NG集もどき(14-16)
*いつも通りの注意事項*
※シリアスをお求めの方は、即刻退避をお願いします。
※うp主の気晴らし。シリアス漫画の表紙裏にあるようなもの、小話を目指して。
※これは本編とは全く関係がありません。
※これまでの雰囲気を壊したくない方は即刻退避を!
三本全て恋愛ネタに偏ってしまったような……。なんで?
14(少し真面目な別展開、けれど筋は変わらず)
エ「私の大切な大切な子。近い未来、お前はどんな花を咲かせるのだろうな。空へ帰る前にしかと見せてもらおうか」
この言葉を最後に、私の海外謁見デビューは幕を閉じた。
帰り道は皆雪の中に作られた道の上。夕暮れの中に五つの影が浮かんで白い壁の上を行進している。儀式の日を迎えれば全て溶け、一面花が咲き乱れるらしい。
ウ「ごめん、あんな言い合いになるとは思ってなくて。怖かったでしょ」
ぼんやりと雪の壁を眺めていると、最後尾が一つ前の小柄な人物に笑いかけた。
カ「大丈夫だよ、人って実はそんな簡単に死なないから」
最後にとんでもない呪いをかけられたものだ。と少女は笑いかけ、その責を負い続けている青年に振り返る。
彼女の視線の先には二年前と同じ、幻想的で儚げ、神子としての仮面を被り続ける人がいる。手を伸ばして、その手に触れればきつく閉められていた拳がゆっくりと開かれていった。その細い指の先を掬ってしっかりと握ると、彼はわずかに動揺したものの、放そうとはしない。
……君も、怖かったのか。
私は足を止めてまっさらな雪を見渡し、その下に眠る草花の姿を思い浮かべた。
カ「そうね……ガーベラ、アネモネ――やっぱりトルコキキョウが一番近いかしら」
ウ「何の話?」
カ「この庭に咲く花の予想を立てているの」
儀式の後、彼の花が咲く。エルドラが話していたことを要約するとそんなところでしょう?
それならばと、良い意味を持つ花を選んだ――つもりだったけれど、ウィルは眉根を寄せて雪の壁を見据えた。
ウ「そうだね…………カレンはクロッカスの花言葉は知っている?」
カ「知っているわ。でも色で意味が変わるのよね」
ウ「――きっと、僕は紫の花だよ」
今度は私が顔をしかめる番だった。
カ「意味は確か、後悔だったわね」
何故わざわざ酷いものを選ぶのよ。と、あえて頬を膨らませて不機嫌アピールをする。
ウィルは私の怒りに弁明するでもなく、肩を竦めて見せた。
ウ「……伝わらないならそれでもいいか」
繋いだ手は離れ、彼は両手を広げて空を仰いだ。
ウ「あーあ! カレンがもっと賢くて感情の機微に疎い子だったら話は楽だったのに!」
カ「なによ! その馬鹿にしているのか褒めているのかすら分からない物言いは!」
ていうか、ウィルがサミみたいな小言を言うなんて! ショック!
突然の苦言に涙が出そうになって、空いた両手で顔を覆い隠した。気づいたウィルが私の頭を撫でる。優しさの不意打ちは卑怯だ。ぐずぐずと鼻をすする私は、
また、大切な文句を聞き逃してしまう。
ウ「どっちもだから――――なんだよ」
見上げた先に映るのは、君の悲しげで、儚くて、とても綺麗な笑顔。
帰り道は互いに涙を拭ったその手をしっかりと繋いで歩いた。
※紫のクロッカス、正確には、愛の後悔。
15(自分の過去に思いを馳せていたら、大切な流れを聞きそびれていたらしい)
それは滞在してから四日目のこと。前日にひとしきり城下町を探索した俺たちは再び城内を歩き回っていた。
自分が置かれた状況について、つい思い耽っていたことに気づいた俺は、
同時にそこにいる全員に見られていたことに気付く。
その中には初日以降姿を見なかったレーヴァテイン殿下の姿も見えた。
……? はて、いつからだったか。
俺より年上でその分鍛え抜かれた身体のその男は、その場に蹲って残念な姿を晒している。首を傾げる俺に、下手人であろう彼の弟が心底申し訳なさそうに頭を垂れた。
ウ「申し訳ありません、愚兄の醜態がお気に召さなかったようで」
ニ「い、いやちが……」
俺の打ち消しの言葉の何が気にくわなかったのか、殿下が勢いよくその首を上げて俺を見据えた。
レ「同志よ! 君も一回ぐらい言われてみたいと思うだろ――ぐあっ!」
……ど、同志?
