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第53話 閑話 アリスの過去 死霊の脳髄

衛兵達を倒しながら、陵辱姫らしき人がいる部屋に入ると、そこには……

濃密な死の香りがする人物がいた。

なんだが懐かしい感じがする。

そうか、母さんにまとわりついていた感じに近いんだ。

ネットリとして、陰湿で、人を殺すのが楽しくて楽しくて仕方ない、そんな感じの香りだ。


ちなみに、僕も沢山の人を殺してきたが、理由はどちらかと言うと、生きる為、生存本能、それと闘争本能に従っているだけなので、生理的な行為に近いからそう言う臭いはあまり付かない。

実際、臭う訳じゃなく、雰囲気的なものだしね。


そして、一際その臭いが強い人が奥に一名、やや臭う人が一名、何にも臭わないって言うか人形みたいな人が一名いる。


やや臭う人は、僕の入室に驚いて、怒鳴りつけてくる。

「寄るな下郎!

ここをクレープ王国の王妃、マドレーヌの部屋と知っての事か?」


「陵辱姫殺しに来た」


「陵辱姫などと言う者はココには居ない、すぐに立ち去れ!」


うーん、自分のあだ名を知らないのだろうか?

それとも人違い?

だと困るなぁ……

一応確認するか?


「おばさんのあだ名が陵辱姫じゃないの?」


「うるさい、黙れ下郎!

エリーゼ様の御前で、なんと下衆な奴め。

衛兵、衛兵はおらぬか?」


「全員死んだよ?」


「役立たず供め!

ならば、私自らが始末してやろう!

エリーゼ様から賜ったこの力でな。

エリーゼ様はお下がり下さい。

必ずや私がこの下郎を倒して見せますので」


そう言って、陵辱姫はエリーゼを庇う様に前に出て、呪文を唱えながら魔力を込め始める。

なんか、これも懐かしい感じが……

陵辱姫の魔力により、床に魔法陣が浮かび、骸骨の兵が3体現れる。

死霊兵、死者を呼び出し、使役する暗黒魔法。

溢れかえる死の世界の魔力。

そうか、多分だが死神である父さんの魔力に近いのだろう。

会った事はないが、そんな気がする。


《生きたかった》

《ミレーヌに会いたい》

《みんな殺してやる》

何故だか、僕には死霊兵達の心の声が聞こえる。

まぁ、だからなんだと言う訳でもないが。


「行け、死霊兵達よ!

あの無礼者を抹殺しろ」


陵辱姫の号令で、死霊兵達が僕に向かって襲いかかってきた。

動きは普通の人間より少し早いくらいか?

3体が連携し、長剣で斬撃、突き、払いの組み合わせ攻撃を繰り出してくる。

こちらの攻撃は……

急所は見当たらないし、ナイフでの斬撃もあまり効果がない。

一瞬骨が崩れる事はあっても、すぐに復活してしまう。

魔糸で絡めても外されるしな。

ならば……


僕はナイフを仕舞い、死霊兵の攻撃を避け、1体にゼロ距離で近づき、口づけを交わす。

何してるんだって?

いや、何となくだが、僕の中の死神の力が、死の魔力を吸える気がしたんだよね。


骸骨と、超ディープな長いキス

まぁ死体だし、ファーストキスではない、ノンカウント扱いで。

暫く、周りの時間が止まった様に誰もが黙り、動かない。

そして、キスされた死霊兵は砂塵となり消えていく。

特に僕の身体に異変はないし、ついでに隣の死霊兵も引き寄せて強引にキスをする。

別にメンバーじゃないし、死霊兵相手に強姦罪は問われないだろうしね。

相手がジェーケーじゃなきゃいいだろう。


2体倒せば、後の1体くらい余裕だ。

上段蹴りで頭を吹き飛ばし、更に踵落としで胴体をバラバラにする。

と言っても、死霊兵は復活するんだが、その復活に使役者の魔力を相当使用する。

既に陵辱姫は魔力がかなり減っており、魔力の代わりに生命力を吸い取られ、手脚が痩せ細り、綺麗だった顔も老婆のようになっている。


実はさっきの2体を消滅させた時にも、数秒だが消滅に抗って陵辱姫が大分魔力が流れ込んでいた。

だが、最後の1体を消滅させても、僅かに魔力が残ると思い、敢えて消滅させずに、蹴りで粉砕したのだ。

案の定、最後の1体が復活した瞬間に、僕がキスをして消滅させると陵辱姫は生命力を使い果たし、事切れて死んだ。


これで、依頼は完了だな。

だがしかし、残りの2人はどうしよう。

正直なところ、2人ともこちらへの殺意が無い。

まぁ死の臭いが無い男の方は、感情があるかどうかすら怪しいが。

そう思って考えていると、死の臭いが濃密な女が口をパクパクさせる。

そして、その口の動きを読んで、男が話し出す。

「貴方は何者?

私はエリーゼ」


男の名前がエリーゼ?

