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第89話 闇の入口

皆が完全に寝たのを確認した僕は、まずは魔物のいそうな場所に向かう。

この気配は……

なんだろう、獣系だと思うけど。


行ってみると、そこには……

馬?羊?の様な顔をして、目は赤く、トカゲの様な尻尾とコウモリの様な羽を持つ奇妙な二足歩行の動物がいた。

確か……

ジャージーデビル、だったと思う。

ジャージーデビルは僕の姿を見ると、満面の笑み?みたいに見える馬面で、「ギョヘー」、と言う奇声を発しながら、こちらに向かってくる。

しかも、10匹ほど……

コイツら、見た目は若干キモいが、それ程強くは無い。

1匹なら、村人でも3人くらいで囲めば余裕で倒せる。

しかも、羽は生えているけど、そんなに高くは飛べないしね。

ただ、家畜を襲ったり、畑を荒らしたりする害獣、いや害魔物として、非常に嫌われている。


とにかく、見た目がキモいので、石を投げて殺す。

もちろん、石には魔力を込め、魔法で加速している。

だから、貫通力があるので、数匹まとめて殺す事ができた。

結局、石を3個投げただけで残りは2匹。

しかも、敵わないと思ったのか、即座に逃げ出した。

まぁ、逃がさないけどね。

僕は、追いかけ、血抜き君で斬りつけ、2匹同時に首を刎ねる。

馬面の頭が転がり……

気持ち悪い。

いや、生理的嫌悪の意味で、気持ち悪くて吐くとかじゃ無いけどね。


ただ、ジャージーデビルは弱い割には、ゴブリンよりも魔石が大きいんだよな……

実は僕が気づいていないだけで、ジャージーデビルには特殊な力があるのかもしれない。

別に知らなくても良いけどね。

ちなみに、2、3匹ならあのメンバーでも丁度良いかも?

まぁ、初めての実戦がコイツってのも可哀想か……

トラウマになって冒険者を辞めても困るし。

ちなみに、ジャージーデビルからは、魔石と羽が売れる素材として取れる。

実は、ジャージーデビルの羽は、悪い魔素を特殊な処理で取り除き、煎じて飲むと痛風と言う病気の治療薬となる。

痛風は、別名王侯貴族病と言われる病気で、その名の通り、風が吹くだけで痛みを感じる様になってしまう病気である。

また、王族、貴族、第商人とかの人がなりやすく、かなり良い値で売れるのだ。

だから、村人には嫌われているジャージーデビルだが、冒険者には格好のカモとして狙われている。

それでもたまに、あまりのキモさに嫌になり、ジャージーデビル狩りを機に冒険者を辞める人も多いらしい。

ちなみに、僕は悪い魔素を簡単に除去できるから、かなり高く売る事が出来る。

悪い魔素の多寡で値段が決まるから、少なければ少ないほど高く売れるからね。

と言う事で、僕は魔石と羽を回収し、羽に含まれる魔素を魔力に変換して収納する。

後、なんとなくだが、ジャージーデビルの頭を全部切り取り、地面に並べて晒しておいた。

まぁ、こんなとこに置いても、誰も見ないと思うけどね。

月明かりに照らされて、ジャージーデビルの頭は一様に笑っているかの様だった。


さて、次はゴブリンだな。

なんか、最近ゴブリンハンターを名乗れるくらいゴブリンを狩っている気がする。

別にゴブリン専門じゃないし、名乗らないけどさ。

暫く走り、ゴブリンの巣へ。

小さな森か。

気配を辿り、寝ぼけ眼のゴブリンを、音も立てずに瞬殺していく。

ゴブリンも多少は夜目がきくが、僕の魔石感知能力の方が高いので、相手が気づく前に近づける。

それに、こんな人里離れた場所だから、ゴブリン達の警戒も薄い。

とりあえず、森に入ってすぐ5匹を殺し、魔力を奪う。

そして、森の奥に巣穴を発見する。


巣穴の入口には見張りが3匹。

内1匹はゴブリンリーダーで、槍を持っている。

残り2匹はナイフか……

その奥には、ボスゴブリン1匹とゴブリン数十匹。

マザーはいないが、中々の数かな?

