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第79話 魔導王国

前回のあらすじ

アレンは違和感を覚えていた

 

「この国はヴァイス王国と言う名で、二大大国の内の一角です。この国の特徴としては、魔道具技術が他国よりも発達している点でしょうか。そのおかげで、一般市民にも魔道具が普及しているのです。この教会に来るまでの間に、貴方達もご覧になられたでしょう?」


 アンジェリカさんのその言葉に、僕は頷く。


「はい。あんなにたくさんの魔道具は、今まで見たことがありません」

「そうでしょうとも。この国の発達には、ヴァイス王国を治める王家であるスノウホワイト家の方々の尽力の賜物ですから」


 そう言うとアンジェリカさんは、何故かアイナの方に目を向ける。

 だけどそれもほんの一瞬のことで、彼女は何事もなかったように説明を続ける。


「なので諸外国には、ヴァイス王国は魔導王国と呼ばれているのです」

「魔導王国……」


 アリシアがそう呟くと、アンジェリカさんは頷く。


「はい、そうです」

「あの……アンジェリカさん。さっきヴァイス王国は二大大国の一角って仰ってましたけど、もう片方の国っていったいどんな国なんですか?」

「私も詳しくは知りませんけど……」


 僕が質問すると、アンジェリカさんはそう前置きしてから、もう片方の国についても説明してくれた。


「もう一方は、シュバルツ帝国と呼ばれている国です。その国は皇帝と呼ばれる存在が国を治めているようで、王国とは反対に魔法技術が発達しています。現に、今でも新しい魔法が開発されているようですからね」

「へぇ〜……すごいですね」

「ええ。ただ……」


 そこで何故かアンジェリカさんが言い淀む。


「? ただ……なんですか?」


 僕がそう尋ねると、アンジェリカさんは少しの間逡巡した後、意を決したように続きを言う。


「……ただ、今はその帝国と王国が戦争をしているのです」

「え!? 戦争!?」


 アンジェリカさんの言葉に、アリシアが大袈裟過ぎるほどに反応する。


 なんで……って、ああ、そうか。

 アリシアは前世である魔王アリュシーザの時に、戦争を経験してたんだった。僕もだけど……。

 それで当時の苦い記憶が、蘇ってしまったのかもしれない。


 アリシアの反応をただの驚愕と受け取ったアンジェリカさんが、説明を続ける。


「はい。なんでも、両国の国境付近で希少な鉱石が採れる鉱山が発見されたらしく、そこの利権を巡って争っている状況です」

「そうなんですか……それで、その戦争はどれくらい長く?」

「そうですねぇ……かれこれ十年以上は続いてるでしょうか」

「そんなに長く……」

「はい……さて、つまらない話はこれくらいにしましょうか」


 アンジェリカさんはそう言って、この話題を切り上げる。


「アレンさんとアリシアさんは、これからどうなさるおつもりですか?」

「そうですねぇ……どうする、アリシア?」

「え? え〜っと、どうしようか?」


 完っ全にノープランだった僕達は、顔を見合わせる。


 するとアリシアの隣に座るアイナが、彼女の服の袖を引っ張り、上目遣いでアリシアの顔を覗き込む。


「ずっとここにいませんか?」

「もちろん!」


 アリシアは即答していた。それもやや食い気味に。

 そんな彼女の反応に苦笑しながら、僕はアンジェリカさんに尋ねる。


「あはは……あの、もしご迷惑でなければ、こちらで厄介になってもいいですか?」

「ええ、いいですよ。それにアイナもアリシアさんになついているようですしね」

「ありがとうございます」


 アンジェリカさんは二つ返事で快諾してくれて、僕はお礼を言う。


 こうして僕とアリシアは、この教会に厄介になることになった―――。




 ◇◇◇◇◇




 夕食が済んだ後、アリシアはアイナと一緒にお風呂に入っていた。

 やっぱりアリシアは……いや、言うまい。


 むしろ今の状況は、僕にとって好都合だった。


 僕は厨房の方へと向かって行く。

 そこでは、アンジェリカさんが食器を洗っていた。


「アンジェリカさん、ちょっといいですか?」

「はい、なんですか?」


 アンジェリカさんは手を止めて、僕の方を向く。

 そして僕は、昼間聞きそびれたことを聞く。


「アイナって……いったい何者ですか?」

「…………それを聞いてどうするつもりですか?」

「どうもしません。ただ……アンジェリカさんが何か隠しているような気がしたので、こうして問い質しているだけです。もし明かせない秘密なのであれば、言わなくても……」

「アイナは……王家の人間です」

「え……?」


 アンジェリカさんの言葉に、僕は思わず聞き返していた。

 なんとなく予想はしていたけど、改めて聞かされると驚くしかなかった。


 アンジェリカさんは僕に構わずに続ける。


「あれはもう十二年も前のことです。この教会の前に、生後間もない赤ん坊が入った揺りかごが置かれていたのです。その揺りかごには、王家の家紋が刻まれていました。そしてその中にいたのが……」

「アイナ、ですか……」


 僕がそう言うと、アンジェリカさんは無言で頷く。


「なんで棄てられていたんですか?」


 そう尋ねた後に返ってきた言葉は、僕にとっては衝撃的だった。


「アイナは……彼女は、魔法が全く使えないからです」






棄てられた王女、それがアイナ。

けれど彼女にはまだ秘密が……。




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