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暁の星の獣たち

 二話目です。メンバーで語るのは好きなんですよね。



「おーい狼姉弟、飲みに行くぞ~」


「はいよ、パール姐さん」


「行きます。ナガルさんたちもですか?」


「たまには獣人でまとまって飲むのもいいかってなぁ~」


 今日は獣人たちも飲むようである。ちなみに種族の多い獣人なのでひとまとめにしづらいが。今日はマイトにナガルにアンもいる。暁の星は獣人とエルフなどの亜人で過半数を占める。当然理由がある。


「ここにいるのはだいたい人神領域住まいですね」


「元、な」


 猫獣人のアンは古株でパールは下位メンバーなので分かる通り、戦乱はものすごく長く続いている。人神と魔王の小競り合いは取った取られたで収拾がつかなくなっている。どちらの王(神)も実際には戦争に介入していかないので地方紛争のような様相である。これがこの地を疲弊させ、移民や脱走兵を増やしていた。


「アンは一応私たちの上司だよな」


「まあ私は商人なので皆さんにお世話になっている方ですよ」


「給料決めてる人に文句は言いにくいかなぁ」


「カートさん、商人が見るのは好き嫌いじゃなくて損得です。多少横暴でも役に立った分は払いますよ。脅されても払いませんが」


「セラに脅されたらどうすんの?」


「最初に会ってますのでそこで見極めていますよ。あの人が人に金をせびるとしたら嫌がらせとしてだけです。身内に手を出すことも絶対にありません」


「セラさんはうちの正式団員ではないと団長と話されてましたが……」


「方便ですよ。戦地で勝手に暴れられますからね」


「あいつは戦い好きなぁ」


「姐さんは嫌いなのかよ」


「セラほどは狂ってないつもりだけど? あ、その塩焼きこっちー」


 しゃべっているうちにメシが来た。パールはウェイトレスの盆から小型の鯛のような魚の塩焼きをひょい、と取った。カートは魚の唐揚げにするようである。姉のアイリスはそれをにらむ。油ものばかり食べる弟が心配なのである。後ろに狼のオーラが浮かんでいるが。暁の星の僧侶は武闘派ばかりだったか。


 ナガルとアンは我関せずとピーナッツの小皿から手掴みでそれをつつきながら、透明な炭酸入りの酒を飲んでいる。ソルティドッグのようなものらしい。二人とも静かに飲む派のようだ。マイトもニンジンスティックをかじりながら一人で飲酒()っている。


 アイリスは野菜を煮て盛り付けたものや湯がいてゴマなどをあえたもの、豆を煮つけたものやサラダに申し訳程度のベーコンチップをかけたものを食べている。


「草食か!」


「い、いや肉も食べますよ?」


「僧侶のアイリスさんらしいといえばらしいですね」


「姉貴も俺とおんなじもん食って育ったのにな」


「俺も草は好きだ」


 草じゃないが。ナガルはボソリと呟いてまたグラスを傾けた。ちなみにマイトは肉の方が好きだ。ウサギだが。


「は~、それにしても今日の訓練も参ったなぁ~、セラ強すぎんだろ」


「根本的にレベル差がありますものね」


「戦闘は良く分かりませんがそれでもセラさんの安定感がすごいのは分かります。あんな重いものを振ってどうして軸がぶれないんでしょうか」


「あれはちぃと反則があってな、あいつは地の精霊で自分の体重とか重心をある程度コントロールできるらしいんだ。それにしても細やかで集中力を要するテクニックなんだがな」


「パール姐さんの隙とか俺ぜんぜんわかんねぇ」


「あれはセラの目が良い」


 戦闘談義になったのでナガルも入ってきた。


「基本も良くできてるんだよなぁ。セラの話だとダンジョンでかなり鍛えたらしいけど」


龍牙兵ドラゴン・トゥース・ウォーリアとかドラゴニュートゾンビとかとダンジョン深層でやりあったって」


「カートはわりとセラさんと話してますね」


「べ、べつに深い意味はねぇけど?」


「ハイハイツンデレ乙、だけどやっぱり実戦経験なんだな。移動の多いあたしらじゃ難しいけど、あいつ空も飛べるけどテレポートも使えるらしいぜ」


「どこまで反則なんだアイツは……」


「努力の結果もありますが才能もあるのですね」


「アンももうちょい砕けてしゃべれよ」


「私はパールさんたちほど器用ではありませんので、普通にしゃべる癖がつくと商談の場でポロリと出てしまうのです」


「ヨーズとかにはどなってたじゃん」


「ネタです」


「まあパトロンだよなぁ、アンさんは」


「暁の星が解散するか私が死ぬまで離れることはありませんよ」


「アンさん給料ちゃんと上げてくれるから嬉しい」


「収益全部配ると今の三倍額にはなりますけど、ハルさんに輜重を一括で任せるのがロスが少ないですからね。矢弾も食料も各人の武器も二人で相談して決めているところです。いささか傭兵団は人数が多いですが、暁の星くらいの傭兵団なら二人で十分にこなせるところです」


「最近は武器はセラが見てくれる」


「セラさんに依頼料を払おうとすると断られるんですよね、団員だからって」


「どっちだよ」


「だから方便なんですよ。資産を聞いたら領地が買えるなと思いました」


「聞いたの? やっぱり大金?!」


「カート! はしたないですよ!」


「ドラゴンなどの魔物素材も多いのですがなにより神匠ハガネの武器、それも武器庫にしまいこんでるような国宝級武器も数十点保持しているそうです。総資産五千万(十五億円相当)に届くかもしれません。大袈裟ではなく」


「ごせっ……」


「すごい……」


「はははっ! そりゃ小銭は要らねえや。そういやアイツの親父が神匠ハガネかぁ。あたしも一本絶対に欲しいと思ってたヤツだ」


「欲しい」


「セラさんに売ってもらえば良いですよ。死蔵させるつもりはないらしいので、早めに」


「はい! 杖もありますか!」


「姉貴もはしたないですよぉ?!」


「いや、暁全員一本づつは売ってもらおうぜ」


「槍も?」


「弓」


「杖も槍も弓もそれぞれ何セットもあるそうですが、正直に言いますがそんな神匠の作った聖武器クラスのものを何セットもそろえる資産は暁にはありません。ごめんなさい」


「頼んだら譲ってくれるんだろうがさすがに聖武器はもうしわけねぇわ。でも一度は見せてもらいたいなぁ」


「いいぜ」


 他人の財布の話で盛り上がっているところに御本人登場である。気まずすぎて慌てる獣人たち。


「おわっ! セラ!?」


「ちょっとカート、汚い!」


「飲み会は終わったんですか?」


「ガムマイさん混ぜようかと探してたんだけど、あ、アンさん、移動前の会議だとさ」


「はい、すぐに行きましょう。表通りの木造二階建ての店のバーですね」


「ん、個室だから」


「セラ、槍を見たい」


「いいぜ」


 そのまましばらくセラフィーによる武器の展示会のようになった。場所が冒険者ギルドのため、他の冒険者も集まって思わず盛り上がって、会議が始まったのは深夜だった。その場に居合わせなかったカルヴァインたちがすねたが、また展示会になるので暁で場所を借りてから今度見せてもらうことになった。






 セラフィーの武器知識は神匠譲りです。



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