どうやって片付けるかなぁ……

僕はまず、ウサギの死骸を取り出してゴブリン達の前に投げる。

すると、ゴブリン達は一瞬怪しむも、ナイフゴブリンが近づいてウサギを調べようとする。

その瞬間に僕は、ロープをゴブリンの首に引っ掛け、思いっきり引っ張る。そして、巣穴からギリギリ見える位置の木に吊るし上げる。

ちなみに、即死しないように、胴体にもロープをかけ、ギリギリ苦しむ位置に調整してある。


仲間が吊るされたのを見た、見張りのゴブリンは、警戒しながら恐る恐る近づいてくる。

また、槍を持ったゴブリンリーダーは入口で待機している。

見張りのゴブリンは、吊るされたゴブリンにたどり着くと、必死で降ろそうとしている。

だが、身長が足らず、届かない。

槍を持ったゴブリンリーダーもそれを見守っている。

だから、脇が甘い!

どうせ、先に行ったゴブリンを囮に、様子を見るか仲間を呼ぶつもりだったのだろう。

所詮ゴブリンの仲間意識なんて、その程度だろ?


僕はあえて、ゴブリンリーダーの方を狙い、一気に近づいてペスで頭をブン殴る!

よしっ、声も出さずに気絶した。

即座に槍を奪い、更に頭を数発殴る。

もう1匹のゴブリンは、仲間を助けようと精一杯で、こちらに気づいていない。

ちなみに、洞窟内のゴブリン、ボスゴブリンも含めて全員が眠っているみたいだし、僕は収納魔法に仕舞ってあった大量の焚き木、って言うかキラーマンティスに襲われた村で燃えていた家の残骸みたいな物を取り出して投げ込んでいく。

そして、入口の岩を崩して完全に塞ぐ。

これで、もうゴブリン達は煙に巻かれて死ぬだろう。

反対の出口が無ければだけどね。


残り1匹のゴブリンは、慌ててこちらに向かって来たので、返り討ちにする。

ふぅ。

準備運動にもならないくらい楽勝だ。

魔力も充分あるし、今更ゴブリン相手をするのは卒業した方が良いのかもしれない。

暫く待つと、巣穴の洞窟内のゴブリンは全滅した。

あっけないな……

もうなんだから魔石の回収も面倒になって来たので、僕は帰ろうと思った瞬間!

魔石の気配!?


咄嗟に斜め後ろの感覚に気づき、血抜き君を振り払う。

恐らく相手もナイフ!

剣先が交錯し、お互い間合いを取る。

そこにいたのは……

ゴブリン?

いや、多分普通のゴブリンではない。

そいつは、青い装束に、頭に額当てをして、短い刀を持っている。

コイツは多分、忍者ゴブリンか!

ゴブリンには時たまユニーク種と言われる変わった個体が現れる事がある。

例えば魔法を使うゴブリンシャーマンや、刀を使う侍ゴブリン、弓ゴブリンに、大地の地脈を操る風水ゴブリン……

その中でも、変幻自在の忍術と言う攻撃をする、かなり珍しいゴブリンがいる。

それが忍者ゴブリンだと、なんかの図鑑で見た気がする。


コイツがその忍者ゴブリンか……

ならば、こちらからと斬りかかると、切ったのは只の切株だった。

そして、また後ろから気配がするので避ける。

多分、パワーもスピードもこちらが上だ。

でも、忍者ゴブリンは突然消え、突然現れる。

実際、魔石の気配が無ければ、どこにいるかわからないくらい、存在感が消されている。

しかも、多分ナイフに毒が塗ってある。

まぁ、多少の毒なら死にはしないけど……

できれば攻撃は受けたくない。


ちなみに、気配が消える瞬間に魔力を感じるから、転移系の魔法を使っているのかもしれない。

いや、魔力量が少ないから、魔道具じゃないかな……

それなら欲しいなぁ。

まぁ、そういうスキルの可能性もあるんだけど。

これなら、良い運動になる。


忍者ゴブリンは、360度上からも下からも、僕に傷をつけようと狙ってくる。

一撃 後ろから

二撃 斜め下から

三撃 再び後ろから

四撃 上から

五撃 後ろから、と見せかけて正面

だんだん慣れてきた。

六撃目で後ろ斜め上からの攻撃を血抜き君で弾きつつ、蹴りを入れる。

浮いてた分、ちょっと浅かったが、蹴りが入り忍者ゴブリンは吹き飛ぶ。

それでも空中で一回転して、無事着地。

あまりダメージはなかったかもしれない。


ならば、今度はこちらから。

僕は忍者ゴブリンに駆け寄り斬りかかる。

すると、大量の煙が!

