第92話 連れ去られた廃嫡王女
前回のあらすじ
王国兵がアイナを連れて行きそうになった
教会から飛び出た僕は、すぐさま魔法剣を発動させる。
そしてアイナを事情聴取という建前で連れ去ろうとした王国兵に向かって、《メガファイア》を放つ。
王国兵は火球を避け、返す刀で無数の氷柱を放ってくる。
僕はソレを左右の剣を振り回して、次々と撃ち落としていく。
「ぬうううっ! 我が最大の魔法が効かないとは! それに先程の不可思議な魔法に、キサマの訳の分からぬ剣! もしやキサマ、帝国で造られていると噂されている強化魔導兵か!?」
「失礼な! 僕は真っ当な人間です、よ!」
王国兵のあまりにもあまりな物言いに若干怒りながら、最後の一本となった氷柱を撃ち落とす。
そして炎を纏った右手の剣の切っ先を相手に向けながら詰問する。
「アンタ達にアイナを連れてこいと命じたのは誰だ!?」
「キサマ如きにペラペラと口を割るほど、我等の忠誠心は低くはないぞ!」
「へぇ〜……軍人を顎でコキ使える立場の人物は限られるハズ……アンタ達に命令を下したのは、この国の女王か?」
「な!? なぜ分かったのだ!?」
僕がテキトーに予想して口にした言葉に、王国兵はひどく狼狽える。
自らの主のことに対して口は割らなかったけど、態度に表してしまっていた。
……当てずっぽうで予想したことでも、当たることってあるんだなぁ……。
そんなことを思っていると、王国兵はさっきまでとは打って変わって、殺気を滾らせながら短剣を構える。
「……たとえ偶然であろうとも、女王陛下のことを知られたからにはキサマにはここで死んでもらう」
「……死人に口無しってことですか」
「そうだ!」
王国兵はそう言うと、地面を蹴り僕に接近してくる。
ただ……その速さはお世辞にも素早いと言えるモノではなかった。
アリシアの方がこの王国兵よりも何倍も素早い。
だから対処も簡単だ。
王国兵が繰り出してきた短剣による斬戟を、左手の氷を纏わせた剣で危なげなく防ぐ。
「なっ……!? 我が必殺の一撃が!?」
防がれるとは思っていなかったのか、王国兵がこれでもかというほどに目を見開く。
この程度の速さで必殺とか……兵としての練度が低すぎる気がしないでもない。
だけどそれは僕には一切関係ないことなので、僕は微塵も躊躇うことなく右手の剣を振るう。
上半身と下半身に分けるが如き横薙ぎの一閃は、王国兵の脇腹に当たった瞬間に鳴り響いた甲高い金属音によって防がれた。
「チッ……!」
僕は舌打ちしつつ、後ろに素早く跳んで王国兵から距離を取る。
王国兵の左脇腹を見やると、外套と中の服は裂けていたけど、その裂け目から黒い光沢のある金属が顔を覗かせていた。
「危ないところだった……軍から支給されたアンダーメイルがなければ即死だった」
王国兵はそう言いながら、左脇腹を擦っている。
僕は剣を構え直して相手の出方を窺おうとした次の瞬間、教会の方から轟音が聞こえてきた。
「なんだっ!?」
王国兵への注意を怠ることなく後ろを振り返ると、教会の壁から土煙がもうもうと立ち昇っていた。
何が起こったのか分からないでいると、次の瞬間、土煙の中から僕と対峙していた王国兵と同じ格好をした二人組が飛び出してきた。
そして片方の肩には、ぐったりとした様子の白髪の少女が担がれていた。
アリシアでなくても、その少女を見間違えようハズもない。
アレは―――。
「――アイナ!?」
「くっくっくっ……」
連れ去られたらしい少女の名前を叫ぶと、後ろから声を圧し殺した笑い声が聞こえてくる。
僕は身体の奥から沸き上がる怒りを抑えることなく、後ろを振り返り激昂する。
「何が可笑しい!?」
「くっくっくっ……いやなに。こうも鮮やかに我々が張った罠に引っ掛かってくれるとは思っていなくってなぁ……」
「テメェ……!!」
「《ボルテクスバースト》!」
怒りが頂点に達した瞬間、眩い光を放つ雷撃が笑い続ける王国兵に直撃した。
その一撃を何の防御体勢も取ることなく喰らい、王国兵は身体の所々から黒煙を上げながら地面へと倒れ込んだ。
僕は雷撃を放った本人に目を向ける。
「アリシア!」
「アレン! 王国兵を追うわよ!」
「ああ!」
アリシアの言葉に、僕は力強く頷く。
そして彼女と共に、アイナを連れ去った王国兵達を追った―――。
アレンはキレると言葉遣いが荒くなります。
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