表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/145

第93話 連携

レーションを食べ、道中に悪い魔素が抜けたクロロさんは、大分身体が動くようになった様だった。


「クロロ、君の体調はもう良くなったのかい?

無理はしなくてもいいんだよ」

ジャンは心配そうにクロロさんに言った。


「大丈夫です!

なんか、ジャンさんとサナさんの戦いを見ていたら、元気というか、活力が湧いてきて、身体が動くんです。

久しぶりに食事も食べたし、それに……

フルオロも応援してくれている気がして……

だから、邪魔にはならない様にしますから、次の戦いは参加させて下さい!」


「そうか、それなら一緒に戦おう。

ちなみに、クロロはどんな武器を使うのかな?

僕は長剣だけど、どうやって合わせようか?」


「僕の武器は、この少し長めの短剣です」


そう言って、クロロが抜きはなったのは、刀身が透き通る綺麗な短剣だった。

多分……

魔法武器、いや、元魔法武器と言ったところか?

氷属性が付与されていた感じがする。

あくまで見た感じの雰囲気だから、実際は触らないとわからないけどね。

でも、同属性の魔力を大量に注入すれば、きっと魔法武器に戻るとは思う。

まぁ、やらないけどね。


「その刀身……

ひょっとして、それは魔法武器なのかい?」


ジャンは、羨ましそうにクロロさんに聞く。


「いえ……

普通の剣よりはちょっと斬れ味はいい短剣ですが、残念ながら魔法は使えません。

僕の家に古くから伝わる家宝で、アイスブランドと言います。

透き通る刀身がまるで氷のようだと、だからアイスブランドと名付けられたと聞いています。

どうやら、僕のかなり昔の祖先が有名な剣士だったみたいで、王から賜わったとか、ダンジョンで見つけたとか……

本当か嘘かはわかりませんけど。

まぁ、僕の腕では十分は使いこなせていないんですけど、浅く斬ったり、刺すのにはかなり使えます」


うーん、多分本来は斬りつけたり刺して、その傷口を凍らせるのだろう。

本物なら恐らく、冷熱の剣士が使っていたと言う伝説の魔剣だと思う。

師父も、対となるファイアブランドは手に入れたらしいが、というか今は僕の収納魔法に入っているが、アイスブランドは見つからなかったと言っていた。

別に僕はコレクターじゃないし、クロロさんの剣が欲しいとは思わないんだけどね。


「そっか、まぁでもその長さではバトラーズ流剣術は使えないかな……

そうだな、クロロには、前衛をやってもらって、ミニゴブリンを牽制してくれると助かる。

僕が隙を突いて後ろから斬りつけ、一撃で倒すからさ。

それで良いかい?」


「はい!

出来るだけジャンさんの足手まといにならない様に頑張ります!」


そう言って、ジャンとクロロさんは2人で先に進む。

僕は、爆睡しているサナをお姫様抱っこしながら、ゆっくり歩く。

そして、ジャンとクロロさんが角に差し掛かる。

多分、曲がった先に2匹のミニゴブリンが見えるはず。

まぁ、2匹は少し離れてはいるから、大丈夫だとは思うけど。



ジャンさんとの連携、多分だけど長剣の一撃は強力だが、隙が大きい。

だから、僕が先行して引きつけ、後ろからジャンさんに倒してもらうのが一番効率的だと思う。

まぁ、ハロゲンユニバースの常套手段なんだけどね。

しかし、身体が軽い。

まるで、最初にこのダンジョンに来た時のように。

あの時は……

ミニゴブリンに恐れて、みんなで一回逃げたっけ。

そしてみんなで怖かった〜って笑いあったな。

何もかもが懐かしい……

その後で、全員でミニゴブリンをタコ殴りにして、初勝利を祝ったっけな。


それを思うと、ジャンさん達は凄い。

初戦でも恐れずに敵に立ち向かい、見事に1人でミニゴブリンを倒した。

サナさんも、言ってる事は意味不明だが、凄い威力の魔法で、ミニゴブリンの頭を跡形もなく粉砕した。

シアン君の魔物の感知能力も半端ないし……

近づくとなんとなく感じる程度なら、確かに聞いた事はある。

でも、数や位置までわかるっていうのは、かなり規格外なんじゃないだろうか?

この3人なら、ひょっとするとダンジョンを踏破し、僕達を救ってくれるかもしれない。

だから、ジャンさんの役に立たねば!

僕は、そう覚悟を決める。


角を曲がると、その先には……

シアン君の言う通り、ミニゴブリンが2匹いた。

どちらもまだ、こちらには気付いていないし、2匹の距離も少し離れている。

僕がジャンさんを一旦見ると、ジャンさんは頷く。

意図は伝わっているな。

気付かれない様に、少しずつ間合いを詰め、そして……

僕はダッシュして、手間のミニゴブリンの頭を狙い、頬を斬り裂きながら、右側からすり抜ける。

ミニゴブリンは、「グギャ」と叫び、反転して僕を見やる。

僕とミニゴブリンが対峙する。

ジャンさん、今です、今!

