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第16話 船上の舞

前回のあらすじ

ラビィが連れ去られた

 

 パルとハナの言葉を頼りに、わたしは港の方に向かっていた。

 途中でレンに追いつけるかな? と淡い期待を抱いていたけど、そんなことはなかった。


 町中は多くの人でごった返しているので、人の波に呑まれないように建物の屋根まで登り、屋根伝いに港を目指す。


 そして港を一望出来る建物の屋根までやって来て、身体強化魔法で視力を強化してラビィがいないか探す。

 それと平行して、対象をわたしの剣に設定した追跡魔法でレンの行方も探す。


 すると追跡魔法に反応があった。

 反応は、すぐ目の前の船からだった。


 わたしは強化した目でその船の甲板に目をやると、剣を構えたレンが男の人と何かを言いあっていた。

 すると彼が突然レンの身体を蹴り飛ばした。


 一刻の猶予もないと察したわたしは、屋根の縁から少し離れてから身体強化魔法を目から足にかけ直し、助走を付けて屋根から飛び降りる。


 落下しながら甲板の方を見ると、彼の仲間が剣を振り上げてレンの首をはねようとしていたところだった。


 わたしは白いヘアピンを前髪から外して、聖剣の姿に戻す。

 そして剣を振り上げていた人を一太刀で斬り伏せ、衝撃を逃がしつつレンの目の前に着地する。


 わたしはレンを庇うようにして立ちながら、男の人達と対峙する。

 彼女がここにいたことから、この人達がラビィを連れ去った犯人だと判断する。


 突然空から現れたわたしに犯人達が動揺している中、レンを蹴り飛ばした男の人がわたしに尋ねてくる。

 その冷静さと雰囲気から、彼がこの集団のリーダーだろうとあたりをつける。


「誰だ、テメェ?」

「わたしはその娘の関係者よ。それよりも、貴方達が連れ去った獣人族の女の子はどこ?」


 わたしは背後にいるレンをチラッと見つつ、逆に質問する。

 するとリーダーはニヤニヤと嫌な笑みを浮かべる。


 ……なんとなくこの後の流れが読めるけど、あえてその流れに乗る。


「それを聞いてどうすんだ?」

「彼女を返してもらう」

「ノー、と言ったら?」

「力ずくでもラビィを……、彼女を返してもらうわ」


 わたしは聖剣を構え、そう啖呵を切る。

 するとリーダーは嫌な笑みを浮かべるのを止めて、殺気を感じさせるほどの真剣な表情になる。


「魔族はウチの大事な商品なんでな、そう易々と返すわけにはいかんのよ。それと口封じのために、テメェとそこのガキには死んでもらう。まずはテメェからだ、……殺れ」


 リーダーの指示を受けて、部下の男達が各々武器を手に取りわたしに襲い掛かってきた。


「レンはそこ動かないで!」


 素早く彼女に指示を出してから、わたしは男達を次々と斬り伏せていく―――。




 ◇◇◇◇◇




 その光景に、オレは目を奪われていた。


 アリシアは大勢の男達を相手に力負けするどころか、逆に圧倒していた。

 アリシアは向かって来る男達を斬り、突き、薙いでその数を減らしていく。

 逆に男達の攻撃は、アリシアに当たるどころかかすりもしなかった。


 すると勝ち目がないと悟ったのか、一人の男がオレの背後にきて首筋に剣を当てる。


「オイ、止まれ! 止まらないと―――」


 ヒュッという音と共に、男は剣から手を離し黙りこくってしまった。

 後ろを振り返ると、額に短剣が突き刺さった状態で男が倒れていた。


 たぶんアリシアが、敵から奪った短剣を投擲したのだろう。

 アリシアはオレから離れた場所で戦っていたから、こっちに戻ってくるよりもそっちの方が早いと判断したに違いない。


 一歩間違えたらオレに突き刺さったハズだけど、アリシアは何の躊躇いもなくそれを選択した。

 絶対に失敗しないという自信と、それを成功させるだけの実力がなければ出来ない芸当だった。


 再びアリシアの方に目を向ける。


 アリシアは舞い踊るように、剣を振るっていた。

 そして相手の身体から飛び散った赤い花が、その舞をさらに華やかなモノに彩っていく。


 オレは場違いにも、その舞に見惚れていた。

 そしてその舞姫の姿を目にすると、胸が高鳴るのを感じた―――。




 ◇◇◇◇◇




 目の前の男の心臓を一突きして絶命させ、剣を引き戻そうとした時に背後から斬り掛かられる。

 わたしは剣を突き刺したまま振り向き、肉の盾でその攻撃を防ぐ。

 そしてそのまま、斬り掛かってきた相手の心臓も抉る。


 この二人が最後の部下だったらしく、残すはリーダーだけとなった。

 剣を引き抜きながら、リーダーの方を向く。

 先ほどまでの威勢はどこへやら、尻餅をついて怯えきっていた。


「な……、な……」

「ねぇ、ラビィがどこにいるか教えてくれない?」


 そう言いながらわたしが近付くと、リーダーは後退りをする。


「ねぇったら」

「う、うわあああ!!」


 するとリーダーは悲鳴を上げながら、四つん這いになって逃走しようとしていた。

 それを阻止しようと、わたしは足下にあった剣を手に取り、リーダーの背中に深く突き刺して彼の身体を甲板に縫い付ける。


「ぐああぁぁぁっ!!」

「ねぇ、早く教えて。ラビィはどこ?」

「お、教える! 教えるから、剣を抜いてくれ!!」

「……ちゃんと教えてくれたら、考えてあげる」


 わたしがそう言うと、リーダーは白状した。

 ラビィも含めて、連れ去った魔族の子供達はこの船の船倉に閉じ込めているらしい。


「そこだけ? 他の場所にはいないの?」

「そ、そこだけだ! 俺はちゃんと教えたんだから、早く剣を……!」

「う〜ん……。やっぱり抜かない」


 わたしがそう告げると、リーダーの顔が絶望に染まる。


「な……、なんで……」

「わたしは抜くとは一言も言ってない。考えると言っただけ。そして考えた結果、剣は抜かないことにした」


 わたしがそう言うと、リーダーは目を見開いたまま気絶してしまった。

 そのまま彼を放置して、わたしは聖剣をヘアピンに戻して前髪を留めてから、レンの下に向かう。


「レン、大丈夫?」


 レンと目線を合わせながらそう尋ねると、彼女はコクンと頷く。

 心なしか、彼女の頬が赤い気がするけど、きっと気のせいだろう。


「それじゃあ、ラビィを助けに行こっか」


 微笑みながら手を差し出すと、レンは素直にその手を取った。


 レンからわたしの剣を返してもらってから、彼女と共に船倉に向かった―――。






おや? レンの様子が……?




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