お祭り
二話更新します。よろしくお願いします!
お祭りは盛大に行われた。酒屋から提供される酒樽はドワーフが一樽辺り十人くらい群がって運んでいた。落としたら大ひんしゅく間違いなしだ。それならみんなでひっかぶる。酒も責任も。
セラフィーもりんご酒の樽を数樽ほどインベントリに放り込む。一樽くらいくすねたいという誘惑に必死で抗うドワーフ娘。なんとか欲望を振りきった。村の中央にある広場に設けられた祭場に並べる。
たっぷりの肉と酒。炎を囲み、ドワーフの祭りが始まった。
ドワーフ好きの冒険者たちにお酒を振るまい、料理を配る。主役のはずのセラフィーだが、精力的にみんなの間を回り酒や料理の世話をする。セラフィーの可愛らしさに皆がほっこりとした。オーリはセラフィーが働きすぎて楽しめないんじゃないかと気が気ではないのだが、セラフィー本人は世話を焼くのも大好きで、楽しかった。
セラフィーの目標は戦場最強という村人たちが首を傾げる内容だったが、村で一番勤勉なのがセラフィーだと認めてもいた。親父のハガネは鍛冶を覚えてほしい気持ちもあったが、まっすぐ伸びる我が子、ここで鎚を入れても曲がるだけだと我慢した。妻のクルミはそれを知っているので自分の夫は子育ても上手いのだと密かに思っていた。
セラフィーも父親の気持ちは理解していたが、武器の調整は習っても自ら武器は打とうとしなかった。そもそもハガネ自身もセラフィーにはまっすぐ伸びてもらいたいと一番に思っているからこそ口を出さないのだ。それがよく伝わってきた。
何度かお酌をしてまわり、潰れる冒険者が出始めたのでセラフィーもそろそろ腰を落ち着けてお祭りを楽しむことにした。ドワーフは一人も潰れていない。この程度で潰れると本当にドワーフなのかと疑われる。
やがてドワーフの職人たちによる腕相撲大会や飲み比べが始まる。冒険者たちもこれが楽しみなのだと言わんばかりに集まって、金をかけては応援して騒いでいる。
少し遠くに座りそれらを眺めるセラフィー。これがセラフィーにとって一番幸福な景色だ。炎と酒で火照る頬とそれを優しく冷ます秋の風。祭りを楽しむ人々を見つめるセラフィーの瞳は輝いている。
なんのために戦う、と聞かれたら、セラフィーは戦いが好きだから、と、答える。
でも、キザだけど、この景色を守りたい、でも、良いかもしれない。
「セラ、一人で飲んでるの?」
「オーリ」
別に孤独に浸っているわけではないので一人にしておいてくれれば構わないのだが、せっかく来てくれたので座っている丸太の席を少し譲る。二人で黙ってしばらく祭りの景色を眺めている。
「遠くから見るのもいいね」
「いいでしょ。みんなイキイキしてて、それを眺めているのが好き」
「セラが準備を頑張ったのもこのためだもんね」
「そうだよ」
また静かになる。少し遠くではドワーフの大人たちがいまだに騒がしい。冒険者たちは半分くらい寝てしまってるが半分はドワーフなみに酒が強いのか、一緒になって腕相撲したりカードで遊んだりしている。まだ誰も帰ろうとはしない。朝になると空の樽が転がり樽のようになったドワーフが転がるのだ。それも少し楽しみである。
眠気やそこから来るストレスも回復魔法で癒せる。持久力回復や目覚めで朝まで起きているつもりだ。
「そういえばゼロはどうしてるかな?」
「見にいってみる? 故障箇所は直ったらしいよ」
機人兵ゼロ式はまだ村の外れのボロ小屋に住んでいる。食料などは要らないが魔力チャージは継続していた。ゼロからは現在までに設計されている機人兵のことや世界情勢などを聞いている。なんでもメインサーバーと呼ばれる機人兵を動かしている機械のプログラムを外から読み取ることで、原初の機神に支配されないままで世界情勢の変化を知ることができるらしい。
機人兵は各地に派遣されて鉱山などを奪い資源や情報をかき集め、また大陸各国の貴族に取り入り徐々に大陸における立ち位置を磐石なものにしていっているらしい。放置しておくと面倒そうであるが、表立って同盟している国もないので身内で争ったりもしていて、更に各国の神の勢力による反発もあって、そう上手くも進んでいないようだ。
他には人神国ボーミングリットと魔王国ヤーシャンケルの小競り合いが続いている、星国レイアシスタと機神国マギエグゼリアが砦を取ったり取られたりしている、南の小国家群(この辺り)で戦争が繰り返されている、貴族間の争いが激化している、東の大陸で内紛が起こっている、それを女王が主体になって鎮圧した、等々、様々な情報が得られ、ゼロに話を聞くのは二人にとって地球で言えばテレビやラジオを視聴するような楽しみになっていた。
「現在の状態であれば二年以内に修復、改造、プログラム修復、アップデート、デバッグ、すべて終了する予定です」
「直ったらどうするの?」
「セラ、私は目的を果たすために旅に出なければなりません。そこでお別れとなります」
「……っ」
「セラ、仕方ないよ。ドワーフの村で機人兵は暮らしづらい」
「……うん」
分かってはいるし、前世の記憶もあるのに泣きわめくつもりもない。旅をすれば別れもある。それはいずれ必ずセラフィーに訪れることだ。でも……。
別れには、耐えられる気がしない。
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