていた……が、やはり来ている。中型クラスか。中型クラスはどうも指揮官の様な役割をしているように感じる……


『ランパルト! 打ち合わせにあった中型だ!』

『わかった! 槍部隊、投擲準備、狙いは中型だ!』

『おぅ!』

『投げろ!!!』


 巨躯の探索者が10名で魔力を込めた槍を中型の妖魔達に一斉に投げつける。中型の妖魔達も避けようとするが、魔力のこもった槍を食らって吹き飛んでいく。ランパルトの投げる槍の威力が恐ろしい……


『弓部隊構え! 中型を狙うぞ! 魔法部隊は温存!』

『『オゥ!』』


 残った中型の妖魔に矢を放つとさすがに耐えられなかった様で膝を付き倒れ……魔石を残し黒い煙となっていく。指揮系統を失ったのか、普通以下サイズの妖魔達は考えがないような感じでこちらの方に突撃を再開させる。


『弓部隊構え! 同じことを繰り返すぞ!! 魔力厳しい人間は後ろに下がれ!』


 それからしばらくは中型が出現すること無く一方的な殲滅をしていく。ただこちらも魔法をガンガン打っていくので魔力の消耗が激しかった。


『タクマ! 相手がかなり減った。そろそろ討って出るぞ!』

『それでは後は私たちの仕事ね。 全員右手側の『穴』の周辺から制圧する! 付いてきなさい!』


 ランパルトとブリスィラ先生を先頭に残った騎士達と近接戦闘が得意な探索者の部隊弓を置いて突撃を開始する。

 血気盛んな近接部隊が移動をしている後ろ姿を見送っていたが、地面を見るとおびただしい数の爆発の跡、妖魔の死んだ証である魔石が大量に転がっていた。第一ラウンドは勝利といったところか……


『それじゃタクマ行ってくる!』

『俺、暴れてくる。みんな前あまり出ない、約束だ』

『グロット族は全員突撃するよ。巨人族の名誉を回復させなければ』


 キョウカ、エルド達巨人族が準備を終えて俺たちに出陣の挨拶をしてくる。


『行ってらっしゃい、気をつけて』

『わたしたちも後で合流します』


『あ、あたしも一緒に行くよ!』

『僕も行きます。まだまだ余裕ありますから!』


 チサトとシュウトくんが突撃を志願? なんでだ? 俺が怪訝な顔をしているのがわかったのかチサトが説明をしてくれる。


『あたし達が行けばエルドもキョウカも、みんなも死なないよ』

『僕が千里を守ります』


『あ~。うん。シュウトくん。任せた。チサトを守って』

『はいっ!』


『え? やっぱりそういう扱いか……』


 若干不満な顔をしたチサトだったが気を取り直して先行している部隊に向かって走っていった。


 近接戦闘部隊が出陣すると、別働隊が作戦をしていた左手側の『穴』方面が光り輝き、『穴』の周りにある禍々しい歪みが消え去っていく。別働隊とナルスゴ砦の部隊がうまくやってくれた様だった。後もう一つの『穴』をなんとかすればいいのだが……今回は『神聖球』は一つだけしか持ってきておらず、新たな『神聖球』は現在こちらに向かって運搬中……とのことだ。要するにもう一つの『穴』はすぐに塞げない。『神聖球』が到着するまで頑張って耐えなければならないのだった。

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「バトロワ」無視して異世界サバイバルライフ! 
「殺し合い」のはずなのに協力して攻略する!
カクヨムで新作連載中こちらも読んでいただけるとありがたいです。


異世界スキル強奪バトルロワイヤルを避けて生き抜く話になります。


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