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第87話 違和感の正体

前回のあらすじ

氷狼達を蹴散らした

 

 馬車は森の中で止まっていて、僕が戻ってくるのを待ってくれていた。

 その馬車からアリシアが降りてきて、僕を出迎えてくれる。


「おかえりなさい、アレン」

「ただいま、アリシア」

「敵は?」

「だいたい蹴散らした」


 そう答えながら、馬車の中に乗り込む。

 それからアリシアの方へと手を差し出し、彼女の腕を引っ張って馬車に乗り込むのをサポートする。


「アレンさん。ありがとうございました」


 するとアンジェリカさんが、そうお礼を言ってくる。


「いえ。護衛として当然の働きをしたまでですよ」


 それに対して僕は、そう答える。


 そして馬車は再び動き始めた―――。




 ◇◇◇◇◇




 初日に氷狼の群れに襲われたくらいで、それ以降は何事もなくヴァイス王国の王都に無事たどり着いた。


 ……いや、何事もなかったというのは少し語弊がある。

 王都に近付くにつれて、アレンの顔色が段々と悪くなっていっていた。

 彼は大丈夫だと顔を真っ青にして言っていたけど、明らかに痩せ我慢をしていた。


 そして馬車が王都の停留所に停車して、わたし達が順番に馬車から降りたその時、とうとうアレンの我慢も限界に達した。


「ぐっ……!? 頭が……割れる……!!」


 両手で頭を抱き抱えるように押さえながら、アレンは馬車から降りたその場所に蹲る。

 わたしは急いで彼の下に駆け寄る。

 アイナもわたしの後を付いてきて、心配そうな眼差しをアレンに向ける。


「アレン、大丈夫!?」

「ぐっ……はぁはぁ……だ、大丈夫……」


 わたしの問い掛けにアレンはそう答えるけど、顔面蒼白の状態で言われても説得力ゼロだった。


 するとアンジェリカさんが、アレンに近付いてきた。

 そして顔の真正面に膝を着く。


「ちょっと失礼しますね」


 アンジェリカさんはそう断ってから、アレンのほっぺたを両手で押さえながらジロジロと顔色を窺っている。


「…………なるほど……分かりました」


 アンジェリカさんはそう呟くと、アレンのほっぺたから手を離して立ち上がる。


 そんな彼女に、わたしは尋ねる。


「あの……アンジェリカさん。アレンがこうなってる原因が分かるんですか?」

「ええ。恐らく、魔導兵器の魔力にあてられたのではないでしょうか?」

「魔導、兵器……?」


 聞き馴染みのない単語に首を傾げていると、親切にもアンジェリカさんは解説してくれた。


「はい。魔導兵器とは、兵器として開発された魔道具の総称です。兵器として使用することを前提として開発されているので、一つ一つが莫大な魔力を有しているのです。それを製造・開発する工場が王都の地下にあるのですが……魔力感知能力が高い人は、その魔力にあてられて体調を崩すことが多いのです。アレンさんの体調不良も、その類いでしょう」

「そうなんですか……だって、アレン」

「はぁ……ふぅ……そう、なんだ……」


 アレンはそう答えると、ゆっくりと立ち上がる。

 だけどやっぱり体調がよろしくないみたいで、フラリと身体が倒れかける。


 そんなアレンの身体を、わたしは横から支える。


「本当に大丈夫?」

「……大丈夫、じゃないかも。だからアリシア……」

「分かってるわ。身体をしっかりと支えてあげるわよ」

「ん……ありがとう」


 アレンはそう言うと、わたしの肩に腕を回して、体重をわたしの方に掛けてくる。


 それを見計らったかのように、アンジェリカさんが口を開く。


「さて……それなら、アリシアさん達は先に今日泊まる宿屋に向かっていてください」

「え? いいんですか?」


 わたしがそう聞き返すと、アンジェリカさんは優しい笑みを浮かべながら頷く。


「ええ。早くアレンさんを休ませなければいけないでしょうからね」

「でも、護衛の方は……」

「王都は治安が良いので、私一人でも大丈夫ですよ」

「そうですか……なら、お言葉に甘えさせていただきますね」

「はい、そうなさってください。……アイナはどうするの?」


 アンジェリカさんはそうアイナに問い掛ける。

 アイナはチラリとわたし達の方に目を向けてから、彼女の質問に答える。


「あたしはおねえちゃん達と一緒にいます」

「そう……それではアリシアさん、アイナのことお願いしますね」

「はい、お任せください」


 アンジェリカさんの言葉に、わたしは頷きながらそう答える。


 そしてアンジェリカさんは、わたし達の前から立ち去って行く。

 わたし達も、今日泊まる宿屋へと向かって行った―――。






アレンが感じていた違和感の正体が明らかになりました。

ですが……。




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