第56話 閑話 レオンとアリスの過去 再会
あれから、僕とレオンは一緒にご飯を食べ、お風呂に入り、一緒に寝た。
そして、目覚めると、隣で微笑むレオンがいる。
「これが朝チュン?」
「いや違うし!
一緒に隣で寝たけどさ、2人共何もしてないでしょ。
昨日は疲れて寝ちゃったしね。
って言うか、なんでそんな言葉知ってるかなぁ。
それはともかく、おはようアリス。
とりあえず朝ご飯にでもするかい?」
どうやら朝チュンではないらしい。
ならば……
昨夜はお楽しみでしたね?
と言うパターンなんだろうか?
確かに、昨日は色々あって楽しかったのだが……
まさかの臨時体験ができるとは!
しかも、父さん?にも会えたし、僕と私が1つになったしね。
うん、身体の話じゃないよ、魂の話ね。
と言う事で、レオンの準備した朝ご飯を食べる。
今朝の朝食は、丸く切ったパンにベーコンと目玉焼きとチーズを挟んだ、朝立マックスと言うイカガワシイ地方の食べ物らしいのだが……
「朝立ちサイコー」
とにかく美味しかったので、朝から2個食べてしまった。
うん紅茶も美味しい。
「アリスは、いつも美味しそうに食べてくれるから、私も嬉しいよ」
「マジうま」
そう、お世辞ではなく、本当に美味いのだ。
だから、例え結魂していなくても、僕の胃袋はガッチリと掴まれていただろう。
ちなみに、殺し屋ギルドのマスターのご飯も美味い。
しかも、結構高級な食材をふんだんに使ってくれるため、舌が肥えてしまったのだが、レオンの場合は安い食材でも異常に美味いので、いつも驚かされる。
なお、母さんは料理がとんでもなく不味く、実際母さんを殺した理由もメシマズだったし……
毎日、生肉とか、謎肉とか、屑肉とか、雑草とか、毒草とか、ラフレシアとか、ピラルクとか、アリゲーターガーとか、ドリアンとか、パイソンとか、ナメクジとか、サナダムシとか、ハリガネムシとか……
よく生きてたな、僕。
あと、バズさんは、何故か微妙に美味い様な、美味くない様な、そんな不思議な味の焼きそばしか作れない。
「さて、今後の方針なんだけど……
グラッセ帝国を陥とす、実質エリーゼが支配しているらしいし。
それで良いかな?」
レオンの問いかけに、僕は
「りょ」
と、返事をする。
まぁ勿論、エリーゼ以外に暗黒魔法使いがいるなら別だけど。
「うん、安心して、多分暗黒魔法使いはエリーゼだけだから。
ただ、自分の国を陥とすんだから、弑逆と言われても仕方ないんだよなぁ。
まぁ、私の派閥の人達は喜ぶかもしれないけどさ、あんまり私は王位とか帝位とか、興味ないんだよね。
アリスはどうかな?
王様になりたい?
って、そんな面倒は嫌って顔してるね。
そうだね、やっぱり私達は自由に行こうか。
そうと決まったら、まずはグラッセ帝国の帝都……
って未だに小さい城下町なんだけどね。
でも、田舎だけどいい所なんだよ?
アリスにも一度見てもらいたいし、すぐ行こうか」
「りょ」
僕の返事に、レオンは嬉しそうだった。
こうして、僕とレオンはグラッセ帝国の帝都に向かう事になった。
のだが……
レオンの操る馬は凄く速い!
僕の全速ダッシュについてこれるとは……
多分、レオンの乗馬術が凄いのだろうけど……
これなら、1週間くらいで着くかもしれない。
「アリス速いよ!
いや、普通は馬の方が速いからね?
この馬も神馬と言われた、血統書付きなんだけど、それでも追いつくので精一杯とか、どんだけ速いんだだって話でさ。
しかも、馬が疲れて来てるのに、全然アリスは疲れてないよね?
いやまあ、私も身体強化すれば良いんだけど、やっぱり疲れるしさ、そんなに急がなくても、良くない?」
いや、なんか嫌な予感がする。
早く行った方が良い様な、あんまり行きたくない様な?
