表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/145

第79話 魂の救済

クロノバクターの神経毒を抜くため、僕は暫くの間床に伏しながら、身体の代謝を促進し、具体的には発熱させて沢山汗をかかせてみた。

風邪の時も熱を出せば治るって言うし……

とはいえ、汗をかきすぎると、水分が足らなくなり、喉が乾くので、水魔法で少量の水を出しながら飲み続ける。

そうしていると、今度はだんだん筋肉が痙攣してきた。

そう言えば確か……

水魔法の水ばかりを飲んでいると、汗の味が薄くなって、次第に筋肉が痙攣して、死に至る。

そんな話を父さんに聞いた事があったな。

熱痙攣だったか?

純粋な水は飲み過ぎると、身体から魂が抜けるらしいけど、清めの塩を少量舐めると抜けた魂を補完できるとかなんとか。

まぁ魂ってのは眉唾らしいけど。


僕は、岩塩を取り出し、一欠片を口に含みゆっくり舐める。

ちなみに、僕は飴をガジガジ噛んで食べてしまう癖があるんだが、流石に岩塩は我慢して、少しずつ口の中で溶かしていく。

しかし、収納魔法に入れたせいか、岩塩はまろやかでとても美味しくなっている。

癖になりそうな味だ。

だけど、岩塩ばかりを食べるのも危険らしいし、それに岩塩は高いのでそんなに沢山は持っていない。

取らないと死ぬし、取り過ぎても死ぬ、塩分は本当に不思議だ。

実は魔法でできているんじゃないかと思うくらいに。


暇なのでそんな事を考えながら、僕は床に突っ伏して身体を休める。

岩塩が効いてきたのか、なんとか自力で立てる位にはなってきた。

大体、30%くらいは回復したかな?

もう大分時間が過ぎたし、ボルツマンさん達や孤児の元締め達の事も気になるし……

早くカンピロバクター大司教を殺さねば。


僕はゆっくりと螺旋階段を上っていき、最上階の部屋に辿り着く。

ドアをゆっくりと開けると、中には色々な祭具が飾られており、そして1番奥にベッドがある。

ゆっくり、気配を消しながらベッドに近づく。

そこには……


裸の男女が寝ていた。

正確には、中年男性は高いびきで寝ていたが、女性は虚ろな目をして、「お花が…、お花畑が見えるの…」、と呟いている。

まぁ言葉が喋れているので、下の人達よりはマシなのかもしれないが?

この男がカンピロバクター大司教……

僕は、そっと近づき、血抜き君を心臓に突き刺す。

ズブリ、嫌な感触が手を伝わる。

そして、血抜き君はカンピロバクター大司教の血を一気に啜り、カンピロバクター大司教は干からびた様になって死んだ。


初めて人を殺した……

僕は殺人者になってしまった。

まぁ最初からそのつもりだったし、覚悟はしていたはずなのに、なんだか手が震える。

あれだけ動物や魔物だって殺してきたはずなのに?

それに、直接は殺していないけど、僕は間接的に何人かを殺している。

だから、慣れっこ、何でもないはずなのに……

その罪悪感から、僕はすぐに遺体から目を逸らし、この部屋から出ていきたい衝動に駆られる。

だけど……


さっきから誰かに見られている気がする?

僕は扉に手をかけようとした直後に、違和感を感じて振り向くと、そこには死んだはずのカンピロバクター大司教が立っていて、僕に殴りかかってくる!

咄嗟に避けたが、まだ十全でない僕に反撃の余裕はない。

無様に這い蹲りながらも、攻撃を躱していく。

上手く動かない身体を魔力で強制的に動かす。

さながらゴキブリの様に四つん這いで、床を這ってなんとか逃げ切り、立ち上がる。


「なんで?

死んだはずだったのに……

ちゃんと心臓が止まったのも確認したんだけど?」

僕は、カンピロバクター大司教?に訪ねる。


「フハハハハ。

私は神に愛されし存在!

それ故に、死なぬのだ。

諦めよ、小僧。

神の使徒たる私には絶対に勝てぬのだよ。


しかし、こんな小僧が暗殺者とは……

しかも、バクター3兄妹にクロノまで倒して辿りつくとは……

お主、何者だ?」

カンピロバクター大司教?は全裸で、ティムティムをブラブラさせながら、尊大な態度で聞いてくる。


「僕の名前はシアンです。

ハンターをやっています」

僕は、正直に今の名前を名乗る。

何故なら、必ず殺す相手だからだ。

絶対に殺す覚悟で、僕はカンピロバクター大司教?に名乗りを上げる。


「シアンバクター、いやシアノバクターの方が語呂が良いか?

