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見た目と性格は一致しないらしい……

とりあえず駅に着いた俺は、学校に向かう上り列車のホームに向かう。


うちの学校の制服を着た背の低い女の子が電車を待つ列の先頭に並んでいた。

背の高さと忙しなく動く頭の様子からして新入生の様に見えなくもない。

だが入学式は明日だからそれはないだろうと、その考えを頭から追い出す。


しばらく待っていると電車が到着した。待っていた乗客が吸い込まれるように電車に飛び込んでいく。


俺もその例に漏れることなく電車に飛び込んだのだが、ここでまたも面倒くさい事態に遭遇してしまった。


先程先頭に並んでいた女の子が俺の少し先で、鞄を抱きしめながら身体を縮こまらせていた。

どうやらポジション取りを失敗した上で、背の低さも相まって四方から圧迫されている様だ。


下を向いているのでどんな表情をしているかは分からないのだが、苦しいであろう事は容易に想像できる。


「はぁ……」


その光景を見てしまった以上、見て見ぬ振りは出来ない。

俺はその子の腕を掴み強引に自分の方に引き寄せる。

迷惑極まりない行動をする俺を周りの乗客が睨んでくるが知ったことか。


女の子を扉側に移動させる事に成功した俺は、そのまま彼女の前に位置を取り扉に手をかけて身体を固定する。


壁ドンと呼ばれるこの行為が許されるのはイケメンだけだろう。

昨日までの俺ならこの行為に酔いしれていただろうが、現実を知ってしまった俺の顔はさぞ真っ赤だろう。

正直恥ずかしい……。これを当たり前のようにやっているイケメンってただの痛い奴でしかないと思った。


「あ、あの……ありがとうご、ございます……」


女の子が顔を上げ、か細い声でお礼を言ってきた。

その女の子をまじまじと見れば、大きめの眼鏡におさげの三つ編み。文学少女という言葉がピッタリの地味な容姿をしていた。もう少しお洒落に気を使えば可愛くなりそうな気がしなくもない。


その容姿を見て最初に思ったのは、ああ……この子も昨日までの俺と同じように、実は美少女設定に酔いしれていたりするのだろうか?というとても失礼なことだった。


「気にしなくていい。こちらが勝手にお節介でやっている事だから」


学校の最寄り駅に到着するまで、2人の間にそれ以上の会話はなかった。

その後しばらくして駅に着いたので女の子に別れを告げるでもなく改札へ向かって歩き出す。


「あ、あのっ!!」


なぜか呼び止められたので後ろを振り返る。


「そ、そのっ……あ、ありがとうございました。私、実は電車に乗って学校へ行くの今日が初めてだったので、本当に助かりました」


電車通学が初めて?どういうことだ?入学式は明日のはずだが……。疑問に思った俺はつい質問してしまった。


「まさか新入生か?確認だが、入学式は明日だよな?」


「は、はい……。明日いきなり電車通学は怖かったので、練習の意味も込めて今日学校に行ってみる事にしたんです。本当はお姉ちゃんも途中まで一緒に行ってくれる話だったのですが、トラブルに見舞われたらしく私1人で行く事になってしまって……」


「そうか、それは災難だったな。一つ助言をするなら朝は今日みたいに電車はほぼ満員だ。失礼だが、君みたいに背の低い人は出来る限り、扉側に位置取り出来る様に心がけた方がいいだろう」


「は、はい。分かりました、扉側確保できるように頑張ります」


素直に同意した女の子の態度に満足した俺は、無言で頷くと学校へ向かう為に踵を返した。


「あ……」


今日は何かとハプニング続きで、あまりゆっくりしていると遅刻してしまう。初日から遅刻は流石にまずいので足早に立ち去ろうとしたところでまた声をかけられる。


「あ、あの!!」


早く学校へ行きたいのに再び呼び止められる。

急いでいるのだが、さすがに無視をするわけにもいかず、少し苛立ちながら改めて振り返る。


「なんだ?すまないが遅刻しそうなので俺は学校へ急ぎたいのだが……」


「そ、その、鞄に穴が開いていたので。私ワッペン持ってるのでお礼に修繕させて下さい!!」


どうやら鞄の穴を塞いでくれるらしい。このままだと、家に帰ったら母親に怒られるのは間違いない。その申し出はとても魅力的だった。とは言っても遅刻するわけにはいかない。なので少しだけ悩んで断りを入れる。


「ありがたい話だが、あまり時間がないんだ」


「す、すぐに終わりますから!!」


「ああ…そ、そうか。ならお願いするとしよう」


なんか勢いに負けて、承諾してしまった。この子地味な見た目に反してなかなかに積極的な性格をしているらしい。

俺が承諾すると、微笑みながら鞄からワッペンと両面テープを取り出した。何故そんな物を持っているのだろうかと思ったがとりあえずツッコミは入れないでおく。


「鞄、渡した方がいいか?」


「はい、少しだけお預かりしてもよろしいでしょうか?」


俺は彼女に鞄を差し出した。それを受け取った彼女は鞄の裂けたところを綺麗に合わせてその上にワッペンを貼って押さえた。


「応急処置なので、今度良かったらちゃんと直させて下さい!今日のお礼をきちんとしたいので」


「いや、そこまではしてもらわなくても……」


「これ私の連絡先です。もし良かったら明日は違う鞄で学校へ来て下さい。それでその鞄をお預かりさせていただけたらきちんと直しますので!!」


そう言って鞄と一緒に小さな紙を渡される。そこには少し丸みを帯びた数字が羅列されていた。ノーとは言わせてもらえない迫力に思わず承諾してしまう。


「ああ、分かった。そして、ありが……」


渡された鞄を見て言葉に詰まる。う、うさぎだと……。俺の鞄にとても可愛いらしいウサギのワッペンが貼られていた。

流石に男子高校生が鞄にこんな可愛らしいウサギのワッペン付けるのはおかしいだろう。あまりの状況に混乱していると彼女はこちらの気持ちなどお構いなしに続ける。


「それでは先輩、連絡待ってます。また明日!!」


そう言って何やら満足そうに立ち去って行く彼女……。

明日は違うワッペンつけてくれたりするのだろうか?これなら穴が開いたままの方が断然良かったと思いつつ、帰ったら母親と妹に確実にツッコミを入れられるだろう事が予想され、俺は小さく溜息をつくのであった……。

今回登場した女の子がこの物語のヒロインとなります。


読んでくださった方ありがとうございます。

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