はやる気持ちが言葉になり、思わず、
「置いてく?」
と、聞いてしまう。
それでもレオンは、頷くと、馬を降り、身体強化をかけ僕について来た。
それからは、2人共無言でただ走り続ける。
山を越え、谷を飛び、草原を駆け抜ける。
ただひたすらに、食事も、睡眠も……
排泄だけは別だが、とにかく、走りまくってレオンの故郷へとたどり着く。
しかし……
既にそこは死霊の巣窟になっていた。
☆
久々に帰った故郷は死霊の巣窟だった。
だが、よく調べると、数はかなり少ない。
おかしいなと思い、調べてみると、手前の村に国民のほとんどは避難していた。
ゲイツ騎士団長が異変に気付き、対応したらしい。
ゲイツさんは私を見かけると、即座にこちらに向かって来た。
「レオン様、お帰り頂き誠に有難うございます。
祖国の異変に気付かれるとは、流石でございます」
「ゲイツさん、そんな事はどうでもいいから。
状況の説明を!」
「はっ!
昨日から、王城から死霊兵らしきものが発生し、次第に溢れかえって来たため、急遽王都の民を全員避難させました。
王宮には、多分エリーゼとお子様のパトリオット様が残られています。
前王様は死霊兵化していると言う噂もあり、ラピド様は幽閉されているため不明です。
実際の被害は、王宮内に居た40人程だと推測されます。
正直なところ、これ以上の詳細はわかっておりません。
しかし、エリーゼは暗黒魔法を封印されているはず。
どういう事なんでしょう?」
「それについては、この子、アリスが以前に一部の封印を解いてしまったらしいから、多分だが誰かに命じて死霊兵を生み出しているんだと思う。
ならば、私とアリスで王宮に向かうよ」
「お待ち下さい!
その子は大丈夫なんですか?
エリーゼの封印を解いたとか……
何者なんですか?」
ゲイツさんは緊張し、いつでも剣が抜けるよう柄に手をかけようとする。
「止めておきなさい。
アリスは、ゲイツさんで敵う相手ではありませんよ。
無駄死にしたくないなら引きなさい。
それに、私とアリスは結魂したんです。
アリスに手を出す事は、私に刃向かうのと同じになりますよ?」
「結婚?!
えっと、こんな小さな子と?」
「私のレオン様が?」
「俺のレオン様が??」
「ロリコン?」
「ノータッチですぞ?」
「レオン様の趣味って……」
結魂の話が聞こえたのか、色んな人が集まってきて、皆好き勝手言っている。
「まぁ、結魂の事は置いといて、とにかく今は暗黒魔法使いを倒す事が優先です。
皆さんも、私が良いと言うまで王城には近づかない様に!
ゲイツさんも良いですね?
それと、私とアリスが1日戻って来なければ、この村からも逃げる準備をして下さい。
ゲイツさんには、この聖剣紫陽花を授けます。
低級な死霊兵位なら余裕で斬れますから、これで退けて下さい」
「わかりました、御武運を」
そう言って、ゲイツさんは聖剣紫陽花を受け取り、下がっていった。
ちなみに、聖剣紫陽花は紫陽花が有名な教会に奉納されていた剣で、それ程強いわけではないが、そこまで弱いわけでもないレベルだ。
単に、作者がアジサイ祭りの広告を見て適当に付けた名前ではない事を付しておく。
私達は、即座に移動し、王宮へと向かう。
私は聖剣チバニアンを、アリスには聖剣ロードオブグンマを渡す。
いずれも、由緒正しい聖剣で、邪なる者は触れただけで消滅する程の聖なる力を秘めている。
王都に入ると、私とアリスは聖剣を使い、片っ端から死霊兵を昇天させていく。
そして、王宮に入ると……
そこに居たのは、父である前王と、私を産んで死んだ私の母、つまり前王の王妃が居た。
前王アレニウス、魔力枯病になる前は王国随一の魔法の使い手で、風魔法を得意としていた魔導師だった。
そしてその妻、王妃エーデルリッターは、私の兄ラピドと私の母なのだが、王国随一の拳闘士だったらしい。
ただ、私が産まれる際に、大量失血で亡くなった、そう聞いている。
ちなみに、父の魔法の才能と母の拳闘の才能は私だけに受け継がれ、兄のラピドには受け継がれなかった。
それ故に、私は期待され、男として生きる事になるのだが……
久しぶりに会う父と、初めて会う母、ただし死霊兵と化し、骸骨になっているが。
なお、死霊兵は生前の様な能力の制限がなく、フルの力を自由に使う事ができる。
しかも、魔力の制限もない。
もちろん、使役者の魔力が充分ならばだが。
この2人を使役しているとすると、暗黒魔法使いの魔力は相当なものだと推測される。
今のエリーゼにはそんな力はないはず……
それこそ、王都の民を全員犠牲にでもしない限り。
いや、全員犠牲にしてもそんなに長くは保たない。
何かがおかしい。
そんな事を考えていると、アリスが聖剣ロードオブグンマを振りかざし、2人に襲いかかる!