私の名前はカンピロバクターなり、偉大なる神に選ばれた存在だ。

お主、私の配下になって、神の使徒として生きる気はないか?

そうすれば、現世の悩みから解き放たれ、お主は自由を手に入れるのだぞ。

何も考える必要も無い。

ただ、神の言葉に従えば良いのだ。

神は素晴らしい!

解脱するぞ、解脱するぞ、解脱するぞ、解脱するぞ……」

なんだか、カンピロバクター大司教?は、トリップし始めた。

当然、仲間になる気はないんだけど。


しかし、さっきからやはり、何かの視線を感じる気がする。

多分、カンピロバクター大司教の、左手にはめた手甲からなんらかの視線と言うか、気配を感じる。

それも、なんだか既視感のあるような、知っている様な?

そうか、血抜き君だ。

あの手甲からは、血抜き君と同じ匂いがする気がする。

ただ、なんか変な感じもするんだけど……

とにかく、情報を引き出そう。


「神の使徒って、その手甲と関係あるんですか?」


「流石だな、シアノバクターよ。

この手甲こそ、私が神より賜りし神器、ソウルサルベイションだ。

この手甲に刻まれし紋様が、聖十字教団の秘されし紋様と同じ事が何よりの証拠。

つまり、私は神に選ばれたのだ!

わかったなら、私の前でひれ伏すが良い」


うーん、シアノバクターになった気はないんだけど……

それはともかく、あの紋様、血抜き君に刻まれているものと同じだ。

それならば、普通の人には持てないはずなのだが、カンピロバクター大司教は僕と同じという事だろうか?

でもなんか違う気がするんだよね……


「それなら、僕の血抜き君にも同じ紋様があるんだけど?

でも、僕は神の使徒じゃないよ」

僕は、血抜き君の柄に刻まれた紋様をカンピロバクター大司教に見せる。


「な、なぬっ!

そんな、私以外にも神に選ばれた者が……

シアノバクターよ、一つ聞くがお主は闇魔法の使い手か?」

カンピロバクター大司教が変な事を聞いてくる。

闇魔法?

使えなくもないけど、使い手って程ではない。


「えっと、闇魔法の使い手ではありませんよ?

というか、生まれつき魔力を持ってないから、魔法は使えなかったし。

ただのハンター、それだけです」

嘘は言っていない。


「何故だ?

私ですら、闇魔法を手に纏わなければ触れる事も能わぬというのに……

貴様が真の救世主?

そんな、認めぬ!

許さんぞ、それだけは許さない!

せっかく名前まで与えてやったのに、そんな裏切りが許されようか?

貴様には、神の名の下に厳格な死を与えてやる、覚悟しろ!」


カンピロバクター大司教は、急にキレだし、僕に襲いかかってきた。

少し時間を稼いだので、なんとか50%くらいは動けるようになってきたか?

まぁ、カンピロバクター大司教は左手でしか攻撃してこないので、軌道は予測しやすいからいいのだけど……

何というか、カンピロバクター大司教のパンチには重みがない。

まるで、ただ当たれば良いかのように……


やはり、血抜き君の様な特殊な力があるのかもしれない。

当たっただけで、危険になる何かが。

とにかく、丁寧に避け、相手の様子を伺う。

どうしても避けられない場合は、血抜き君で直接手甲を弾く。

そうこうしているうちに、カンピロバクター大司教の攻撃パターンが見えてきた。

僕は、その一撃を見極め、血抜き君で思いっきり手甲を斬りつける。

それでも手甲には傷一つつかないが、本体であるカンピロバクター大司教は衝撃でよろめき、態勢を崩す。

僕は、その隙を突いてカンピロバクター大司教の足を払い、転ばせる。


そして……

再び血抜き君を心臓に突き刺す!

