戦争とは
セラフィーのもっとも苦しい戦場です。
今日の二話目です。
「はああああッ!!」
セラフィーは急ぎ山を駆けおりる。敵が多すぎる。ハーピィも百から降りてきている。ときおり光弾を飛ばしてハーピィを落としながら、ヘイトを稼ぎながら降りていく。近寄ってきたら黒銀タイムだ。柔い骨のハーピィなんかカスったら殺せる。村はすでに血まみれの戦場と化していた。倒れている数人に回復を飛ばすが起き上がらない。クソッ!!
そこらの機人兵を殴り飛ばす。近くで金属音。ハガネが五式と戦っている。駆け寄り回復。援護。
「親父!」
「セラ、南だ! 皆を橋から逃がせ!!」
「分かった! 死ぬなよ!!」
「あたぼうよっ!!」
五式一体なら親父の方が強いと判断した。すぐに南に向かう。魔力自動回復が効いてる。少しは楽になるか……?
しかし、すでに倒れているドワーフが多い。近くの錬金術商店、祖母のマワタがいる店に飛び込む。
「ばあちゃん!!」
「……」
カウンターに突っ伏して、ばあちゃんはすでに事切れている。……しかし何故だ? 何故商品が無くなっている?
全部ではないが高級なアイテムが根こそぎなくなって……。まさか。
残っているポーション類をインベントリに叩き込むと店を出て南へ走る。生きてるドワーフがいない!
すると向かいからオーリが駆けてきた。
「大変だ! あいつら橋を落としやがった!!」
「はあっ!?」
もぐらの里は周囲二方面を高い山、残り二方面を深い谷に閉ざされている。そこから脱出するためには橋を通らなければならない。その橋が落とされた。機人兵はセラフィーたちを皆殺しにするつもりか。
「機人兵じゃない……。人間の、人族の商人だ」
「はっ……?」
機人兵じゃなくて商人? そこでセラフィーは祖母の店の状態を思い出した。
「火事場泥棒……」
「くそっ!! おんなじ人間のやることかっ!!」
「はは……。親父を助けに、行かないと……」
「セラ、北は敵が濃い! 無理だ!!」
「じゃあ、どこに行けって言うんだよ、オーリ……。私はどうすれば……」
めちゃくちゃだ。機人兵の襲撃だけでも頭がぐちゃぐちゃなのに、人間が火事場泥棒とか。しかも橋を落とされちゃ皆を逃がせない。
「に、西の橋は?」
「たぶん望み薄だけど見てこよう。しっかりするんだ、セラフィー!!」
「はっ!!」
背中をはたかれる。オーリに活を入れられ、セラフィーは西に走る。死体が増えている。西は……。西の橋も落とされていた。
強盗を働いて逃げるために、ここまでするか。
セラフィーの中で、なにかが壊れた音がした。
もう、奴らを全滅させるしか手はない。……復讐してやる。復讐してやるぞ!! そのために今は生き抜く!!
「セラフィー!!」
「敵を片付ける!! オーリは隠れてて!!」
「君は……!!」
群がる一式を黒銀で薙ぎ払い、空を舞う二式を光弾で叩き落とす。三式の砲撃を躱し、カウンターで黒曜石の投げナイフを突き立てる。次々に爆発する機人兵。
そして両手から剣を生やした百八十センチほどの機人兵と向かい合う。機人兵四式か。
素早く二刀で攻めてくる四式の攻撃を、躱し、受け流し、力を利用して投げる。転がる機人兵、しかし受け身を取り、一回転前転して起き上がり振り向きざまに剣を振るってくる。背を反らしつつ黒銀で足元を薙ぐ。あまりの質量に容易に転ぶ四式。セラフィーは体勢を立て直しつつ黒銀を振り上げ、頭上高々と振り上げ、加速して振り下ろす。体をひねり躱す四式。しかし地面を叩くはずのハンマーの軌道がずれた。
「神聖魔法太陽属性、蜃気楼。そこに私はいない!」
がしゃり、と音を立てて四式の肩が砕かれた。歯車や破片が舞い散る。……この歯車って飾りだよな。噛み合ってないし。などと冷静に考えるセラフィー。割と余裕があるようだ。
「ピーッ。救援信号。救援信号……」
「……まずっ」
セラフィーが四式に止めを刺す、しかし、遅かった。周りには一式から四式まで群れをなしている。なんとか四式だけでも蹴散らさなきゃ。再び奥の手を切る。神聖魔法、月属性、魔力強化、太陽属性、身体強化……!!
まずは脚をへし折る。機人兵たちが捉えられないスピードでぐしゃりと薙ぎ払う。ついでに自分より小さい一式はすべて横薙ぎで弾き飛ばす。空中の二式に光弾。精神強化により威力の高まった光弾は一撃で二式を叩き落とした。三式の砲撃は密集陣形では役に立たないので無視して四式を潰していく。しかし、終わりが見えない。これは、罠にはまったかも知れない。
「セラ! 逃げるんだ! 無理だ!!」
「オーリ!!」
オーリだけは助けないと……。セラフィーは機人兵の群れをかき分けるように黒銀を振るう。一式を蹴散らし、いまだ無傷の四式を胴をへし折るように殴り付ける。限界が近い。オーリ……。
やがて目の前の機人兵をすべて薙ぎ払う。やっと切り抜けた。しかし。
そこには四式に組みしかれ、胸を貫かれたオーリがいた。
そこで世界は暗転する。
セラフィーの最初の戦争は、こうして幕を閉じた。
セラフィーは全てを失いました。
立ち上がれセラフィー、明日に向かえ!と思ったらブックマークと評価をよろしくお願いします!