煙玉か?!

でも、煙玉は僕もよく使うんだよ。

魔石の気配で忍者ゴブリンを追い、更に追撃する。

手答えあった、と思ったら……

ただのゴブリン?!

さっき吊るした奴か。

風切り音でナイフが飛んでくるのを察知し、血抜き君で弾く。


……楽しい!

次はどんな技が来るのか?

と思ったら、忍者ゴブリンの気配は逃げていく。

逃げる判断も早い!

僕は即座に追いかける。

忍者ゴブリンは森に入ったようだが……

ん?

今一瞬足の感覚が……

咄嗟に風魔法の足場を作り、ジャンプして違和感の場所を避ける。

そこには、落とし穴が。

しかも、穴の中には槍が仕込んであり、落ちたらまず怪我をするだろう。


その後も、追う度に罠が仕掛けられており、上から降ってくる矢の罠を払い落とした後には、忍者ゴブリンの気配を見失ってしまった。

「まぁいいか、帰ろうかなぁ」


僕がそう言うと、地面から気配が!

多分、地面に空洞が作ってあり、そこに転移したのだろう。

そして、忍者ゴブリンは地面から現れ、僕を斬りつける!

ズシャッと言う音がし、斬り捨てられる僕……

なんて訳はなく、忍者ゴブリンが斬りつけたのは、収納から出した案山子。

しかも、幻惑魔法で僕に見えるようにしている。

違和感を感じ、不思議がっている忍者ゴブリンを、僕はペスで殴り、一撃で倒した。

弱い……

まるで紙の様な防御力だな……

しかし、今度こそ、本当に倒せたようだ。

昨日のキラーマンティスといい、まだまだ世の中には知らない強敵がいるものだと、改めて思い知らされたな。

でもまぁ、参考になる点も沢山あったし、いい戦いだった。


さて、戦利品を頂こうかな……

僕は、忍者ゴブリンの持ち物を調べる。

うーん、この額当てと右手の腕輪以外、何も持っていないな。

魔力の残滓から、多分この腕輪が怪しいのだが。

僕は、忍者ゴブリンの腕を切り落とし、腕輪を手にした瞬間!

腕輪が爆発し、僕は閃光に包まれ……






























……

危なかった。

いや、多分一回分死んだ?

服がボロボロになっているし。

さっきの爆発で、一度僕は死んだのだろう。

それで、なぜ生きているかはこの手甲、ペスの能力で魂のストックを使ったからである。

ちなみに、ペスの能力で生き返った時は、ネムティのお兄さんの場所には行かないらしい。

何かが違うのかもしれないな。

それはともかく、爆発について何が起きたかを考えてみる。


うーん、多分腕輪には所有者以外が触ると、もしくは所有者から離れると爆発する仕組みなんだろう。

ちなみに、忍者ゴブリンの死体も魔石を残して綺麗に無くなっている。

死してなお敵を倒す、か……

ゴブリンの癖に生意気だ、と言いたいところだが、素直にその覚悟に感心する。

まぁ、腕輪が取れなかったのは残念だが、別にいいや。

実際、短距離でも転移魔法はリスクが大きい。

ちょっと座標をミスっただけで、土や木に半身が挟まって死ぬ、なんて事故も良くあるらしいしね。

もちろん、ペスの能力を使えばそれでも何とかなるかもだけど、壁の中だったら、永遠に出れないとかもありえるし、ちょっと怖いかな。


ボロボロになった服を捨て、僕は新しい服を収納魔法から出して着替える。

うーん、魔力も大分減ってきたな……

仕方がないので、帰り道に別のゴブリンの巣穴を襲い、魔力を回復する。

ゴブリンの武器は一応回収するけど、最近ボスゴブリンの武器に出物がない。

この辺りのボスがあまり良い武器を持っていないのか、アラバ村付近が異常なのかは、ちょっとわからないけど。

そんなこんなで時間が過ぎ、ジャン達のいる幌馬車に着くのは朝になってしまった。


例によって、ウサギ3匹を渡して寝ようとすると、オジさんに呼び止められる。


「これからもうすぐフォーマルハウトの街に入るんだが、その前にこのポーションを飲んでもらう。

このポーションはレベルアップ薬でな、ダンジョン攻略には必要なものだからな」


「飲まないとどうなるの?」

怪しいので念のため聞いてみる。


「飲まないならダンジョンには連れていけない。

悪いがここで降りてもらう。

だが、こんなところでお前らみたいな初心者が降りたら……

生きてはいけないぜ?