と、心の中で叫ぶが、ジャンさんの攻撃が来ない。

そうこうしているうちに、ミニゴブリンが飛びかかって来たため、斬りつけながら除けるが、ミニゴブリンが来た方向にジャンさんが構えていてぶつかってしまう。

あ、危な、危うく斬られそうだった。


「剣の軌線に入るな!

危ないだろ!」

と、ジャンさんに怒られる。


「すいません!

ごめんなさい!」

と、僕は謝り、すぐに立ち上がる。

再び迫るミニゴブリンを斬り抜け、反対側へ。

僕とミニゴブリンが対峙している間に、ジャンさんも立ち上がり、構えを取り直す。

そして、バトラーズ流剣術の上段斬りが放たれた瞬間!


「クロロさん危ない!

後ろ後ろ!」

と、シアン君の叫び声が聞こえた。

咄嗟に後ろを振り返ると、もう1匹のミニゴブリンが、僕に飛びかかっていた。

やられる……

そう思ったが、ミニゴブリンは空中で、僅かに態勢を不自然に崩す。

僕はその隙を見逃さず、ミニゴブリンの腹を斬り裂く!

僕の一撃はミニゴブリンの腹に綺麗にヒットし、ミニゴブリンは後方に倒れ落ちた。

そして、立ち上がるも腹わたをはみ出させ、数歩歩いただけで倒れて事切れた。


後ろでは、ジャンさんがミニゴブリンと対峙している。

一応、一撃を与えたのか、ミニゴブリンの右腕は落とされている。

そして、「きぇぇーい!」と言う掛け声でジャンさんがミニゴブリンを斬りつけ、頭から一刀両断する。

いや、今回はミニゴブリンの胸辺りで止まった。

ひょっとすると、長剣の斬れ味が落ちているのかもしれない。

このダンジョンでは、鍛冶屋に行けないので、自分で武器の手入れができないと、剣などは血糊が付き、刃毀れして斬れ味が段々と悪くなる。

僕のアイスブランドは幸い斬れ味が変わらないが、仲間の鋼鉄製の武器は、手入れ出来ずに段々と斬れ味が悪くなっていってしまった。

そうだとすると、マズイな……


「ジャンさん、ひょっとして……

剣の斬れ味が落ちて来ていますか?」

僕は手入れ的な意味で聞いたのだが……


「違う!

クロロがちゃんと僕に合わせ連携しないから!

邪魔だったから、上手く斬れなかっただけだ。

って言うか、ちゃんとやってくれないと困るんだよ!

頼むよ」

そう言って、ジャンさんはミニゴブリンから剣を抜き、苛立ったのか剣を投げやりに地面に落とす。

そして、床に座って、レーションを食べ始める。


「えっ、レーションはみんなで分けるんじゃ……」


「別にいいだろ?

今日は僕が一番頑張ったんだ!

しかも、僕はゴブリンを3匹も倒したんだぞ?

それに、元々は僕のレーションなんだから、何か問題あるのかよ?」


確かに……

ジャンさんは、リーダーとしての役割をこなしている。

それに、文句を言う筋合いなど無いのだし……


「ごめんなさい。

ジャンさんの言う通りです。

えっと、じゃあ僕は魔石を回収しておきますね」

そう返事するも、ジャンさんは返事をしない。

黙ってレーションを食べている。


僕は、黙々とミニゴブリンを解体して、魔石を回収する。

僕が倒した1匹はすぐに魔石が見つかったが、ジャンさんが斬った1匹は、中途半端に切れていて……

魔石が見つからない。

そうこうしているうちに、シアン君が追いついて来た。


「クロロさん、大丈夫ですか?

魔石は僕が取りますね」


そう言って、シアン君は一瞬で魔石を見つけ、出してくれた。


「流石、シアン君は凄いね。

って言うか、さっきの掛け声ありがとう。

あれがなければ、僕はやられていたかもしれない。

本当に助かったよ。

ありがとうね」


「いやいや、たまたま後ろのミニゴブリンが飛びかかっているのが見えたから。

でも、怪我がなくて良かったですよ」


「違うだろ?

シアン君、戦闘は遊びじゃないんだ。

気軽に大声を出さないでくれよ。

僕の気が散って、ちゃんと斬れなかったんだからな。

それに、クロロ……

ちゃんと間合いを読んでくれよ?

そんなんだから、仲間も、弟も……




いや、すまん。

これでも今日が初めてだから、ちょっと疲れたって言うか……

気が立ってしまったらしい。

忘れてくれ。

それより、そいつは預かっておくから」

そう言ってジャンさんは、手を差し出す。

僕は、2個の魔石をジャンさんに渡し、もう一度謝っておく。


「いえいえ、初戦で気が立つのは仕方ないって言うか。

気にしてませんから。

むしろ、僕がジャンさんの間合いを取れなかったのが悪いのだから。

ごめんなさい。

それに、後ろのミニゴブリンの事も気付かなかったのは、僕が悪いのだし。

シアン君もごめんね。

ちょっとブランクもあったし、ジャンさんが強いから油断したのかもしれませんね。

本当に申し訳ありませんでした」


「いや、反省しているならいいんだ。

それに、バトラーズ流剣術の間合いは、素人には難しいからね。

仕方ないって事で許すよ。

シアン君も、クロロみたいに素直になれないとダメだよ?

