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第85話 魔導王国の王都へ

前回のあらすじ

アイナ成長中

 

 鍛練で荒れた裏庭をアレンと協力して整地してから、三人一緒に教会の中へと戻る。

 すると中にはこの教会に勤めるシスターであるアンジェリカさんと、司祭っぽい服に身を包んだ男性が何かを話し合っていた。


「それではよろしくお願いいたします、シスター・アンジェリカ」

「はい、承りました」


 ちょうど話し合いが終わったところだったようで、司祭っぽい男性がわたし達がいる扉の方へと歩いてくる。


 わたし達とすれ違う際に、その男性は軽く会釈をしてきた。

 わたしとアレンは軽く会釈を返し、アイナは律儀にもお辞儀で返していた。


 そして彼が出て行って扉がパタンと閉まった後、アンジェリカさんの方へと向かう。


「アンジェリカさん。さっきの人はいったい?」


 わたしと同じ疑問を抱いていたようで、アレンがそうアンジェリカさんに尋ねる。

 その疑問に彼女は答える。


「先ほどの男性は、教会本部に勤める司祭様です。私のように地方都市に勤務する者達は年に一度、王都にある教会本部に活動を報告しに行かなければならないのです。今日はその告知にいらしてくださったのです」

「そうなんですか……大変そうですね」

「もう慣れてしまいましたから、大変だとは思っていないですよ。……さて、私はちょっと出掛けて来ますね」

「? どちらに?」


 わたしは首を傾げ、アンジェリカさんに尋ねる。


「王都行きの馬車の予約と、道中護衛してくれる傭兵の人を雇ってきます」


 この魔導世界に冒険者は存在しない。

 その代わりに、傭兵という存在がいる。


 彼らは一言で言えば、お金で雇われる騎士だ。

 だから傭兵の仕事内容は、騎士の仕事内容と似通っている。

 相違点は、収入が安定しているかどうかくらいだ。


「それなら、道中の護衛は僕とアリシアが務めましょうか?」


 アレンの申し出に、アンジェリカさんは驚きで目を見開き、彼に聞き返す。


「え? よろしいんですか?」

「はい。日頃お世話になっているお礼だと思っていただければ。……アリシアもいいでしょ?」


 アレンがわたしにそう話を振ってきたので、わたしは頷く。


「うん、いいよ」

「それでは……お言葉に甘えさせていただきましょうかね?」

「はい、お任せください」


 アンジェリカさんの言葉に、アレンは笑顔で返す。


「それでは、馬車の予約だけしてきますね。私がいない間、留守番をお願いします」

「分かりました」


 わたしがそう返事をすると、アンジェリカさんは出掛けて行った―――。




 ◇◇◇◇◇




 それから三日後。

 わたし達は、馬車が停まっている停留所までやって来ていた。

 そこには色んな馬車が停まっていたけど……。


「……アレが馬車、ですか?」


 わたしと同じくソレに疑問を抱いたようで、アンジェリカさんに尋ねていた。


「? ええ、そうですけど……もしかして、今まで馬車を見たことがないとか?」

「あはは……まあ、僕達がいたところは、馬車なんて無いほど辺鄙なところでしたから」


 アレンの言葉には、ちょっとだけ嘘が混じっている。

 わたし達の元いた世界にもちゃんと馬車はあったけど、田舎から出てきたという『設定』なので知らんぷりをする。


 それを抜きにしても、わたし達の目の前に並んでいる馬車は、わたし達が思い浮かべる馬車の姿とは異なっていた。


 目の前に並ぶ馬車―というか馬は、体が金属で出来ていた。


 この国が魔導王国であるという点からして、あの馬(?)も魔道具か何かなのだろう。

 御車は普通なんだけどね? 少なくとも見た目は。


 するとアンジェリカさんが、ご丁寧にも説明をしてくれた。


「それではお二人に説明して差し上げますね。アレは見た目通り馬車ですが、馬は魔道具です。そして馬に目的地を設定してあげれば、その場所まで自動で運んでくれます」

「へぇ〜……便利ですね。でも、緊急時はどうなるんですか? 止まっちゃうんですか?」


 アレンがそう尋ねると、アンジェリカさんは首を横に振る。


「いいえ、その場合は手動で動かすことが出来ます。……もっとも、そんな場面なんて滅多にないんですけどね?」

「ということは……道中は比較的安全なんですか?」


 わたしの問い掛けに、アンジェリカさんは頷く。


「ええ、そうですよ。護衛を雇うのも、念のためといった意味合いが強いですしね」

「そうなんですか……それじゃあ、護衛だからと気張る必要はないみたいですね」

「そうですね。なので是非とも、馬車での移動を楽しんでください」

「はい、そうします」


 アンジェリカさんの言葉にわたしは笑顔で、アレンは無言で頷く。


「それじゃあ早く乗ろう!」


 さっきからウズウズとしていたアイナが、わたしの手を引っ張ってそう言ってくる。

 わたし達は苦笑しながら、わたし達が乗る馬車の方へと向かう。


 そして馬車に乗り込み、ヴァイス王国の王都に向かって出発した―――。






馬(馬とは言っていない)。




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