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小休憩。
今回は短めです。
ランタナの国を出て、何かと巻き込まれがちだった旅も、ようやく終わりを迎えた。
自室のベッドに横たわり、開けっ放しの窓辺から星がきらめく夜空を見上げる。何となしに眺める白いカーテンがランプの光に透かされ夜空を舞い、湯浴みを終えた身体にしんと染み入る風には、雨上がりの香りがした。
部屋に一人なんて状況は、何日ぶりだろう。
庭先の葉擦れが聞き取れるほど静かな空間に、溜まりに溜まった溜息をついた。
アマは死者が生き返るとんでも現象の調査と本来の目的のため、この地にしばらく滞在する運びとなり、
同様に、ソニアは一旦家で預かることになった。サミとの仲は未だ険悪だ。
セシリアは何故この屋敷まで来たのか分からないまま、すぐにロートスへ引き返した。
「なんというか……」
私は誰に話しかけるでもなく、ただ吐き出したい一心で言葉を口にした。
「ついて行けないわ」
自分が無知であったことも一因だが、
現状の非現実さ、
いきなり知り合いと出くわしたり、
知り合いが増えたり、
とにかく。こうも状況が重なると追うこと自体が面倒くさくなる。
帰宅という一種の無防備な身に起こった様々な出来事は、私の心身に破格の倦怠感をもたらしていた。こちらはただ来る状況に振り回されていただけだというのに。
身体が重い、眠くないのに眠い。動きたくない、頭も考えることを放棄し始めた。
全身にかかる重量感を押し出すように大仰な溜息を吐くと、風が私を優しく撫でた。
その風に煽られて、私の机から一枚の紙が舞い上がり、絨毯の敷かれた床に着地する。
暫く落ちた紙を呆然と眺めていた私だったが、その正体を思い出し慌てて拾いに立った。
真っ白なそれは手紙。差出人の名はウィル。
ランタナで受け取った、最新のものである。
埃もついていないそれを光にかざし、汚れがないか丹念に調べ、染み一つ無いことに安堵の息を漏らした。
ちゃんと仕舞う為に、唯一鍵のかかる机の引き出しを開けると、ずらりと並んだ彼からの手紙たちが顔を出す。
……そういえば、文通は続けられるんだっけ。
ウィルとニコライの別れ際の会話を思い返して、私ははたと気づいた。
……今思えば、あの国こそ非現実的で不思議な世界だったな。
でも、思い出せば思い出すほど疲れが飛び、気づけば机に向かっていた。
別の引き出しから紙を取り出して、思いの丈をぶつける。
彼の状態は今どうなっているのか。
どこにいるのか。あの竜の中にいるのか。
帰り道に見たこと。
今の私を取り巻く人のこと。
重だるさが嘘であったように、手は動き、脳も動く。
ふわりと漂う香りに我に返れば、手紙が広がる机にひっそりとティーセットが置かれていた。背後に置いたらしい侍女の姿はない。
「気を遣わせちゃったかな」
ハーブティーを一口飲み、またペンを走らせる。
すっかり書き慣れた結びの挨拶を終えた頃、世界はすでに夜中を迎えていた。
ポットの中は空っぽで、頭も空っぽにした私は、
満足そうな顔で机に突っ伏したという。




