エンシェントドラゴン
四話目です。
さらに一年が経過した、セラフィーたちは森のかなり奥に来ている。出てくる魔物がレッサードラゴンなどになりはじめていた。
「ドラゴン肉は美味いからな。たくさん狩っておいてもいいだろう」
「くぉーん」
「楽しみ~」
ちなみにウーシャンは手のひらに乗るサイズ、身長二十~二十五センチくらいだ。しかし三百グラムくらいなら食べてしまう。食べた端から魔力に変換しているらしい。そのためか、ご飯を食べる度に魔力が上がっている。本来は花の蜜を吸うくらいしか食事をしないらしく、ここまで大量に食べたらどの妖精も強くなるらしい。ときおり攻撃魔法でサポートしてくれるのは正直有り難かった。
ウーシャンは不思議な気持ちだった。
森の中に突然現れたドワーフの少女と狼。彼女たちはあまりにも強すぎた。オーガの頭蓋骨を一撃で叩き割る。巨大猪に跳ねられてもぴんぴんしている。ドラゴンを食料呼ばわりする。
こんなドワーフ、いや、こんな生物を見たことがなかった。黒の森の魔物は弱くないのに、明らかに彼女たちの方が強かった。ドラゴンの頭を鎚で砕くのを初めて見た。
「レベルは上がるけど戦闘技術は上がらないな」
「まあ魔物は実直なとこあるからね~」
「わふっ」
「確かにね~」
「なんて?」
「森の魔物は鍛え方が足りないって~」
どうやらスヴァルトはセラフィーに慣れすぎてしまったらしい。最近では星属性魔法の影渡りとか言うテレポート技まで覚えている。セラフィーも覚えたので移動しようと思えば一瞬で森の入り口に戻れる。ほとんどなんでもありになってきた。しかし逆に戦闘はつまらなくなってきていた。なんのために戦乱の世に来たのか、セラフィーは悩むのである。
またレッサードラゴンが現れた。翼のない飛べない竜だが、ブレスは吐くので厄介だ。よく山火事にならないものである。生木はそうそう燃えないが限度はあるだろう。
「しとめるよ~」
「任せた」
「現象魔法、雷属性、雷嵐!」
ウーシャンの魔法でレッサードラゴンの頭があっさり沸騰して弾けとんだ。まるでレンジに入れた卵のようである。ウーシャンも一年もセラフィーと付き合っているので、一般的な妖精からすればおかしな力を手に入れていた。
「もう一匹いるな。私が行こう」
「がんばれ~」
「わっふ!」
一息に接近し、黒銀で顎をカチ上げる。これで終了だ。ドラゴンは首が強いから逆に脳みそにダイレクトにダメージが入ってる気がする。
どうであれ、セラフィーはすでにレッサードラゴンも雑魚としている。ブレスをまともに受けても自動回復が怪我を瞬時に癒す。
「竜革装備も作ってみたいけど、レッサードラゴンじゃ大したもの作れなさそうだな」
「セラってなんでもできるんだね~」
「ドワーフは器用だからな」
「ドワーフ万能説~。器用では済まない気がするよ~」
ドワーフは職人なのでなんでもやろうとすれば身につくのだ。一つのことに集中すると脇目も振らなくなるのだが。ちなみに常に着ている黒シャツと白マント、ショートパンツとニーハイソックスは母親のクルミ謹製である。下着は自分で縫っていたりする。
「鎧とかブーツは良い革で作りたいなぁ」
「鞣すところからやるの~?」
「もちろん」
インベントリにはそのための薬も入れてある。もともと森暮らしは計画の内だったのだ。こんなに唐突にさ迷うことになるとは思ってもみなかったが。
レッサードラゴンや屈強なミノタウロスなどの魔物を狩っていると、不意に空が曇った。
なにごとか、と上を見上げると、……巨大なドラゴンが舞っていた。
巨大と言っても竜にしては小さい、全長で十二メートル程度、形は西洋竜と呼ばれる蜥蜴に翼が生えたような形。
ただ飛行速度が尋常じゃない。戸惑うセラフィーたちの前に、その竜は降り立った。
『あんたたち~、森を荒らしちゃダメよぉ~』
「しゃべった……」
『ごめんなさいヌシ様~』
『あらまあ賢いフェアリーちゃんね~』
巨体の緑竜と小さな妖精が会話をしている。とてもファンタジーな光景だった。しかしセラフィーとしては森を荒らせないのは困る。レベルを上げなければならないからだ。しかしいくつまで上げればいいのだろう。目的はなんだろうか。なんだっただろうか。……ただ強くなることではなかったはずだ。
セラフィーは思う。私と言う剣は折れたか曲がったかしてしまっている。
「……私はもぐらの里を取り返したい。強くならなければいけないんだ」
『……みてたわよ~。原初の機神もひどいことをするわねぇ~』
セラフィーはハッとして顔を上げる。このドラゴンはもぐらの里の状況を知っているのだ。ならばなにかヒントをもらえるかも知れない。
「その原初の機神は倒せるんですか?」
『かしこまらなくていいのよ~。この大陸の神ならアベレージレベル二百ってところだからね~、案外倒せると思うの~』
倒せるのか、神が。しかしレベル二百とは、遠すぎる。
「どうしたらそんなレベルに……?」
『百年くらい修行修行なら誰でもなれそうなものだけどね~』
「そんなには待てない」
少なくとも村の原型がなくなるほどは時間をかけたくなかった。もはや村は燃え尽き灰となっているとしても。
『そうね~。この黒の森の奥にエルダードラゴンの生意気な子がいるの~。いずれ倒してくれるなら森でレベル上げしていいよ~。効率のいいダンジョンの場所も教えてあげる~』
「ダンジョン?」
この世界のダンジョンと言えば物資が獲得できる生産拠点のようなものではなかっただろうか。そこでレベルを上げられる? それなら助かるかも知れない。一度ダンジョンに潜ってもみたかったし。狭いなら狭いでメイスもいくらかインベントリに突っ込んでいる。しかしエルダードラゴン退治が大変そうだ。……どの道にしろいずれそこまでは強くならなければダメだが。ならば。
セラフィーはこの申し出を受けることにした。
『おっけー。じゃあついてきてね~。ダンジョンはこっちだよ~。乗る?』
緑竜さんはわざわざダンジョンに送ってくれるらしい。滅多にない経験なので乗せてもらうことにした。
ドスン、と土煙を巻き上げ着地するドラゴン。体重は見た目より軽いようだ。飛ぶからな。翼を階段代わりに全員で背中に乗り込む。
空高く舞い上がるドラゴン。風は魔法で抑えられ緩やかに流れている。振動もなく、とても乗りやすい。手綱も鞍もないのに落ちる気配もなかった。スヴァルトがずっとお座りしてビクビクしている。
やがて緑竜はダンジョンに降り立った。ちなみにこの緑の竜こそがこの世界最強の生物の一つ、エンシェントドラゴンだった。
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