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ゼロ

 二話目です。よろしくお願いします。



 ドワーフの朝は早い。セラフィーはまず兄に起こされて顔を洗い、浄化の魔法も使ってさっぱりしてから食卓に着く。料理や裁縫も母クルミに習っているが、朝は母も忙しくしているので割り込めない。手伝いはする。


 親父ハガネは今日も工房にこもっているので母クルミが祈りを捧げる。


「祖神様の旅路が穏やかでありますように。豊かな糧を得て満ち足りた一日を送れますように。……さあ、私たちも食べましょう」


「いただきますっ!」


 朝食を箸でつつく。このアルテシア大陸ではフォークやナイフが主流だが、箸も使われている。ドワーフたちは器用さの鍛練になると、箸を中心に使っていた。


「セラ、今日はお買い物を頼むわね」


「はーいっ!」


「インベントリか、便利だよなそれ」


 インベントリはアイテムを情報化して体内に収納するスキルである。まれに使える人がいるので珍しいスキルではなかったが、重さも感じず腐りもしない便利なスキルだった。


 インベントリはレベルにより枠、ストレージが増える。一つの(ストレージ)で同じ品物なら九十九個、一個辺り十キロまでの物を収納できる。生物も一万立方センチ以内なら入れられる。子供は親に権限があるので入れられないし、店の商品も主が認めないと入れられない。店主が死ぬとフリーになるが強盗の記録が残るため、神官などにはバレる。当然即死刑。ちなみにこれ以上大きいものはストレージを一枠使えば収納できる。その際の限界は一枠九百九十キロになるが、さらにそれより大きいものはストレージを連結して収納することもできる。


 レベル1時点では十枠のストレージが使えたが、買い物に便利なのでセラフィーは買い物係をしていた。


 地元の商店に行くと人族の商人が品物を納品に訪れていた。商品が封入されたカードを何枚か渡して店主のドワーフから金を受け取っている。この商人は小太りで鼻の下だけ髭を蓄えていて、胡散くさい見た目だった。まあ毎週のように訪れているので見慣れたが。


「こんにちはっ!」


「おー、嬢ちゃん、こんにちは」


 挨拶をすれば挨拶を返してくる。しかし目付きはじろじろと品定めをするようで気持ち悪い。気にせず店主のドワーフに調味料や掃除道具を注文して品物を揃えてくれるのを待つ。胡散くさい商人はすでに帰路に着いたようだ。


「よその商人には気をつけろよ。奴隷商もいるからな」


「気をつける~」


 普通の大人にならセラフィーはすでに負けることはない。大人の一般的なレベルは十である。セラフィーはすでに二倍だ。だが、一般的でない大人ももちろんいるのだ。気をつけるに越したことはない。


 店主に代金を払い、もらった商品をインベントリに収納する。


 ふと店の裏、遠くに崖下のボロ小屋が見えた。荷物はインベントリの中なのでセラフィーは寄り道をすることにした。


 きぃ、と歪んだ木の扉が音を立てる。そこには薄い金色や銀色のパーツで構成された機械の人形が置かれていた。顔は石膏の仮面のように見える。


「ぜろ、おきてる?」


「セラフィー、おはようございます。現在の修復率は二十五%、システムプログラム改修は十五%、本体改造は材料が不足しているため十二%で停止しています」


「うん、わかんない。材料のてつとにっけるとまんがんとまぐねしうむと、あとなにがいる?」


「……銅、銀、金、カルシウム、クロム、アルミニウム、タングステン、ミスリル、オリハルコン、アダマント、ヒヒイロカネが必要です。無理であれば魔力により補填しますのでチャージをお願いします」


「ん、むり。ちゃーじっ!」


 セラフィーが魔力を注ぐ。僧侶にしてレベル二十のセラフィーは魔力の少ないドワーフであっても最大魔力が二百を大きく超えている。一般的な魔導師がレベル1で十二ポイント前後なので、かなり高いと言える。回復(ヒール)一回で消費する魔力は六ポイント、基本的な攻撃魔法である(ショット)系で二ポイントなのでその高さがわかる。


 その多い魔力の上にスキル魔力回復大で、魔力が尽きても二時間あれば完全回復するため、セラフィーは毎朝のようにゼロ式に魔力を与えていた。子犬の世話のようで楽しかった。


 機人兵ゼロ式は穏やかな性格だった。それに機械的な行動も少なく、命を感じさせた。


「私の目的は、人間のように魂を持つことです。そのためメインサーバーから意識を切り離し独立しています。これはメインサーバー、原初の機神からの要請でもあります」


「うん、わかんない」


 魂を持つ? セラフィーはなにかを忘れている気がした。まあゼロの世話をしていたら思い出すかもしれない。どこかで魂がなんであるか、聞いた気がする。しかしゼロと別れる日まで、結局セラフィーはそれを思い出すことはなかった。


 お昼からは狩りと修行だ。帰りに酒屋の香りに誘われて立ち寄るとイェフタン師がガラス窓に張り付いていた。おいエルフ。セラフィーも横に張り付いた。おいドワーフ。後ろから四人くらいさらに集まった。おいドワーフども。


「セラ、魔法改変は上手くいってるか? ……あー、いい香りだな」


「うん、でもまりょくすごくたくさんいる。むずかしい。あー、いい匂い」


 魔術は難しい。お酒の香りはかぐわしい。


「これは買いだの」


「よってくか」


「よーし、飲むか、つまみ買ってくる!」


 後ろに張りついていたドワーフオヤジたちは次々に酒屋に飛び込んだ。うらやましい。


 セラフィーはそのあとに続いたイェフタンを皿のように細めた目でにらんだあとに、狩りの時間なのを思い出して駆けていった。今日はオーク狩りだ。楽しみにしていた。






 イェフタン師匠のダメ具合をもっとみたいです!(書け)


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