第20話 千年ぶりの……
前回のあらすじ
勇者が世界最強と邂逅した
わたしはアレンに連れられ、街道の先にある町にたどり着いた。
そしてそのままこの町にあるギルドに向かう。
ギルドに入ると、鋭い視線がわたしの身体に突き刺さった。
針のむしろってこういう状態なのかもしれない。
すると前を歩くアレンが、わたしを安心させるように言ってくる。
「心配しなくていいよ。彼らはケンカっ早いだけで、いい奴ばかりだから」
「そ、そう?」
わたしはそそくさとアレンの後を付いていく。
受付まで行き、アレンはクエストクリアの報告と、討伐した魔物の素材の買い取りをしてもらう。
素材の査定に時間がかかるようで、アレンと共に受付で待っていると、一人の少女が彼に近付いてきた。
「やっほ〜、アレン。クエストの帰り?」
「セリアか。うん、そうだよ」
アレンは少女の方に振り向き、そう返事をする。
すると、わたしの存在に気付いたのか、セリアと呼ばれた少女がアレンに尋ねる。
「ねぇ、アレン。この娘、誰?」
「紹介するよ。彼女はアリシア。今代の勇者だ」
「へぇ〜。そう……」
セリアさんはそう言って、品定めするようにわたしを見てくる。
わたしはそのままじっとしていると、気が済んだのかセリアさんはわたしを見るのを止めて、笑顔で右手を差し出してくる。
「はじめまして、セリアよ。よろしく」
「アリシアです。こちらこそよろしく」
セリアさんの手を握り返すと、ぎゅうううっとわたしの手を握ってきた。痛い。
彼女の顔を見ると、笑顔のままだった。それが逆に怖い。
そして彼女はわたしから手を離して、笑顔のままアレンに尋ねる。
「それで、アレン。この娘とアレンはどう言った関係?」
「……なんでそんなことをセリアが気にするの?」
「えっ? だって、それは……」
セリアさんは微かに頬を染めながら、アレンから視線を逸らす。
その表情から、わたしは察する。
十中八九セリアさんは、アレンに惚れてる。
そんな彼女の気持ちを知ってか知らずか、アレンは答える。
「はぁ……。アリシアとの関係だよね。僕とアリシアは、そうだなぁ……」
アレンはそう言って、顎に手を当て考え込む。
けれどすぐに結論が出たようで、セリアさんに告げる。
「僕とアリシアは恋人同士だよ」
「え、ええええ!?」
突然の告白に、セリアさんは驚きを露にする。
わたしも叫びはしなかったけど、驚きはした。
嘘だって言うのは分かってるけど、後々に響きそうな嘘だった。
ちょうどその時、査定が終わったようで、アレンは素材買い取り分のお金を受け取り、袋にしまった。
「じゃ、そういうことで」
アレンはセリアさんにそう言うと、わたしの手を掴み、逃げるようにしてその場を去った―――。
◇◇◇◇◇
アレンに手を握られたまま、彼が宿泊している宿まで連れて来られた。
アレンが泊まっている部屋に入り、そこでやっと手を離してくれた。
わたしは呆れつつ、アレンに問い質す。
「ねぇ、アレク。なんであんな嘘を吐いたの?」
「いや……。僕とアリシア……アリューの関係を表す言葉って、それしか思い浮かばなかったから」
二人っきりなので、昔の呼び方でお互いを呼び合う。
その答えを聞いて、わたしは思わず溜め息をつく。
「はぁ、まったく……。そういう、後先考えない所は変わってないのね」
「ごめん。嫌だった?」
「…………嫌とは一言も言ってないじゃない」
自分の頬が赤くなってるのを自覚しつつ、そっぽを向きながらそう答える。
わたしの答えに、アレンは安堵の息を吐く。
「はぁ、良かった……。アリューに断られたら、生きていけなかったよ」
「そんな大袈裟な……」
「本当だよ。だってやっと、隠れるように付き合うなんてことをしなくて済むんだから」
その意見には大いに賛同する。
前世では勇者と魔王という敵対関係だったけど、今は冒険者同士ということで、大手を振って付き合うことが出来る。
「それじゃあ今日からわたし達は恋人同士ということで」
「うん、よろしく」
「だけど、本当にアレクはわたしのこと好きなの?」
わたしは悪戯っぽく彼に言ってみる。
すると彼はわたしの肩を掴んで、至近距離で見つめてくる。
「好きだよ。証明しようか?」
「うん……」
そう返事をすると、彼はわたしと唇を重ねた。
千年ぶりの、大好きな男の子とのキスだった。
数秒してから唇を離して、彼が問いかけてくる。
「これでいい?」
「うん……」
自分の唇に触れながら、わたしは頷く。
アリュシーザとしては久しぶりの、アリシアとしては初めてのキスに、わたしは満足していた。
彼はわたしから手を離すと、近くにあった椅子に座る。
「それじゃあ教えて欲しい。魔王のことについて」
「……ええ、分かったわ」
……もうちょっと余韻に浸らせてくれてもいいのに……。
そんな不満が口から出かかったけど、なんとか呑み込んだ。
そして彼に、アイシャから教えてもらった魔王のことを包み隠さず伝えた―――。
アリシアの百合展開フラグは折れた! ……ハズ。
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