気になるところだが、俺が呆気にとられていても事態は進む。ウィルに蹴り飛ばされた第一王子殿はその場に蹲り、犯人は俺たちを連れてこの場を離れようと周囲に働きかけていた。
ウ「では、場所を移しましょうか。――この方が絶対立ち寄らない場所に」
彼が蹴り一撃で相手を全く動けなくさせてしまう技術に感心を抱きながら、心の底から悔しいと呻く男に、俺は「すまない」と告げた。
そしてつい、手を差し伸べてしまった。
レ「理解してくれるのか……わが同胞よ」
ニ「あ、ああ。多分……?」
内容は分かっていない。けれど痛々しい、というか実際に痛いのだろうその姿に、ちょっとした良心が疼いたがための行いだった。
しかしそれを認めたウィルと妹は、明らかに、引いていた。
カ「兄上は、私のことをそんな目で見ていたのですか」
ウ「ニコライは優しいから。……うっかり共感してしまったのでしょうね」
そう言って静かに距離を取る二人。
今この瞬間にも彼らとの間の溝が深くなっていくのが手に取るように分かる。
まずい、何がどうなってまずいのか分からないが、まずい状況だ。
ニ「いや、今のは」
話の流れを理解していなくて――。
焦り弁明しようとする俺を、しかしもう一人の兄ポジションにいるそいつが遮ってきた。腰回りをホールドされ、妹たちとの距離が更に開く。
レ「男に二言はないだろ!」
カ「あに、ニコライ様。その……」
何故、言い直した!
ウ「まあ、その。恋愛観なんて人それぞれですから……」
恋愛観? 兄弟の話ではなかったのか?!
ニ「い、いやだから、何の話だ?!」
サミは我関せず、クロエはただ観察するばかりで、取り乱す俺を庇う者はいない。
城内に俺の叫びばかりが響き渡っていた。
……結局、俺の弁明はクロエ伝いで皆に伝わったわけだが、
どうしてか、妹に婚約者――の候補について根掘り葉堀り聞かれる羽目になった。
16(ある晩、儀式を行う舞台に招かれざる客が訪れた)
舞台がある大きな穴。
底へと向かう階段があるということは、すなわちウィルが先にいるということを示す。俺たちが足早に降りていくと、水色の騎士衣装を纏った若い青年が壇上の真ん中で、剣を前に立て跪いている場面に出くわした。外周の大理石にはいつかどこかで叫んでいたフラックスが静かに控えている。
俺が壇上に足を置くと甲高い音が響き渡った。見た目以上に固く、何より歩きやすいことに単純に驚いた。
ウィルが立ち上がりゆっくりと振り返る。その凪いだ青い双眸はどこぞの神竜様を彷彿とさせた。
ウ「私の都合にも関わらず、お越しいただいたことへ。まずは感謝を」
凜としていて、穏やかな独特の雰囲気は健在だ。この周囲の心を掌握する、ある種の暴力的な空気感を俺は割と気に入っている。二年前別れ際に見せた弱々しい雰囲気より、こっちの方が神竜の子という名がしっくりくるな。
けれど。そんな感想を抱いた矢先、件のウィルは目を瞬かせてぽかんと口を開けた。
ウ「あの、どうして、二人までいるのですか?」
彼の言う二人は、もちろん俺とクロエ――じゃない方の二人組だ。
ニ「……すまん。ここへ向かう途中にばれた」
カ「どうも! サミも一緒だよー」
その二人の内の一人が意気揚々と手を上げる。当然といえば当然だが、ウィルにとってこの展開は想定外だったようで、開いた口が塞がらないようだ。
カ「こそこそしている知り合いを発見したら、付いていってみたくなるものでしょ」
力強く親指を立てる妹に、ウィルは頭を抱える。
俺も何でこんなノリで見つかってしまったのか、慚愧の念に堪えない。
カ「剣を持って行くってことは、決闘でしょ! 私も混ぜて!」
ウ「しかも観戦ではなく、混ぜて、なんですね」
ニ「すまんな。これも接待だと思って、一つ頼まれてくれないか」
俺の言葉に、ウィルは「分かってて言っているでしょう」と口を尖らせる。しかしそれ以上俺に向けて言うことはなく、すぐさまカレンに向き直った。
ウ「ですが、怪我をさせてもいけないので」
カ「それは兄上も一緒でしょう? まさか、私が女だからって馬鹿にしてるでしょ。これでも剣の心得あるんだから!」
ニ「――違う、こいつが言っているのはそういう意味じゃない。そしてそこで胸を張るんじゃない」
流石の俺もツッコミに回らざる負えない。
ウ「あ、あのですね。未婚の女性の身で身体に傷が残ると後々問題になると言いますか」
妹がいまいち理解していないようなのでおずおずと、真面目な理由を語るウィル。
自分が提案したことだが、接待戦はダメか、そうか。と勝手に自己完結する。
まあ、ここまで言えば妹も分かるだろう。そう思い彼女を窺い見たが、その首は傾げられていて嫌な予感がした。
カ「ウィル、顔が真っ赤よ」
ニ「妹よ。そこを指摘するのはやめて差し上げろ」
カ「あと、傷がついた時は大体その相手と結ばれると相場が――」
ウ「っ――?!」
ニ「やめて差し上げろ!」
俺が止めに入ったが一足遅く、
ウィルが気を失ったため、今宵の決闘は次回に持ち越しとなった。
※本編、ex部の方はあと一部で終了、次から二章に移る予定です。




