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セラフィーの願い

 今日は二話更新します。よろしくお願いします。



「生まれ変わるなら、戦乱の世界がいい。戦乱の世で生きたい」


 確かにそう、セラフィーは女神に願った。


 ゲームとかでもだいたい戦乱武将系アクションが好きだったから。派手に敵を蹴散らすような戦いに身を置きたかったのだ。


 戦乱の世の中がどういったものか、セラフィーは理解もしていなかった。そう、理解していなかったのだろう。


 ただ戦いに明け暮れ、血を流し血を流させる世界に、セラフィーは望んで生まれ変わったのである。人生はけしてゲームなどではないというのに。


「やめた方がいいわよ? まあそれが望みというなら止めないけど、それで、記憶は要らないのね?」


「ああ、一応文化とかは覚えていれたら嬉しいけど、人生の記憶は要らない」


 くそったれな人生だった、そうセラフィーは前世に絶望していたらしい。その事を思い出すことは、二度とないが。そう神に願ったのだから。


「まあいいけど、これだけは知っておくといい。魂を輪廻させる以上、肉体と魂を接続する以上、あらゆる全てを捨てて転生はあり得ない。そもそも輪廻の意味がないからね。魂の成長こそが輪廻の目的である以上、全てを消すことはありえない」


 それはそうだろう。わざわざ新しい魂ではなく輪廻転生を行うのに、魂の記憶を全て消したのでは同じことを焼き直し続けることになりかねない。それはおよそ無駄なことに違いない。


 その女神の言うとおり、セラフィーもその感情や性格は魂の影響を受けることになるのだ。そうでなければ転生する意味などないのだから。


 セラフィーを転生させた女神だが、どうもこの世界の管理はしていないらしい。前任の女神、祖神と呼ばれている神が、世界を支えているシステムの更新を行った後に輪廻の輪に還ったために、臨時で世界を支えることになったそうだ。他の世界を管理しているためこちらにはあまりタッチしないのだという。


 つまりこれから行く世界は神なき世界。まあセラフィーには望み通りの世界であるわけだが。


 祖神については生まれ変わった後の部族の信教であったりするのでここでは割愛する。


 ちなみに転生をさせてくれるというこの女神の風貌は十四歳くらいの、細身で折れそうな身体をしているのだが、見た目は銀色の髪にアメジストの瞳、白い肌、……ゴシックロリータ系の黒いドレスに眼帯、左腕に包帯を巻き太ももには拳銃を差したホルスターを着けていて一口に言うなら……とっても厨二病であった。


「厨二病は神様でも治せないの?」


「不治の病よ。ほっといて」


 まあ人のことは言えない程度に厨二病のセラフィーである。ほっとくことにした。そもそももうこの女神と関わることはないだろうと思った。


 地上には幾人も神を名乗る存在がいて、争いあっているらしい。戦乱の世界を求めたセラフィーに与えられた人生なのだから当然ではある。


 その事をセラフィーが後悔するのは、そんなに先の未来ではないが。神は止めていたのだ。


 ともあれ彼女は、セラフィーは新しい人生を送ることになる。


特別な(チート)能力のようなものは欲しい?」


「あんまり興味ないけど……。酒が飲みたいからドワーフとか良いな。あと回復魔法は欲しい。魔力も早く回復できると楽だな」


「……わりと具体的に要求してきたわね。チートでもないけど。まあいいけど、楽しい人生になると良いわね」


 女神は意外にも寛大に願いを叶えてくれるらしい。そもそも神に願うなど不遜ではあるのだがそれにセラフィーが気づくのは生まれ変わってからである。世界を作ることも壊すことも手のひらの上でビー玉を転がすようにできる神に願うなど、逆に言えば全ての願いが努力も無しに叶うなど、おこがましい以前につまらないだろう。


 しかし無理な要求はしていない。ドワーフになるとか回復魔法が使えるとかはその世界で特別な存在というわけでもなかったし、魔力回復も、無限魔力と呼ばれる瞬時に魔力が最大値に回復するスキルがあるので可愛らしいレベルのものでしかなかったのだ。


 セラフィーのこれからの不遇な人生を思えば、女神としてももうちょっと盛ってもいいと思っていたのだが、苦労するならそれもそれでためになるだろうと、これを認めた。しょせん魂の旅路は孤独なものだ。


 こうして特異な存在、セラフィーはこの世界に生を受けることになる。まだ何も始まっていない時のお話。


「最後に、この人生で必要になるだろうからあなたには魂がなんであるか教えてあげるわね」


 女神は最後に重要なことをぶっ込んでくるタイプだったらしい。後に必要となるだろう魂の知識を一通り教えられる。それはまた必要な時には思い出されるだろう、と、今この時はその記憶も封印される。


 セラフィーは困惑しつつ新しい生の光の中へ落ちていった。




「おぎゃあー! おぎゃあー!」


 次に気づいた時には、セラフィーはその望み通り、ドワーフの赤子に生まれ変わっていた。


 大きなおっぱいにむしゃぶりついているところで意識が覚醒したのはちょっと恥ずかしかった。しかし赤子なので仕方ない。


 戦乱を求めたのになぜか少女としてだが、セラフィーの新しい人生が始まった。ちなみに前世の性別については記憶を失っている。


 生まれ変われるなら幸福な生を、そう誰もが望むだろうが、当たり前だが幸福など、一人の願いで叶うものではない。


 世界は、そこにある魂たちは螺旋を描くように集い、世界を揺さぶり、個人の運命をねじ曲げていく。


 小さなドワーフの娘、セラフィーの、運命が回り始める。







 面白い、と思ったらブックマークと評価をよろしくお願いします。


 チートと呼べないくらいの能力ですね。たぶん。




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