第18話 邂逅 前編
前回のあらすじ
レン達とお別れした
グリフォンを単騎で討伐したことをギルドに報告してから、三週間が経った。
その時に何故か冒険者カードも一時的に回収されて、僕はこの間ずっとクエストを受けることが出来なかった。
そして今日、ギルドから呼び出しを受けて、そちらに足を運んだ―――。
◇◇◇◇◇
ギルドマスター室の扉を軽くノックする。
中から返事があったので部屋に入ると、正面の机に強面の顔の男性が両手を机の上で組みながら座っていた。
彼こそがこの町のギルドのギルドマスターであるライアンさんだった。
彼は強面な顔とは裏腹に超が付くほど人当たりが良く、荒くれ者が多いこのギルドでも職員だけでなく、冒険者からも厚い人望が寄せられていた。
僕は机の前まで行くと、ライアンさんが軽く挨拶をしてきた。
「やあ、アレン。よく来てくれたね」
「いえ。それで、僕を呼び出したのってなんでですか?」
僕がそう尋ねると、ライアンさんが引き出しから一枚のカードを取り出す。
「まずは、アレンの冒険者カードを返却する。スマンね、長い間預かってしまって」
「いえ、お気になさらず」
僕はライアンさんからカードを受け取る。
とその時、カードに記されている冒険者ランクがおかしいことに気付いた。
「ライアンさん。僕の冒険者ランクがおかしいんですけど。何ですか、『SS』って?」
僕の冒険者ランクは『S』だ。一文字多い。
するとライアンさんは、神妙な面持ちで僕の質問に答える。
「それが今日、君を呼び出した理由だよ。アレン、君はたった一人で、Sランクの魔物であるグリフォンを討伐したね?」
「はい」
僕は頷く。
あの日は、ギルド中が大騒ぎだったのを覚えている。
「その前人未到の記録をギルド本部に報告させてもらった。するとギルド本部の上層部から、君を他のSランク冒険者と同じ括りにしていてはいけないとの指摘を受けてね。お偉いさん方と協議した結果、Sランクのさらに上にSSランクを新たに創設して、君をそのランクに昇格させることを決定した」
「はぁ、そうですか……」
ライアンさんの説明に、僕は生返事をする。
僕個人としては、そこまですごいことをしたという実感はなかった。
Sランクと言っても所詮は魔物、しっかりとした準備をしていれば負けることはない。
……本当に強い存在というのは、『アイツ』のような……。
そんなことを思っていると、ライアンさんは告げる。
「SSランク冒険者は現状、アレン一人だけだ。こんなことを言うのもおかしい気がするが、これからも精進してくれ」
「はい、頑張ります。……用件はそれだけですか?」
「ああ」
「それじゃあ僕はこれで。失礼します」
ライアンさんに一礼してから、僕はギルドマスター室を後にした。
◇◇◇◇◇
ギルドマスター室がある三階から、受付などがある一階に降りる。
するとそこで、顔馴染みの冒険者が僕に声を掛けてきた。
「やっほ〜、アレン。ギルマスに呼び出されたって聞いたけど、なんだったの?」
「セリアか」
セリアはシーフの少女で、今一番Sランクに近いAランク冒険者だと噂されている。
彼女とはたまに一緒のクエストを受けることがある。……主に彼女に誘われて。
僕は彼女の質問に答えつつ、クエストボードの方に向かう。
「僕の冒険者ランクのことで話があってさ。僕のランクがSSランクに昇格したんだ」
「えすえす?」
「Sランクの上のランクで、今のところ僕しかいないってライアンさんが言ってた」
「え!? すごいじゃない! おめでとう!」
セリアが自分のことのように喜んでいた。
僕はクエストボードを見回し、何かちょうどいいクエストがないか探していると、セリアは何か思い出したかのように話しかけてくる。
「あ、そうそう。アレンは聞いた? 魔王が現れたっていう噂」
「魔王……?」
その単語を聞き、僕の眉根がピクリと反応する。
けれどそんな僕の様子に気付かずに、セリアは続ける。
「うん、そう。確か一ヶ月半とか、二ヶ月? それくらい前に、帝国の魔法使いがそんな反応を観測したんだって。でもその一回きりで、今はどこにいるか分からないみたいらしいわ。知らないの?」
「ああ、知らない」
「はぁ〜……。アレンって本当、世間に関心がないよね」
セリアは溜め息を吐いて呆れている。
そんな彼女に構わずに、僕は肩慣らしにちょうどいいクエストを見つけて、その紙を受付に持っていく。
受付嬢の許可ももらったので、セリアに別れを告げて早速クエストに向かう。
……魔王のことは、頭の片隅に留めておこう。
◇◇◇◇◇
僕が受けたクエストは、ホーンウルフの群れの討伐だった。
三週間も何もしていないと戦闘のカンが鈍っているので、Cランクのクエストと言えど肩慣らしにはちょうどいい。
特に苦戦することもなくホーンウルフの群れを討伐したその時、ある魔力の反応を捉えてそちらの方を向く。
僕が今いるのは森の中を突っ切る街道で、その反応は僕が目を向けている方向からこちらに向かって移動していた。
僕は両手の剣に火属性と氷属性の魔法を纏わせて、その反応に向かって接近して行った。
その反応の主は僕の接近に驚いたのか目を見開き、僕はソイツに向かって両手の剣を振り下ろす。
だけど相手もただ突っ立っているだけでなくすぐさま反応して、素早く剣を抜き僕の振り下ろしを防いだ。
僕は一度相手から距離を取り、右手の火を纏った剣を向ける。
僕が剣を向けた相手は、栗色の髪に琥珀色の瞳をした、僕と同い年くらいの人間族の少女だった。
だけど種族が前と違っていても、この魔力の質を間違えるハズが、いや、間違えようがない。
僕はその少女に向かって叫ぶ。
「見つけたぞ、魔王! 魔王アリュシーザ!」
その少女は種族は違えど、前世に勇者として幾度となく刃を交え、恋人として何度も逢瀬を重ねた、魔王アリュシーザ本人だった―――。
世界最強も転生者。
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