まぁ毒なんて入ってないからよ、安心して飲みな」


確かに、毒ではなさそうだが……

僕は意を決して、ポーションを飲む。

甘い、中々美味しいかも?

ただ、レベルアップは感じないけど。

程よい甘さが、夜に寝ていない眠さと相まって、僕は幌馬車で眠ってしまった。





















そして、起きたら周りは薄暗い洞窟の中だった。



閑話 心の刃

拙者の名前は戦変のジュナイ、犀川流の忍術をマスターした忍者ゴブリンだ。

拙者は、殿の命で最近現れたカマキリの調査に出ていた。

しかし、昨日を境にカマキリは居なくなり、最後にいたらしき村には、カマキリの死骸が横たわっていた。

しかも、全ての魔石が抜き去られている。

メスで、子カマキリの魔石を孕んでいるはずなのに……

多分、手練れの冒険者が現れたのだろう。

このままでは、我らが殿の巣穴も狙われてしまうかもしれない!

拙者は、屈強な冒険者を思い浮かべながら、巣穴へと急ぐ。

途中、変な馬の頭が大量に並べてあったりと、嫌な予感がする。


休みなしで、何とか我が殿の巣穴にたどり着いたのは……

夜中だった。

手前の森では同朋が何鬼か死んでおり、更に巣穴の手前には吊るされた同朋が2鬼……

そして、月明かりに照らされ、禍々しいナイフを持った、子供?!

こんな子供が、我が同朋を?

そして、巣穴も燃やされて……

殿、とのー!

思わず叫びそうになるのを堪え、憎きガキを見やる。

こちらには気づいていないはず。

拙者は、自らの忍術、気配隠匿を信じ、小さな人間に襲い掛かる。

背後を取った!

そう思った瞬間、彼奴は反転し、迎撃される。

疾いし、力強い!

拙者は寸前のところで、剣先を合わせ後ろに退がる。

しかし、すぐにガキはこちらに向かってくる、迫り来る恐怖……

拙者は、咄嗟に切株を身代わりにし、転移して背後を取り直す。

嘘だろ?

あのガキ、ナイフで切株を両断しやがった。

間違いなく、力も速度もこのガキの方が拙者より上……

ひょっとすると、最近ゴブリン達の間で噂になっている、悪魔の子供とは、コイツの事かもしれない。

ただの噂だと一笑に付していたが、本当にいるとは……

それでも、毒の短刀でかすり傷さえ与えれば、拙者の勝ちだ。

それに、転移での動きまでは読めていないはず。

間髪入れず、次々とガキを狙う。

多分、まともな一撃を喰らえば、こちらが負ける。

とにかく翻弄し続けなければ……

そんな拙者の思いを嘲笑うかのように、数撃の後で空中から斬りかかったところを避けられ、蹴りの反撃を喰らった。

ほとんど避けたはずなのに……

多分骨が数本折れている。

口に仕込んだ痛み止めの毒薬を飲む。

これで戦いが長引けば拙者は死ぬだろうが、死地に活路を見出すしかない。


即座に煙玉で身を隠し、後退するも、彼奴はまるで煙など無いかのように追ってくる。

仕方なく、同朋を身代わりに差し出して逃げる。

すまぬ……

忍びとは、非情なものだから……


拙者は後退すると見せかけて、数々の罠に誘うも、一向にかからない。

本当に悪魔じみている。

彼奴は人間か?

そして、拙者にも残された時間はあと僅か……

もはや、毒の影響で目も霞んできた。

起死回生を目論んで、地面の空洞に転移して襲い、彼奴を仕留めた!

と思った瞬間、拙者は意識を失うのだった。

確かに戦いは拙者の負けだが……

この腕輪を取った時が貴様の最期だ、そう思いながら深淵の闇へと……

少年達は洞窟の中で寝かされていた。

そして、これがダンジョンの始まりになる事を知るのだった。


次回 第90話 ダンジョンの始まり

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