いや、女は何らかの理由で、喋れないのかもしれない。


「殺し屋」


「殺し屋さんね。

ならば私も殺すのかしら?」


「敵なら殺す。

敵か?」


「敵では無いわよ?」


うーん、男の声で女言葉は気持ち悪いな。

僕はエリーゼに近づき、首を掴んで絞め上げる様に持ち上げる。

そして、因果律の作用で、エリーゼに仕掛けられた舌の束縛魔法のみを殺した。

やはり、因果律で魔法陣のみ破壊できた様だ。

この人の運命は強いみたいだし、恐らく因果律では殺せない相手なんだろう。

隣の男はもう邪魔なのでナイフでアッサリと殺す。


するとエリーゼは僕に礼を言う。

「ゲホゲホっ!

何するのよ!




あら、喋れるわ?

嘘ー、マジやばいし。

喋れるってサイコーね。

ありがとう、殺し屋のお嬢ちゃん」


しかし、エリーゼと言う名前は聞いた事があった気がする。

そうそう、母さんが異端審問官の時に仕えていた相手だった気がする。

ちょっと聞いてみるか。

「僕の母、シャリー。

異端審問官だった。

知ってる?」


「シャリー、シャリー……

そう言えば、小さい時にシャリー狩りをしたんだっけ。

あれは……

そうそう、お気に入りの異端審問官がシャリーで、急に居なくなったから、腹いせにシャリーって名前の女を狩って拷問したっけ?

貴方はシャリーの子供だったのね。

懐かしいわ〜


シャリーはね、拷問のスペシャリストだったの。

あの拷問は神業だったのよ?

でも、何故か居なくなったと思ったら、貴方みたいな子供を産んでいたのね。

シャリーは今も元気?」


「殺した」


「あっそう。

死んだなら仕方ないわね。

しかし、シャリーの子供だし、流石ねぇ。


そうね、これも何かの縁だと思わない?

貴方、良かったら私の下で働かないかしら?」


「否、殺し屋ギルドに入ってる」


「そうなの……

まぁ無理にとは言わないわ。


そうだ!

それなら私の依頼を受けてくれないかしら?

それなら良いでしょ?」


何故だが嫌な予感がする。

だが、この依頼は断れない、そんな気がする。

なので、僕は暗殺依頼書を取り出して、エリーゼに渡す。


「これに名前を書けばいいのね?

報酬は、手持ちの10000ジルで良いかしら?

相手はレオン グラッセ、グラッセ帝国の将軍よ。

実は、これまでに100人くらいの刺客を送ったんだけどねぇ。

みんな大した事が無くてね。

でもでも、貴方ならできそうな気がするの。

お願いね?


それと、もし可能ならさっきみたいに、背中の封印も解いてくれないかしら?」


レオン グラッセ……

新たなターゲット。

その名は僕みたいな世間知らずですら、知っている名前だ。

しかし、最強の魔法使いで仁君でイケメンで天才だから、恨まれたり、憎まれたり……

そんな話は聞いた事もない。

その様な相手を殺したい理由は何なんだろか?


ただまぁ、理由なんて必要なければ問わないのがルールみたいなものだし、契約が成立した今、関係ない。

ならば、殺しに行くだけだ。


あと、これも理由なんて無いが、エリーゼの背中の封印は解いちゃいけない気がする。

「殺しの依頼は了解した。

背中は無理」

僕がそう言うと、エリーゼが答える。


「そう、まぁでも貴方の依頼が達成されれば解けるし、構わないわ。

それじゃ、これが依頼料ね。

多分、今レオンはガストラに居るから。

よろしくね。


しかし、この国も終わりね。

明日まで居る予定だったけど……

仕方ないわ、撤退しようかしら」

そう言ってエリーゼは去って行った。


これで良かったのだろうか?

僕は初めて、殺しの依頼に疑問を持ったのだった。


―――――――――――――――――――――


数日後のグラッセ王国の王都にて。

「エリーゼ、お帰り。

クレープ王国での視察は楽しかったかい?

あそこは風光明媚で、平和な国らしいしね。

ゆっくりとできたんじゃないかい?」


皇帝である、ラピド グラッセが妃であるエリーゼの帰りを迎える。

相変わらず、呑気で間抜けな人だ、エリーゼはそう思った。

地位も権力もあるのに、使いこなせない凡愚。

弟の功績で、ただマグレで上に上がってしまったのがこのグズだ。

そして、腹立たしい事に我が夫でもある。

この愚図は、私を処刑から救い、代わりに妃にした。

そこまでは良い。

しかし、その後で私が謀略を巡らせ、皇帝にまでのし上げたのに、コイツは今まで通り、この小さな国だけの統治しかしようとしない。

そのせいで、私は以前よりも貧乏で、不味い飯しか出ない苦しい生活を強いられている。


しかし、それもここまでだ。

我が子、バリスタ、と言ってもラピドの子ではないが、この子を皇帝にし、この国の全権を握る。


「ただいま。

私、クレープ王国で治療して喋れないのが治りましたの。

だから、これからは私も国政に関わらせてもらいますわよ?」


そう告げると、ラピドは私を抱きしめ、しきりに「良かった、良かった」と涙する。

本当に間抜けな人だ。


そして、その数ヶ月後、ラピドは精神を病んでしまい、城の塔に幽閉される事になった。

これでレオンさえ死ねば……

エリーゼはあの小さな暗殺者がレオンを殺す事を想像し、ほくそ笑むのだった。

その出会いは必然

レオンとアリス、2人の戦いの行く末はいかに?


次回 第54話 閑話 レオンとアリスの過去 出会い

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