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第58話 過酷な修行 レオンその一

アイルロポダを倒し、師父と師母に師事する事になった翌日、僕はまず師父レオンの修行を受ける事になった。


「それじゃあ、最初に魔法を避ける訓練から始めようか」


「師父、僕は魔石は感知できるけど、魔力が無いし、魔法は感知できませんよ?」


「大丈夫、シアンは感知能力が高いから。

さあ手を出して。

うんこれで大丈夫」

僕が手を出すと、師父は小さな魔力の針を僕の手のひらに打ち込んだ。

すると、不思議な事に、師父や師母の魔力が感じられる様になる。


「凄い……

一体何をしたんですか?

いや、それ以上に、師父の魔力が凄すぎますよ?

アイルロポダの魔石の力なんて目じゃ無いくらいに……」


「確かにシアンは魔力が無かったから、魔力と言うものがどういうものかわからなかったのだろうね。

だから、私の魔力をちょっとだけ打ち込んで、認識させてみたんだ。

やっぱり、感知能力はかなり高いみたいだね。

適応力も高いし。

やっぱり、シアンはなかなか凄いよ」


「ちなみに、沢山の魔力を入れて貰えば、僕にも魔法が使える様になるんですか?」


「いや、使用と感知の才能は別物だしね。

それに他人の魔力が入ると、死……

ゲフンゲフン。

な、何でもないアルよ?

ちょっと位なら大丈夫だから、何でもない、何でもない」


非常に怪しい……

それはともかく、魔力が見えるようになり、改めて師父の凄さがわかった。

近づくだけでヒリヒリしそうな強大な魔力だ。

まぁ僕は魔力が全く無いのを再度認識させられたのだか、師母のアリスさんも、師父レオンさんと比べると僅かな魔力しか持っていない。

いや、比較にもならないと言っても過言ではない。

魔力と言えば母さんは天才と言われていたが……

多分、母さんよりも魔力が多いのでは無いだろうか?


「それじゃ、私が地面から魔法を放つから、シアンは感知して避けるように。

じゃ、行くよ!」


「ハイ!」

と、僕の返事の後で直ぐに、地面から何かが来る感じがして、即座に僕はその場を飛び退いた。

地面からは、岩が槍の様に突き出て、僕のいた場所を貫いている。





……

マジ?


これは軽く修行とかじゃなく、かなりヤバイ奴だ。

多分、マトモに当たれば即死。

掠っても、冗談では済まされないレベルだ。


「師父……

本気ですか?

小手調べにしては洒落にならないんですが?」


「ん?

全然本気じゃないよ〜

軽く本気だったらこれくらい?」


そう言うと、魔力が膨れ上がり、後ろの平原が岩の槍だらけになった。

言葉にすると、槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍槍……

みたいな感じだ。

しかもほぼ同時の一瞬で、隙間なんてほとんどない。

あんなの避けれない。

普通に死ねる。


「この魔法は沢山殺すのには便利なんだよね〜

ただ、隙間があるから数体は逃しちゃうんだけどね。

次はアレでやってみる?

まだちょっと早い気もするけど」


「いやいやいやいやいやいやいやいや。

無理、無理、絶対に無理!

普通に死ぬから!

今はまだ無理なので、初級クラスでお願いします!」


「冗談だよ。

しかし、もう辞めたいとかは言わないんだね?

普通なら……

まぁいいんだけどさ」


「はい?

絶対無理じゃなきゃ、全然いいですけど?

それに、いつかはさっきのも避けてみせますよ。

だから、再開をお願いします!」


「よし、じゃあ行くよ〜」


最初は右、サイドステップで避け、次は後ろから斜めに狙って来るので、屈んで回り込む。

ちなみに、間違った方向に避けると、トラップが発動し、足が取られる様なイジワル仕様のため、即座に空き場所を探して回り込む必要がある。

ただまぁ、師父が発動をゆっくりにしてくれているので、充分避けられるのだが……


なんて、さっきまで考えていた自分の甘さに反吐がでる。

既に、僕のほぼ最高速でギリギリになってきており、魔法を避けながら全速力で走っている様な、そんな状態になっている。

このままでは……

すぐに息が切れ、動けなくなってしまう!

