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第59話 過酷な修行 レオンその二

翌朝起きると、身体が重く感じた。

いや違う、多分まだ身体強化の魔法の感覚が抜けていないのだ。

あの自由自在に身体が動く感覚まで、僕の身体が到達していないだけの事だ。

実際、昨日の朝よりは筋肉がついており、反復横跳びの速度も上がって、腕立て、腹筋の回数もいつもと段違いに増えている。

確実に強くなっている事を感じる。


でも、あの身体強化の魔法には全く及ばない。

僕に魔力があれば……

多分、僕に魔力が手に入るならば、例え悪魔に魂を売る事になろうとも躊躇しないだろう。


なので、僕は師父に思い切って聞いてみた。

「師父、僕に魔法が使える様な修行はないんですか?

どんな方法でも構いません。

教えて下さい!」


「うーん、残念ながら魔法については、生まれ持っての自力の影響が大きいんだよね。

だから、魔力が全くない人の魔力を育てる修行は、思いつかないんだよね。

それとね……

シアンの場合、魔力が無いだけじゃなく、魔法の属性がないんだよね。

だから、他からの魔力に対しては柔軟性が高いんだけど、自らで方向性のある魔力を作り出せない可能性が高いんだと思うんだよね。


恐らくは、魔力を生成する器官が壊れているか、ないんじゃないかと推測してるんだけど……

だから、多分修行ではどうにもならないと思うんだ。

ごめんね。


あと、さっき魔力の受け皿としては柔軟性が高いって言ったけど、反面魔法にかかりやすいって意味でもあるんだ。

だから、精神系や拘束系の魔法には、かなり注意しないといけないよ。

なので、魔法の感知をしっかりとね。

まぁ、シアンはしっかりしてるから、精神系の魔法は効かないと思うけど……

多分?

いや、大丈夫だと思うけど……

うん、一回かけてみようか?」


師父はそう言って、暗示魔法と言うものを僕にかけた。

すると、頭の中に「師父大チュキって言ってミソ」と、言うフレーズがリフレインする。


「なんですか?

この頭に直接語りかけてくる、鬱陶しい声は?」


「暗示魔法はね、文字通り直接相手の頭の中に密かに暗示を出して操る魔法だよ。

だから、普通はかけられたら気づかずに、魔法の指示通りの行動をしてしまうんだけどね。

声がするだけか……

やはり精神的なプロテクトはかなり強いみたいだね。

恐らく、洗脳系の魔法は効かないだろう。

これなら、魔法で操り人形にされる可能性は低いから大丈夫だね。


まぁ、ちなみにアリスは精神系の魔法に少し弱くてね。

一度だけ、えらい目にあったんだよ。

いや、あの時は大変だった。

最終的にはアリス自身で解いたんだけど、三日三晩暴走するアリスと戦い続けた時は、流石に死を覚悟したよ。

ちなみに、かけた術師は速攻でアリスの攻撃に巻き込まれて死んだんだけどね。

術師が死んでも、この手の魔法は少ない魔力で持続するからねぇ」


「それで……

いつまでこの声は続くんですか?」


「うーん、解かないと1カ月くらい?

ただ……

今後の事も考え、自分で解いてみようか?」


「えっと……

どうやってやるんですか?」


「基本的には、自分の中の魔力を感知して、引き出して、排出するみたいな?

