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第65話 覚醒?

気絶から目覚めると、心配そうに僕を覗き込む師父と師母がいた。

「大丈夫かい?

なんで突然割り込んできたのかな、危ないでしょ!

それに急に意識を失うし……」


「驚愕」


「いや、お二人の動きをなんとか捉えて、止めてみたかっただけです。

御心配をおかけしました、すみません」


「えっ?!

私とアリスの動きを読んだの?

やはり死線を潜ったから強くなったのかなぁ……

まさか死神の力を手に入れたとか?」


「死神じゃなくて、渡し守のお兄さんの力はもらえましたよ?」

そう説明すると……


「力、試す」

師母は再び構えを取る。


「その前に良いですか?

師母の親父ギャグって……

つまらないですよね?」

僕の一言で、周囲が凍りつく。

誰も何一つ発言しない。


そして、暫くして沈黙を破ったのは師母だった。


「つ、つまらなくないもん……


??

動かぬ……」

師母は僕の口撃が効いたのか身体が動かなくなったらしい。

そして、僕はゆっくりと師母に近づき、「おすわり!」と命じる。

すると、師母は腰を抜かし、座り込んでしまう。

更に僕は、師母の頬を軽く叩き、「解除」と言うと、師母は身体が動く様になり、立ち上がった。


「何した?」

師母の問いに、僕は答える。


「今のが彼岸でネムティのお兄さんに貰った、口撃の力です。

言葉でダメージを与える能力みたいです」


「アリスを倒すなんて、その力すごいね。

私にもかけてみてよ?」


「えーっと。

師父って欠点とかわかりにくいんですけど?

師母は知ってます?」


「アホ毛がちょっとあるのを気にしてる」

師母が僕に耳打ちする。

あ、なんかくすぐったい。


「師父の髪型って、アホ毛があって女の子みたいです可愛いですね」


「えっ、そんな事言われたの初めてだし?

嬉しいかも?」

流石師父、アッサリかわされてしまう。


「というか、師父は天才過ぎて遥か雲の上の人だから言葉で口撃なんてできません!」


「一応、私だって只の人なんだけどな……

あっ、ちょっと凹んだら身体の動きが鈍くなった様な?

やっぱり、精神に作用する力みたいだね。

暗示系の魔法と組み合わせたら無敵かも……

シアンが宗教でも始めたら、かなりヤバそうだね」


「いや、僕よりも彼岸の渡し守の力ですら効かない、師父の方が凄すぎますって。

ちなみに、ダメージを与えるだけじゃなく、他にも使えるらしいんですが……

やってみてもいいですかね?」


僕がそう言うと、師母が頷く。

「師母って、強いですよね、無敵ですね!


どうです?

身体が軽くなってませんか?」


師母が身体の動きを確かめると……

風圧で僕が吹き飛びそうなほど、パワーもスピードも上がっている。


「ちょっ、ヤバイねこれは!

早く解除、解除」

師父が焦っているので、「解除」と言って師母の効果を解除する。


「超軽かった」

師母は満足そうだ。


「しかし、なかなか使い所が難しい能力だね。

確か、魔力は使わないんだよね?