しかし、母にあっさり避けられ、父の魔法で吹き飛ばされる。
「強!」
アリスが悔しそうに呟く。
「アリス、この2人は私の父と母なんだ。
だから、申し訳ないがここは私に任せてくれないか?
アリスは先に行って、暗黒魔法使いを倒して欲しい。
良いかい?」
私は、アリスが頷くのを確認すると、土魔法で2人を囲み、アリスの通路を作る。
2人には足止め程度だろうが、アリスは一気に駆け抜け、先に進む。
そして、私は再び2人に対峙する。
何故か2人はアリスを追わない。
そして……
「レオノーラ、貴女大きくなったわね」
もちろん、死霊兵なので発声はできないが、精神波の様なものではあるが、慈愛に満ちた感じで母が話しかけてきた。
レオノーラ、それは私の真名、男として育てられる前に付けられた名前。
私は膝をつき、父と母に敬礼する。
この間、私は無防備だが、父と母は攻撃してこない。
「父上、お久しゅうございます。
母上ははじめましてになりますでしょうか?
2人ともお元気……
とは言えない状況ですが、お会いできてとても嬉しいです。
例え死霊兵であっても。
ところで、父上と母上は暗黒魔法使いに使役され、操られているのではないのですか?
いえ、普通の死霊兵なら有無を言わさず襲って来ますし、御二人が特別なのかもしれませんが……」
「レオン、それがな……
私達にも詳しくはわからないのだが、死霊兵として使役されてはいるが、何ら命令を受けていないのだよ。
だから、私達は意識がはっきりとあるので自由にしている、そんな感じなのだよ」
「そうなのよね。
多分なんだけど、使役者は何も考えてないと言うか、無邪気と言うか、ただ死霊兵を作っているだけみたいな感じなのよね。
だから、特に制限もないし、貴女とも話せるんだけど……
そうだわ!
せっかくだし、私が死んで途絶えてしまった、必殺の暗殺拳をレオノーラにマスターしてもらいましょう。
貴女なら才能あるし大丈夫よ。
この暗殺拳、雷蕾拳は一子相伝の秘術なんだけど、私の代で途絶えさせてしまうには惜しいって思ってたの。
だから、今から修行をしましょうか。
行くわよ、構えなさい!」
そう言って、母は突然、徒手空拳で構えを取る。
私も、剣を収めて同じ型で構えると、母からは鋭い攻撃が繰り出されてきた。
「チャー」の掛け声で正拳突きが、「シュー」の掛け声で裏拳が、「メン」の掛け声で回し蹴りがきた!
身体強化していてもギリギリの攻撃、しかも多分わざと外してくれている。
ちなみに、そのパワーは凄まじく、最後の蹴りで母の脚は自壊していた。
まぁ死霊兵化しているからすぐ回復するけど。
「チャーの呪言で力を漲らせ、シューの呪言でスピードを増し、メンの呪言で爆発的な威力を叩き出す、これが基本の型チャーシューメンよ!
まぁ今の私の身体では、威力に耐えきれないみたいだけどね〜
さあレオノーラ、このアレニウスで試してみなさい」
良いのか母上よ?
一瞬そう思ったが、他人で試すよりはマシかと思い直し、父上に向かって構えを取る。
「ちょ、待てレオン、話せばわかる!
いや、痛みは無いかもしれないが、流石にちょっと怖いし……」
「「問答無用!」」
母上と意見が会う、やはり親子なんだと少し感じてしまう。
そして、先程の母上の真似をして、「チャー」で正拳突きを放つ、本当だ、力が漲る。
「シュー」で裏拳を放つとスピードが上がり、「メン」で爆発的な威力が上乗せされる。
身体強化状態で、極身体強化に匹敵する威力が出て、父上を粉微塵に粉砕する!
まぁ、父上も死霊兵になっているし、復活するんだけどね。
父上への後ろめたさは若干あるが、この暗殺拳の威力、凄いとしか言い様がないと興奮してしまう!
「次はマーボーナスの構えで行くわよ!」
こうして、私は暗黒魔法使いをそっちのけで、雷蕾拳の修行に励むのだった。
グラッセ帝国を襲った死霊兵、その黒幕たる暗黒魔法使いは……
そして、全てを終えた2人は、全てを投げ打って旅立つのだった。
次回 第57話 閑話 レオンとアリスの過去 旅立ち