ズブリと嫌な感触が手に伝わる。

またこの感触か……

できれば殺したくはないんだが、何度この感触を味合わないといけないかと思うと、ウンザリする。

再び干からびるカンピロバクター大司教、うん確実に死んでいる。

だけど、さっきの言葉が本当なら、きっと生き返るはず。


僕は、少し距離を空け、カンピロバクター大司教が生き返る様を観察する。

10を数えたくらいだろうか。

カンピロバクター大司教の身体が一瞬光り、そして再び立ち上がった。

そして、僕を見つけまた殴りかかってくる。

「無駄、無駄、無駄、ムダーっ!

私は死なない、何度でも生き返る。

だから、貴様は死んでそのナイフを私に寄越すのだ!」


確かに、2度生き返った事を考えれば、倒せる気がしない。

でも、本当に不死身なのか?

そう言えば、師母が昔、レヴァなんとかって言う不死身の死霊を倒した時は、666回殺したとか言っていた様な気がする。

カンピロバクター大司教もそれだけ殺せば?

いや、時間がかかり過ぎるしめんどくさい。

それに、666回も殺している間に、カンピロバクター大司教の攻撃を喰らえば、僕もどうなるかはわからない。

ならば……

身体を斬って殺すのではなく、命を斬って殺せないだろうか?

なんて考えてみたものの、どうすれば命を斬れる?


まぁ、そもそも命が見えないからな……

生命力が見える魔法があれば……

僕がそんな事を考えていると、

「あるよ?」

という声が聞こえた気がした。

もちろん、僕の声でも、カンピロバクター大司教の声でもない。

むしろ、カンピロバクター大司教には聞こえてなさそうだし。

そして、思わず「血魔法、ブラッドアイ」と僕が呟くと、時間が……

遅く流れて見える?

それに、カンピロバクター大司教の魔力だけでなく、血の流れが全て見える。

更に、それとは別に霊魂みたいな……何かが見える。


これが生命力なのだろうか?

カンピロバクター大司教の中に一個、そしてその背後にはカンピロバクター大司教の手甲に紐付けされた、無数の生命力みたいなもの?が見える。

ひょっとすると、この生命力みたいなものが、不死の秘密かもしれない。


僕は、ゆっくり迫るカンピロバクター大司教の拳を避け、ゆっくりとした動作で再び心臓に血抜き君を突き刺す。

ズーブーリーと、嫌な感触が長く続く。

そして、再びカンピロバクター大司教は血を抜かれて干からびて死ぬ。

すると、カンピロバクター大司教の背後にあった生命力の様なものが5個くらい吸い込まれていく。

それらが手甲に完全に取り込まれると、カンピロバクター大司教は息を吹き返した。


やはり……

あの生命力の様なものが、不死の秘密なんだろう。

ならばと僕は、再びカンピロバクター大司教に血抜き君を突き刺した後、生命力みたいなものを血抜き君で切ってみる。

しかし、物理攻撃は全く効かないようだった。

そうしたら……

あの生命力みたいなものが、あの手甲が奪った魂だとしたら……


僕は、血抜き君に光魔法を纏わせ、生命力みたいなものを斬り裂く。

やはり斬れる!

とにかく、ひたすらに、カンピロバクター大司教が生き返る前に生命力みたいなものを斬り裂いていく。

ただ、側から見たら何もない場所で、ナイフを光らせながら振り回す怪しい子供に見えるんだろうな……

まぁ、どうせ意識がなさそうな女性が見てるだけだし、気にせずにいこう。


そして、僕が全ての生命力みたいなものを斬り裂いた時、ついにカンピロバクター大司教は生き返らなくなった……



謎の力を手に入れ、ついに、ターゲットを殺した少年。

しかし、死んだはずなのに立ち上がる仇敵?!

果たして、少年の運命は?


第80話 手甲の謎


※人物紹介?

カンピロバクター

家畜の腸管等に生息し、主に鶏肉での食中毒を引き起こす原因菌

ギランバレー症候群という重大な神経疾患を引き起こす事がある。


クロノバクター

自然界に一般的に存在するが、乳幼児が感染すると壊死性腸炎等の重篤な症状を引き起こす。


ヘリコバクター

所謂ピロリ菌

耐酸性が強く、胃の中で繁殖し、胃がんを引き起こす原因菌


アシネトバクター

自然界に広く分布している菌。

変異しやすく、多剤耐性菌が問題となっている。


エンテロバクター

自然界に広く分布している菌。

人間や動物の腸内にも存在している。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