冒険者はちゃんと謙虚にならないとね。

チームワークが重要なんだからね?」


「……

ジャン兄、邪魔しとすみませんでした。

次は気をつけます」


そう謝るシアン君に、僕は心の中で本当にすまない、と謝るのだった。


✴︎

クロロさんの間合いは、完璧だった。

むしろ、ジャンが全然理解していなくて、出遅れていなければ余裕でミニゴブリンは倒せていた。

そして、1匹目を倒せていたら、僕が手助けをする必要はなかった。

まぁ、クロロさんが狙われたあの時は、本当にやばかったし、仕方なかったのだけど。

僕は咄嗟に小石を投げて、クロロさんを助けた。

まぁ、クロロさんに気付かれなかったからいいんだけど、こんな事を何度もやっていると、いつかはバレそうな気がする。

それは僕の望みでは無い。


もう少しジャンがしっかりしてくれればなぁ……

まぁ、初陣で緊張しているし、練習も何もなく連携なんて無理はあるんだけどさ。

問題は、最初の勝ちが良かったから調子に乗ってしまい、周りが見えていない事だろう。

もちろん、ミニゴブリン程度なら、それでも全然問題ない。

だけど、下層に行くとなると、今のままでは心もとない。

でもまぁ、そのうち何とかなるだろう。

僕は、そう気楽に考えていたのだった。


「後は、この階層には残り2匹がいるみたいだけど、どうする?」


「僕はちょっと休ませてくれ。

あと1匹くらいなら、クロロでも行けるだろ?

シアン君、案内してあげて」


「わかったよ、ジャン兄。

なら、サナ姉は見ておいてね。

じゃ、クロロさん、行こうか」


「うん、よろしくね、シアン君」


こうして、僕とクロロさんは先に進む。

2回くらい角を曲がると、その先にはミニゴブリンが。

こちらに背を向けており、僕達には気付いていない。


「これは、ジャン兄には内緒にして欲しいんだけど。

多分、ミニゴブリンを倒すなら、その剣よりも、このくらいの石の方が早いと思うんだ。

ちょっと、クロロさん一回やって見てくれる?」


そう言って、僕はその辺に落ちていた手頃な石をクロロさんに渡す。


「えっ?

こんなんでいいの?

まぁ、やってみるけどさ……」

そう言って、クロロさんはミニゴブリンの頭位の大きさの石を持って、ミニゴブリンに近づいていく。

そして、背後を取り、石を思いっきり振りかざしてミニゴブリンの頭をカチ割る。

ミニゴブリンは……

一撃で死んだ。


「凄い!

何でこんな簡単に?

僕のアイスブランドだと、一撃では倒せないのに……

ちなみに、なんでジャンさんには秘密なのかな?」


「ジャン兄は、バトラーズ流剣術にこだわっているからさ、石で簡単に倒したら、面白くないと思うんだ。

それに、ミニゴブリンは小さくて弱いから石で簡単に倒せるけど、普通のゴブリンなら反撃を喰らうかもしれない危ない方法だしね。

だから、普通はアイスブランドを使った方がいいと思うよ?」


「そっか、まぁそうかもしれないけど……

色々な戦い方があるのは勉強になるよ。

ありがとうね、シアン君。

って言うか、シアン君は本当に……

いや、詮索はしない方がいいよね。

さあ、ミニゴブリンの解体をしようか?」


「うん、そうしましょうクロロさん。

ちなみに、ミニゴブリンの魔石は心臓の近くにあるから、こうやって周りをくりぬいて……

後は、靴でグリグリ地面ですり潰すと……

比較的早く見つかるよ」

そう言って、僕はクロロさんに魔石の見つけ方を実演する。


「あ、本当だ……

これなら、あまり時間をかけなくても魔石を回収できるね。

教えてくれてありがとうね。

それと、さっきも助けてくれてありがとう。

改めてお礼を言わせてもらうよ。

本当に助かった。

ありがとう」


「いやいや、気にしないでください。

それよりも、ジャン兄には内緒ですからね?

本当にお願いしますね」


そして、僕達が戻ると、ジャンとサナは……

2人とも寝ていた。

やはりジャンも疲れていたのだろう。

とは言え、ここも絶対安全ではないのだけど……

僕がサナを、クロロさんがジャンを起こし、僕達は安全地帯へと戻るのだった。

少年達は、ダンジョンを更に進んでいく。

順調に……

しかし、それぞれの思惑は、果たして先に進んでいるのだろうか?

交錯する思いは、すれ違いを生んでいくのだった。


次回 第94話 敵が強くなった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