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血塗れ聖女

 バンパイア主人公にするつもりもありましたが。



 南下して探知をかけつつ遠目に観察をする。どうやら冒険者が狼と戦っているようだ。オオクロモリオオカミと呼ばれる狼。体長二メートルは超えているかなり強力な種である。どちらも怪我をしているようだ。緊急性が高そうな冒険者の方を救援する。


 黒森の狼は大人しいので縄張りに入ったり攻撃したり子供にちょっかいをかけなければ人間は襲わない。なのでなんとなく助けたくないわけである。しかし、仕方がない。セラフィーは元より世話焼きであった。


「大丈夫かな。助けはいる?」


「た、助かる! って血塗れ!?」


「ドワーフ?」


 とりあえず血塗れで倒れている一人を回復させる。そのあと狼に向き直る。回復、月属性、鎮静(レスト)。魔法にかかるとすぐに狼は落ち着いてお座りをした。オーク肉をインベントリで分解して手のひら大の塊肉を取り出して与える。


「森へお帰り」


「くぉん」


 鳴き声が可愛い。そのまま肉を咥えて森へと狼は帰った。さて。面倒ごとは嫌なので森の奥へ逃げることにした。レベルアップしないとね。


「あ、待って!」


 待たない。血塗れのままだった。セラフィーはそのまま森の奥へ消える。




 数日後、森で猿を狩っていると狼がやってきた。餌でも求めているのか、大人しい。猿は要らないのでくれてやろう。食べない。好みがうるさいようだ。この猿は集団で襲ってくるし、やたらうるさく鳴くので早めにすべて討伐して処分したいのだが。肉が臭いんだよな。狼はなんの用であろう?


「くぅん、くぉー」


「ん? なにか別の用事?」


 猿の死体は浄化することにした。インベントリに入れてアイテム削除。哀れ猿は魔力のチリとなった。食べない生き物でもゴキブリは殺す。大人しく待っていた狼に向き直る。


「着いてこいって?」


「くぉーん」


 可愛いぞ。まあ今さら狼くらいに負けることもなかろう。ついていくことにした。途中で鹿を発見したが肉は余ってるので見逃しておく。狼たちが食べるかも知れないしね。


 大狼、背中がセラフィーの顎くらいの高さなので肩までの高さで一メートルはある。大きい。のし掛かられたらセラフィーでも起き上がれないだろう。


 着いていった先には案の定と言うか、血塗れの大狼がいた。セラフィーを案内した個体よりさらに一回り大きい。すぐに回復を投げてやる。傷は一瞬で塞がった。オーク肉も投げてやる。仔狼が多いのでオーク一頭分を置いてきた。きゅんきゅん言いつつ集まってくる仔狼たち。癒される。


 さすがに狼に囲まれているのは怖いので、セラフィーは月属性の魅了を投げながら逃げ出した。魅了の効果は魔力をかけている間だけ有効で長時間維持するのには向かない。




 さらに数日後。今日も猿の魔物と戦っていた。かなり鬱陶しい魔物で集団でウキウキ叫びながら目の前で踊る。恐らくは他の魔物を呼んでいるんだろうがウザいからか他の魔物は寄ってこない。


 タイミング悪くこちらに飛びかかってきた時に顎をカチ割ったため、セラフィーは全身が血塗れになった。浄化をかければいいのだが近くに川があったのでセラフィーは水浴びをすることにした。寄生虫は消毒できるし、ゆっくりしよう。


 と、そこにまた狼が現れた。タイミング悪いよ君。言葉は通じない。


 正直かなりやる気がないセラフィーは血塗れに素っ裸で狼にまたがった。どうせまた狼だし、裸でも問題ないだろう。日射しが強かったので風が気持ちいい。なんだか野生児っぽくて楽しくなってきた。これあれだ、金太郎だな。黒銀担いだセラ太郎。


 連れていかれた先では冒険者が数人血塗れで唸っていた。なぜ。


 この狼はどうもボランティア精神に目覚めたようである。こちらにも気を使ってほしかった。血塗れの素っ裸のまま狼に乗って登場である。変態だ。


 さすがに重傷者を放置できないので狼を降りて治癒をかけていく。面倒ごとは嫌なので即座に狼に乗って撤退する。言葉がしゃべれない設定で行こう。


 この狼はなぜか懐いたのでスヴァルトと名付けた。オーク肉消費係と名付けるかで悩んだが嫌そうな顔できゅんきゅん鳴いたのでやめた。可愛いと思うんだが、消費係。生き物係っぽいし。などとセラフィーは本気で考えていた。




 それからしばらく経ち、もぐらの里の南、ヤミン男爵領冒険者ギルドでは黒の森に現れる聖女が話題になっていた。


 人はおろか狼までも助ける、争いがあれば調停する、血塗れで現れる、狼に乗って現れる、裸で現れておっぱいが大きい。などなど、噂に事欠かない。


 ちなみに最後の言葉を言った男はギルドの女性全員から嫌われることになったがそれはおいておこう。興味もないし。


 血塗れ聖女は孤児ではないか、滅びたドワーフ村の生き残りではないか、人の姿をした魔物ではないか、吸血鬼ではないか、おっぱいが大きい、などなど、噂は広がっていく。ちなみに最後の言葉を言った男はパーティーを追放になった。きっと帰ってこれない。


 そしてついに、血塗れ聖女捜索隊が組まれることにまでなった。果たして、血塗れ聖女の正体は何者なのか。


 たぶん面倒くさがりのダメドワーフ娘である。


 ある時、たまたま調味料などを買い出しに来ていたセラフィーがその噂を聞いて顔を真っ赤にして走り去り、その後さらに引きこもることになったのは余談である。






 やっぱりドワーフ娘だよね!


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― 新着の感想 ―
[良い点] ふとしたことで狼になつかれる! めちゃくちゃロマンを感じます。いつか書いてみたいパターンです。 仔狼かわいいです。 うっかり全裸で噂になる!! 別の意味でロマンですね!!
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