そう言う意味では、シアンにピッタリな能力だと思うんだけど、いくつか欠点があるよね。


まず、能力を知っている人には効きにくいと思う。

試しに、アリスにさっきと同じ内容で動きを止めてみてごらん」


「師母の親父ギャグって、つまらないですよね」


「少重あり。

否、動ける」


「やはりね、動けなくなるってわかっていれば、あまり効かないのだと思う。

精神的なガードが入るかもしれないね。

初見殺しには良いけど、あまり乱用すると対策されてしまうかもね。

それに、言葉が通じない相手には効かなさそうだよね。

高等な魔物ならともかく、普通の魔物や動物には効かないと思うから注意して。

まぁ、普通の魔物くらいなら能力は要らないかもだけど。


そして、魔術士相手も注意が必要だよ。

例えば、風魔法の簡易術でブギーというのがあるんだけど、これは風で大きな音を出して、相手の魔法の詠唱を遮る事ができる魔法だよ。

他にも、サイレンスって言う音を消す高等な魔法もあるしね。

まぁ、無詠唱の私には効かないのだけど、シアンの能力は言葉が伝わる必要があるから、結構有効だろうね」


「と言うか、魔法を使わなくても耳を塞いだり、喚いたりして聞こえなければ、僕の能力は効かないかもしれませんね。

そう言う意味ではあまり人前では使わない方が良いですね。

気をつけます」


「逆にね、魔力がある時なら、暗示魔法と組み合わせればかなり効きやすくなるんじゃないかな。

例えば、ハゲと言う言葉に恐怖するように暗示をかければ、禿げてなくてもハゲの一言でダメージを与えられるかもよ。

暗示魔法なら、催眠魔法より広範囲の範囲攻撃でコッソリ仕掛けられるしね。

まぁ、私達にかけられると困るけど、いつか練習してみたらどうかな?」


「例えば、暗示魔法って動物や低級の魔物にはかからないんですか?」


「うーん、確かに暗示で動物や低級の魔物を使役する人もいるね。

確か、言語じゃなく精神感応で同期するんだったかな。

シアンには動物と話せるとか、何となく気持ちがわかるとかの特殊な能力があるのかな?」


「いえ……

というか、動物や魔物の気持ちがわかったら、ハンターなんてできませんね。

そう言う意味では、必要ありませんね」


うん、一々動物を狩る度に悲しんだり、魔物を殺す度に痛みを知ってしまえば、多分僕はハンターを続ける事ができなくなるだろう。

まぁ、動物や低級の魔物に暗示で簡単に倒すってのは魅力的だったけど、仕方ない。


「それで、アリスはまだシアンの修行を続けるのかい?」

師父が師母に聞く。

そうだった、まだ死ぬ修行の途中だったんだ。

でも、彼岸の渡し守の力を得たから、これ以上死ぬ必要はないし?


「確認必要」

師母はそう答える。

どうやら、仕上げはお母さんって感じで、師母の確認がいるらしい。

今回は口撃は効かないし、ガチのやつだ。

僕は、先程同様に魔法で思考を少しだけ加速する。

そして、師母の魔力を断片的に読み取り、攻撃の軌道を予測する。


右、と見せかけて、左斜め下か!

普通なら視認できない速さなのに、フェイントまで入れている。

僕の身体強化魔法程度では、師母の速さには届かないので避けるのは難しい。

多分、避ける方向に軌道修正してくるしね。

でも、予測した軌道のギリギリのところで、最小限の動きで師母のナイフを……

血抜き君で受け止める。


ただ、受け止めた衝撃で、僕は吹き飛び、地面に転がったが、死んでいない。

うん、死んでいないだけで、怪我をしていないわけではないんだけど。

まぁ、魔力が残っているから、回復できるので問題ないか。

立ち上がる僕を見て、師母は「合格」と、言って親指を立てる。

それを見た僕は、大声で「ありがとうございます!」と、返事して……

緊張の糸が切れたのか、意識を失ってしまった。


今日は精神的にとても疲れる1日だった。

シアンは次々と成長していく、正直異常なくらいに。

今まで、こんな逸材は見た事がない。

もちろん、どの能力も癖があり、使い勝手はかなり悪い。

しかし、極めればその強さは無限大と言っても過言ではないだろう。

そう、そしてその逸材であるシアンが、今日死ぬかもしれなかった。

シアンの心臓が止まった時、私は一瞬目の前が真っ暗になったくらいに動揺した。

しかし、すぐに私の役目を思い出し、回復しようとしたら……

シアンの心臓は、自動的に開けられた穴を魔法で修復していた。

そりゃもう、めがっさ驚いたさ!

瀕死で自動回復とか、異常過ぎる。


流石に、2回目に死にかけた後は、頭がカーッとなってしまい、思わずアリスと喧嘩してしまった。

だけど、それを止めた上に、また彼岸に行って新たな能力まで手に入れてしまった。

しかも、その能力でアリスを、あのアリスを倒してしまった。

多分、初見なら私ですらヤバかっただろう。


私達はシアンと出会って、まだ6日。

それでも私は、既にシアンを実の子供の様に感じてしまっている。

母性?

いや、私は子供なんて産んだ事はない、それどころか未だに処女だし、あの子は他人の子、ただの弟子……


異常な愛情、この感覚がなんなのかはさっぱりわからない。

それでも、私はあの子と出来る限り一緒に居たいと思う。

ずっと側で見守っていたい。

しかし、現実はそうは上手くいかない、私達の命はあと少し。

多分、魂の消耗度合いから、保って30日といったところか。

だからこそ、あの子が長く生き残れる様に、できるだけ強くしてあげたい、私はそう思うのだった。


シアンは死線を潜り抜け、強くなった。

その事実に、気分が上がる、心が躍る!

まぁ、贅沢を言えばもっとゆっくり基礎上げをした方が良かったが……

残念ながら、時間が足らない。

レオンは気づいているだろうが、僕達はあとそんなに長くないだろう。

だって、時々父さんらしきものが見える様になってきたし。

お迎えの日は近いのだろう。


一方で、シアンはあれだけ死の臭いを振りまいているのに、死神である父さんが近づかない。

だから、僕はシアンが死なないと確信していた。

そして、シアンはその期待に応え、死ななかったし、強くなった。

ひょっとすると、シアンは僕よりも強くなるかもしれない。

でも、多分その姿を見る前に僕達は……

楽しみな様な、悲しい様な、そうした寂寞の想いが頭をよぎるのだった。

少年は新たな力を得て強くなった。

そして、今度はそれをハンターとして使う時だ。


次回 第66話 久しぶりのアレ

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