普通の人は、自分の中の魔力が出る場所が決まっているから、感知も楽なんだけどね。

シアンは魔法がかかった場所によって違うから、ちょっと大変かもしれないね」


「と言うか、感知して引き出せれば、暗示魔法なんてほとんど意味がないんじゃないですか?」


「いやいや、普通はさ、冷静に暗示魔法に抵抗する事なんてできないから。

私もね、魔法に強くてかかりにくい人や、アンチマジックで防いでいる人は見た事あるけど、精神力で暗示魔法をブロックしている人なんて、シアン以外には知らないから。

それはとても凄い事なんだよ、だから自信持って誇っていいよ?」


「うーん、僕の特技は精神が強い事ですって……

あんまり嬉しくないな。

それはともかく、魔法の操作ができるかやってみますね!」


僕は集中するために、地面に座り、足を組む。

両手を腰の辺りに持ってきてから、右手は掌を真っ直ぐに伸ばし、左手の掌は親指と人差し指で丸を作り、その他の指は真っ直ぐに伸ばす。

そして、目を軽く閉じて、気持ちを空っぽにする。

結跏趺坐、古の賢者が無の境地を開くために開発したと言われる構えだ。

僕は、精神を集中し、ただひたすら声の出所を探す。

声と言っても、実際に聴こえているわけではないので、耳ではない。

ただ、頭の方であるのは間違いない。


僕達の心は心臓にある、魔物の魔石が心臓にあるのと同じだ、僕はそう教わってきた。

しかし、実際はどうなんだろう?

頭の中の脳髄は、何の為にあるのだろうか?

動物でも、魔物でも、頭を潰せば死ぬ。

熱があったりすると、頭がボーっとして思考できなくなるし……

暗示魔法の魔力は、脳髄に作用しているっぽいし、ひょっとすると、実は心、いや思考は脳髄にあるのかもしれないな。

そうすると、脳髄を身体強化すれば、思考加速もできるのかもしれない。

一度師父に聞いてみよう。


それはともかく、暗示魔法の魔力は、僕の脳髄の額からちょっと奥にあるようだ。

魔力の表面には、シアンがレオンを好きになると書かれている。

うーん、この文字、書き換えられないかな?

僕は、少し文字を書き換えてみる。

うん、頭の中に聞こえてくる内容が変わった。

後は、これをちょっとずつ移動させて……

体内を巡る血流から少しずつ流していくイメージで、僕は魔力を掌に移動させていき、一気に解き放つ!

すると、その魔力は師父に向かっていき……


「モンテスキュー!」

師父が突然叫び出し、変なポーズを取り始めた。

うん、僕が書き換えた内容になっている。


「も、も、も……

ディ、ディスペル!


ふぅ、何するんだよ!

死ぬかと思ったよ?」


「いや、身体から魔力を出したら、師父の方に吸い込まれて行って……

まぁ、ちょっと内容は変えちゃいましたけど」


「変えた?

私の暗示魔法を催眠魔法に?

まさか、そんな事が……

本当に私の魔力を催眠魔法に変えたのかい?」


「いや、ただ単に魔力の表面に書かれていた、文字を変えただけですよ?

催眠魔法なんて知らないし、というか暗示魔法と違うんですか?」


「暗示魔法は無意識に暗示をかける弱い魔法で、かけられた人は気付きにくいんだ。

まぁ、繰り返しかければ洗脳する事もできるんだが、あまり大きな事はできない。

一方で、催眠魔法は強制的に操る強い魔法で、魔法が切れるまで、自分の意思に関係なく動いてしまう。


シアン、君は、ひょっとすると……

魔法の性質を本質レベルで読み取り、操作できるのかもしれないね。

魔力は無いのに操作ができる、無属性なのもひょっとすると全属性行けるって意味では……

まさか、でも、そしたら……


うん、それが本当だったら、限定的だが、魔法が使える様になるかもしれない。

試してみる価値は……」


「本当ですか?!

だったら是非もありません!

僕に魔法を教えて下さい!」


「うーん、とりあえず先ずは、魔法に耐え切れる身体作りからかな。

という事で、昨日の続きをしよう。

と言っても、今日は身体強化魔法をかけるけど、この魔法の重りを付けてもらうよ」


そう言って、師父は身体強化の魔法を僕にかけ、更に土魔法で手足に重りのリングを取り付けた。

重りとは言っても、身体強化魔法のおかげで、重さはほとんど感じない。

思考のついていける、ギリギリのレベルで動ける様に調整されている様だ。


昨日と同じく、師父の土魔法の槍が地面から出てくるので感知して避ける。

槍、槍、槍、槍、槍、槍……

ただひたすらに、ただひたすらに避けていく。

すると、同じ魔法でも、僅かに違いがあるのがわかってくる。

そう、指向性やタイミング等の情報はそれぞれで異なるから、発動前に読み取れれば、より避けやすくなる。


だから、僕は魔法の来る方向とタイミングを先読みし、それに合わせて避けていく。

さっきまでの、ただ感知して避けるだけよりも、効率的だ。

勘に頼る危なげな避け方も必要ない。

これならば、師父の本気でも避けられるかも?