ただ、全方位を感知しながら、なおかつ対策を考える程の余裕なんて全然ない。

そんな一瞬の迷いでも、反応が僅かに遅れ、右頰を岩の槍が掠る!


「チッ!」

僕は舌打ちし、本能的に師父の方向に向かって駆け出す。

トラップは発動するが……

ギリ避けられる!

そして、トラップを次々と抜けて師父の下にたどり着く。


「ちょ、ちょっと休憩……

させて……

下さい……

息が……

持たない……」


「あー、ごめんごめん。

どこまでやれるか試してたんだけど、思わず調子に乗っちゃったよ。

それじゃ、回復魔法をかけるから〜」

そう言うと、師父は僕に回復魔法をかけてくれた。

痛みや、息の乱れがなくなり、体力も回復していく。

凄い!

修行前と同じくらいに回復している。


「師父、ありがとうございます!

それじゃ、続きをお願いします!」


「えっ?

休憩は良いの?」


「ハイ!

戦いの最中なら、回復したらすぐに戦線に戻りますから。

動けなくなるまで戦えと、父さんにも教わりましたし」


「そうか、じゃあ息が切れたら回復しに来てね。

それじゃ、行くよ〜」


再び、師父の掛け声と共に、先程の魔法を避ける修行が始まる。

右、左、下、上、B、A、B、A……

謎のステップに合わせ、避けて行く。


「ついでに舞踏のステップも覚えようか?

ハイ、アンドゥートロア、アンドゥートロア。

ハイハイ、ステップ遅れてるよ!

もっと華麗に、優雅に!

上半身がぶれてるよ!」


「舞踏って……

強さに関係あるんですか?」


「いや?

そのうち、シアンも宮廷とかで、舞踏会に呼ばれるかもしれないしさ、覚えて損はないよ?」


「いや、普通は舞踏会なんて行きませんから!

それより、戦闘態勢の、方が!」


「そんな余裕がないのは良くないよ〜

ハイハイ、次々行くよ!」


こうして、魔法を避ける修行と、回復を繰り返す。

回復する度に、少しは余裕が出て来るが、すぐにスピードを上げられるため、結局常にMAXの状態で動かされる。

次第に感覚は鋭くなるが、肉体が……

ついていかない!


「師父!

身体がついていけません!」


「うーん、ならば……

身体強化魔法をかけてみる?」


それって……

他人にかけると死ぬやつじゃ?

しかし、師父程の魔法使いなら……

制御が完璧で誰にでもかけられるのかもしれない。

それに、現状の力では、アイルロポダ程の魔物は倒せない。

だから、師父を信じる!


「お願いします!」


そうお願いすると、師父は恐る恐る魔法をかけてくれる。

うっ……

結構キツイ、鼻血も出たし……

でも、死にはしない。

流石師父だ。

そして身体が軽い!

力も溢れている、びっくりするくらいに。


「シアン、大丈夫?

一応軽めにかけたけど……

死なないとは思うけど……

違和感とかはない?」


「師父、凄いっすよ!

身体が軽くて、力も溢れています。

ただ、ウイングブーツやパワーグローブの力が、身体強化に追いついていない感じがします。

身体強化している時は使用しない方が良さそうですね。

んじゃ、修行の再開をお願いします」


「あんまり、無理はしないでね?」


そう言って、先程の魔法を避ける修行を再開する。

最初は、余裕、余裕なんて思っていたが……

そんな自分の甘さに反吐がでる!

あれ?

