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撃破

 四話目です。



 機人兵。それはでき損ないの機械人形アンドロイドのような存在である。


 この星では地上に複数の神がいると言われているが、その中の一人、原初の機神に仕えているのが機人兵だ。


 この小さな砦にスタンピードを仕掛けたように、原初の機神の目的ははっきりしていない。ただ様々な国に攻撃を仕掛けていながら各国の重鎮は動こうとしなかった。それは何故か。


 原初の機神に気に入られたものはサイボーグとして不死の命を与えられる。そのため各国の重鎮クラスは機神へのご機嫌伺いで動こうとしないのである。


 そのためこの程度の小競り合いでは見逃されてしまうのだ。


 余談だが、地上の神には他に、人神、明星の女神、魔王、そして外神と呼ばれる神がいる。魔王もこの大陸では神の一柱として数えられている。


 外神以外は自身の国を持ち、互いに激しい戦争を繰り広げていた。


 この世界を支配するシステム、ステータスシステムの管理権限を手にするためだ。……つまり、地上の神が天上の神に至らんと目論んでいるのである。そのためにこの大陸は戦争に明け暮れていた。


 そしてセラフィーは機神との間に、深い因縁を抱えている。


「……敵性生物……ドワーフの女性と確認。迎撃モードへ移行……」


 凄まじい光の噴射でセラフィーから一気に距離を取る機人兵。しかしセラフィーは同じく光の噴射により距離を詰める。太陽属性魔法、光の翼という。上位の神聖魔法である。


「砲門展開、バーストレイ6門」


 機人兵の胸の白いカバーが下がり、ひとつの大きなレンズと6つの穴が現れ、その小さな穴の方から六筋の閃光が放たれる。セラフィーは躱そうともせずにそのまま突っ込み身体中に穴を開けながらも敵の顔面に黒銀を叩き込む。すでに仮面は全壊し、下からカメラやセンサーと憶しきものがこぼれだしている。その身体は完全に機械だ。


 セラフィーの身体や服の穴はオートヒールによりすでに回復している。腕一本落とされても数秒で生えるほどの異常な回復力を常時展開できるのはセラフィーが、通常レベル50でも上位騎士や有望な戦士の世界で240をも超えるレベルの「僧侶」なので当然とも言えた。バランスで言えば間違いなく僧侶なのである。その攻撃力が異常に見えるのはレベルの下支えと実戦経験、黒銀という兵器があればこそだった。


「ブレードを展開……!」


「ハアアアアッ!!」


 機人兵は両腕から一本ずつ剣を伸ばす。シャキン、という小気味良い音も普通の戦士では絶望を告げる音である。セラフィーには雑音だ。すかさず連打を行う。


 黒銀を右から振り下ろし左腕の小手で流され半身で躱され、だが打ち下ろした勢いを気合いで殺してそのまま上にカチ上げ、これをスウェーバックで躱され、そのまま右足を踏み込む勢いで前蹴り、腹を打ち抜くも少し跳ばれ、しかし後ろの樹に激突する機人兵。そのまま上げていたハンマーを右から肩に向け振り下ろす。


 ガシャリ、と機械の塊を殴りつける音がするが、頑丈な上にある程度の自己再生能力も持つ機人兵。精密な機械のクセに易々と機能停止はしない。


「……カウンターレイ」


「効くか!!」


 6つの砲門の中央にあるレンズのような物から放たれた一本の巨大な閃光により、セラフィーの腹部には大穴が開き、鮮血が爆発するように背中から弾ける。普通なら即死。しかしセラフィーは常時回復の他に月属性魔法により痛みを軽減している。


 神聖魔法三属性のひとつ、月属性は精神に作用し、時には自白させたり一時的に魅了をかけたり戦意を高揚させたりする。セラフィーは最高位の僧侶であるために精神魔法もお手の物だ。しかし腹に穴が開いているので出血は凄まじい。傷は回復魔法を重ねがけてすぐに癒し、失血もオートヒールに任せて回復させ、そのまま連撃を続ける。


 本来セラフィーはこの程度の攻撃は結界で反らせるのだが、わざと食らい痛みを感じていた。一人生き残った罪の意識から。


 つるはしで穴を掘るごとく上方から叩く、叩く、叩く。経験から機人兵は胸部に演算システム、頭部に感知システムを置いていることは分かっている。もちろん機械なのでその辺りは自由になるのだろうが、プログラミングのクセのような物なのかその辺りはどの機体もあまり変わりはなかった。


「……演算機能に、深刻なエラーが、発生しました……OSの最適化……戦闘中のため……緊急回避システムをさど」


「やかましい!! これで終わりだあっ!!」


 遥かに高く振り上げたハンマーに土の精霊と太陽の光が集まり、莫大なセラフィーの魔力が黒銀を強く輝かせる。そして止めの一撃は振り下ろされた。


「……メテオストライク!!」


「……危険! 危険! 危険! きけ」


 炎の尾を引く黒銀。叩き下ろす衝撃だけでゴワリ、と爆風が広がり、周囲の木々が薙ぎ倒され、赤熱化したハンマーと機人兵の接点が一気に蒸発、爆発する。それは正しく隕石の一撃。


「貴様の神に、祈れえええっ!!」


 閃光と爆風が静まり、最後にはクレーターが残った。機人兵はすっかり溶けたスクラップである。


「……ふう、相変わらずしぶてぇ。今回は一機だけだったか……」


 徹底的に殴りつけて一旦は停止させてもそのままでは復活するのが機人兵であり、この最後の一撃が無ければおそらく復活してくる。ゴキブリよりしぶといのだ。いたぶるために手加減しなければ一撃なのだが、今の一撃もセラフィーにして魔力を全魔力の五%も削っている。さすがに機人兵も溶解して完全に機能停止した。


 インベントリと呼ばれる、物を収納するスキルがある。わりと多くの人が持っているスキルだがセラフィーもこれを所持している。そのスキルにより機人兵の残骸を収納。晴れてこの戦いは終わった。


「……あの人はインベントリ持ちのことを『プレイヤー』とか呼んでたな。この世界はゲームじゃない、とも言ってたけど……。あっ!! 今週末がコンサートじゃねえかっ!!」


 セラフィーにはお気に入りの歌姫がいる。宿命の敵の撃破にもさほど感動は憶えずに、すでにセラフィーの心は領都の、暁の星傭兵団の定宿になっている宿、晴夜(せいや)に飛んでいた。






 ほぼチート無しですけど圧倒的なレベルで押し勝ちます。




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