ちょっと自信が付いてきた僕に、師父は言った。


「それじゃ、午前中はこれくらいにして、昼からは更にレベルアップしていこうか?

ご飯を食べたら、土魔法に風魔法をミックスするよ〜」


「風魔法って、風刃みたいなものですか?」


「そうそう、そろそろ地面からの攻撃だけじゃ退屈かなってね。

お昼は……

アリスがレッドバイソンを狩ってきたからステーキにしようか」


レッドバイソン、赤い毛並みを持つ、大型の野生の牛で、その性格はとにかく獰猛。

主食は草だが、時には植物系の魔物を襲って食べる事もある。

そんな大物を容易く狩り、しかも片手で軽く担いで持ってくる師母……


更に師父は、魔法で瞬時に捌き、焼いて調理する。

この2人のコンビは最強なんだなと、改めて思い知らされた。


そして、昼からは予告通り、風魔法をミックスした魔法を避ける修行を行った。

師父は、風魔法はあんまり得意じゃない、とか言っていたが……

風魔法は察知しにくい遠距離で、上空全方位から襲いかかってくる!

そのため、これまでの様に、平面的に避ければ良いと言う訳にはいかず、苦労させられる。

立体起動で避けないといけないし……

って言うか、無理!

次第に避けられない攻撃が増えていき、まぁ主に風魔法なんだけど、かすり傷が増えていく。

辛うじて、大怪我にはなっていないが……

ジリ貧だ。


下から右、左で避けて、斜め上からの風刃、チッ幅が広い!

上半身を思いっきり逸らし、ギリギリで躱すと、目の前に槍が……

更に横ひねりを入れ避けても、避けた先に風刃がピンポイントで迫ってくる。

流石に避けれない。

そう覚悟した瞬間、僕は風刃の魔法に手を伸ばし、消えろ!と念じた。

すると、さっきの暗示魔法を書き換えた様に、魔法に干渉して消す事が出来た。

咄嗟の、しかもほぼ無意識にではあったが、師父の魔法を消す事が出来た!


しかし、どうやら僕は自分にかかった身体強化魔法も消してしまったらしく、魔法が切れた反動で地面を転がり、激しい疲労と痛みの中、意識を失うのだった。


シアンは魔力を一切持っていない。

だが、一方でズバ抜けた感知能力と、特殊な魔力操作能力を持っている様だ。

これなら、他人から魔力を供給されれば、魔法使いになれるのかもしれない。

ただ、私やアリスがずっとそばに居れるなら別だが、普通から考えて、シアンに常時魔力を供給できる様な魔法士が見つかる可能性は低い。

そうすると……


それと、最後に私の魔法を消し去ったのも驚いた。

並みの魔法士のバリアくらいなら、軽く引き裂く程度の魔力が込められていたのに……

まぁ勢い余って自分の身体強化の魔法まで解いてしまった様だが、この辺りは慣れだろう。

何度かやって、慣れれば多分色々出来る様になるんじゃないだろうか。


あと、今日の修行でも筋力がかなりアップしたし……

まぁ、この修行法は短期間で一気に筋力を上げる事ができるけど、上限はシアン次第だ。

ただ、私はまだまだ余力があると感じている。

シアンはきっと、強くなる。

明日の修行も楽しみだ、次は……


少年は、過酷な修行にもめげずにひたすら励んでいく。


次回 第60話 過酷な修行 レオンその三

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