さっきもそんな感じだった気が……


それはともかく、正直なところ、身体はギリギリついて行くのだが、感知、いや僕の思考が速すぎてついていっていない。

要するに、これ以上は無意識レベルで避けなければならない。

ほぼ運と勘の世界。

だが、それすらも御さなければ、僕の様な凡人は強くなれない。


こうして、夕暮れまで修行は続き、身体強化の魔法が切れたところで、僕は意識を失った。


身体強化の魔法が切れると、ブルー君、もとい、シアンが倒れた。

多分、精神的な疲労だろう。

とは言え、実際には身体強化の魔法の影響で、肉体へのダメージも大きく、筋繊維がブチブチに切れている。

まぁ、回復魔法で治るけどね。

いや、むしろ限界まで酷使し、強化された筋繊維が、あるべき理想の姿で回復する。

だから、かなり効率の良い筋トレ方法なのかもしれない。

レベルアップ、みたいな。

ただ、かなりの痛みを伴うし、正気とは思えない方法だが。

というか、私が言うのもおかしな話だが、この少年は本当に正気なのだろうか?


最初の魔法を避ける修行は、未だかつてアリス以外クリアできた人間はいない。

10血ですら、すぐに槍で貫かれ、2度とやりたくないと泣いて懇願するレベルなのだが……

こんな少年がついてこれるとは。

しかも、私の本気の一部を見てすら、いつかはクリアすると宣言し、心が全く折れなかった。

痛みが怖くないのか?

それに、回復したらすぐに修行を始めるし、根性という言葉では表せない何かを感じてしまう。


それに、身体強化魔法の事も、一瞬逡巡したが、直ぐに受け入れた。

多分、禁忌である事は知っていたのだろう。

死ぬのが怖くないのか?

正直、私も五分五分で死ぬ事を想定していたのだが、彼は何とか耐えきった。

恐らくだが、魔法の力を精神力で上回り、押し切ったのではないかと推測しているのだが……

もちろん、シアンの肉体がちゃんと鍛えられており、耐えられる素地があっての事ではあるが、気を抜けば魔力に飲まれ死んでいただろう。


あと、シアンの素地と言えば、多分だが最初から強い身体を持っていたわけではないと思う。

というか、大元の身体は多分普通の子供と同じ程度だったのだろう。

私やアリスの様な特別ではない。

それが、毎日の鍛錬でここまできた。

もちろん、途中で父や友人に育てられるなど、運も良かったのだろうが、それも実力のうちと言えるし、私達にも出会えた。


やはり、この子は何かが特別なんだろう。

ただ、1番気になるのは……

シアンの持つナイフ。

血抜きがどうとか言っていたが、ただの血抜きナイフではない。

一度だけ抜いて見せてもらったが、その刀身から放たれる狂気は呪いの魔剣以上だった。

私の中の狂気など、児戯に等しいレベルを放つナイフを、シアンは平気で持っている。

恐らく、私が持っても理性で抑え切れず、狂うだろうし、アリスが持ったら制御不能なキルマシーンと化すだろう。

なので、その特別が怖くも感じるが、基本的にシアンはいい子だし、そのギャップに戸惑いを感じてしまう。

精神がとんでもなく強い……

もしくは、とんでもなく鈍感なのかもしれない。

いずれにしても、私達の時間は限られており、シアンほどの逸材は中々いない。

そして、彼なら道を踏み外す事はない、そんな気がする、多分、きっと、ま、ちょっと覚悟はしておけよ?

うん、大丈夫、大丈夫、きっと私達の代わりにネビュロスを倒してくれるはず、そう信じて、明日からの修行を楽しみにするのだった。





そんな事を考えていると、アリスが、

「レオン楽しそう」

と、言ってきた。


「ん?

そりゃ、こんだけ鍛え甲斐のある子は初めてだし、楽しいさ。

明日も頑張って鍛えるからね。

それに、私の次はアリスだから……

死なない程度にね?」


「りょ」


アリスのわかったは……

若干怪しいが、それでも何とかなる気がして、私はなんとなくワクワクしてしまうのだった。

少年の修行は続く。


次回 第59話 過酷な修行 レオンその二

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